翻訳地獄へようこそ

著者 :
  • アルク
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本棚登録 : 120
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757430747

感想・レビュー・書評

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  • 先日、「誤訳も芸のうち」などと悪びれもせず堂々と言い切っている某翻訳家の本を読んだら、解釈と訳があまりにも気持ち悪くて大変にストレスがたまった。(「超訳」は芸のうちかもしれないと思うけど、誤訳は誤訳だろ、と言いたい。まあそのタイトルの本は読んでないけど)
    とにかく「口直ししたい!」との思いから、宮脇氏のこの本を、砂漠で水を求める遭難者のような激しい渇望感で手にしました。

    すばらしくおもしろかったです!!
    宮脇氏の本の中で、一番おもしろかった。
    口直しどころか、すごく幸せな気分になりました。というのも、全ページから、著者が読書や文学、もっと言えば、「知識そのもの」をいかに尊び愛しているかが伝わってきます。翻訳や英文解釈という技術的な解説もその愛がベースにあるので、表面的に終わらず奥深く掘り下げていて、そしてとってもおもしろい。

    また、この本は「語学好きのためのブックガイド」的側面もあって、そのラインナップが浅学な私などは聞いたこともないような本ばかりで、しかも全部おもしろそう。
    なんてことだ、全部は買えないし、読めない! どうしよう!なんて困ってしまう。

    一番印象に残ったのは次の部分。
    「イギリスの小説は、一見深刻そうな純文学でも、えぐいミステリでも、だいたいユーモア小説だと思っておけば間違いない。少なくとも、翻訳者から見れば、そういうことである」

    初めて英語の小説を英語のままで読んだとき、一番に感じたのが、「英語の表現って、いつもどこかしらちょっとユーモラスなんだな」ということ。私が英語の文章を読むのが好きなのも、理由はそこなんだと言ってもいいかもしれない。
    日本語という言語にはやや薄めの特性だからか、英語圏の人とのちょっとした会話においてもその違いを感じます。同じことを言うのにも、英語はクスっとくるような言い方をするというか。(日本語は逆に「しみじみとした表現」が得意だと思う)
    英文のおかしみが、翻訳で消えてしまう実例、「語順を変えるだけで、原文の味わいを損ねることがある」(held at bayの章)などは、特に興味深かったです。

  • 英語や翻訳には余り興味はないが、知らない世界で何かを得られるかと思い読んでみた。
    いろいろと苦労やこだわりがあり、翻訳に興味があるひとには面白いのではないかと思う。
    個人的に翻訳を深掘りしていこうとは思わなかったけれども、新しい視点を得ることができて参考になった。

  • おもしろかった。というより、勉強になった。誤訳やまずい翻訳をしてしまうときは、たいていもう一歩の踏み込みが足りない、文化の知識が足りないというのは中国語訳も同じ。ただ、自分が訳してると、これ、変じゃない?と立ち止まれないのも事実。感性なのか、経験なのか。
    それから、英語翻訳では参考書が豊富なのはうらやましい。The London EncyclopaediaとかWatching the Englishとか、中国語でもこんな本があったらなあと思う。

  • 翻訳に関する著作をいままでも何冊か読んでいる宮脇孝雄先生の、一番新しい翻訳エッセイ。翻訳をするうえで気をつけたいことやよくある誤訳などを例文をあげながら解説しています。

    こういう本はサラサラ読めてためになるけれど、サラサラ読んでしまってすぐに忘れてしまったりするのが残念。手元においてたびたび読み返すのが良いのだろうなぁ。

    こういうのを読むとまた翻訳やりたいなぁーって気持ちになる!

  • 「翻訳地獄」なんていうからどれだけ恐ろしいことが書かれているんだろうと恐る恐る読み進めて行ったが(笑)
    時に面白おかしく、時に厳しく、これまでの翻訳作品やご自身の翻訳についての考えを書かれていて、多方面から翻訳について考えてみる良い機会となった。
    紹介されている様々な種類の本も大変興味深い。是非とも読んでみたいと思う。

