私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(12) (ガンガンコミックスONLINE)

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  • スクウェア・エニックス
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・マンガ (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757556249

感想・レビュー・書評

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  • 挟まれた過去は今の思い出と、共に未来を芽吹かす糧となる。

    五巻から続き、八巻を印象に残る折り返し地点としつつも長きに渡った「二年生編」はこの巻をほぼ使い切る形で終了します。
    バレンタインデー、卒業式、クラスの打ち上げ会、一年生の時に縁があった・なかったイベントもそれぞれ前後編に分けてしっかりと描かれ、一旦の終わりにふさわしい巻に仕上がったことは間違いないでしょう。

    それでいて「三年生編」の幕開けであるクラス分け回までを収録することで、新たな希望となる十三巻へと続いていく、そんな十二巻です。
    帯のキャッチコピーが「モテ出した!?」だったり、裏表紙の理想と現実シリーズの主題になっているのが今までの主人公「黒木智子」ではなく「内(うっちー)」だったり、表紙裏が喪女の豆知識シリーズではなかったり、と細かいところで従来路線である「喪女」テーマからの完全なお別れが見えてきます。

    実際に、ここからは作品のカラーが変わります。
    今までの巻を追っていけば急激な方針転換というわけではないのですが、春夏秋冬、十二ヶ月、そして十二巻、ある種の節目を表紙から察していただけますと幸いです。
    実際、この漫画は四巻ごと区切りに追っていくと流れがわかりやすくなっているので。

    なお、この巻の特色としては、最初のエピソードである「入学試験」を皮切りに、黒木智子と誰かの過去と現在と未来が交差する、そんな示唆が多めに与えられるセンチメンタルな雰囲気が挙げられるでしょうか。

    私が通った過去は、誰かにとってはこれから通る未来であり、現在であり、懐かしみ赤面する対象になる。
    入試の補助という機会でなければ絶対思い出すことのなかっただろう自分の入試当日の思い出が、ここからの展開のきっかけになるんですよ。
    過去、試験の合間に黒木智子が話かけた両隣の人が、わかる人なら一瞬でわかるというのも心憎い。

    本当になんでもない過去の出来事なんですけど、人生の節目では極めて印象的なことも確かで、今現在、受験中に体調を崩した未来の後輩への的確なアドバイスにつながっていくんですね。
    ちな、後輩ちゃんのナチュラルにクズなところについては、再登場の際に触れるとします。

    続く弟回で主人公は相変わらずのアホな会話を繰り広げるのですが、仲の良いクラスメートが増えた今の環境を悪く思っているわけでないのも面白いですね。
    そのまま流れとして案の定バレンタイン回の被害者枠に弟「黒木智貴」がハマるというのも納得です。

    黒木智子&田村ゆりと、小宮山琴美&井口朱里。
    クラスメートと先輩後輩がそれぞれ違った目的でバレンタインチョコ作りにいそしみ、プレゼントする回が色々な側面から描かれているこの三話構成も完成度が高いです。
    ミッシングリンクというわけではないのですが、同じ放課後の時間を過ごす中でもいろいろな心の動きがあるのがとてもいいのです。

    相変わらずちんちんの呪縛から逃れられなかったり、うっちーの恋心が高まりつつもオチ担当だったり、エプロンを結ぶ朱里ちゃんやチョコを贈るゆりちゃんのコマの破壊力が高かったりと見どころもたくさんでした。

    そして卒業式回です。
    一年前はの卒業式は名前も知らなかった卒業生を一人見送った黒木智子でしたが、今度は明確な形で「別れ」がやってきます。

    アニメ11話EDテーマ『そこらの着ぐるみの風船と私』、名曲と名高いそれを思い出された方も多いでしょう。
    一年生の文化祭から、度々声をかけてくれた「今江恵美」生徒会長があの「着ぐるみ」であることに、別れた後にようやく気づけた黒木智子がちょっぴり切ないです。

    それに、今江先輩と面識のある吉田さんの気遣いや、制止するゆりちゃんなど言葉に出さなくても理解できる心情がいずれも尊すぎて、言葉に出来ない思いをより強調しているのです。

