- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757143500
作品紹介・あらすじ
日本政治思想史の第一人者として、明晰な思索とやわらかな筆致に定評のある著者が、和辻哲郎『日本倫理思想史』と丸山眞男『日本の思想』を導き手としながら、古代から近代に至る流れの中でこの国の思想を一望し、近代以降、日本思想史上の名著がどのように解釈されてきたかを振り返る。思想の世界に関心を抱いたけれど、何から読み始めたらわからない、そんな読者のための案内役となることを願って書かれた。
感想・レビュー・書評
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苅部直氏(1965年~)は、日本政治思想史を専門とする政治学者。
本書は、2014年に朝日カルチャーセンターで行われた講義「日本思想史への招待」をベースに書籍化されたもの。
本書のアプローチは、著者が「まえがき」で記しているように、多くの思想についてその要点を書き並べた「概観」や「通史」でも、思想史学という学問を身に付けるための「入門」でもなく、日本思想史の上で重要なテーマを時代順に並べ、それぞれに関して複数の読み方を提示して「道案内」をするもので、主に、二十世紀の高名な思想家である和辻哲郎、丸山眞男の二人の解釈を参考としている。
取り上げられたテーマは以下である。
◆日本神話(『古事記』、『日本書紀』)
◆北畠親房『神皇正統記』
◆武士の倫理・・・新渡戸稲造『武士道』、山本常朝『葉隠』
◆戦国時代のキリシタン
◆儒学(朱子学・陽明学)
◆古学・・・伊藤仁斎、荻生徂徠
◆国学思想・・・本居宣長・平田篤胤
◆明治維新と福沢諭吉
ボーダーレス化が進む現在、「日本の思想」を強く意識する機会は少なくなっているとはいえ、我々現代日本人の思考・行動様式の根底(の一部)に「日本の思想」があることは間違いなく、また、現在の日本の在り方に決定的な影響を与えている太平洋戦争に突き進んだ当時の日本社会において、「日本の思想」の解釈が戦争の是非を論じる上で極めて重要であったことも疑いようがないだろう。
予備知識の少ない私にとっては読み進みにくい部分もあったが、通読することによって、過去の日本思想の主なテーマと、近代になってそれらがどのように解釈されてきたのか(そして、それが近現代日本史にどのような影響を与えたのか)のイメージは掴めたように思う。
(2018年5月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本思想史のいくつかのテーマについて、たいへんわかりやすいことばでその魅力を論じている本です。
あつかわれているテーマは、記紀神話、『神皇正統記』、武士道、キリスト教、江戸時代の諸思想、明治維新などですが、たんにそれらのテーマについて著者自身の見方が示されているだけでなく、これまでの研究史についても目配りをおこない、日本思想史の重層性を初学者にもわかるように解説しているところに、本書の特色があるように思います。本居宣長のほか、和辻哲郎や津田左右吉、村岡典嗣、丸山眞男など、近代以降の日本思想史研究の稜線をかたちづくってきたといえる研究者たちの仕事を踏まえつつ、現代の研究が到達しつつあるあたらしい日本思想史像があざやかにえがき出されており、単なる概説にとどまらない魅力をもっているように感じました。 -
読了していないため、★4。
抜き書きをしたら予想外の量になったが、それは簡にして要を得ていたためと分かった。