紙の月

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.70
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本棚登録 : 2777
レビュー : 512
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411905

作品紹介・あらすじ

わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。
梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。彼女は、果たして逃げ切れるのか―?
あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な、角田光代、待望の長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • なぜこんなことになってしまったのか?
    あの時こうしていなければ、あの人に出会わなければ、今は全く違っていたかもしれない。
    梅澤梨花さんはそう自問しながらも、その考えを虚しく感じている。
    それでもやはり私はここにたどり着いたのではないかと。

    この本を読んで感じたことはうまく言葉に出来ないことばかりだ。
    怖いとも思ったし、分かる気もしたし、そのすぐ後に理解出来ないとも思った。
    何人かの顔が浮かび、その人の記憶が蘇り、その日の感情が再現された。
    心地いいものも、そうでないものもあった。
    何かに気付けそうな、言葉に出来そうな気がして読み続けた。

    そして読み終わった時にふと寂しいなと思った。
    でもそれは読んでいる時に感じていたこととは全く違う。
    掴めそうだったものはいつの間にか消えてしまった。

    ただ寂しいなと思うだけ。
    この小説に出てくる人達は私と変わらないんだろう。私の周りの人とも。
    そのことが寂しい。

  • 面白かった!一気読み。私の中で角田作品ベスト3に入る作品。
    角田さんて本当に女の心の闇を書くのが上手い。
    お金を散在する恍惚感、分かるー!って思ってしまった。大抵の人なら途中でブレーキがかかるんだろうけど、物語ではどんどん歯止めが効かなくなっていく。買い物することでストレスを発散するって女特有なのか。
    不可思議だったのは光太の態度。スイートルームに連泊したりマンションや車を買い与える女が銀行でパートしてることに疑問を持たないのか。それとも確信犯か・・・。

  • 1月にNHKでドラマ化された【紙の月】

    夫との二人暮らしの中で何となく違和感を覚えることが多くなっていた梅澤梨花(原田知世)は若葉銀行でパートとして働き始める。
    超が付くほどまじめで貞淑な妻だった梨花が横領事件に手を染める。
    彼女を横領事件へとかきたたせたものとは…

    このドラマかなり好きでした。
    主演の原田知代さんは相変わらずキュートだったし。
    相手役の満島真之介くんは可愛かったし…(笑)。

    これは是非とも原作を読んでみなくちゃ~と、軽い気持ちで読んでみたら面白かった!!

    原作を読んでみて思ったこと。
    ドラマ化や映画化されると「原作と違うやん!」とがっかりすることも多い中、ドラマ【神の月】はかなり原作に忠実でありつつ、ドラマとして秀逸だったということ。
    (あくまで個人的感想ですが…)

    ドラマでは梨花が逃亡した国を明確にしていませんが、映像から「タイだろうなぁ~」と思っていました。
    原作を読んでみるとやっぱりバンコク、チェンマイでした。
    ちょっとうれしく思ってしまう不思議(笑)。

    もう一度、ドラマを見たくなっています。

  • ひと一倍正義感の強い平凡な主婦、41歳の梅澤梨花が何故何故と考えさせられるストーリーだった。
    わかば銀行の契約社員、最終的には約1億円を横領して海外に逃亡していく中で、本人もひたすら過去を振り返る。
    夫婦間の価値観?大学生の光太との出会い?ボランテアにも力を入れていた若かりし頃、お年寄りに親切で優秀な社員がと思う時、切なくって切なくって。
    堕ちるときは、何でもない心の隙からとんでもないことになるんだなーと悲しいストーリーであったが角田さんの描写力に引き込まれる作品でもあった

  • 今まで理解できなかった”女子行員による大金の使い込み事件
    主人公は小さな満足感を積み重ねてどんどん落ち込んでいく
    あり得ないことなのにまるで自分の心の中にも同じ落とし穴があるようで怖い

    別れた娘の物欲を断ち切るという苦しい選択をして 落とし穴に落ちずにすんだ最後の友人の項で救われた

  • 最後はちょっと突き放された感じ。この状態のまま終わるとは思わなかった。最終的にどうなったのか、最後をきっちり書いて欲しかった。犯罪がエスカレートしていく中で、そこを楽しみに読んでいたのでがっかりした。

