仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント

制作 : 篠田 真貴子(解説) 
  • NTT出版
4.27
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本棚登録 : 300
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757123625

作品紹介・あらすじ

働く女性が増え、共働き世帯が主流となった今も、育児・介護など家庭の仕事を担い、その両立に悩んでいるのは圧倒的に女性です。こうした状況を、どうやって変えていけばいいのでしょう?長時間労働や性別分業が残る職場をどう変える? フレックス勤務の罠は? 今、組織や社会、そして個人に求められる意識改革とは? 〈世界の頭脳100〉に選ばれ、世界的ベストセラー『リーン・イン』のS.サンドバーグ(Facebook COO)の論敵としても注目される著者が、仕事と家庭のあいだで悩むすべての人に贈る、〈21世紀のまったく新しい働き方+生き方〉。
ヒラリー・クリントン、エリック・シュミット(Google会長)ほか推薦!
フィナンシャルタイムズ、エコノミスト絶賛!

感想・レビュー・書評

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  • 【1.読む目的】
    ・育休パパ(長期って書こうとして、女性だったら当たり前の長さだったと気づいたなう)に勧められた1冊。
    ・これからの世界での働き方を考える。
    ・女性の活躍や女性リーダーを考える上でのヒントになりそう。

    【2.気付きや気になった点、面白かった点等】 【3.感想】

  • そういえば、男性への偏見の数々は、表面にも出てきてないことを再確認。女性と表現すると違和感があることも、ケアに従事する者と捉えると、性別は関係ない。早速、部署のみんなとあーだこーだしたい。
    #unfinishedbusiness #競争とケア #ケア経済 #ワーキングファザー #読書記録

  • ちょうど仕事が多忙を極めているときに読んだので、胸にしみ入る言葉がたくさんありました。

    仕事も大事。やりたいこともたくさんある。だけど子どもの成長に寄り添えない、子どもの世話をないがしろにするのは、なにより耐えがたい苦痛。

    もちろん、アメリカ国務省政策企画本部長を務めた著者と同じ目線で語るほどのご身分ではないけれど、こんな葛藤に苛まれるのは私だけではないんだ!と思うだけで光明が差す気がする。

    育児のため時短している身分でどんなに仕事を頑張ったところで評価され得ない。
    だけど担当事務は滞りなく処理をし、必要に応じてインプットに努め、社会人19年目として後輩の助言指導もしなければならない。
    家事も育児も全ての差配と決定を求められて休まるときがない。
    おまけに週末の子どもの予定もやりくりしなければならない!

    しかし、著者の言葉を借りるなら、
    「いくつかのことについては、息子たちが最初に頼るのが私であってほしい。いつ自分が息子を助けたらいいか、どう助けたらいいかを知っておきたい。それがわかるくらいには息子たちの人生に関わりたい。私がワシントンから戻ったのはそのためだ。それが私にとってのワークライフバランスだ。それが私という人間の一部だ。」

    ワークライフバランスを細分化すれば、一日の労働時間や家事の効率的な消化の話題になりがちだけど、視野を広げればそういうことなんだ。
    子どもたちの成長に寄り添うことが私にとって大事なことで、それが私という人間の一部。
    そのために、今を含むしばらくの期間は仕事のペースを緩める期間。
    人的資本が社会にとって大切だというなら、幼い子どもの面倒を見る仕事や教える仕事にはもっと価値を認められてしかるべきで、もっと堂々と宣言してもいいくらいなんだ!

