反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

制作 : 栗原 百代 
  • NTT出版
3.96
  • (10)
  • (8)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 201
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757143203

作品紹介・あらすじ

反体制パンク・ロッカーはなぜ自殺したか?/左翼活動家のロフトはブルジョワに大人気?/反文明批評、反消費主義は新しい市場を生むだけ?/マルクスの誤謬、ヴェブレンの慧眼/環境問題をユートピア思想ではなく制度設計で解決――。 異色の哲学者ヒースとポッターのコンビが、反体制派の論理的な破綻を徹底的に暴く!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 経済学・哲学の専門家が、カウンター・カルチャーの社会的経済的役割に疑問を投げかける好著。ヒッピー文化に端を発する芸術および消費主義批判論者の事例を豊富に引用するポップな文体はあくまで読みやすく、形而上的なまでに高い志のために勢い余って具体的な問題解決を拒否してしまいがちな反逆者たちの姿を浮き彫りにしていく。「そりゃ無いんじゃないの? 自分がやってることをよく見てみなよ」と。

    反逆、革命、カウンター、クール、オルタナティブといった価値軸は二十世紀後半の消費主義を破壊するのではなく、より多くの浪費を先導する役割しか果たして来なかったことを明らかにしていくあたり、胸がすく……と言いたいところだが、アップル製品を持って自転車に乗ってルー・リードを聞いているといったようなワタクシの如き典型的うすらカウ・カル野郎には耳の痛くなることがまぁわんさと書いてある。その上どれも説得力があるんだからこれは困る。

    しかし本書はカウンター・カルチャー的嗜好を、あるいはリベラリズムを否定しているといった内容では決して無い。問題は(カウンター・カルチャーに特有のことではないが)先鋭化すればするほど「打ちてし止まん」的精神論に流れる傾向であって、根本的な解決を待望するあまり、現実的な対応策の思想的瑕疵をより華麗に突き刺せる論者が力を持ち、非効力的な振る舞いに終始する、という残念な状況を止めようとしているのである。このへんの原理主義化によって目的が見失われる風景は、(本書の扱う範疇を越えるが)戦中の挙国一致体制も戦後の民主主義体制も変わらないのではないかと個人的には思う。

    ある意味では、昨今世界中の先進国で問題になっているレイシズムやヘイトスピーチというのも、カウンター・カルチャー的反逆者の行動様式がたまたま右翼的な思想を持つ人々に水平遺伝して成立したのではないかと考えさせられる。中心となる思想はどうでも良くて、感情的なフラストレーションと行動様式が直結することをむしろ善とみなす悦楽的な批判不可能性がそこにはある。それは傍から見れば過激な選民思想のようではあるが、本人たちにとっては至って真面目な生存戦略なのだ。そしてそのような行動に走らせる強固な遺伝子を成立させたのは、二十世紀後半に起こった革命思想と大量消費社会の幸福な結婚であり、その後の五十年近い純粋培養である。

    「日本にはまともなリベラルが育っていない」という危機意識をお持ちの方には是非一読をおすすめしたい。少し比喩的な言い方が許されるなら、持続可能性の事は考えられても、それを支える経済力の特権性を認識することすら出来ないスノビきった人たちにはその太陽光パネルと大容量充電池でいっぱいのゼロエミッションユートピアでぜひ熟読してほしい。自分たちの生活は資源がたまたま許した試行の一つであって、モデルケースなんかでは全然ないことが理解できるはずである。比喩的に。

  • ふむ

  • メディア
    社会

  • 「カウンターカルチャーの反逆こそが消費真主義を新たに活気づけたことは、不思議でも何でもないだろう。」

  • 「カウンターカルチャーは世界をマシにしない」事を説いた名著。「カウンターカルチャーの反逆は、おそらくほかのどの運動よりも多くの変人たちを引き寄せるのに、そのくせ、いざやって来たときに対処する準備がろくにできてない」など、嫌になるほど頭を縦に振りたくなるパンチラインが山ほど出てくる。

  • 少なからずショックを受けることになると同時に、何かが確実にオーバーライトされる。文章はとても読みやすいが、スラスラとは読めない。一々、ひっかかってくる。聞き捨てならない内容だからだ。反逆者のジレンマをズバリといったところ。これは体制の手先ということではない。本当に大切なことはなんなのかを冷静に考える材料を提供してくれる。

