大転換―脱成長社会へ

著者 :
  • NTT出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757122291

作品紹介・あらすじ

文明の破綻としての経済危機。今、必要な「新たな社会」像とは。

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義は単なる経済制度ではない。それはひとつの文明の様式であると筆者は主張する。

    そして、資本主義が衰退、ないしは行き詰まりを迎えるということは、我々の文明が行き詰まっていることを意味する。

    シュンペーターはイノベーションこそが資本主義を発展させてきたと主張した。イノベーションの担い手は企業家である。ただし、ここうでいう企業家とは、「会社の社長」という意味ではない。冒険心にあふれ、リスクを負うことを恐れず、ある種の向う見ずさでイノベーションに向かって猪突する性質の人々である。

    豊かな社会になれば、この企業家精神は徐々に廃れていく。それはそうだろう。いちかばちかのリスクを負うくらいならば、平平凡凡とサラリーマンをやっていた方が「賢い生き方」だから。

    それはシュンペーター自身が認めていた。ゆえに、彼は資本主義はいずれは終わると予言したのだ。

    資本主義は終わる気配を見せない。しかし、確実に豊かな社会は我々のヴァイタリティを蝕んでいる。シュンペーターの予言は確かに片面的ではあるが当たっているのだ。

  • リーマンショックの時の本だけど、今こそ必要な提言。リーマンはアメリカ/新自由主義という「文明」が限界まできたことを示した。小泉構造改革が行ったのは、日本社会を徹底的に市場化することだった。成長ありきの考え方から、今こそ「脱成長社会」へ舵を切るべき。
    経済成長と金儲けこそが正義とされる世の中の価値に一石を投じる。ただし論の繰り返しが多くて、少ししつこいイメージかもしれない・・・

  • リーマンショックという転換点をどうとらえるか、その視座を提供してくれる一冊

  • 2009/10/2
     グローバリゼーションは一般語
    ​グローバリズムはイズム。”

    佐伯啓思 - Wikipedia
    < http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E4%BC%AF%E5%95%93%E6%80%9D >
    保守主義の立場から研究・評論活動をしている

  • 反グローバリズム、反新自由主義の本。
    確かにバブルは弾けたが、この国にある病根に目を瞑るのもいかがなものか?

    根本的な批判より、建設的な問題提起こそ知識層に課せられた使命なのではなかろうか?

    しかし、面白かった。

  • 「自由と民主主義をもうやめる」の佐伯啓思による経済論。
    2008年の世界金融危機に至る、世界経済の流れがよくわかる。
    特に冷戦以降、アメリカが推進してきたグローバライゼーションの矛盾点や、
    それにされるがままに翻弄されて莫大な国富を失った日本の
    政治の無力さを指摘している。

    そもそも資本主義経済というのは、拡大し続ける事を前提に成り立っていて、
    どこかで崩壊することを繰り返しているように思う。
    拡大→バブル→崩壊→戦争→回復→拡大というサイクル。

    かつての植民地や冷戦期の東側諸国といった、
    市場化して拡大する余地があった発展途上の地域〜フロンティア〜は
    もう残っておらず、アメリカをはじめ我々先進国が、
    もはや無制限の拡大に頼らない経済モデルを作り上げる事が急務である。
    今再びウォール街で息を吹き返しつつある、
    アメリカの底なしの強欲こそが世界経済の敵なのかもしれない。

    グローバライゼーションによって最も被害を受けたものは
    日本の「生産手段」であり、その結果、「資本」を持つアメリカ、
    「労働力」を持つ中国、「資源」を持つロシアやアラブ諸国の地位が
    向上したという指摘には思わず納得してしまった。

    これからの日本はどのような姿で復活するのか、
    そのグランドデザインが描ける政治家が今こそ必要だ。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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