    この本を読み終わる頃、仕事も超繁忙期を脱し、少しは自分を客観的に見られるようになったこともあり、よい本に出会えたと感謝の気持ちでいっぱいです。

  • ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    「世界の頭脳100」に選ばれた女性が書いた、まったく新しい働き方の教科書。全米で話題沸騰の書、待望の邦訳!
    「BOOK」データベースより
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    この本、今年読んだ本のベスト3には入りますわ。
    性別、年齢、職種問わず、すべての人に読んでほしい。そして古い考え方からシフトするきっかけにしてほしい。


    著者のアン=マリー・スローターさんは、弁護士であり、学者であり、経営者であり、アメリカ国務省の政策企画本部本部長にもなったことがあるアメリカのスーパーウーマン。同時に、男子2人を育てるワーキングマザーでもあります。
    彼女は、夫に子育てを託し単身赴任で国務省の重役を2年間務めましたが、子供が荒れるなど色々問題が勃発したので、子育てを理由に契約更新を断り、家族のもとに戻りました。
    この本は、彼女が身をもって感じた競争社会の限界や問題、ケア(育児・介護など)に対する私たちの思い込みについて、様々な気付きと示唆を与えてくれる本です。


    この本を読んだ最初の感想→「アメリカ女性すごすぎ!」。
    アメリカは、男女平等ランキングで49位(144ヵ国で比較)。
    どちらかというとランキング上位の方なんですが、読んでいくと「よくこんな整ってない社会保障制度でランキング上位になれたもんだな…」と、心底感心してしまいます。
    どんだけ整ってないかというと、
    ・産休は産前産後あわせて12週。それ以上休もうとすると解雇されることも多々ある。もちろんその間は無給。
     (ちなみに日本は、産前は6週、産後8週が基本で、収入に関しては、会社からは無給だけど健康保険で手当が出る)
    ・育休の制度も基本はない
     (州によって多少違いはあるらしい。ちなみに日本は最長2年までで男女共に健康保険から育休手当も出る)
    ・保育園問題は日本と一緒。妊娠発覚時点で保活が必要らしいし、いい保育を受けたり、よいベビーシッターを雇うとかなりの額になるらしい。
    ・職場環境も超微妙…。
     (「従業員の柔軟な働き方」ではなく、柔軟なシフトに合わせて直前で従業員が割り当てられる、という企業側優位の理屈になってるサービス業もあるらしい。)
    などなど。

    読んでていろんな事例や企業の話がでてくるんですけど、ハイキャリアはもちろん、貧困層の方になればなるほど、ホントにヒドイ…。
    文化の違いはあるにせよ、こんな社会保障で、男女平等ランキングが49位ってのはホントにすごい。。。

    ちなみに男女平等ランキングは、経済・政治・教育・健康における男女格差を数値化したランキングらしいです。
    気になったので、純粋に日本とアメリカでどっちの方が子供をより多く産んでるかもついでに調べてみました。
    結果、アメリカの合計特殊出生率は、188ヵ国中129位で、日本は170位…。
    もし、日本の文化でアメリカのような社会保障レベルだったらと思うとゾッとする…。
    こんな環境でもたくましく子供を育てて働いてるアメリカのママ、マジですごい。。。


    あと、もうひとつ思ったのは、
    「国の文化の違いより、すぐとなりの人との文化の違いを埋める方が難しそう。」という点も読んでて感じました。
    すぐとなりの人ってのは、たとえば「男女」とか「バリキャリと専業主婦」とか「地方出身と都会出身」とか。
    どこの国でも存在する違いなんだけど、そういう身近なところでの違いのほうが、違いを乗り越えるのがすごく難しいな、と思ったんですよ。

    会社の同僚(中国の地方出身の方)と話をしたときに感じたんだけど、地方で育ったからこその肌感覚、みたいなのがすごく似てるように思ったことがありました。
    「地方で育ったからこその肌感覚」ってのは、たとえば、人との距離感とか、死生観とか、決まりごとに対する臨機応変さ(ユルさ)とか、そういう価値観の根っこの部分みたいなもの。
    地方出身の私には、「同じ日本の、都会で育った人」の感覚よりも、「違う国の、地方で育った人」のほうが、なんか根っこの部分が近いのかもしれない、と感じたんですよね。
    (別に都会育ちの人とはウマが合わないということではないです。ただ、「国境を越えて同じなんだ」と感じたというだけの話。念のため。)