  • 原題:THE REBEL SELL: Why the Culture Can’t be Jammed Capstone
    著者:Joseph Heath
    著者:Andrew Potter
    訳者:栗原百代

    【感想】
     かつては反抗の幟にもなっていたサブカルチャーの現在への鋭い指摘。事例はほぼアメリカですが、特殊合衆国的ではありません。
     知り合い〔&知り合いではない〕のサブカル男子/女子が「こんな本認めない!」的な沸騰をするのは幾度か〔※各一度〕見ました。

    【目次】
    目次 [/]
    謝辞 [003-004]

    序章 005
    反逆者が履くナイキ/『マトリックス」を読み解く/カウンターカルチャーの快楽主義

    第1章 カウンターカルチャーの誕生 019
    誰がカート・コバーンを殺したのか/反逆思想の系譜/カール・マルクスの診断/ファシズムと大衆社会/ミルグラムの「アイヒマン実験」/「システムからの解放」という目的/「体制」はなぜ崩壊しないのか

    第2章 フロイト、カリフォルニアへ行く 045
    フロイトの登場/イド・自我・超自我/心の「圧力鍋」モデル/現代社会は「抑圧」する/マナーの起源/アメリカはファシズム社会か/『アメリカン・ビューティー』と『カラー・オブ・ハート』/ドラッグによる革命/パーティーのために闘え!

    第3章 ノーマルであること 077
    フェミニズムがもたらしたもの/アナーキズムの罠/集合行為問題の解決法/異議申し立てと逸脱の区別/フロイトvsホッブズ/フロイトvsホッブズ(その二)/日常の中の「ルール」/わがパンク体験

    第4章 自分が嫌いだ、だから買いたい 115
    反消費主義=大衆社会批判?/幸福のパラドックス/消費主義の本質/ボードリヤール『消費社会と神話の構造』/マルクスの恐慌論/ヴェブレンの洞察/消費主義の勝利は消費者のせい/都会の家はなぜ高い/「差異」としての消費/バーバリーがダサくなった理由/ナオミ・クラインのロフト

    第5章 過激な反逆 157
    ユナボマーのメッセージ/反体制暴動は正当化されるか/マイケル・ムーア『ボウリング・フォー・コロンバイン』/精神病と社会/「破壊」のブランド化/オルタナティブはつらいよ/消費主義を活性化するダウンシフト/お金のかかる「シンプルな生活」

    第6章 制服〔ユニフォーム〕と画一性〔ユニフォーミティ〕 187
    ブランドなしの「スタトレ」/制服は個性の放棄か/制服の機能/「全体的制服」をドレスダウン/軍隊の伊達男/反逆のファッション/イリイチ『脱学校の社会』/学校制服の復活/女子高で現地調査/なぜ消費主義が勝利したか

    第7章 地位の追求からクールの探求へ 217
    「クール」体験/クールとは何か/「ヒップとスクエア」/アメリカの階級制/ブルジョワでボヘミアン/クリエイティブ・クラスの台頭/クールこそ資本主義の活力源/広告は意外に効果なし?/どうすれば効くのか/ブランドの役割/選好とアイデンティティ/流行の構造/広告競争のなくし方

    第8章 コカ・コーラ化 255
    レヴイットタウン/現代の建売住宅事情/画一化の良し悪し/みんなが好きなものはあまり変わらない/少数者の好みが高くつく理由/「マクドナルド化」批判の落とし穴/グローバル化と多様性/反グローバル化運動の誤謬

    第9章 ありがとう、インド 289
    自己発見としてのエキゾチシズム/エキゾチシズムの系譜/ボランタリー・シンプリシティ/東洋と西洋/香港体験記/カウンターカルチャーは「禅」がお好き/先住民は「自然」か/「本物らしさ」の追求/胡同を歩く/旅行者の自己満足/ツーリズムと出張/代替医療の歴史/代替医療はなぜ効かない

    第10章 宇宙船地球号 327
    サイクリストの反乱/テクノロジー批判/「スモール・イズ・ビューティフル」/適正技術とは何か/サイバースペースの自由/スローフード運動/ディープエコロジー/環境問題の正しい解決法

    結論 365
    ファシズムのトラウマ/反逆商売/多元的な価値の問題/市場による解決と問題点/反グローバル運動の陥穽――ナオミ・クラインを批判する/そして何が必要なのか

    後記 383
    倫理的消費について/簡単な「解決策」などない/左派は文化的政治をやめよ/カウンターカルチャーの重罪/資本主義の評価/僕らはマイクロソフトの回し者?

