- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757102026
感想・レビュー・書評
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筆者の作品「ネット・ポリティックス」を読み直し、自分の至らなさを再確認し、改めて筆者の本を読み直そうとおもい図書館で借りる。
本書ではポルトガル帝国、大英帝国そしてアメリカ。近代の覇権国家は海洋ネットワーク、航空ネットワークを使いその覇権を延命し、覇権を緩やかに次世代に譲り渡すことに成功したことが伏線として描かれる。特に大英帝国時代の後期にイギリスが所有していた電信が果たした役割の重要性を考えると、現代の覇権国アメリカがインターネットをどう飼い慣らすかに、アメリカの今後の存亡がかかっているという。
筆者はまた、モデルスキーの分析を紹介し、そこで覇権に直接挑戦する国になることの不利益を強調する。歴史を振り返ればポルトガルに挑戦したスペイン、オランダに挑戦したフランス、イギリスに挑戦したフランスとドイツ、そしてアメリカに挑戦したソ連はそれぞれ覇権国との競争に疲弊し、次の覇権を奪うことに失敗しているという。
いつか必ずおきるアメリカ覇権の終焉ができるだけ、スムーズで血が流れないものであることを祈りたい。そして以下の2つの箇所が特に印象深い。
『振り返ってみると、1990年台の日本の情報通信政策はNTTの経営形態問題にほとんどの時間を費やしてきたと言っても過言ではない。(p.115)』
『中国は、理念としての共産主義にもはやそれほどこだわっているようには見えない。理念よりも実利を重視する政策に転換しつつあるように見える。そして、理念か実利かを選択する際の最も重要な判断基準が、国内秩序の安定なのではないだろうか。』
- 本書で注目するのは大海を超えて行使される「ネットワーク・パワー」である。これは、大海を超えて人・モノ・金・情報を運ぶ力、それも継続的、双方向的に運ぶ力である。このネットワーク・パワーは、「トランスオセアニック・ネットワーク」と「情報通信ネットワーク」から成り立っている。トランスオセアニック・ネットワークとは、大海を超えて人や物を運ぶ物流のネットワークである。情報通信ネットワークはこのトランスオセアニック・ネットワークを補完し、国際政治的な覇権を維持し、やがてパワーを失う覇権国のソフトランディングを可能にする。これが本書の主張である。p10-11詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
情報通信だけがネットワークではない。エアライン、造船の発展によって世界はネットワークで繋がっていった。日本のブロードバンドの発展は世界への日本のグランドストラテジーを示すことになりました。ケータイの発展も今後日本の国際社会の中でのグランドストラテジーになるだろう。
情報が政治のアジェンダとなったのは1992年のクリントン大統領時代のゴア副大統領の情報スーパーハイウェイーから。
そして急速なインターネットの発展を見せた。
技術政策は国家のグランド・ストラテジーと大きく関係している。
歴史的に考えてみると情報通信ネットワークの技術が覇権国を作ったわけではない。
英国の海底ケーブルは、英国と殖民地を繋ぐためのものだった。
アメリカでインターネットが活用されているのは、アメリカにルーツがあるだけではなく、政府による政策が大きな役割を果たしている。
川勝の「文明の海洋史観」で、情報革命は近代のパラダイムを生むと述べている。
インターネットの世界でレイヤといわれているが国際関係にもレイヤがある。
中国はハードウェアを製造して世界の工場になろうとしているのに、インドはソフトウェアで世界の下請けサービス業になろうとしている。
ITUでの世界情報社会サミットで、中国はインターネットだけアメリカが握っているのはおかしいと主張。ITUに移管すべきだと主張。
米国国務省は2006年にGIFT(Global Internet Freedom Taskforce) を組織し、中国などの国々のインターネット規制を監視していくと発表。
フリードマンは、フラット化する社会で、新大陸発見をGlobalization1.0とし、産業革命をGlobalization2.0とし、現在がGlobalization3.0と定義している。
インターネットのガバナンスにおいては、政府も1つのアクターにすぎない。アメリカも派遣体制を維持するためにインターネットを使いこなそうとするだろうが、その主役はエンパワーされた人たちである。彼らが国際政治に影響を与えるようになる。