    そういう、日常のコミュニケーションで感じてたことを、この本でも感じました。
    アメリカも、やはりケア(家事・育児・介護など)の中心は女性だし、女性・男性それぞれの葛藤と生きにくさ、仕事とケアに対する価値観の差、妻と夫の家事のポイントの違いなど、価値観の違いが表れる場面は日本と驚くほど同じ。正直「そこまで同じなの?!」とびっくりするほど。
    国の文化の違いってわかりやすい分、「あ、この国はこういう文化なんだ」と受け止めやすいし、価値観の差もお互いに認識して折り合いをつけやすいような気がします。それに対して、「同じ文化」とお互いに思い込んでる場合、その思い込みが邪魔して、互いに主張を曲げられなくなるんじゃないかな、と思いました。
    文化的に日本ほど男女の差がなさそうなアメリカでも同じ問題で悩んでるんだもの、文化や風土もプラスされた日本で、「競争」と「ケア」に同じくらいの価値を与えていけるようになるのは、すごーーーく難しいだろうなぁ…。



    ワタクシ的名文
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    いろいろな意味で、この運動はまだ道半ばといっていい。21世紀の曲がり角に立った今、女性だけでなく男性もステレオタイプや思い込みから解放されるべきだし、それが女性の前進につながるはずだ。つまり、これまでのさまざまな「常識」に疑問をなげかけなければならないということだ。何が大切か、それはなぜなのか、何をもって成功とするのか、何が幸福の源なのか、真の平等とはいったい何なのか?それを問うには、職場環境から、人生設計から、リーダーの在り方まで、すべてを考え直してみなければならない。
    私の理想とする社会は、すべての人に充実した働き方の機会が開かれている社会だ。もちろん、単に給料のいい仕事がしたいという人には、その道が開かれていればいい。ただし、仕事と同時に、家族や友人を愛し気遣う生き方が尊重され、そこから深い満足を得られるような社会であってほしい。この本が、そちらの方向に向かう助けになれば幸いだ。
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    著者がこの本を書いた理由です。
    私自身、この本を読んでて自分のなかにある「競争の方が価値が高い」という思い込みに気づかされました。
    自分の中に無意識にある、「マナー」や「思い込み」や「常識」の呪縛にそれぞれが気付いて、価値観の再構築が必要なんだろうと思います。



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    先ほどの3人の学者がコンサルティング会社の依頼で行った調査に話を戻そう。綿密な調査の結果、この会社では男性も女性も同じように仕事と家庭の両立に対するストレスをため込んでいたことが分かった。また、過去3年間に長時間労働が原因でこの会社を辞めた社員の割合は、男女ともに同じだった。この会社の人事の問題は性差にあったのではない。経営陣の思い込みは間違いだった。問題は企業文化にあったのだ。
    この会社の上層部は、3人の発見したことを認めなかった。組織全体の哲学をいちから見直せと言われたくなかったし、クライアントに過剰な期待を抱かせてやらなくていい仕事までやりすぎている(たとえば、クライアントが到底みきれないほどのパワポ資料を何百枚と作っていた)という指摘もいやがった。もしすべてを根本からやり直すとしたら、膨大な努力と自省が必要になってしまう。
    上層部が望んでいたのは、これが女性の仕事と家庭の両立の問題だと確認することだった。それが確認できれば、彼ら自身の行動や考え方を変えなくていい。皮肉にも、コンサルティング会社の経営陣は「証拠に基づく分析を拒絶」したのだった。
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    あるコンサルティング会社の上層部から依頼されて、著名な3人の学者がその会社の内情を調査したんだそうです。
    上層部としては、自分の会社で起きている問題を女性特有の問題として片づけたいという思惑があったみたいですが、調査した結果、男女の性差に違いはなく、企業文化が原因だとわかってしまいました。
    本来であれば、そこで調査結果を受け止めて、改善に努めるのがあるべき姿だし理想的。でも、その会社の上層部は、客観的かつ証拠に基づく分析結果を拒絶し、自分たちの都合のよい思い込みの方を優先したそうです。
    なぜ、客観的な事実を受け止められないのかというと、この例の場合のように「大事になりすぎるのが自分たちにとって都合が悪い」って場合もあるし、個人レベルだと「自分の思い込みや予想が外れたことを認めたくないプライド」の場合もあるんだろうと思います。
    こういうの読むと「上層部の人たち、かっこわるいなー」と思うけど、実際の会社組織で見れば、こういう人の方が多いんじゃないかと思います…。逆にそこでちゃんと調査結果を受け止めて、自分たちにとってはイタい対策を考えて、実行していける人ってのは、多くの組織において「空気読めない鼻つまみ者」になってしまってるんじゃないかと思う…。
    私だって、鼻つまみ者になるのはイヤなので、「明らかに違うな」って思っても黙ってることも多いですし。(とはいえ、世間一般でみれば、空気読まずに発言する方だとは思うけどwww)
    「思い込み」とか「上司に対する過度の忖度」は、日常の作業レベルでも多いにあるし、それらが「事実」以上に大事にされることはすごく多いと思うんですが、そういうところに切り込める勇気をみんなが少しずつでも持てるようになるといいな、と思いました。
    あと、そういう「切り込む」タイミングで、できるだけカドがたたず、お互いにwin-winであるようにアピールするための「論理的なストーリーの構築力」とか「伝える力」とか「交渉力」とか、もっと自分にほしいな~と思う。