    よって、ここは間違いなく、全巻通しても屈指の話のひとつです。
    過去と現在を振り子のように往復しつつ、得た思い出を糧に未来に向かっていく、そんなテーマが見えてきた気もします。

    「転機」や「決意」があるとしたら間違いなくここでしょう。ここで生まれた動機は、今後すべてに波及するほど重要なものです。
    「これから」どうすべきか、三年生になって何をするかが見えてきます。

    その後は「伊藤さん」、「南さん(キバ子)」、「根元さん(ネモ)」、そして「岡田さん」と。
    ゆりちゃんたち修学旅行組は当然として、「三年生編」の(準)レギュラー陣の描写が強化された後は、「二年生編」のエピローグといえる打ち上げ回に移行します。

    全体的には賑やかでみんなが焼き肉を楽しむ一方で主人公がテンパりつつそれなりに上手くやっている中で進行する「田村ゆり」の視線がかなり重いです。
    仲が良い人と離れて、友達の真空地帯に置かれた疎外感と孤独感が目線だけで表されていて、ここは作品を変えた一コマではないか? と思わせる瞬間さえありました。

    事実、ここから田村ゆりは初登場時からは明確に違った性格に見えるようになります。
    「喪女」ではない、別の方向を向いているけれど黒木智子とは似た者同士なもう一人の主人公としての性格を強めていくことになるのですが、その辺は十三巻で。

    そんなわけで「冬」の雰囲気より、「別れ」と「春の予感」に振った十二巻でしたが、夜の駅の電車待ちのワンページは色々な意味で好きな方が多いでしょうね。
    かくいう私も大好きですが。

    最後に、年頃の娘とお父さん回を箸休めとして置いた後は、「三年生編」の始まりを告げるクラス分け回です。
    微笑むゆりちゃん、いよいよ本格的に動き出すネモ、相変わらずの荻野教諭の下におなじみと意外性の面々が集められる中、仲良し六人組としてまとめられ引き離されるうっちーなど、など……。

    正直、見どころと情報量の多すぎる回なのですが、不安を次の巻に持ち越さないようこの話を巻末に置いた構成は本当に優秀としか言いようがありません。

    今はまだ、「別離」は予感だけ。
    出会いはまだまだ控えているし、なんだったらもう「出会っていた」ことすら自然と受け入れられる気がします。
    それはまるで、サクラ咲き、草芽吹くように。

    ここからは余談です。
    早くも三巻時点にして百万部を達成しアニメ化にまで辿り着いたこの作品ですが、それ以降は初版部数を絞られ続けたことでも知られています。
    その当時を思い起こせば、巻数が若いことによるスタートダッシュ効果やコンセプトがわかりやすいタイトル、海外からも注目されているという宣伝文句など、実際部数を押し上げる要素には恵まれていました。

    その一方、アニメの出来が「心をえぐる」一点で再現度が高過ぎてライトなファンを離してしまったのが部数減少の要因かもしれません。
    とは言えアニメの完成度は高く、あの時点で描けることはすべて描き切っていたことは確か。当時の主人公に望まれていたことを外しているとも思いませんし。
    もちろん、その辺は議論の余地があるでしょう。結論を簡潔に述べます。

    ここ十二巻、続く十三巻では一転して部数が上昇に転じました。
    事実、この時期からTwitterを中心に考察やファンアートなどを活発に行う安定した客層が生まれたことは、ファンの一人として観測している限りでも確実です。
    買い支えを期待して版元が勝負に出たのでしょう。

    わかりやすいジャンル分けとして「百合」の色を押し出し、ネットの口コミとしての宣伝文句にできるようになったのも大きいでしょうが。
    その辺は次巻以降で触れようと思います。

    と、それでは巧みなコマ運びや個性的なキャラの掛け合いがもたらす楽しさが、これからもより多くの方々に届いてくださることを祈りつつ、一旦筆を置くことにします。
    拙筆失礼しました。それでは十三巻で。

  • 切ないような嬉しいような・・・

  • 神巻といっても間違いないんじゃないか?

