小説 エマ (1) (ファミ通文庫)

著者 :
  • エンターブレイン
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757722095

作品紹介・あらすじ

19世紀末のロンドン。豪商ジョーンズ家の長男ウィリアムはある日、初老の家庭教師ケリー夫人宅を訪ねる。そこで彼が出会ったのは美しいメイド、エマだった。一目で恋におちたウィリアムは以後、彼女の住む地区へ足繁く通い、またエマも実直なウィリアムの人柄に惹かれていく。だが、上流階級に名を連ねる彼に、メイドとの恋が許されるはずはなかった…。珠玉のロマンスコミック『エマ』-その登場人物達の心情や背景を緻密に描く小説版が登場。

感想・レビュー・書評

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  • 私の大好きな漫画、森薫さんの「エマ」のノベライズ。
    番外編的なお話かと思いきや、本編をノベライズしたものでしたね。

    序盤からのんびり坊ちゃん全開のウィリアム(笑)
    漫画ではほんの数コマで流れてしまう場面を丁寧に描かれ、エマの世界の空気がとても良く伝わってきました。
    ほんのりと頬を染める時の心情や、何気ないやり取りの中の心の駆け引き。素敵でした。
    ただ、もともと漫画ファンなだけに、「ああっ、そこの台詞だけは変えないで欲しかった…!」ってところが少々ありましたので、個人的な感情で星ひとつ減らさせていただきました。
    エマさんは決して自分の心や欲求をぺらぺらと口に出して言う人ではなかったので、今回ノベライズを読んで、ウィリアムの存在にどれだけ心を動かされていたか、どれだけケリーさんのことを慕っていたかなど、無口でおくゆかしいエマさんの心のうちがとても心に響いた。
    でも、やっぱり、エマさんはエマさんなのだ(涙)
    小説を読んだ後に漫画を読むと、なお一層エマさんの微妙な表情の変化にニタニタしたりできました(笑)
    私の大好きなヴィクトリアン時代の小物や生活の描写も細かにされていますので、とても楽しんで読めますし、参考になりました。

    この巻で描かれているのは、ウィリアムがエレノアとの婚約話を知るところまでですね。
    この後どうなるか展開はわかっているけれど、ドキドキせずにはいられない…。

  • コミック『エマ』のノベライズ版。原作は時代考証がしっかりされており、作者の愛情がふんだんにあふれた物語でしたが、コミックという性質上、人物の内面心理描写に物足りなさを感じたので、小説版があると知り、読んでみました。
    久美沙織の本を読むのも、久しぶりです。
    思った通り、当時の19世紀末、ヴィクトリア朝の時代背景などについて十分な説明が入り、加えて人物たちの心理もしっかりと書かれていたので、狙いが当たった満足感とともに読みました。

    主人公エマは、必要ないことはほとんど喋らない、口数少ないメイド(むしろオールワークス[雑役女中])として描かれていますが、小説版では内面の吐露が漏らさず書かれているため、原作の補強ができます。

    近視の彼女が初めてメガネをかけ、世界が変わった時の感動が、詳細に表現されており、自分が初めてコンタクトをつけた時の興奮がよみがえりました。

    1巻では、彼女はガヴァネス(家庭教師)のケリー夫人宅で働いており、そこでのウイリアムとの出逢いがメインとなっています。
    そのほかにはウイリアム宅に滞在するインドの王族のハキル。
    母国から象を何頭も連れてくるなんて、さすがはマハラジャ族、やることが半端ありません。

    この時期、1877年のセポイの乱後、インドはイギリスの植民地になったためか、やけに当時のイギリス作品に、インドが登場してくる気がします。
    ぱっと思い出せるだけでも『小公女』『秘密の花園』『ジェーン・エア』『インドへの道』『黒執事』など。『海底二万マイル』も間接的に含まれます。
    この辺に詳しい資料があれば、読んでみたいものです。

    1巻では、ウイリアムは、エマに出会って単なる恋する浮かれ男になっておりますが、ジェントリ(上流階級)の跡取りである彼の責務として、まずは結婚相手の身分を第一に考えるべきなのでは?と思うと、ウイリアムの頼りなさ、自覚のなさが気になります。
    そこまでエマとの付き合いを現実的なものとして考えていなかったのかもしれませんが。
    まあ、ウイリアムのそういったふわふわした性格は、コミックにもよく出ています。
    彼はイートン校を出ていますが、その後は特に大学に進んでいないようです。