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    なぜ働き方が硬直化しているのかといえば、家族を犠牲にして身を粉にして働いてトップに立った白人男性が、自分と同じような人間が一番優秀に違いないと思い込んでしまうからだ。だから、そんな上司は勤務時間を短縮したり、働き方を変えたり、しばらく仕事を休んだ方が成果が上がることをいくらデータで証明しても、全く信じないか、疑いの目を向けてしまう。
    法学者のジョアン・ウィリアムズはこの点をはっきりと厳しく指摘する。「休みが面倒だと思うような人生を過ごして、大好きだったおじさんの葬式にも出られず、子育てにも参加せず、長時間労働を賛美する文化で生きて来たら、死ぬほど仕事をしなくても成果は上がるなんてことは、どれほど統計で説明してもわからせることはできない」
    そうやってトップに上った多くの男性と少数の女性に、だから言わんこっちゃないと説教しても仕方がない。昔の社会の慣習にとらわれている彼らには、犠牲を払ってきたことを認めてあげて、子供たちの時代には違う世界を描くようお願いするほうがいい。
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    さっきの引用と同じですね。。。
    お偉い学者さんも「わからせることはできない」って言いきっちゃってるし、そこはもう理解してもらうのは難しいんだろうな~と考えると残念な気持ちになります…。
    できることとしては「犠牲を払ってきたことを認めてあげて、子供たちの時代には違う世界を描くようお願いする」ってことだと言ってるんですが、ただ、実際問題これも超難しいですよねぇ…。
    「犠牲を払ってきたことを認める」ってことはまぁできると思うんですよ。先駆者たちに対して、感謝の意を表明することもできると思う。
    でもさーー、そういうやり方で来た人って、結局、次世代にも同じ価値観を強制しようとしちゃうのさーー。そこは別モノとは見てくれないんすよ。なので、結局、衝突は発生するんだよねぇ…。
    自分が所属する小さい小さい組織(家族含む)でも、そういうのはしょっちゅうだし、自分だって、気付かないうちに我が子に古い価値観を植え付けてる部分があるだろうと思うし。。。



