さよなら嘘つき人魚姫

著者 :
  • 一迅社
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本棚登録 : 550
感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758093309

感想・レビュー・書評

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  • 「天使が通る」可愛いぃことわざ。ん?ことわざ?
    探偵!?探偵とか、え?そこまで?
    羽澄の母親もおかしい。
    綾瀬の親もおかしい。
    人魚病とは何か?
    なんとネグレクトだった。
    父親からの暴力によるトラウマと怪我。病院へ行けずに変な治り方をしたために、足がふらつく。
    助けを求めることができて良かった。
    生きていくのを苦しいと感じている人がたくさんいることを知る。
    生きづらさを感じたらどうしたら良いのか?
    考えるきっかけになる本。

  • 綾瀬水月(アヤセ ミヅキ)と羽澄想(ハスミ ソウ)は、高3・同級生。この2人がひょんなことから生物部に入り、ともに過ごす時間が増え、次第に相手を特別な存在と感じるようになってゆく。

    綾瀬も羽澄も共にクラスで浮いた存在だが、ある意味正反対のタイプ。綾瀬はいつもへらへらし、よくしゃべり、自分は人魚の末裔だなどと言う。一方、羽澄は、クラスの誰とも関わらず、ほとんど話すこともない。
    だが、お互い何か抱えていることには気づくが、そんな2人だからこそ、お互いの踏み込まれたくない部分はそってしておく。その距離感に安心できた。

    しかし、互いの重すぎる母親のために、2人はそれぞれ追い詰められ、死を選ぶ。「一緒に死のう」と言いながら、相手だけは生かそうと心に決めて。そして・・・
    ............

    実は2人には、毒親持ちという共通点があった。

    綾瀬の母は「幸せになっていいのよ。でも、私よりは不幸でいなさい。あなたは私を幸せにするために存在しているのだから」というタイプ。DV夫が家を出てから、
    新しい男を作っては捨てられ、そのたびに「私にはあなただけよ」「やっぱり家族がいちばん」と言って、娘の心を縛る。

    羽澄の母は「あなたになにかあったら死んでしまう」「あなただけが頼りなの」と、泣いて罪悪感で縛るタイプ。長男を自死で失ってから、異常なほど想の行動を管理し、時には探偵を雇って連れ戻すことも。
    ...............

    『さよなら噓つき人魚姫』で、綾瀬は自分が人魚だと言いふらすことで、父親からの暴力の後遺症でうまく走れなくなったことや、歌うことができないでいる現実を隠した。
    羽澄は、自分に嘘をついて心を殺すことで、母や周りの人が傷つくことを避けた。

    自分自身を愛してくれることを親に期待しては裏切られ、でもやっぱりその期待が捨てられずにいるのが感じられて切なかった。

    彼らと対照的な家族関係として、同じ生物部で同級生の後藤くんとその家族が登場するのだが、まぶしすぎてその場に留まることができない2人を、すごくリアルに感じた。
    ...............

    汐見先生は今回、部活顧問で担任の沼田先生を通してメッセージを発信していると思う。
    「どうか、大人を信じて、助けを求めて欲しい」
    「手助けをさせて欲しい」

    そして「自分自身に嘘をつかないで」ということ。

    本当につらい思いをしている人はこの本を読むことも無いのかもしれないけれど、少なくとも、同じような思いを持って思春期を過ごした私には、すごく刺さる内容があった。
    .............

    『僕の永遠を全部あげる』の留生&千花の2人がチラッと登場します(*´▽`*)

  • Twitterで見かけ、装丁に惹かれて手に取った本で、ティーン向けライトノベル。
    家でも学校でも息苦しさを感じていた少年少女。最後には隠してきた本当の自分を解放し、お互いに明るい人生を歩み始める。不幸設定が苦手なので、読み始めはあまり良い印象を抱かなかったが、メッセージ性の高い内容でなかなか考えさせられたし、読後はスッキリほっこりした。
    教師の経験がある著者だからこそ、多感な10代ならではの葛藤と苦悩を上手く描き切れたのだと思う。

  • 生きづらさを感じている2人の物語。
    黙ることで自分を守ろうとする想、喋ることで自分を守ろうとする綾瀬。
    最後は温かい気持ちになることができた。

  • よかったです。一つ思ったのは綾瀬がいつもヘラヘラしてる訳ではないと思います。もしかしたらacでそのように振る舞うようになった可能性もありますね。

  • かまってちゃんの水月と一匹狼の想。二人はそれぞれ家のことで悩んでいた。居場所がなく、息苦しくて。
    あることから二人は一緒に過ごすように。静かにそっと、寄り添うように。 
    だけどそんな日々も奪われてしまって…。
    今を生きづらい人の背中を押してくれるような、あたたかい、涙のストーリー。

    この本を読むまでは、私が家族に恵まれているなんていう実感はとてもなかったのですが、この物語が私の考えを変えてくれました。

  • 人間の闇と光っていうのは軽くだけど知ることができました。

    周りを避ける人ってのはこっちが嫌いとか自分を守るためとかじゃなくて、周りを守るために離れてるんだなとか、自分にはない心情がたくさん描かれていました。

    どんなにも辛くても光を求めてしまうってのはどのストーリーでも同じですね())

    「君の代わりに僕が死ぬからその分も生きて」って言葉が衝撃でした。
    生きるとか死ぬとか、その人のためならなんでもない簡単な事みたいに言っててちょっと怖かったです。

    親にも見てほしい本です

  • 【生きる事は辛いけど、二人で居られるならもう嘘は要らない】

    居場所が無く希死念慮を抱く少年少女がその傷を分かち合う物語。

    言ってしまえば、生きるとは何かしらのしがらみに縛れる事である。
    学校や家庭などで息苦しさを覚えて居場所が無い者は、しばしば嘘や孤独などを使って己の心を守ろうとする。
    人生に希望が見出だせず、死ぬ事ばかりを考えていた水月と想。
    似たような傷を抱えた彼らは出逢い、傍に寄り添う事で互いの欠落を埋めていく。

    環境に自由を摘み取られる世界で心を摩耗しながらも、二人で居る事が自分達の未来を守る唯一の術なのだ。

  • 言えないことや、い言いにくい事情は、
    少なからず誰にもあるんだなと思い、
    とても共感しました。

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著者プロフィール

鹿児島県出身、愛知県在住。高校国語教師としての経験をもとに、悩み疲れた心を解きほぐす作品を目指して、日々執筆活動をしている。代表作となった『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(スターツ出版)が、様々な年代の共感を呼び、現在最も注目される作家。他に『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『ないものねだりの君に光の花束を』などがある。

「2023年 『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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