売れるサ-ビスの仕組み: おまけや値引きはサ-ビスじゃない!

著者 :
  • アスカ・エフ・プロダクツ
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756910813

感想・レビュー・書評

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  • ☆5(付箋24枚/238→割合10.08%)
     
    職業柄(笑
    クレームじゃなくて、感謝の声を集めるべきだとか、
    日本のサービスという概念の消極具合など、とても興味深く読みました。

    ・この本を手にした方には、ある共通点があります。
    それは、「真面目で一生懸命」だという事です。
    売れれば良い、儲かれば良い、自分だけが良ければそれで良 し。そう考える人は、「サービス」と言うキーワードには反応しません。
    サービスの最前線でお客様に直接接している方も、製造業や建設業などに携わっている方も、医療や福祉などの分野で活躍されている方も、誰もが真摯に自己研鑽し、更に高いステージを目指しています。
    そこまでのレベルには達していないよ、と言う方でも、今、目の前で悩んでいる具体的な問題について、解決の糸口を探しているはずです。

    ・まずは辞書を引いてみた。
    日本ではサービスとは「力や気を配って尽くすこと」であり「もてなし」時には「おまけすること」と定義されているらしい。
    サービス残業なんて「おまけ」の典型例で、こんな単語が創作されるくらい、日本はサービスに対しての意識が低い。

    ・「おまけ」が「付加価値(サービス)」に該当するかどうかは、そのおまけが提供されることが全体の対価を払う価値があると決定する要因になったかどうか。

    ・興味のない演劇やクラシックコンサートに、人がわざわざ足を運ばないように、メッセージがないサービスに、人は集いません。企業になんらかの存在理由がある以上は、社会やお客様に対して、メッセージを発信しているはずです。
    経営コンサルタントの石原明さんは、「人が集まっている所、行列しているところには必ず顔を突っ込む」そうです。
    人が集まっているところには、必ずメッセージがあります。そのメッセージを掴み取るセンスも合わせて学びましょう。

    ・わがままと必要な配慮の見分け方
    ①お客様のリクエストに「共感」できるか。
    (サービス業の基本は共感です)
    ②お客様のリクエストに応える事で、「もっと大切なお客様」に迷惑が掛っていないか。
    ③スタッフは疲弊していないか。
    ④利益は出ているか。
    ⑤本当に「そうする」必要があるのか。
    (タバコ置いてないの?に買いに走るか、コンビニの場所を教えればいいのか)

    ・製造業、建設業などに従事する多くの人は、自分の仕事にサービスは関係ないと思い込んでいます。たとえば、鉄道会社の保線区作業員。保線区の人とは「終電後、深夜に砂利や線路を整備する人」です。
    …「正直言わせてもらうと、上司からサービスの研修を受けて来いと言われた時、はっきりいって『意味ない』と思いました。でも、今日一日参加してみて、自分の考えは間違っていたと判りました。自分にもサービスできる事はあるんだと判りました。仕事でも、人生でも。」

    ・「線路って、片側がふたつかみっつ、おっこちると、もうダメなんです。夜間それを探して、砂利をつき固めて調整するんです。でも、手作業では進める距離に限界があるから、最近では最新の機械をつかいます。そうすると1日200メートル進む事が出来ます。」
    「ん?ふたつ、みっつって何?」
    「2ミリ、3ミリですけど」
    一同「へーー」

    ご存知でしたか。線路って左右の高さが2ミリずれると、乗り心地に影響するんだそうです。そして、深夜、機械を使っても1日200メートルしか検査を前に進められない。こんな地味な作業を毎晩200メー トルずつ行うプロ。
    サービスに置ける本当の感動と言うのは、サプライズよりも、誕生日に歌を歌って差し上げることよりも、線路を、しっかりと事故のないようにメンテナンスする。これを365日休まずに続けること。

    ・チェックインした後、モーニングコールを依頼しました。機械でセットするタイプではなく、直接オペレーターに頼む形でした。
    翌朝、当たり前ですが電話のベルが鳴り、依頼した時間にモーニングコールが鳴りました。寝ぼけた声で返事をすると、さすがは一流ホテル、コンピューターではなく女性の爽やかな声で、「グッドモーニング、ミスター・タカハギ。今日も外は快晴よ。良い一日を」と。
    それは良かったのですが昨夜のお酒が残っていた私は、二度寝をしてしまったのです。
    どれくらい時間が過ぎたのでしょう、また電話のベルが鳴りました。
    「やばい、寝過した!」とドキッとして電話を取ると、何と先ほどの女性の声がします。
    「グッドモーニング・アゲイン、ミスター・タカハギ」そして、その後、こう続けたのです。
    「私、あなたはまだ寝ているんじゃないかと思ってもう一度電話したのよ、だってさっき相当寝ぼけていたもの。もう大丈夫ね、良い一日を」ククッと笑って電話を切った彼女は、まさしくサービスのプロです。
    彼ら、彼女らに共通していえるのは、リラックスした状態でサービスを提供していること。そしてサービス提供を、心から楽しんでいることです。人の心にしっかりと残るサービスが、いちばんの感動体験であることは間違いありません。