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    このようなケアの理想は、他の多くの分野の偉業と同じく、難しくもやりがいのあるものだ。実際、メイヤロフは、優れたケア提供者になるために必要な要素を上げていて、それは優れた社員や管理職に必要な資質とまったく同じものだった。彼が上げたのは、知識、忍耐力、順応力、正直さ、勇気、信頼、謙虚さ、そして希望だ。
    (中略)
    また、真の忍耐力とは、自分でなにかを解決しようとしている人たちに「ある程度の回り道や試行錯誤を許すこと」でもある。この姿勢が、無駄な時間に見えて実は、成長に必要な「遊び」の部分なのだとメイヤロフは言う。グーグルも同じことを言っている。だから、レゴや卓球台やスクーターやおもちゃがオフィスのあちこちに置かれているのだ。
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    ホリエモンがちょっと前に保育士の給与問題について発言してましたけど、今の社会では、「ケア」は誰でもできる(とみんな思い込んでる)もの、「競争」は特殊スキルを持つ人ほど価値が高く優秀なもの、という思い込みがあります。社会の構造もそういうふうになっていて、ケアの仕事(介護ビジネス、教育ビジネス、保育ビジネスなど)はだいたい薄給だし、「競争」の仕事(いわゆるホワイトカラーな会社員とか)は給与もそれなりにいい。その考え方と構造を変えていきたいね、って作者は言ってるわけですが、この優れたケアの資質って、ほんとその通りだなーと思って。
    仕事で後輩をどう育成するか考えたことは、その後の子育てに確実に活用できてるし、子育てで得られる忍耐力とか順応力も、やっぱり仕事に活かされてるな、とよく思います。
    だから、子供を育ててることが不利にならずに、むしろ子供を育てた期間があることを堂々と履歴書に書いてアピールできるような価値観の社会に変わってほしいな、と思います。


    感想、書ききれない。
    働く女性は共感しまくりだと思うので読んでほしいし、働いてない女性も共感しまくりなので読んでほしいし、家庭と仕事の両立に苦しむ男性も「そうなんだよ」と思うところが多々あると思うので読んでほしいし、古い価値観のおじさんおばさんにも読んでほしい。
    オススメです!!!

  • 結局自分は何が大切なのか。仕事?家庭?両方というのが難しいこと、男性と女性のダブルスタンダードが確立されてしまっている世の中で、育児や介護をしながら働くことについて、価値観と向き合いながら読んだ。

  • プリンストン大学の教授である著者のアン=マリー・スローターは、仕事に打ち込んでいれば、女性でもキャリアも家族もすべてを手に入れることができると考えて生きてきた。しかし、オバマ政権で国務省の幹部に就任し、2年間ワシントンでの単身赴任生活を送った後、息子たちと一緒に過ごすため国務省を退職。家族と過ごしたいというのは自分の選択なのに、キャリアを諦めた女性という目で見られることに衝撃を受けた著者が、仕事と家庭のあいだで悩むすべての人に贈る本。

    中心となる著者の主張は、現代の社会では「競争」に重きがおかれていて、子育てや介護といった「ケア」の価値が軽んじられているが、「ケア」にも高い価値を与え、「ケア」の仕事に従事する人にも相応の給与や社会評価を与える必要があるということ。

    本の中では、上記の主張のほかに、多くの人が何となく信じている母親神話や女性神話の信ぴょう性も論じている。以下、特に共感したものを箇条書きでメモ。

    ●例えば、必死に仕事に打ち込んでいれば、すべてを手に入れることができるという神話。しかし、多くの組織において体制そのものが時代遅れで間違っており、例えば、弁護士やビジネスマンは24時間365日メールに応えるのが当たり前。このような社会では仕事と家庭の両方を手に入れることは不可能。これが変われば、女性だけでなくすべての人によりよい社会が実現できるはず。

    ●二つ目は、協力的な相手と結婚すれば、すべてを手に入れることができるという神話。しかし育児・家事の分担はフィフティーフィフティーでは足りない。全てを仕事につぎ込むには、専業主夫の夫を持ち百パーセントの育児・家事をやってもらうことが必要。多くの男性の企業幹部は、そのようにして仕事に打ち込んできた。一方で、たとえ夫が専業主夫になってくれたとしても、女性自身がキャリアの成功と家族と過ごす時間とを天秤にかけるようになり、仕事だけに打ち込むことに心から満足できるのかは疑問。