    ケリー夫人の描写が、厳格な当時のガヴァネスの典型的姿のようで、興味深く読みました。
    私にとって英国ガヴァネスといったらジェーン・エアでしたが、ガヴァネスとはナニーとチューター(家庭教師)の間のような職種と知りました。
    『黒馬物語(ブラック・ビューティー)』の話が少し登場しました。
    この物語もセポイの乱と同年に出たので、やはり時代はインドが植民地化した後の話とわかりました。

    かなり細部にいたって描かれており、原作にないシーンも取り込まれているので、小説だけを単体として読んでも、十分楽しめます。

  • 森薫さんの漫画「エマ」のノベライズ第1巻。
    漫画を読んでからこの本があることを知って読み始めたが、漫画の内容がさらに詳しく(裏事情というか)書いてあり、漫画のあの場面はこういうことだったんだなと明らかになることもたくさんあった。これを読んでからまた漫画を読み直したくなる一冊。

  • 漫画「エマ」1巻を、エマ視点から丁寧に追っていったノベライズ。
    読んだ後は、エマがますます魅力的に思えてくる。

  • 久美沙織のノベライズは面白い。
    いったん原作を自分の中で完全に消化し切った後で、感じたことや思ったこと――描かれなかった背景、物語を補完したうえで語りだす。
    だからオリジナルのシナリオでも、奇妙に物語の本質を突いたような小説に仕上がる。ノベライズでオリジナルな展開に持ち込むのはけっこう危険な技だ。原作を深く理解していなければ出来ないことだし、知識も力量も問われる。
    原作が好きで好きで、文章の形に直してあればそれでいいと思っていた読者は、久美沙織流に『調理』された中身に面食らうかも知れない。それでもこんな『エマ』の世界があってもいいと思う。

  • マンガはとても好きで、何度もくりかえし読む。

    小説は若干無機質になってしまったかなという印象ですが、心理描写は良かったと思う

  • エマを読んだことがなかった。

    なんかコミックスでは有名だけれど、絵柄がそこまで好きではなかったので手にとったことすらない。

    あぁ僕はなんて愚かものだったんだろう。

    こんな素敵な作品を埒外においていたなんて!!

    エマの舞台はヴィクトリア朝時代のロンドン。

    貴族階級と新興の資本家、そして貧民がいた時代。

    そんな時代のメイドのエマと大金持ちの息子ウィリアムとの純愛の話し。

    エマもウィリアムも心が清冽で、お互いの階級を意識しないで魅かれあい、やがてその階級の壁にぶちあたる。

    小説などでは使い古されたありきたりなストーリだけど、やはりいい。

    エマは天涯孤独の身で物乞いをしていたこともあり、どんな小さな喜びでも大切なものに思い大事にする。

    特にエマが初めて眼鏡と出逢い、世界が一変したシーンなどは感動ものだった。

  • 原作に勝るとも劣らない名作。現在二巻刊行。以下続刊。

  • 翻訳小説かのような文章。作品にはあっているけど読みにくかったなあ。原作を追いかけつつも適度にオリジナルシーンを入れていて好感が持てました。アニメ一期ラストくらいまではノベライズされるんだろうか。

  • 眼鏡をかけた時の戸惑いと感動、ハンカチへのあこがれ、ケリーとの別れ。原作では見られなかった(無口なので決してセリフでは語られない)エマの心理描写が素敵。

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著者プロフィール

1959年、岩手県盛岡市生まれ。上智大学在学中に作家デビュー。フィクション、ノンフィクションを問わずさまざまなジャンルの作品を手がけ、ゲームやコミックのノベライズなどもおこなう。おもな著作に「プリンセス・ストーリーズ」シリーズ(角川つばさ文庫)、『丘の家のミッキー』(集英社)など多数。公式サイト「久美蔵」http://kumikura.jp/

「2019年 『プリンセス・ストーリーズ 赤ずきんと狼王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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