    ・年に数回、不良顧客が来てしまうのであれば、突発事故とも考えられますが、日常的に「マナーの悪い客」に手を焼いているのでしたら、即効薬はありません。凡時徹底をお勧めします。実行すれば店は確実に良くなります。
    トイレがピカピカで、食器下げが迅速で、スタッフが笑顔でハキハキ働いているのに、クレーム客がいつも来るお店は、ありません。

    ・皆さんが時と場合によって松や竹を頼むように、お客様だって「松や竹」を頼みたい時があります。
    業界によっては「梅」を頼んではいけない悪徳業界も存在します。ほかの業界の事は深く存じ上げないので、身近なところでご紹介すると、旅行業界も「梅」には梅なりの理由があります。それを 、お客様にしっかりと教えて差し上げましょう。
    …航空会社はみな同じではありません。プロの目から見たポイントは大きくふたつです。
    *機体の整備に掛けているコスト
    *乗務員の危機管理に掛けているコスト

    ・ウォルトディズニーのバックヤードツアーに参加すると、参加者(ほとんどは経営者や、現場責任者)に向かって、ディズニーの担当者がクイズを出します。
    「ディズニーは、なぜこの世に存在すると思いますか?」
    参加者は、ちょっと考えて

    *夢と魔法の国の実現
    *おとなにも、こどもにも夢を与え続けるため

    などと応えます。しかしディズニー側の答えは、「利益を上げるため」だそうです。

    ・食事が終わったあと、ボタンを押して「お茶下さい」と催促し ないと、お茶を持ってこれないレベルのお店では、チャージとサービス料を取るべきではありません。

    ・(ホノルルのハーツレンタカーは)コンピューター画面を顧客の側に向けながら説明するのです。
    イメージ的にはJRのチケットを買う時に、何となく皆さん職員がカチャカチャ操作する、コンピューターの画面を見ませんか。あれです。
    あれを、意図的に見せるのです。すると、顧客の側のストレスがなくなるのです。不思議ですね。

    私はある日、通常のセダンを借りようと手続きをしに行ったら、
    「今日は大きな車がご覧の通り空いていますが、いかがですか」
    とコンピューター画面を見せてくれました。そして、
    「おお、素晴らしい。ブランニュー(新車)のジャガーもあるわ 」
    と言葉を添えるのです。もちろん10分後、私はそのジャガーの主となっていました。

    ・クレームは社員の資質が原因の場合もあります。しかし、多くの場合は社内システムが整っていないことと、クレームに対する正確な知識がないことが原因となっていることが非常に多いのです。

    ・どのような対応をすれば人は満足するのでしょうか。ある運輸機関の事例があります。
    指定の列車に乗るために駅へ向かっていたお客様は、深夜の遅い時間に列車の変更をする必要があってその窓口を探していました。ところが延々歩いては見たものの結局空いている窓口を探し出すことができなかったのです。
    このお客様は、自分の無駄な動きは「表示の不備にある」と考え、責任者宛てに早速手 紙を書いたのです。数日して責任者名で返送されてきた手紙は、このような感じで記されていました。

    *お詫びと合わせて、指摘を感謝することば
    *指摘されて初めて事実に気がついたことを率直に記載
    *表示はすぐに改善したこと(改善した状態のイラストが添えてあった)

    ・サービスを売りにしているコンサルタントは、「クレームは言ってくださっている」とか、「お客様の声に耳を傾けるべきこと」などと、よく考えると「本当にそうか?」と思うような理想論を言っていることが多いのではないでしょうか。
    確かに、サービスに不満を持つ全体4%のお客様だけがクレームを発するというデータがあります。
    1人がクレームを出せば、その背後には26人の不満な人たちがいるということになります。その中でも特に6名ほどはさらに深刻な問題を抱えています。だから、言ってくれるお客様は貴重で、その声に耳を傾けようというのが多くのコンサルタントの言い分です。
    私はそういった捉え方をしません。
    お客様の発現量を増やすこと、特に素晴らしいサービスについてのご意見をいただくことに専念するように勧めています。

