ぼくは翻訳についてこう考えています -柴田元幸の意見100-

著者 :
  • アルク
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本棚登録 : 229
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757433946

感想・レビュー・書評

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  • 現代アメリカ文学の翻訳者としてその名を知らぬ者は(海外文学好きには)いない柴田元幸さんは、一部では「柴田先生〇人説」が流布していたこともあるように、常人ではこなせないレベルの翻訳書を上梓されているが、翻訳自体についてのご著書も多い。その翻訳関連の著作やインタビューを集めて、読みやすいように1冊にまとめたもの。発売と同時に購入したが、ぽつぽつ読んでいるうちに時間がかなり過ぎてしまった。

    仕事でも仕事じゃなくても、「柴田先生のように翻訳ができたら」と思い、翻訳(ここでは英語→日本語)の門を叩いた人は多いと思う。そういう人に柴田先生が見開きで優しく教えてくれる…ような体裁を取っているものの、実はそうではない。実際に翻訳という作業をやっていないとわからないことが、さらっと書いてある。見開きの右隅に出典が書かれているので、そこを注視しながら読んでいくとわかるのだが、一般向け書籍に掲載されたものと、英文学や教育界などの媒体に掲載されたものでは、微妙に風合いが違うというか、前者の視点はふんわりと総花的で、後者は実践的でからい。「やっぱり、一般読者向けには手加減していらっしゃるんだ」というさじ加減が手に取るようにわかるので、翻訳に携わるかたは出典もチェックしながら読み進むほうがいいと思う。

    読んでいて感じたのは、お茶やお華の高名なお師匠さんが自分のやっていることを語るときの視点。「所詮こんなもんですよ」と軽くいうものの、そこにたどり着くまでには事細かな作法(翻訳でいえば技術)の積み重ねがあり、それをクリアした者だからこそ俯瞰して軽くいえる、という感じを受ける。字面どおりに真に受けていざ実践すると、ダメ出しをくらって「えー、言ってることと違う」と、ひどい目に遭うので注意しなければならないことが多々ある、というやつだ。翻訳の技術について体系的に学びたい人には向かないけれど(それはそもそも本書の役目ではないだろうし)、たまに最初から読み返したり、ランダムにページを開いて、明日への励みとするにはいいのではないかと思う。

    カバーと表紙に使われているロイヤルブルーはおそらく、柴田さんが執筆にお使いになる万年筆のインクの色なんだろう。ちょっと覚えのある色なので、あのメーカーではないかと思ってはいるが、そこを特定する気はあまりない。

  • 柴田ファンにとっては名言集と言える一冊。
    これまでの著作やインタビューの中から選んだ言葉なので、見覚えがあるものも当然あるけれど、「翻訳とは」「翻訳手法」「翻訳という仕事」などカテゴリーに分けてあって、体系的にシバタセンセイの頭の中が分かる構成になっているのが嬉しい。
    翻訳家であることの自負を持ちながらも独特のユーモアと自虐的コメントでその自負を煙に巻き、それでいて翻訳の醍醐味をきちんと伝える。
    柴田ファンはやめられそうにない。

  • いい教師ってどんな教師?と言えば、人によって答えは違うと思いますが、悩んだり迷ったりした時に道標になる様な小さな言葉をたくさん残してくれる教師、ではないかと思います。個人的には。

    もちろん、発した時点で受け手の印象に残らない様な言葉はすぐに消えてしまうので、こうやって集められた言葉の数々を読むと、柴田さんと生徒あるいは読者の間の密な時間を、改めて感じます。

    あと、こういった趣向の本は編者の並々ならぬ熱意や、著者に対する敬意によって成り立つもので、読むと姿勢を正されるような思いもありますが、読後感はやはり良いです。

  • 生の声。

  • 仕事で翻訳をかじっているので、とてもおもしろく読んだ。理想の翻訳とは、「ここでは、なにが伝わるのがいちばん望ましいのか」ということを見極めること。最初から刺さった言葉。

  • 著者の良い人柄が滲み出ていて、付箋を貼った場所が沢山ある。わくわくしながら1ページずつ読んでいた。今年最も手に取って良かったと思える本のひとつ。

  • あっという間に読んだ。厚い本だが字が大きくて少ない。だが内容は濃い。短気なわたしには理想的な一冊(笑)。
    それに辞書のように何度も必要な部分をひいては読み返したくなる。
    翻訳関係の方にはもちろんおすすめだが、進路に悩む学生さんたちに読んでもらいたい本でもある。

  • 1600円の内容かというと、どうか?

  • 翻訳家、柴田元幸さんが今までいろんなメディアで語ってきた話の抜粋集。

    「MONKEY」という雑誌の編集長や、サリンジャーや村上春樹といった著名な作家の翻訳を手掛けるベテラン翻訳家ならではの含蓄のある言葉がたくさん登場する。
    訳文をどれくらい原文に近づけるか、原文に沿っていても日本語として違和感があってはいけない、という内容が書かれてあり、ただ機械的に翻訳するのではなく半分作家のような立ち位置なのが興味深い。

  • 読了日 2021/1/19

    Kindle unlimitedで読了。
    柴田さんの翻訳に対する態度について。

    必ず訳文的に正しい、を求めるのではなく、
    原文のリズムや流れを追い求めてる姿があった。

    ハリーポッターを原文で読もうかしら…と言う気持ちになる
    楽しいかもしれない。

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著者プロフィール

柴田元幸(しばた もとゆき)
翻訳家、東京大学名誉教授。東京都生まれ。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソンなど、現代アメリカ文学を数多く翻訳。2010年、トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』(新潮社)で日本翻訳文化賞を受賞。マーク・トウェインの翻訳に、『ハックルベリー・フィンの冒けん』(研究社)、『トム・ソーヤーの冒険』『ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選』(新潮文庫)、最近の翻訳に、エリック・マコーマック『雲』(東京創元社)、スティーヴン・ミルハウザー『ホーム・ラン』(白水社)、編訳書に、『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒険』、レアード・ハント『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(研究社)など。文芸誌『MONKEY』、および英語文芸誌 MONKEY 責任編集。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。

「2021年 『性差を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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