啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために

制作 : 栗原 百代 
  • NTT出版
4.15
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本棚登録 : 139
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757143197

作品紹介・あらすじ

いまや西洋世界は〈右翼と左翼〉ではなく、〈狂気と正気〉に分断されている。民主主義や市場経済といった近代社会の礎が危うくなってきている。状況を打開するためには、〈啓蒙思想〉の再起動が必要だ――旧来の啓蒙思想の行き詰まりを保守主義の再評価や認知科学・行動経済学などへの参照を通して反省し、理性と直感、知と情を束ねる新たな世界観を提示する。気鋭の哲学者の渾身の1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 認知バイアスのある人間たちがどうしたら理性的になれるのだろうか?という本。
    けっこうボリュームあるけど、現代社会について考えたいならとりあえず読んで損はないはずです。

  • ポピュリズムをどう乗り越えるのかについて、さまざまな本が出ているが、その中でも最良の部類ではないか。行動心理学や哲学、経済学をダイナミックに援用しながら、政治や経済、生活の場でなぜ理性が効きにくくなったのかを解いていく様は、ジャンルはちがうが「銃・病原菌・鉄」や「道徳感情はなぜ人を誤らせるのか」を思い起こさせる。

    感心したのは、ジョセフ・ヒースのバランス感覚。「理性」が保守とリベラルの間でどう受け取られてきたかの歴史に関する記述や、ある種の社会改造を批判しつつバークの保守主義を評価するくだりにそれが現れている。このバランス感覚こそが彼の言う「理性」の真骨頂なんだろうな。行動心理学の知見である「理性は怠け者で、認知バイアスは克服できない」という前提が最後までブレず、安易な結論に飛びついていないのも誠実。

  • ”真実”よりも”真実っぽさ”に訴えかけ、多くの支持者を獲得する劣化した現代のアメリカにおける政治に対し、本書で筆者は、理性の特徴をよく踏まえた上で、社会全体としてそれを活用する必要性を主張している。

    出版社で編集者として働く友人に、「現代社会のことを勉強するのにオススメの本を紹介して」とお願いしたら、紀伊国屋で渡されたのがこの本。

    果たして、私の冒頭の解釈で、本書の筆者の主張を捉えきれているのだろうか。

    邦訳の本文だけで400頁を超える大著だが、翻訳も素晴らしく、わりとテンポよく読める本。

  • 〈狂気/正気〉に分断されている現代社会
    正気を取り戻す「スロー・ポリティクス宣言」

    あれ?衆院選が見えてきたぞっ

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784757143197

  • 素晴らしい。ゲンロンβ2の書評[1]で知った。愛読書(★★★★★)に昇格する可能性高し。→した。

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    我々ほとんどの人が、人間の建築とデザインの産物であり完全に人工物の環境である「構築環境」 (built environment) に常に触れ合っている。

    人工的な環境下では、我々の直感的な問題解決戦略の多くが正しく働かない。現代社会の構築環境は巨大な「ナトリウム灯」のようなものである。その灯りの下では、物の色を正しく見ることができない。つまり、世界認識が歪められてしまう。

    ゆえに、よりよい環境を構築しなければならない。

    この問題意識は、まさに1970年代にリチャード・S・ワーマンが「情報建築家」(information architect)という言葉をつくって考えようとした問題と同じである。

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    教育の大部分は「基本的演算バイアス」(スタノヴィッチ)を抑制して「制御的処理方式」ーーつまり理性を発達させる試みである:

    > 脱工業化社会はますます脱文脈化された情報処理環境(保険申込書、HMO[健康維持機構]ルール、卒業要件、税法)を生み出しているから、現代社会の認知環境ではーーそして将来の環境でもーー基本的演算バイアスを個別に抑えこむ能力は重宝する。(スタノヴィッチ)

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    > 容易さは理性の敵である。

    分析的システム(理性)が働き始めるのは、直感的反応(TASS)を抑制されたときである。ゆえに、「直感的」なユーザーインタフェースが常に良いとは限らない。

    「窓」と「鏡」のメタファで言えば、直感的で自己帰属感の高い「窓」としてのUIは、ユーザーの直感的(動物的)反応を引き出す。ユーザーに理性的に振る舞わせるのは、内省的反応を引き出す「鏡」としてのUIのほうである。

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    > 問題を解決するためには、実際に問題を解決する必要がないときがある。これがクルージの極意だ。

    選択アーキテクチャの設計によるナッジは、人のセルフコントロールを必要とせず、認知バイアスを利用することによって認知バイアスという「バグ」を「クルージ」する。

    ポイントは、認知バイアスそのものを消したり抑制したりする必要がないということである。

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    > 社会制度をいかに構築すべきかと、テクノロジーをいかにデザインすべきかの類似を指摘することは有用だ。

    > 理想のインターフェイスは人間の認知バイアス、能力の限界、気まぐれさを完全に理解し、そのうえで人が直感的に正しいと、またいちばん簡単だと思うことをすることで望みの結果が得られるように設計される。

