デジタルエコノミーの罠

  • NTT出版
3.56
  • (2)
  • (6)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 135
感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757123779

作品紹介・あらすじ

「インターネットは平等」はすべて幻想だ。?
インターネットは、メディアの独占を不可能にすることになっていた。しかし、実際にもたらされたのは、その反対だ。GAFAは今では我々が費やす時間を支配し、「関心経済」からすべての利益をつかんでいる。なぜこうなったのか。「デジタルエコノミーの罠」は、この独占がどのように起こったかを膨大な実証データに基づき、徹底的に論証する。小さなローカル・プレーヤーが不正操作されるゲームで生き残るために我々に何ができるのだろう?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  いや、すごい本だった。 この本は、日本のインターネットに早期から関わられてきた先輩に紹介いただいた本なのだが、ほんとにすごい本だった。 (巻末の)訳者解説(の一番初め)に以下の記載から始まる。『これはかなり壮絶な本だ。 インターネットをめぐる通俗的な常識とされるものの多くが、実証的に次々とくつがえされてしまうのだから』 さらに解説の後半にはこうある。『完全にノーマークの著者/研究者で、まさかこんな衝撃的な本だとは予想もしていなかった。ありがとうございます。』

     なまじっかな素人の感想をダラダラと述べるよりも、本書のエッセンスとなるような引用を多数開示したほうが読者の興味も沸くかもしれない。 しかしながら剛毅な、ハードな本だった。 通説がデータによってくつがえされていく、生半可な気持ちでは取り組めない本だった、という印象が強い。 

     大学のコンピューター室でのブラウザはNCSA Mosaicブラウザだったし、研究室で使っていたメーラーはDebianのmuleのMewだったし、機械工学科から2001年に企業へ就職しICT環境において20年が経過してきた自分であるからこそ、こうした書籍がもっと多くの方に読まれるよう、微力ながらもこうしたレビューをあげていきたいと思っている。 諸先輩方が絶賛していたことがよくわかる気がした。(ただし小職のような傍流な人間には、なかなか歯ごたえがあって難解ではあったが)

     以下、まずは帯から抜粋するとともに、いつものように本書から抜粋引用したい。
    =======
    ○帯より
    インターネットは一つではなく、二つある。私たちが日々使っている現実のインターネットと、理想化され、フィクション化され、通信と経済生活を民主化していると信じられているインターネットだ。現実のインターネットへの私たちの理解は、理想化されたインターネットへの根拠なき信仰により阻害されてきた。
    デジタルメディアは、多くの人の思い込みと異なり、小規模生産者に有利にはたらかない。お金、職員、データ、計算力、知的財産、固定した観衆をもつサイトが有利なのだ。
    ある企業が独占と見なされるのは「著しく持続的な市場支配力をもつ」場合だ。グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾン、アップルはすべて、認められた市場支配力の基準をはるかに上回る市場シェアをもっている。この集中は、経済、政治、ニュース、果ては国家安全保障について、どんな意味をもつだろうか? オンライン寡占は避けられないのか、それともインターネットの罠を逃れる方法はあるのだろうか? 本書が応えようとするのはこうした問題だ。


    ○P64
     台頭するオンラインニッチの初期段階はきわめてダイナミックだが、かつてはオープンだったデジタルニッチは、次々にロックインされる。粘着性のちょっとした差が、複利計算式で積み上がり、急激に拡大するのだ。
     ロックインは、ウェブが絶えず変わっているにも『かかわらず』起きるのではない。まさにそれがダイナミックに変わる『からこそ』生じる。ウェブトラフィックの進化的な、絶えず複合化する性質こそ、デジタルニッチがこれほど急激にロックインされる理由となる。

    ○P65
     本質的にオープンで、果てしなく競争的なインターネットという発想が、いまだにアメリカ通信政策の背後にある中心的な前提となっている。そして大量の学術研究もこれを基盤としている。だがこうした主張はますます現実と相容れない。『ほとんどのトラフィックが公共のバックボーンにまったく触れない』インターネットは、もはやピア・ツー・ピアのネットワークではないし、(FCC議長ホイラーが示唆したような)「活動をエッジに押しやる」ネットワークでもない。

    ○P160
    『大規模』サイトに比べて『小規模』サイトの粘着性を高める施策は、オンラインの集中を減らし、べき乗則の傾きをゆるくする。「イノベーション」だの「起業家精神」だの「実験性」だのの訴えは繰り返し行われたが、成功のはっきりした指標を生み出せずにいる。これに対して、ウェブトラフィックの動学と、サイトの相対的な粘着性に注目するほうが、先に進む方向性として有望そうだ。