    原注 [400-414]
    訳者あとがき(二〇一四年八月 訳者) [415-418]
    読書案内 [419-420]
    索引 [422-433]

  • ~感想文~
    クソっ、また、カツマ級にくだらない本に3,000円近くつかってしまった。
    相変わらずのパッパラパーなあたし。
    こんなことなら、キャラメルフラペチーノでチーズケーキ流し込みながら、ぶくぶく太ってトランプに一票投じるほうがマシだ!
    (植民地の消費者には参政権はない。)

    前向きに考えよう。一回り前の時代なら楽しめたのだ、きっと。
    学校の授業のようで、古典の引用や、サブカル与太話は細かいトコまで面白そうに書いてあり、ソファでぺらぺらと読むにはよい。
    原著は2004年の古い本、かつ、10年~と年数に耐えられる内容ではない。20世紀の消費文化とサブカル解説のまとめ、としてもかなり恣意的なので、どうかな..。原タイトル"THE REBEL SELL"。邦題の「神話」は、ボードリヤール汲んでるのだろうけど、いいすぎ。この本を読んでると2010年代のいまは、お金でcoolな階級を買う(the old good daysよかった)時代は、もう過ぎてしまったんだろうね、と思う。

    単純な話を「反抗っても、ただの消費で力奪われてる」という切り口にこだわるあまり、捻じ曲げ、ムリクリ感が漂う。抑圧的寛容に取り込まれぬよう(?)、注意深くなりすぎた体裁をとりつつ、これしかできなかったのだろう。陳腐になること、「反逆」のクリシェを恐れ、フレッシュ(ラディカルやらクールというよりも)であろうとするあまり、つまらないところにしか着地できなかった感。(ここでの「反逆」世代50~60代あたりに対する、単なる老人いじりな様相も。)極端な結論に持ち込むために、都合のよい部分をピックし、捻じ曲げ、関連付けさせる。サブカルに親でも殺されたか、恋人を奪われたのか、というほどに。

    よって、ダサくて暗い…。
    (カバー袖の斜に構えたphotoに、衝撃を受けている場合ではない。)
    こんな中年にならないでおこう、と、若者やOiパンク老人へ「本を捨て、町に出よー」を呼びかける本ともいえる。
    本書にて、いい恋できなかった青春…のようなことがフェミニズムのせいにされているところがあるのだが、こういう性質だからよい相手にめぐりあえなかったのか、正直モテなかったからリア充だらけぽいカウンターカルチャーに対して恨みを抱いてしまったのだろうか。(マリアさま、どうか世界中に散らばるこじらせ青年をお救いください…。)

    2000年代以降のネットカルチャーのベースになっているのは、体制により消費文化にすぐコンバージョンされるばかりでハシにも棒にもかからなかったとここでされている、ヒッピーカルチャーやアナーキズムに因るところが大きい。当たり前になって空気のように感じる自由は、あのだめでぐうたらなカウンターカルチャーによるものが多々あるだろう。ここにある閉塞は、前世紀のものとは種がまた異なる。裏の裏を掻くようなテクニックは耳掻き一杯ぐらい必要かもしれないけれど、ストレートでバカな衝動が失速し、自滅しない程度でいいだろう。

    『資本主義が嫌いな人のための…』で堂々と破たんしてるアイデアを開陳していたが、こちらでも気の毒になるほどの半可通節が、あちらこちらでとどろいていた。

    そして、ちゃんとお金を払い、2冊も目を通し、私は、また人生を消耗し、消費人生をまっとうしている。

    ..彼の言い分が好みの人同士で、うなづきあうための本なのだろう。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784757143203

  • カナダの哲学者と作家によるカウンターカルチャーを契機にした消費主義だったりグローバリズムだったりについてまとめた大著。
    価値観が相対化して、絶対的なものがない中で、善く生きるとは、というか、ベターを選択していくための数多くの視点からの分析と、抜本的な唯一の解の不在を自覚した物言い。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1967年カナダ生まれ。トロント大学教授(哲学・公共政策・ガバナンス)。著書に『ルールに従う』、『資本主義が嫌いな人のための経済学』などが、共著書に『反逆の神話』(すべてNTT出版)などがある。

「2014年 『啓蒙思想2.0』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョセフ・ヒースの作品

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったかを本棚に登録しているひと

ツイートする