    > 社会制度もまったく同じ意味でユーザーフレンドリーであるべきだ。人間の弱みとバイアスを強みに変えなければならない。

    民間企業を中心として、人の認知バイアスを利用して搾取する社会制度は、ユーザホスタイル(敵対的)である(例:コンプガチャ)。公的部門も選択アーキテクチャに注意を払っておらず、ユーザーアンフレンドリーな社会制度がほとんどである。

    > 私たちはいつの日か、これ[iPad]と同じように苦労を要しない環境との調和を達成すべく、社会制度を改善するために同じような一致協力がなされることを夢見てもいいのかもしれない。理想は、私たちをもっとバカにではなく、もっと利口にする環境を生み出すための操作の対象のみならず、相互に作用しあう制度とも協働していく、そういう世界である。

    ユーザーインタフェースデザインの知識を社会制度設計に活かすことができるはずだ。野心的なインフォメーション・アーキテクトにとって広大なフロンティアが待っている。

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    [1] ゲンロンβ2 2016年5月13日号、人文的、あまりに人文的 #1、『啓蒙思想2.0――政治・経済・生活を正気に戻すために』『心は遺伝子の論理で決まるのか――二重過程モデルでみるヒトの合理性』、山本貴光&吉川浩満



    この著者の『ルールに従う』も良い。
    https://booklog.jp/users/zerobase/archives/1/4757142366

  • 原題:Enlightenment 2.0: Restoring to Our Politics, Our Economy, and Our Lives (HarperColins, 2014)
    著者:Joseph Heath(1967-)
    訳者:栗原百代
    イラストレーション:北村美紀
    ブックデザイン:鈴木成一デザイン室

    【内容紹介】
     現代社会は〈右翼/左翼〉ではなく、〈狂気/正気〉に分断されている。近代社会の礎となった啓蒙思想はどこに行ったのか? この状況を打開するために、いま考えなければならないことは? 理性と直感、知と情を束ねる新たな世界観の提示。
    http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002324

    【個人メモ】
    ・序章で、ハイト(Jonathan Haidt)の『社会はなぜ左と右にわかれるのか』についての言及がある。

    ・本書(pp.47-48)から抜き書き。
    《コンピュータのチェス差しプログラムの歴史は、この件についてすばらしい例を示している。しばしば新たな「人間対機械」の対戦が組まれ、あたかも人間の名誉が危機に瀕し、「機械の台頭」は近いかのように評されるのが常だ。しかし驚くべきは、コンピュータが勝つときもあることではなく、どんな人間でもチェスで、携帯電話[のソフト]にさえ勝てることだ(※19)。それはなぜか。チェスはとても難しく思える――だから「グランドマスター」には天才のオーラが漂っている――のだが、数学的には非常に単純なゲームである。実際のところ、有限確定的に解決できるという点で三目並べと同系列に属している※20)。つまり、チェスには唯一の正しい指し方が――いうなれば「解法」がある。このゲームをするのがおもしろいのは、もっぱら解法があまりにも大きかったり複雑なせいで誰にも引き出せないからだ(四歳児にとっての三目並べのように)。解法の一部が明らかになるのは対局も終盤に入ってからである。だからチェスを指すには、「もし自分がこうしたら相手はこう指す、ならば自分がこうすれば、相手はその手をとれなくなる」といった形で、たくさんの仮説的思考が要求される。これはまさに、人間にはとても難しく、コンピュータにはとてもやさしい種類の推論だ。結果として、・・・・》




    【目次】
    目次 [/]

    序章 頭vs心 003

    第1部 古い思考、新しい思考
    第1章 冷静な情熱 理性――その本質、起源、目的 033
    第2章 クルージの技法 あり合わせの材料から生まれた脳について 071
    第3章 文明の基本 保守主義がうまくいく場合 098
    第4章 直観が間違うとき そして、なぜまだ理性は必要か 126
    第5章 理路整然と考えるのは難しい 新しい啓蒙思想の落とし穴と課題 148

    第2部 不合理の時代
    第6章 世界は正気をなくしたか ……それとも私だけ? 185
    第7章 ウイルス社会 心の有害ソフト 213
    第8章 「ワインと血を滴らせて」 現代左派の理屈嫌い 242
    第9章 フォレスト、走って! 常識保守主義の台頭 272

    第3部 正気を取り戻す
    第10章 砲火には砲火を あるいは、なぜブタと闘うべきではないのか 303
    第11章 もっとよく考えろ! その他の啓蒙思想からの無益な助言 329
    第12章 精神的環境を守る 選択アーキテクチャー再考 347
    第13章 正気の世界への小さな一歩 スロー・ポリティクス宣言 379

    エピローグ 406

    謝辞 [412-411]
    原注 [415-463]
    訳者あとがき(二〇一四年九月 栗原百代) [464-467]
    索引 [468-488]

  • 『反逆の神話』とあわせて今年2014のNo.1の本かな。

  • 悪くはないけど、読んでも読んでも終らない感じのする本。

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著者プロフィール

1967年カナダ生まれ。トロント大学教授(哲学・公共政策・ガバナンス)。著書に『ルールに従う』、『資本主義が嫌いな人のための経済学』などが、共著書に『反逆の神話』(すべてNTT出版)などがある。

「2014年 『啓蒙思想2.0』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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