    ・私が行うセミナーや講演の中で「クレーム」関連の講義は人気があります。やはりサービス業のみならず、働く人が皆、悩み苦しむ永遠のテーマであるのでしょう。しかし、検索エンジンで「クレーム」と入れて検索してみると、何百万件と出てくるクレームに関するテーマは
    「悪質なクレームへの処理や対策」か「もっと接客のレベルを あげよう」です。
    違います、違うんです。
    確かにテロリスト対策は大事、接客のレベルも大切。でもいちばん大切なのは、「社員」ではないのでしょうか。
    サービス業においてはクレームは避けられません。ゼロにならないのであれば、経営者や責任者がクレームへの考え方を大変革して「社員」を守ってあげて下さい。

    ・スタッフが苦情を「サービスへのいいがかりやミスの指摘」だと受け取る文化が会社内に根付いていると、必ずスタッフが発する言葉があります。
    「だって、私は悪くない」
    部下から言われた事はありませんか。これを言われてしまっているとしたら、上司であるあなたのクレーム感を、まず変えてみましょう。

    ・私自身がサービスに強い不満を持ち、苦情を申 し立てたにも関わらず状況が更に悪化したケースを振り返ってみると、「私がなぜここまで怒っているのか」を相手がしっかりと認めてくれなかったケースばかりです。
    レンタカー会社で整備不良車を提供され、「ブレーキや床下から異音がして、怖い思いをした」と伝えた際、「この車は三週間前に整備したばかりで、その際は何も異常はありませんでした」などと噛み合わない回答をされたことがあります。
    更に「レンタカーは借受人が事故を起こした場合のリスクばかり言うが、その前提として、しっかりとした上質な車を提供するのは当然ではないか」と言うと「この度はご迷惑をお掛け致しました」とその会社の割引券を送ってきました。

    ・クレームは消火活動ではありません 。お客様の声を元に、今後それを自分のサービスにどう生かすのか。その意味で、クレームは「マーケティング」であると言えます。お客様が私達のサービス提供を受けて、何かを感じたから、それが具体的に声として聞こえて来ているのです。

    ・あるとき、整体だったかマッサージか忘れましたが、
    「アルバイト急募!誰にでも出来ます。未経験歓迎」とドアの入口に張ってありました。
    これが募集方法としても、玄関のお客様に見える場所での告知であることも、ヤバイ。気がついていないのが、そのままこのお店のサービスセンスです。

    ・「更に安くします」というのは、典型的な物販発想です。私達は体験が買いたいのですが、「モノ」を売られていると思ってしまうと、値段だけで比較してしまいます。

    ・絵が上手いとか下手とか、似ているとか似ていないとか、そんなフィールドでお客様に議論されているうちは、プロとしてのステージがまだまだです。同じお客様が毎週来てくれるには、どんな絵描きさんになったら良いのだろう。そんな風に考えてみてください。

    ・たまたまなのでしょうか、のぞみ号。客室が悪いのに驚きました。車内のあちこちに携帯電話を掛ける客。私の周囲3メートルに3人いました。そして、何回も掛ける。呼び出し音が鳴る。この空間には、お金を出したくないと感じました。なぜ、こんなことになると思いますか。私はある予想をしたのですが、的中です。車掌が注意をしないのです。
    社会のルールが守れない人が、必ず取る「行動パターン」があります。様子を見るのです、どこまでOKかを。

  • 凡時徹底、安い理由を明確にするなどサービスの仕組みがよく分かります。素晴らしい旅行をつくられている高萩社長に感謝。

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著者プロフィール

1964年8月10日生 。

大分県立大分商業高校 放送大学学園教養学部卒業。

小田急電鉄株式会社入社後、駅、車掌区勤務を経てカナダ・アルバータ州カルガリーへ。

カナディアンロッキーにてツアーガイド。

帰国後、株式会社日本旅行に入社。

海外旅行ツアー企画(アジア、中国)を担当。

1999年に独立し有限会社ベルテンポ・トラベル・アンドコンサルタンツを創業。

お体に障害がある方や高齢の方の旅のサポートを行い、

国内、海外へ年間100日以上、旅をするバリアフリー旅行の第一人者。

会員制旅行クラブを運営しながら「誰もが」「自由に」「どこへでも」をテーマに旅を続ける。



サービスコンサルタントとしても、従来のサービス感とは異なる角度からサービスの本質を提言。

全国の企業や自治体、観光施設、ホテル、航空会社、鉄道会社、病院などで講演、研修、セミナー等を行なう。

経営者向けのサービス勉強会「共創チーム」を主宰。

「2023年 『旅の作法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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