アンデルセン、福祉を語る―女性・子ども・高齢者 (NTT出版ライブラリーレゾナント049) (NTT出版ライブラリーレゾナント 49)
- NTT出版 (2008年12月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757142084
作品紹介・あらすじ
福祉にかかる費用(年金や健康保険など)は、一般的に、削減すべき(あるいは抑えこむべき)コストだと考えられている。しかし、これが「投資」だとしたら?つまり、不慮の出来事から個人を守るだけでなく、個人の経済的自立を促すとともに、自分の運命を、自らの力で対処できるようになるための、「未来への投資」であるとしたら?社会学の権威であるアンデルセンが、こうした社会的・政治的革命の世界にあなたを誘います。
感想・レビュー・書評
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エスピン・アンデルセンの福祉国家論に「家族」という視点から分析した物になっている。
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原題は「福祉国家に関する三つのレッスン」といい、フランスの読者向けに書かれた本ということです。「三つのレッスン」とは、邦題にあるように、女性・子ども・高齢者に関するレッスンのことです。女性・子ども・高齢者のなかでは、特に、女性と子どもが重要と考えています。
「女性」に関しては、「脱家族化」という言葉が出てきます。「脱家族化」とは、これまで育児でも介護でも、家族に依存してきましたが、これらを、公共サービスや民営化にのせようという考え方です。女性の、将来にわたる就労を支援することで、収入が安定し「脱家族化」が進み、国にとっては税収が安定することにつながります。家族制度に依存してきた日本が、福祉の制度改革を行なうにあたって、この考え方は重要なのではないでしょうか。
子どもに関するポイントは、「社会的相続」による格差拡大をどう解消するか、という点です。所得再分配によって、貧困を最低限に抑えたとしても、貧しい家庭に生まれ育った子どもは、失業のリスクも高く、貧しい家庭の親となる可能性が高いということが示されています。「カネ」「時間投資」「文化」の三要素をうまく組み合わせることが提言されています。このうち、時間投資とは、親が子どものために教育的時間を割くこと、子どもの発育を促す活動に時間を投資することを意味しています。文化とは、家庭における学習環境や、子どもの学習能力を十分刺激し、支援することのできる親世代の能力を指します。
子育て、教育、介護、貧困対策などを社会的費用(ソーシャル・コスト)ととらえ、女性の就労や子どもの教育環境を整備することで社会全体に利益をもたらすと考えて、福祉制度による収支のバランスを考えていこうということだと思います。デンマーク、スウェーデンといった北欧と、イタリア、スペイン、アメリカとフランスの比較など、各国の福祉制度の違い、特色をとらえながら読みすすめることもできるでしょう。監修者による改題「アンデルセンの福祉国家論と家族政策論について」が理解を助けてくれます。 -
原題は『福祉国家に関する三つのレッスン』
フランスの一般者向けに語られた啓蒙書。
①女性の役割改革(家族の仕事の外部化)
②子どもの機会平等
③高齢者施策の公平性確保
「看護師」型福祉国家から「投資家」型福祉国家へ。 -
3つの文化指標の一つ、「家にある本の冊数」
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[ 内容 ]
福祉にかかる費用(年金や健康保険など)は、一般的に、削減すべき(あるいは抑えこむべき)コストだと考えられている。
しかし、これが「投資」だとしたら?
つまり、不慮の出来事から個人を守るだけでなく、個人の経済的自立を促すとともに、自分の運命を、自らの力で対処できるようになるための、「未来への投資」であるとしたら?
社会学の権威であるアンデルセンが、こうした社会的・政治的革命の世界にあなたを誘います。
[ 目次 ]
1 家族の変化と女性革命(女性が世界を変える;家族と福祉レジーム;新たな政策に課せられた挑戦;生涯にわたって女性の就労を支援する;男性のライフスタイルを女性化させる;国家、市場、各種団体による新たな役割分担)
2 子どもと機会平等(新たな挑戦;増加し続ける障壁―所得不平等の拡大;社会的相続というメカニズムを暴く;福祉国家を再考する;結論―家族の子どもへの投資を支援する)
3 高齢化と公平(福祉レジームと高齢者;世代間の公平;今日の子ども世代のための年金改革―世代間契約を超えて;年金改革は乳幼児から始めろ)
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