  • 胸が苦しくなる本だった。

    梨花を狂わせたのは、多分、お金でも光太でもない。
    ただ、今までの「つまらない自分」とは正反対の、自由で理想的な人生を手に入れようとしただけなのだと思う。
    光太とともにお金を使うことで得られる、自分からの脱出と自由な人生。
    それらは結局は偽物なのだけど、梨花の願望はきっと誰もが感覚的に理解できることだろう。

    「本当(理想)の自分」という虚像。
    「自分」とは何者なのか。

    映画も小説も両方よかったけれど、紙の月というタイトルはやはり小説にぴったりくると思った。

  • お金の価値観は、育ってきた環境で決まるものなのかな、それとも、もともとその人の中にある、資質のようなものなのかな。ううん、きっと、それぞれが絶妙に重なり合うんだろうな。
    経済的な困難を抱えて育ってきた人が、梨花や亜紀のようにお金を使う可能性もあるし、お金の大切さを知っているからこそ、上手に、たいせつに使う可能性だってある。ごくごく自然に、裕福な環境で育ってきた人にだって、同様の可能性がある。
    お金は、人々に充足感や優越感を与えてくれる。きっと、一度味わってしまうと、抜け出せない、あまいあまい、蜜の味がするんだろうな。
    圧倒的な梨花の存在感!一気読みでした◎

  • 今年ドラマ化したのを観たら面白くて、今度は映画化するからその前に原作を、と。
    主役の梨花を中心に、40代女性の登場人物が数人出てくるのだけど、みんなどこか鬱屈したものを抱えてて、そこから抜け出したいけど抜け出せないもどかしさや閉塞感がすごくリアルだと思った。
    若い男に走ったり、買い物に走ったり、節約しすぎることに走ったり。それで自分の“何か”が埋まるわけではないのに、そこに走らずにはいられない。
    過剰に見える行動も、犯罪も、実は自分のすぐ隣にあるのかもしれない。

    一般女性が抱えるストレスや鬱屈を描かせたら角田さんの右に出る者はいない、というイメージ。
    この小説はやや極端ではあったけれど、前に読んだ対岸の彼女の「わかる!」感はものすごかった。

  • 泣きながら本を読むことはよくあるけれど、
    怖くて泣きながら読んだ本はこれが初めてだった。

    怖かった。

    梨花の、「私を早くみつけて」と絶望にも近い気持ちでの言葉。
    梨花を軸に、他の登場者も全て早く見つけてほしい、欲しかったが共通しているのだと思う。

    女性はもしかしたらいつでも、「早く私をみつけて」欲しいと思っているのかもしれない。
    その願いの多くはかなえられず、いろんな形となって消化されていく。
    何かを代替にし落ち着かせたり、なかったことにし自分の奥底にしまいこんでみたり、
    表面的な部分だけでも暴力的に表現してみたり。

    でも、かなえられなかった、消化しきれなかった片鱗は時間がたっては溜っていき、別の形になっていくんだと思う。

    見つけてもらっていたら梨花は違っていたのか?見つけてもらっていたとしてもそれは、見つけられることが続いていかないと行かない。どうして、見つけてもらう事なんてありえないという考えにならなかったのだろう。

    見つけてもらえることなんて、奇跡のようなことだと私は思っている。
    ほんの一瞬見つけてもらっても、次は見つけてもらう事なんてないんだと。

    のめりこんで読めた。
    角田光代さんって、本当にうまいと思う。 横領のシーンなんて怖くて本を遠ざけて、ページを手早にめくってしまっていた。速読してしまった。怖くて怖くて。
    怖くて怖くて、震えながら泣きながら読んだ。
    読み終わった後も、しばらく怖くて泣いていた。

    見つけてもらえないことにフォーカスしたら、私もこうなるんだろうか?
    見つけてもらえるという願いを持たなくなって既に長い時間が経っている。あの時、このあきらめの気持ちは自分に何かをもたらすのか、相手に何かをもたらすのかとずっと考えてきたけれど、それは、
    見つけてもらえた瞬間に素直に感謝できることなのかもしれない。
    それは恋愛の愛情を超えたものだと思う。

    恋愛になったらまた別なのか…・。

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著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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