移りゆく「教養」 (日本の〈現代〉 5)

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  • エヌティティ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757140967

作品紹介・あらすじ

ほんとうの「教養」とは何か?あらゆる人間活動に通じる「知恵」や「判断力」とはどういうものか。

感想・レビュー・書評

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  • 移りゆく「教養」 (日本の〈現代〉 (5))
    (和書)2012年10月13日 21:11
    2007 NTT出版 苅部 直


    教養について重要な思考がなされている。

    とても貴重な内容でした。

    僕の場合、ほとんど独学になっているし教養自体がそういった自分自身による読書などを通して培われる。だからぼくみたいに学校に不適合していたものも教養とそして政治というものの可能性を考えることができる。

    苅部さんの本を他にも読んでみたい。

  • 平易に教養概念の移ろいについてまとめられていてとても参考になった。

  • 大学生が本を読まなくなった、と言われて久しい。
    かく言う自分も「読まなくなった」世代の一員なわけですが、それじゃあ昔の学生はそんなに読書をしていたのか?
    いやすごい読書量だったみたいですね。
    特に戦前から戦中にかけての旧制高校の学生の「教養」に対する欲はハンパはなかったようです。
    当時の旧制高校生はどうしてそんなに貪欲に「教養」を求めたのか?
    戦後、時代を経るにつれて「教養崩壊」が生じたのは何故か?
    そもそも「教養」って何だっけ?
    「教養」を身につけるのは何の目的?身につけると何かいいことがあるの?
    …といったことを論じた本です。

    たいへん平易な文章なのですらすら読めてしまうのですが、しばらく読み進めると、今読んでいる内容が本全体の中でどの位置づけにあるのか分からなくなり、数ページ読み戻って論旨を確認しなくてはならないことがしばしばありました。
    おそらくそれは「教養」という概念の掴みどころの無さに起因するものなのでしょう。
    解りやすい明快なロジカルさで語るには、あまりにも向いていないテーマなのかもしれません。

    古代ギリシャ、大学制度が確立した近世ヨーロッパ、日本の戦前戦中、そして戦後…「教養」を巡る歴史が、和辻哲郎や三木清などの思想家の「教養」観の概説とともに語られ、さらに「教養」と「政治」、「教養」と「伝統」、「教養」と「教育」などいくつかのテーマに沿って考察が進められます。

    そして、もっとも印象に残ったのは、唐木順三の「自殺について」という文章を引用しながら、「教養」習得のダークサイドを暴いた以下の部分。

    <i>しかし同時にまた、『自殺について』のこの記述は、「教養」の内容をいかなるものととらえるにせよ、つねにつきまとってしまう、ある不吉さを指摘している。前に旧制高校生についてふれたように、「教養」は、実際にしばしば、他者の視線を意識し、他者と競争するなかで追求されてきた。「教養」を通じての人格の向上をめざす姿勢は、多面で、「教養」の程度が自分より低い者や、「教養」を欠く者に対する蔑視と背中あわせである。唐木の用いる「唯我独尊」や、他者と自己とに対する「虐待」といった表現は、そうした心理を指摘している。</i>

    いやぁこれはイタイところを突かれた、という感じがします。
    誰しもがおちいりがちな陥穽ですね。
    結局「教養」とは、それを身につけることが目的であるわけではない一方で、それによって何か利得をえようとするための手段でもない。
    個人がいかによく生き、そしてその結果としていかによい社会が実現されるか、そのための「基礎体力」みたいなものなのかもしれません。

  • 2310円購入2011-06-27

  • 「教養」とは何か。
    バックグラウンドや経緯なども交えているところがあったが、
    いささか冗長に感じた。
    政治に絡めて「教養」を展開することが多く、
    また、道徳といった言葉がよく出てくる。
    物語構想力という言葉が印象的だった。

    自由主義、民主主義の国で生まれた自分たちは
    物事を考え、行動を選択する権利がある。
    それを使うためにも他者、環境と関わるためのベースとなる
    自分の価値観を形成できる教育が必要だと感じた。

  • 4章の「政治的教養」という表現は新鮮だった。「政府の介入に対する学校教育の自律が、やたらに強調された結果、政治学者と教育学者までもが、おたがいの領域に関して口をはさまなくなった。」(P.106)ため、学校教育の場で議論されることが少なかったからだろう。反対に、「善良なる市民」や「市民科」といった語に象徴されるように、「市民」となるための教育概念はよく目にする。いずれも過去の思想をテクストを通じて追体験し、クリティカルに各人が思考することを求める点は共通しているのではないかと思った。ただこのことは、大学・学校教育の基本的な営みそのものを確認するに留まっているので、個人的にはもう一工夫して解釈したいところだ。

    政治学者が検討した教養教育の結論は、5章と終章に明確に述べられている。市民の責務を果たすための「政治リテラシー」の醸成が必要であり、そのためにはしかるべきテクストを「読む」ことの大切さを指摘している。

    南原とオルテガの大学論について、かなり紙幅を割いて引用している。ゆえに比較的多くの人々に受け入れられる論となっている印象を受けた。

  • 教養を身につける意味が少しわかった。知らないことが盛り沢山で面白かった。

  • 逗子図書館で読む。現代の大学生は、本を読まなくなったと指摘されています。しかし、著者のアンケート調査によると、1970年代以降、読書量に変化はないと指摘している。これは、僕の実感と一致しています。僕の大学時代と現在の学生の読書量は変わらないと思います。大学生は、本を読まないのです。もちろん、本を読む大学生もいます。これは、いつの時代も変わりません。ただし、大多数の学生は、本を読みません。これも、いつの時代も変わりません。

  • 津市津図書館----芸濃図書館。

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著者プロフィール

東京大学大学院法学政治学研究科教授

「2011年 『政治学をつかむ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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