    卒業する今江さんの前でモジモジするもこっち
    そのもこっちを引きずって今江さんのところに連れて行く吉田さん。

    そして、あの3巻を思い出させる名場面。

    帰りの道で静かに泣くもこっちの後ろ姿。

    もこっちがここまで自分を省みたのって今回が初めてな気がする。
    そせて、もこっちも3年生、これから何が起こるかワクワクする。

  • すげーー!!大バズられてた理由が判ったわこれで!!クラス会の集合時間に行こうか迷って数人でだらだらゲーセンで時間を潰すあの感じ、二次会に行くのをやめて、でも駅のホームで過ごす時間とかが一番濃ゆく記憶に残ることとか、これまでフィクションでは描かれなかった本物の青春の時間がここには刻まれている。この作品が実はずっと、一貫して描いてきた「自分を生きる」というテーマがとうとう周りの人にまで影響を与え始めたり、そんな自分も誰かに何かを渡すことが出来る日が来るのかなとか、ほんとに高校二年生とか、三年生あたりで考え始めることが、嫌味なく、自然に描かれたりもして……。はー。すごい。ほんとに長く続く人間関係って、こうして出来上がったりするんだよな。ある意味、マジメな作品だったらここまで生々しくは描けていない(キラキラした感じには描けると思うけれど)と思うので、このゲスで雑で無計画な(笑)ギャグマンガだからこそ辿り着いてしまった未開拓地。次の巻とかはまたギャグに戻るのかもしれないけれど、時々このマンガが描き出す一種のしっとりとした魅力、ほんと、大好きだ。

  • とらのあなで完売していたという。
    メロンブックスにも置いてなかった。

    ネットでの評価がエライことになっている話が集まった巻。
    修学旅行編で転機を迎えた物語が、卒業式で確定してブーストする感じ。

    高校受験でネモとの出会いがあったり、その反対側にはこみなんとかさんの友達がいたり、ゆうちゃんが・・・。
    まぁ、伊藤さんは以前のままだけど、ネモは髪染めちゃってるからねー。
    気付かれなくても仕方ないよね。

    3年生の自己紹介での、煽るネモ、正面から受けて立つ もこっち 、その暴挙に答えるネモという殴り合いが必見。
    コマに映ってないにも関わらず、ナチュラルに異常さを見せつける、こみなんとかさんの自己紹介も凄い。

    「ガチレズさん・・・マジでガチレズなの!?」という意味不明ワードが妙に可笑しい。
    そもそも バレンタインに女の子どうしでチョコを渡す == レズ っていう発想が本当に現代に生きている女子校生なの?て感じだ。

    要所要所で描かれている うっちー が、もう完全に堕ちてるのがもうね。
    元々は自分が惚れられていると思っていたハズなのに、立場が完全に逆になってる。

    コサージュ付ける回、うっちーは当然として清田も もこっち のことガン見してないか?



    今、話題騒然の遠足回は次巻に収録かぁ。
    ってか、次巻は秋!?
    ・・・・・・・・・気が遠くなる。

  • ぼっちを扱った漫画から青春群像劇へと路線変更し、大きく成功を収めているのは評価の高さや内容の質や厚みから窺い知れる。
    今まで犯した過ちや恥の多いぼっち生活があるからこそのその身を切って痛感させられた不甲斐なさ、至らなさ、立ち行かなった思いが噴出し、そこから思い知る自身の懺悔と思いかえるもこっちの成長した姿が見える卒業式はこの漫画を語る上で重要なエピソードになるでしょう。
    路線変更を無理矢理な変更とは感じさせず、ごく自然に行いつつ、周りのキャラ立ちも同時に進行させる作者の敏腕っぷりに思わず唸る。特に積み重なったこの12巻は。
    もこっち以上に変貌したうっちーにはもう笑うしか。裏表紙にも笑わして貰いました。ありがとうございます。

  • もこっちは相変わらずだけど、


    周りの環境は良くなってきている気がする。


    あとは本人さえ変われば
    高校生活エンジョイできそうなのにな(笑)

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著者プロフィール

原作と作画のふたり組。著作には『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』『ちょく!』(スクウェア・エニックス)、『ライト姉妹』『ナンバーガール』(KADOKAWA)、『クズとメガネと文学少女(偽)』(星海社)などがある。

「2019年 『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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