  • 簡単な英単語も誤って訳せば全く異なる意味の文章になってしまうのが翻訳のおもしろいところ。既刊の翻訳小説で見つかった誤訳と、宮脇さんの訳とを比べると、その違いは一目瞭然。cityに「英国における多くの大きな町で、大聖堂のある町」という意味があったり、英小説は「一見深刻そうな純文学でも、えぐいミステリでも、だいたいユーモア小説だと思っておけば間違いない」ことは初めて知りました。宮脇さんが紹介される翻訳関連の本はどれも面白そうで、読みたい本が一気に増えました。

    There is a trick to it.(それにはこつがある)

    voluptuous…something that is voluptuous gives you pleasure it looks, smells, or tastes good
    →感覚的に心地よいこと

    p49
    たとえば、ABCDの四つのものを並べて書くとき、
    A, B, C, and D
    と、最後から二番目のもの(ここではC)のあとに打つコンマのことをオックスフォード・コンマという。
    このコンマが目障りだと主張する人もいて、そういう人は、A, B, C and D
    と書く。

    p54
    (前略)大きく分けて翻訳には「英文解釈方式」と「流れにまかせる方式」の二種類があり、たいがいはその二つの組み合わせでできている。

    She felt compelled to glance over her shoulder.(彼女は衝動に駆られて肩越しに振り返った)

    give one's mind to〜 「〜に悪感情を抱く、〜を根に持つ」

    p69
    「big mouthとは、一方的にぺらぺらしゃべること、あるいはそういうことをする人。大言壮語を表すbig wordsと混同しないように」

    p73
    homemadeとhome-madeはどう違うか?英語的には違いはなく、どちらを使っても同じ意味になるようだが、ニュアンスとして、ハイフンつきのほうは、「自分の家で」というのが強調される。国産車(homemade car)をhome-made carと書くと、自分の家のガレージで組み立てた車のような感じになりますね。そういうことです。

    effect(目的、計画などを)遂げる

    p90
    city…英国における多くの大きな町で、大聖堂のある町を指すのが習わし

    大聖堂(cathedral)とは、大きな聖堂ではなく、主教(bishop)がいる聖堂(主教座教会という)のこと。

    p95
    原文は動詞を省略しコンパクトに書いてあるが、こういうものは少し砕いたり、言葉を補ったりして訳すのがこつである。

    p133
    わけがわからない人物が出てきたら、ディケンズの本を当たれ、というのが翻訳家の鉄則である。

    p143
    I said she wouldn't be a minute(すぐ戻ってくるといったでしょ)というのがイギリス風のいい方(後略)。ちなみに、「私はしばらく席を外します」なら、「I may be some time.」である。

    p145
    誰の視点で書かれた文章か、ということを常に意識するのが、小説の翻訳では大事なことである。

    p150
    Dear me!
    というのはよく見かける間投詞で、悲しいときや落胆したときや驚いたときに口にする「まあ!」だが、(後略)

    p155
    手軽な文法書、『ロイヤル英文法(旺文社)』を見ると、独立分詞構文は、「慣用表現を除けば、極めて文語的な表現で、くだけた言い方では、今はまず使われない」と説明されている。
    実は独立分詞構文は、古い物語(アラビアン・ナイトや古典叙事詩)の英訳に多くの例があり、(後略)

    p162
    (前略)直喩は原文の順序(事実→比喩)を守って訳すこと。


    p181
    その本(Authorisms)の中に、1980年代にワシントンDCのジャーナリストが考えたalogotransiphobiaという新語が載っていた。ラテン語からひねり出したもので、aはwithout(〜なしで)
    logoは「言葉、活字、本」、transiはtrans(横切る、通る、交通)の変形、phobiaは「恐怖症」、というわけで、本や新聞などの活字を持たずに交通機関で移動することに対する恐怖症のことをこういうらしい。あえて訳せば「無活字乗車恐怖症」(後略)

    p190
    (前略)イギリスの小説は、一見深刻そうな純文学でも、えぐいミステリでも、だいたいユーモア小説だと思っておけば間違いない。

    held at bay「遠ざける、近寄らせない」

    Colds are best held at bay by proper hand washing.(風邪を遠ざけるには、ちゃんと手洗いをするのが一番です)

    see「〜すればよいと思う。〜になるのを望ましいと思う。」

  • 文句なしに面白い翻訳指南書。翻訳やりたくもなるし、怖すぎて絶対無理とも思う。あーもっと読んでいたかった!

  • 楽しまれいるんでしょうけど、、、

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    未掲載

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