デジタルのおもちゃ箱: MITメディアラボから見た日本

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  • エヌティティ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757101128

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  • どこからどう感想を書いたらいいのか困る。盛りだくさんなうえに、とにかくつぎつぎと人物やキーワードが登場して、題名の通りおもちゃ箱状態。ぐっちゃぐちゃになったおもちゃ箱に手を突っ込んで、おもしろそうなものを手当たり次第引っ張りだしているようなそんな感じです。

    そしてその雑多な感じは”MITメディアラボ”それ自体の性質をよく表しています。ニコラス・ネグロポンテを筆頭に、アラン・ケイ、石井裕、ジョン前田、マービン・ミンスキー……と、研究者としてもアーティストとしても思想家としてもスーパースタークラスが入り乱れて研究を進める世界の最先端。名前の通り”メディア”についての学際的な研究を行うのですが、映像がきれいになる、とかネットワークが早くなる、とかそういう現状技術の延長で考えることができない領域。「審美的価値を追及する芸術作品でも、既存の問題を解決する多恵の技術デモでもない.私たちの研究の目的は、新しいコンセプトの創出にある」(石井裕)という言葉のように、メディアやデジタルテクノロジーを通して、いままでそもそも認識されてこなかった全く新しい世界観を開拓することが、その使命なわけです。

    確かに振り返ってみると、これまでのITやデジタル技術というのは、進歩とはいってもあくまでそれまでの道具の延長線上にあったように思います。つまり、身体能力の拡張。車は人の脚力を拡張する装置であり、望遠鏡は人の視力を拡張する装置であり、というように。それはどこまでいっても物事が便利になった短い時間で住むようになったというレベルにすぎない。でもそうではなくて、人の認識能力の拡張やシフトをもたらすようなテクノロジーの可能性も十分あるように思います(あるいは、同じ身体能力の拡張でも、拡張の度合いがほとんど断絶に近いレベルにまで引き上げられるのであれば、それはそれで認識をシフトしうるかもしれないけど)。

    だから、このおもちゃ箱には、人の持つ世界観、人と人との関係性、経済システム、社会制度設計、文化的文脈や文法といった、世界の認識のレベルにまで踏み込んだ、メディアの可能性、テクノロジーの可能性を追及するという”未来のおもちゃ”なんだろうな、と。たぶんほとんどのおもちゃがただ飽きられて捨てられていくのだろうけれど、そのうちのいくつかはきっと未来になにか大きな変化をもたらしてくれるんじゃないかと思うと、それはとても楽しみな未来だったりします。

  • オレをMITに行かせろ!(感じる図書館で貸し出し中)

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著者プロフィール

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。1961年生まれ。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学で博士号取得(政策・メディア)。1984年ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策を担当。橋本行革で省庁再編に携わったのを最後に退官し渡米。1998年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長。2006年慶應義塾大学教授を経て現職。

「2017年 『ポスト2020の都市づくり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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