    ●また、柔軟な働き方が解決策になるという思い込み。実際には、制度があっても使っている人が少ないことが多い。また、制度があっても実際に使うと仕事熱心ではないと思われ、その後の出世コースからは外される。

    ●誰よりも長時間働く人が一番仕事ができるというのも多くの組織で信じられている誤った神話。実際にやり遂げた仕事の質と速さが働いた時間より重要。一方で、一刻を争う仕事や締め切りのある仕事は多いし、常に現場にいなくてはできない仕事もたくさんあるのは事実。それを踏まえれば、キャリアをいくつかのフェーズに分け、いつでもどこにでも出張できて、自由に長時間労働ができる期間と、それができない期間を設けるのが良い。そして、もちろん計画どおりにいくとは限らないが、仕事に百パーセント没頭したい時期と家族の世話に時間を使いたい時期とを、できるだけ早いうちに見通しておいた方がいい。

    幼い子供を抱えて働く身としては、共感する部分が非常に多かった。子供との時間を大切にしながら、24時間365日迅速な応答を求められる仕事をするのは無理。また、夫婦で公平に育児・家事を分担しても、専業主婦の妻を持つ男性程には仕事に時間を割けないというのも、当たり前だが本書で読んで初めて気づいた。

    反省しなければと思ったのは、男性よりも女性の方が家事が得意だと女性たち自身が考えているという点。私もつい家事のやり方を細かく指示したくなってしまうが、任せると決めたら夫のやり方に任せる必要がある。仕事でやり方を任されずにマイクロマネージされることを想像するとぞっとするが、それを夫にはやってしまっているということ。掃除の仕方とか、服の選び方とか、いろいろ言いたくなってしまうことはあるが、ぐっと我慢しよう。

  • 邦題でかなり損をしている。いわゆる女性活躍の本ではなく、その先にある真の男女平等を目指す本。仕事と家庭の問題を「女性個人の問題」ではなく、「ケア(育児や介護など)と社会の問題」という社会全体の問題としている。■それにしてもアメリカの福祉行政はかなりヒドイみたい。まともな産休もなく手頃な保育所もない。それでも働かないとやっていけない人たち。ワークライフバランスなんて「裕福な白人」の話。■そもそも「ワーク」と「ライフ」なんて天秤にかけるものではない気がしてきた。ほとんどの人にとって「ワーク」は収入を得るための手段であり、「ライフ」の一部でしかない。衣食住を整え、他人の世話をし、余暇を楽しむ。生活のためには働かないといけないけど、そこの価値観は逆転しないように気をつけたい。■結構なボリュームのある本だけど、内容は同じことの繰り返し。最後のQAは詭弁になっている部分も多く、著者自身も迷いや葛藤の中にいることが読み取れて興味深い。

  • 仕事と家庭をもつ女性が無理なくそれらを両立させるために、個人レベルまたは社会レベルでどのような考え方を取るべきかの指南本。著者は社会的立場にかかかわらず女性が家庭と仕事のバランスをとるための(または一方のみを追求するほうがその人にとって幸せであればそれも肯定している)様々な方策を提示しており参考になる。
    ただ、個人的には家庭の問題にまだ直面していないため実感が湧きづらく、また例として出てくる女性達(著者も含め)があまりにもハイキャリアゆえ自分の立場であればどうするか想像しがたいこともあり、理想論を並べている印象が否めない点はあった。
    しかしながら、この問題は女性ばかりがバランスよく生きることを求められるべきではなく、男性も家庭と仕事の双方で自分らしい生き方を選べる社会構造が問題全体の解決に必要と指摘している点は共感がもてた。

