- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757728066
作品紹介・あらすじ
「どうかあたしの恋を叶えてください!」何故か文芸部に持ち込まれた依頼。それは、単なる恋文の代筆のはずだったが…。物語を食べちゃうくらい深く愛している"文学少女"天野遠子と、平穏と平凡を愛する、今はただの男子高校生、井上心葉。ふたりの前に紡ぎ出されたのは、人間の心が分からない、孤独な"お化け"の嘆きと絶望の物語だった-。野村美月が贈る新味、口溶け軽めでちょっぴりビターな、ミステリアス学園コメディ、開幕。
感想・レビュー・書評
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純文学って難しいって思っている人。
読んでみたいけど、何から読めばいいか分からない人。
そういう人って割といるんじゃないかって思う。
本作はライトノベルであり、一般文芸に比べても読みやすいと思う。
しかし、内容は割と重ためのミステリーであり、そこまでラノベ感は強くないように感じる。
加えて、本作のテーマの一つに太宰治の『人間失格』があり、これを読むだけでも太宰治への興味が湧いてくるのではないだろうか。
文学への入門書としてもおすすめできるような作品のような気がした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本を食べたいくらい愛してる(文字通り)文学少女こと遠子先輩と、中学生時代に大ベストセラーを記録した小説家でありながら、とある事をきっかけに平凡で普通な生活に憧れる主人公。
ひょんなことから一人の少女の恋愛を応援するハズが、恋慕の相手は存在しない人間で、そこから10年前の事件と太宰治の「人間失格」が絡んでいき…
高校を舞台にした、思春期に揺れる文学ミステリー。
◆久々に読みたくて再読しました。やはり最後のどんでん返しが良いですね。
改めてミステリーとして読むと、ちょっと情報が少ないかなと思いました。
シリーズごとに各文学作品を題材とし、それになぞらえて登場人物の心情を描いている部分がこのシリーズの面白い所。
毎回身を切る様な独白に、これは誰の心情なのかとすごく惹き付けられます。
ライトノベルである為文体は軽快ですが、登場人物の描写は丁寧で、重く、深く訴えかけてきます。
遠子先輩の文学レビューは食べ物に例えられていて独特で、読んだ後には色んな本が思わず食べたく…いや読みたくなってしまいます。 -
昨日読了。
以前から何度か面白かったと評判を聞いており、最近職場の若い方に改めて話を聞いたため今更ながら手に取った。
先輩の食事については前情報を得ていたので、それほど違和感なく読めた。
平凡を求める主人公の姿や主人公たちの過去を最後まで明かさないのは、この時代の若者を描いた作品の特徴なのか、まま目にする。
本作が太宰をモチーフにしているからか、存外重めの雰囲気だった。
人と違う自分、生きていることと死ぬことはどちらがつらいのか。
テーマにする作品によって、雰囲気は変わるのだろうか。
文学に対する熱は嫌いではない。
今まで全く興味はなかったが、太宰が読んでみたくなった。
ただ、先輩の交渉シーンは若干あからさまか。
ツンデレクラスメートは今後さらに関わりがあるのか。
先輩にも何か過去が?
機会があったら続きを。 -
ワシはまだ、この物語を咀嚼できていないんじゃないか。この感想を書きながらも、まだそういう感覚に捕らわれています。過去の文学作品をモチーフに、現代の高校を舞台にした、ミステリー。好きな要素は揃っているのに、腑に落ちない。
それはたぶん、読んでいくうちにちょっとずつ感じた不満の欠片が膿のように溜まっているのかもしれません。例えば、シリーズ前提だからとは思いますが、一巻だけでは分からない伏線が何回も明示されて食傷気味になってしまったり、挿入される「物語」がなんとなく抽象的に感じたり、キャラの性格にゆらぎを感じたり。
一冊の本としたときの、ストーリーやキャラの芯になるもの、それがワシには薄くしか感じられなかった気がします。
と、苦言っぽいことを書いてはいますが、謎の蓄積のさせ方、その引き方など、先を読みたくなる構成とかは魅力的です。また、主人公による文学作品の「味の解説」も面白い。真の意味での本のソムリエのような、知らない作品もつい手にとってみたくなります。
その、魅力と危うさの線上に立っているように感じる本作。もう少し続刊を読んでみたいと思います。 -
もっと早く出会いたかった!早く出会って、一緒に完結まで追いかけたかった!
遠子さんのお蔭で、読む本、読む物語が、どんな味をしているのか気になるようになりました。この本を食べたら、きっと甘くてほろ苦い、ケーキのオペラの様なエレガントな味がするんだろうなぁ。 -
ビブリア古書堂シリーズが最近人気ではありますが、ふと考え直してみると、これもジャンルとしては同傾向だったなと思いだし、再読してみました。
文芸部に所属する井上心葉の視点で物語が進みますが、文体が非常に読みやすく、かつ心理描写が非常に柔らかく伝わりやすいのが特徴ですね。
イメージしやすいです。
この巻では太宰治の「人間失格」を主軸に物語が進みますが...内容は表紙の絵柄に反して、とってもへヴィ。
まあ、このシリーズはだいたいへヴィな話なんですけどね。
とっても惹きつけられます。 -
太宰治『人間失格』をモティーフにそこに挟まっていた告白の手紙と登場人物の思春期の葛藤や心の傷がリンクする。
物語の登場人物への共感は読書の醍醐味だが、本の中の死と現実の死を結び付けてはいけない。太宰治の作品には生きる希望をつたえるものもある。
文面にも物語の明朝体と手紙のゴシック体の2つが、現実と心象、現在と過去を表現し、それが一連の流れとなって物語が進む。その表現が『はてしない物語』へのオマージュのようでもあった。
“読み応え”があった。 -
文学に関する雑学が気になって読んでみた。内容はまあまあというか、思ったより普通のサスペンスだった。とりあえずこの学園は屋上を厳重に封鎖した方が良いと思われる。すぐ誰かが落ちようとするので。
愁二先輩が誰なのか探しているときは真相が気になったけど、後半は、うーん。簡単に人が死ぬのであんまり感情移入できなかった。ただ、周りの人が普通に考えたり感じたりすることに自分だけ共感できないというのは、こんな極端じゃないかもしれないけど、分からなくもない。
遠子先輩が太宰について語っているとこは好き。でも紙を食べるなんてちょっと本がかわいそうかも。読んでいると本に触れたくなる本。(20110101)
著者プロフィール
野村美月の作品





