サイボーグ・フィロソフィー――『攻殻機動隊』『スカイ・クロラ』をめぐって

著者 :
  • NTT出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757142008

作品紹介・あらすじ

テクノロジーは、私たちをどこに連れて行くのだろうか。私たちは、どのように変容するのだろう。サイボーグであるとは、何を意味するのか。人間であるとは、どのような意味なのだろう?人間と物とのあいだを浮遊するポスト・ヒューマンの哲学。

感想・レビュー・書評

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  • Fri, 01 May 2009

    NTT出版からいただきまして読みました.

    筆者はサイボーグの時代が近づいているとして,それがどうちかづいて来ていて,どういう事を引き起こすかを論じているが,テクノロジーの洞察とリアリティが多少現代的でないように思われる.

    はじまりはBMI(ブレインマシンインタフェース)の話やES細胞,iPS細胞などの話,ユビキタス,ウェアラブルの話などで,最近のポップな研究成果の話をする.川人先生のサルの脳活動からロボットを遠隔で動かす話とかもあって,なかなか,キャッチアップしてはることはしている.

    しかし,世の中にメディア通して過大にひろまってる話の中には研究者視点からすると
    「でも,そこはそのまま直線的には進化せんやろ」
    「それがスゴク見えるノは,トリックがあって・・・」
    「できてるように見えてるけど,実は・・」
    みたいな話がいろいろある.
    だから,そんな簡単にアニメの世界にとんでいくわけでもないし,飛ぶかどうかも未だ不明.


    でも,筆者はいってしますのです.もう,SFの世界へ.

    それで,スカイクロラと攻殻機動隊が出てきて,そこでのサイボーグと人格の問題の話が始まる.

    そこで,士郎正宗が何を予言していたか,だとか,なんだとか.
    話の流れ的には,それを来たるべき未来とみたててサイボーグ哲学をかたっているのだろうが,

    どうも,科学技術評論というよりかは,アニメ評論に感じてしまう.


    いやいや,そこに行く前にいろいろありますし,そんな純粋な形にならずに,多分もうちょっとひんまがりますよ.
    そして,あんまりBMIは使えない気がするの~
    どうだろう・・・・

  • ①VR、ユビキタス、BMI/BCI、ナノテク、細胞を創る技術など、先端テクノロジーを貫く発想の原理には「ビット化」がある。「ビット化」によって、対象の無再現の変形可能性が生まれる。
    ②脳は環境が変わればそれに柔軟に対応する「可塑性」を持っている。
    人間は、その脳の可塑性に基づいて、環境に適応するとともに、環境を改変せざるをえない。
    ③先端テクノロジーが環境を改変すれば、私たちもそれに呼応して変容せざるをえない。従って人間(脳)のサイボーグ化は不可避の過程である
    ④脳は自己完結した機構ではなく、身体を通して環境とたえず相互作用のループを描いている。こうした自然状態の<脳・身体・環境>の相互関係は、テクノロジーを通じて拡大・拡張され、ひいては個体性を超えるまでに変容されうる。
    ⑤テクノロジーを通じて人間は物質と接近・融合化(サイボーグ化)していくことで、人間と物との境界を曖昧化する存在、人間と物のあいだを浮遊し漂う存在へ変容していく。
    ⑥サイボーグの心とは、個体という枠組みが絶対的なものではなくなったところに成立するでろう、自分と対象(他者や物)、自分と環境のあいだの浮遊である。
    ⑦パターン化の能力をもつものとしての人間・最終的に宇宙で魂を満たす人間は、人間であるかもしれないが、つねに人間以外の者へと変質していかざるを得なくなる。

    ところどころぶっ飛んだ論理展開にも思えたが(カーツワイルとチオンピの説を用いた終盤など)、そもそも筆者は現実がSFのような世界に近づいていることを前提としているので、これもこれで一つの仮説として受け入れるべきなのか。

    それとは別に、3つの『攻殻』作品を次のように分析しているのは興味深い。
    ①士郎版は、サイボーグ草薙素子の自己への回帰、
    (荒巻素子といった草薙素子の亜種・同位体たちは、相互の差異はありつつも、究極的には、機械との融合体である草薙素子へと回収されていった)
    ②押井版は、素子の他者への素子の変容、
    (素子は人形遣いと融合することで、人間以外の他者になることを望み、イノセンスでは少女や鳥、ハダリとして存在することができる異化作用を可能にした)
    ③神山版は、自己と他者の混交的・融合的な媒介を描いている
    (自己は「消滅する媒介者」として消滅・変形することで、新たなるものを産み出し、変容し続ける。自己は変形されることで他者との混合体となる。自己と他者は混交し、互いを関係付け合い、互いに媒介し合う。)

  • 脳のリバースエンジニアリングとか、脳科学者の考えていることはすごい。そしてカーツワイルが出てくる。

  • この本の感想はとても150字では書ききれないのでブログに書く。副題につられて購入した人にはつまらない本だと思えてしまうだろう。ええい義体化はまだかと思ってる人、だから早く記憶を外部ハードディスクにダウンロードする方法をと思ってる人、マッドサイエンティスト万歳と思ってる人、士郎正宗版『攻殻機動隊』(本編よりも注釈を読むのが好きな人)、『攻殻機動隊2.0』が好きな人にオススメ。著者はかなりの押井守オタクと見た。

  • P28
    P38

  • 前期にお世話になった高橋先生の本です。レポート書くときに参考にしました。

  • ウェアラブルコンピュータやブレインマシン・インタフェース、また
    細胞を作る(ひいてはクローン技術などで生命を作る!)技術などが
    (普及してるかはともかく)技術的には現実のものとなっていて、
    その流れから行くと人類の不死や機械との融合(=サイボーグ化)は必至である、
    という論旨は
    なんか心情的には抵抗があっても、そうだろうなーとは思う。

  • 人間のサイボーグ化についての議論を
    今のうちに俎上に載せておきましょう
    という内容。攻殻機動隊を全部見た後に読んだ。
    脳の可塑性。環境に適応しようとする性質。
    環境が可変可能になってきたら必然的に
    サイボーグ化するのか。

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著者プロフィール

ニューチャーネットワークス代表取締役。1987年上智大学卒業。旭硝子株式会社で、材料の製品開発、新製品マーティング業務などに5年間携わった後、大手コンサルティング会社に転身。30歳で経営、事業コンサルティング会社、ニューチャーネットワークスを創業。化学、製薬、住宅、半導体、電機など、激変してきた日本の主要な製造業の事業戦略、技術開発、などに関わる。日本企業の弱点でもある、トップマネジメントの意思決定プロセスの変革を推進し、同時に短期で成果を出すことで組織体質を変革する「ブレークスループロジェクト」をこれまで500プロジェクト以上で実践し、「突き抜けた人と組織」づくりに貢献。「戦略理論は一流で当たり前、クライアントの生き延びようとする才能に火をつけ、成果を出す」ことをモットーに日々コンサルテーションを進めている。主な著書に『事業戦略計画のつくりかた』(PHP研究所)、『ネットワークアライアンス戦略』(共著、日経BP)など。

「2014年 『90日で絶対目標達成するリーダーになる方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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