  • プリンストン大学の教授でオバマ政権で国務省の幹部に就任したアン=マリー・スローターは仕事と家庭の両立の中で激しく葛藤した結果、家庭を選択した。仕事と家庭の両立は女性の問題ではなく、競争と比べケアの価値が低く捉えられている社会の問題だとし、ケアの重要性を説いている。ケアの価値が競争にと同じくらいに上がれば、育児・介護に費やした期間・培った能力がキャリアとしてカウントされるようになり、将来的な経済的価値となる。
    共感できる箇所が多く心が救われる点も多かったが、一方でケアより競争を上に置く自身の歪んだ価値観をまざまざと感じ自省することも多かった。
    ことある度に読み返したい、自身にとって価値ある一冊となった。

    <印象に残ったこと>
    ・自分が家にいれば子供や親や夫の成功を助けられると知りながら、長い会議に付き合わされたり、毎日遅くまで残業したらやしていると、わざわざ家族との時間を犠牲にして自分自身を否定しているような気持ちになってしまう。自分の中の身勝手な夢のために愛する人の幸せを損なっているような、そんな気持ちになるのだ。
    ・実際のところ、人生はそれほど自分次第でもない。
    ・重要なのは、どのあたりが限界かを予期することだ。それまでは仕事と家庭を両立させて充実した生活を送っていても、ある時点を超えるとそれを続けられなくなってしまうものだ。
    ・家庭の世話が自分の肩にのしかかっているときに「リーン・イン」するには、それを支える強力な支援網と出来る限りの便宜を図ってくれる職場が必要だ。
    ・自分がトップに登るためには夫が仕事で上に昇らずに家庭を支えなければいけないとは認めたがらない。彼女たちは、夫が自分より仕事で成功できないと嫌なのだ。
    ・母性のキャリアの綱引き。引っ張られる原因は義務感ではなく、欲求なのだ。
    ・母親業というのはなによりも難しいと感じているという。それは罪の意識があるからだ。
    ・いわゆる「女性の問題」の解決策は、女性を変えるということではありませんし、女性を役員に引き上げたり、人脈作りのイベントに女性を招いたりしても、何にもなりません。組織を変えることが必要なのです。多様なスキルと長所を認め、それを目に見えるかたちで計り、それに従って見返りを与えることが必要です。(ワンダーウーマン デボラ・スパー)
    ・若い人たちが問うべきなのは、フレックス制度を使った社員のどのくらいがトップに昇っているか、だ。
    ・なぜ働き方が硬直化しているのかと言えば、家族を犠牲にして身を粉にしてはたらいてトップに立った白人男性が、自分と同じような人間がいちばん優秀に違いないと思い込んでしまうからだ。
    ・ケアするということは、お世話される人に人生を楽しんでもらい、その人がその時点でできる力を最大限に引き出すことだ。そんな「ケア」には知識と経験が欠かせない。
    ・ケアの本質は誰かの成長を助け、その人の可能性を自覚させることだ。
    ・優れたケア提供者になるために必要な要素は、知識・忍耐力・順応力・正直さ・勇気・信頼・謙虚さ・希望。これは優れた管理職や社員に必要な能力。
    ・男性と同じように女性もまた男性らしさが何かを決めている。男性にかわって欲しければ、女性は新しい男性像を尊ぶべきだ。
    ・今の時代の本物の革命とは、「家庭を女性のなわばりと見るのをやめて、職場と同じように男女両方が活躍する場と見ること」
    ・平等な社会実現に向けてのアクション
    →話し方を変える、ダブルスタンダードを変える、キャリアプランをたてる、職場改革、ケアする人に投資する

  • リーン イン(lean in)するか(*)、辞めるか、という2つ以外の選択肢について。

    (*)「LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲 (日経ビジネス人文庫)」(シェリル・サンドバーグ)(2018/10/02)

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著者プロフィール

プリンストン大学教授。クリントン国務長官時代の国務省で要職を務めるが,育児のために辞職。その時の思いを綴った「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」が全米中で議論を呼ぶ。

「2017年 『仕事と家庭は両立できない?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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