    ○P203
    FCC議長・アジット・パイはこうした懸念を一蹴し、古いルールは「ニュースや分析を1日中、数えきれないほどの全国・地方ウェブサイトやポッドキャスト、ソーシャルメディアサイトから得ている世界を反映していない」と主張した。
     でもパイはまちがっている。デジタルニュースサイトが「数えきれないほど」あるというのは、はっきりまちがっているのだ。なぜわかるかといえば、『私たちがそれを数え切ったからだ。』 インターネットは地方メディア風景にはほとんどまったく新しい声を付け加えていないし、ほとんどの既存新聞やテレビ局を弱体化させた。いまやFCC指令はそれをさらに弱体化させようとしていて、その過程で全国の小市場に地方メディア独占を作り出そうとしている。

    ○P284
     本書を他とは一線を画するものにしているのは、その有無を言わさぬ裏付けだ。本書は理論モデルと実証データの両方を使って、なぜ各種のインターネット平等化議論がすべて幻想にすぎないのかを示してくれる。
    =======

  • インターネットが真に自由をもたらすフリーカルチャーの源泉である、というような言説は既に幻想になって久しい。にも関わらず、幻想にしがみつきたい愚者が未だに残るのはなぜだろうか。本書はそうした愚者をマシンガンで撃ち抜くかの如く、そうした幻想を実際のインターネットトラフィックのデータや、それを元にしたモデルに基づくシミュレーションで反駁する。

    本書の結論は極めてシンプルである。インターネットエコノミーは、多額のデータセンタやソフトウェアへの投資によって人間が持つ有限の時間やアテンションを独占する。それは物理的な工場を運営するのと同じような規模の経済によって成立する、というものである。

    本書の後半は、そうした”関心(アテンション)の経済”において、新聞における地域紙のようなローカルメディアがどのように生き残るか、という点にフォーカスがあたっている。その現実的な処方箋は、
    ・とにかく移気なユーザのトラフィックを呼び込むためには、サイト表示の速度を改善すべし。改善すべし!
    ・サイトの更新頻度を加速せよ。一つのコンテンツの文章量を短くして、それなりの質のコンテンツを量産すべし。量産すべし!
    というものである。

    その点で、本書は死に体にある日本の新聞業界の人間にこそ読んで欲しいと思う。

  • 図書館で。

    関心経済 アテンションエコノミーの本。
    関心をいかにお金に変えるか。

    傾いた土俵。インターネットが平等。どんな会社にもチャンスがあるというのは大ウソ。規模の経済がとても働きやすい。ネットワーク効果、アーキテクチャの優位性、デザインの優位性、広告とブランディング、利用者の学習、経路依存とロックイン。

    パーソナル化。探す費用と手間。ネットフリックスとコンテンツ推薦 エコーチェンバー、フィルターバブルはそんなにない。多様性も大事。グーグルニュース。内容に基づく推薦・協働フィルタリングの推薦。ヤフーと行動ターゲティング。推薦システムと政治ターゲティング。ケンブリッジアナリティカ。推薦技術は一部の組織を圧倒的に有利にする。
    推薦システム デジタル観衆を激増 大きなコンテンツ持つとこ有利 HWリソースと人材 データ持つとこ有利 パーソナル化はロックインを促進 観衆の集中。スコープの経済

  • #flier

  • 正直難しいので読むのは大変だけど、インターネットにおける情報、コンテンツの変化と有り様がよく分かる。良い悪いではなく、こういう原理でこうなったという説明なのでわかりやすい。読みやすくはないけど。

  • これはインターネット経済学の本だ(なので「デジタルエコノミー」とタイトルについているのだが)。
    「関心経済」という概念をそもそも知らなかったのだけど、言われてみると確かに、ウェブのコンテンツは直接的に金銭を集める代わりに人々の関心を集め、有限な時間を奪い合っているのだな。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

ジョージ・ワシントン大学のメディア・公共問題の准教授。受賞歴のある著書『The Myth of Digital Democracy』(プリンストン)がある。ワシントンDC在住。

「2020年 『デジタルエコノミーの罠』 で使われていた紹介文から引用しています。」

マシュー・ハインドマンの作品

デジタルエコノミーの罠を本棚に登録しているひと

ツイートする
×