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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757407817

作品紹介・あらすじ

柴田元幸が訪ねた、訊いた、そして翻訳した!作家が肉声(=英語)で語る「小説の作法」(村上春樹インタビューは日本語のみでCD未収録)。

感想・レビュー・書評

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  • 97年に放送大学で柴田先生を知り、以来一生追いつかないけど追いかけ続けている中で知った1冊。

    9人のうちほとんど読んだことがありません(村上春樹さえ…)。でも名前は知っている作家ばかりで、興味深く読みました。ピアソン、ダイベック、オースター。名前を唱えるだけで、ちょっとアメリカ文学通気どり(笑)でも、読んでない…

    カズオ・イシグロだけ、少し読んでいる。本書刊行時点での既刊では、日の名残り。
    わたしを離さないでの登場は、この翌年。さらにノーベル賞は、この13年後…感慨深い。
    信頼できない語り手…彼の作品の特徴として語られますが、私はあまり感じないで読んでいます。誰しも自分目線で物を見、語りがちだと思うので。

    村上春樹は、売れてるので苦手(笑)でもその創作の姿勢や自身の作品の解説というか、解釈は、一読書人として惹かれるものがありました。グローバルで認められる所以を垣間見たような気でおります。いつか手に取りたい…先にノーベル賞取ってください!

    読むだけで、図書館で3回借り直し。
    まだCDが聞けていない。どうしても聞きたいので、もう1回借りるかも。でも、どうしてもその声も聞きたくなる1冊です。

    追記∶聞けました!柴田先生の声は知っていましたが、全編英語で聴くのは初めて、当たり前なのですが、英語だ…(笑)イントロダクション、特に良かったです。
    その他の作家のみなさんも、イメージと違う声はなく、エキセントリックな話し方の方もなく、落ちついて聞けました。きっとインタビュアーのおかげですね。


  • 週末、地震のせいというのでもないだろうが、体調不良におちいり、ほぼ寝たきりの生活になった。寝たきりとはいっても、寝床の周りには読みかけの本が積み上げてあり、ラジオが置いてありと、寝ては読み、読んでは、ラジオを聴きながら眠り生活というのが適切な表現だ。

    CDプレーヤーをかけたら、前に入れっぱなしにしていた、柴田元幸のリチャード・パワーズとのインタビューが流れはじめた。柴田さんの英語はしっかりとしていてうまいなあ。天才パワーズの声も低めで、穏やかな声だ。「舞踏会へ向かう三人の農夫」について語っている。

    作曲家が自分の曲を歌う時の肉声の魅力があるのと同様、作家が、自分の言葉で、作品を書くという行為を語る言葉もかなり魅力的だ。

    柴田元幸という傑出した翻訳家による「ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち」は、柴田が行ったインタビューの日米対訳があり、インタビューが吹き込まれたCDが付いておりと至れり尽くせりだ。

    ポール・オースターの奥さんであるシリ・ハストヴェット、漫画家のアート・スピーゲルマン、南部的なT・Rピアソン、「シカゴ育ち」のスチュアート・ダイベック、リチャード・パワーズ、「体の贈り物」「家庭の医学」のレベッカ・ブラウン、日系の堂々たるイギリス作家のカズオ・イシグロ、ポール・オースターと村上春樹。

    柴田元幸という翻訳家(=読者)を経由して、日本の若い世代の作家が米国文学の良質な要素をどんどん吸収している。同伴者である村上春樹は、海外文学の文脈の中で、自分の作品を構築し、それが翻訳されることで、海外文学の若い世代へと影響を及ぼしていく。その幸福な円環を結ぶ重要な結節点が、柴田に代表される翻訳者の存在なのだろう。

    たとえば、シリ・ハストヴェットの詳細への志向性。

    「いろんなものが目に止まるから、とにかく書いて、書き直していくなかで、大事なディテールは残して、残りは削る。たぶんそれは、書いているときに、何もかもすごく細かく視覚化していて、それに、人の息とか匂いとかそういう細かいディテールが好きだから・・・」

    作家であることの快楽がここには描かれている。書くということの快楽にとらわれる人生が作家なのだ。

    『彼方』の中の素晴らしいフレーズ、「小説を書くのは、決して起きなかったことを思い出すようなものだ」(Writing fiction is like remembering what never happened)を柴田が指摘したのに対して。

    「決して起きなかったことを思い出す、なんてすごく変な考え方ですけど、小説を書いている実感にはぴったりなんです。私にとっては、ちゃんとしたものを書こうとするのは、何か失われた記憶を、うっすら覚えている出来事を探して脳の中をひっかきまわしているような感じなんです。実際、自分が使っているものは、虚構を作るための何らかの記憶ではないか、そうよく感じるんです。」

    T.R.ピアソンが紋切り型の小説の会話を批判しているこんな件。

    「でもね、現実の人間は、言いたいことをそのまま言いはしない。みんなそうしようと思っても、話はすれ違いの連続だ。君が僕に何か言う。僕はそれを部分的に誤解する、そして何かを言い返す。それは君が予期していた言葉ではなく、こうして二人とも話題からそれていく。あるいは、言いたい言葉を僕が重いつけなかったり、間違った言葉や表現を使ってしまったり・・・・その方がね、ずっと普通なんだよ。」

    カズオ・イシグロは自分の声を見つけるということをこう語る。

    「とにかく、自分の声を見つけなくちゃいけない。本物の作家になるというのは、本を出すかどうかなんてことではかならずしもなく、一定の技巧を身につけるということでもない。自分の声を見つけた時点で、人は本物の作家になるんだというわけです。それはつまり、書く文章に、その人にしかないものがあるということです。これならほかの人と間違えようがない。そういうものがあるということです。」

    最後に、インタビューした作家からも何度も、コメントが出ていた村上春樹は、

    次世代について何かを受け渡すということについて、独特な留保付きでこう語っている。

    「僕は実際には子どもはいないけど、いちおう読者がいて、僕の読者は若い人が多いですよね、で、上から何かを与えるというんじゃなくて、同じレベルで、何かを伝えたい、あるいは交換したい、という気持ちはけっこうあるんですよね。実際の子どもに対しては、そういうことはものすごく難しいと思うんだけど、フィクションを通してだと、そういうのはある程度可能なんですよね。」

    引用したい部分に満ちた、豊かなテキストだ。全文、英文も日本文も打ち込みたくなってしまう。結局、手に取り、読み、耳にすることを、いろんな人にすすめたくなる本だ。とくに、小説好きの人には。





    体調もあるけど、人間には、精神を冷やさなくてはならない時期というのがある。今のぼくは、そんな状態のようで、いくら眠っても、疲れが消えないのは、人生に対するスタンスが、疲弊しているからのようだ。そんな時には、作家たちの穏やかで低い(なぜか皆低い声だ)言葉は優しい。





    寝たり起きたりの生活の通奏低音として、このCDを流している。白昼夢の中に、ダイベックやブラウンが出てきて、僕に話しかけている。





    疲弊して固定化した精神部分を、彼らの声がもみほぐしてくれるような気がする。





    外は、夜来の雨が降っている。

  • 柴田元幸教授がアメリカの9人の実力ある作家に取材したインタビュー集。
    作家というものが、いかに思考し、いかに行動しているか、真摯に語られて行く。小説家になりたい人がいたら、勇気をもって読んでみて欲しい。
    私は本作を読んで、その創作姿勢というものに学ぶことが多かった。元論、オースター夫妻も登場している。
    柴田元幸教授の翻訳で読んで、ゆっくり考えて欲しい。
    私も作家になったのちに、本作を読み衝撃を受けた。
    是非、お勧めしたい。

  • CD聞いてるだけで読んでないけど、もう何年もずっと聞いている。
    英語は不得手なので何を言っているのかよくわからないけれども、、
    それぞれの作家の喋り方の特徴が顕著で面白い。
    そして柴田元幸の発音が耳障り良くて好き。声も。
    と言うわけで、音楽として、聴き続けてる。

  • p.2004/3/26

  • カズオイシグロ、村上春樹のインタビューをつまみ読み。村上春樹が影響を受けたアメリカ文学はカポーティ、フィッツジェラルド、アーヴィング、レイモンド・カーヴァー、カート・ヴォネガット、ブローティガンなど。翻訳でいろんなことを学んだと言う。村上春樹は、小説というものは、読者と作家との間だけだと煮詰まっちゃう。三者協議じゃなくちゃいけないという、「うなぎ説」。もしくは「コロッケ説」「カキフライ説」(笑)

  • 翻訳家・柴田元幸さんが作家へのインタビューをまとめた本。

    私は村上春樹さんのインタビューしか読んでいません(☆4つはそれに対する評価)。
    小説は三者協議、作家と読者との他にうなぎ(または「うなぎなるもの」)が必要、という話が面白かった。

    村上さん以外はすべて英語を母語とする作家でインタビューは対訳が掲載され、CDが2枚付属(村上さんのインタビューは未収録です)。
    リスニングの勉強にもなるし、ファンの人には好きな作家の肉声が聞ける貴重な本。

  • 村上春樹、リチャード・パワーズは、ちゃんと読んだ。アート・スピーゲルマンも、割と読んだ。他は斜め読み。

  • パワーズのインタビュー面白かった。

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