紙の月

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.71
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本棚登録 : 2989
感想 : 537
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411905

作品紹介・あらすじ

わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。
梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。彼女は、果たして逃げ切れるのか―?
あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な、角田光代、待望の長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • どこで道を間違えたか、一歩逸れると
    犯罪者となってしまう。その可能性は、誰にでもあるのではないだろうか。

    うちの自治会では、2カ月に1度自治会費を集める。2000円を11件分、22000円。係は約1年に1度だが、全額揃うと
    即、会計さんへと持っていく。
    正直を言えば、目の毒であり、ーーうちのお金だったらなーーと、必ず思う。
    この話で主人公の梨花は、それをやってしまう。

    契約社員として銀行に勤務している、
    梨花は、仕事帰りに化粧品を買う。その時、手持ちが足りないことに気付き、今
    預かってきたばかりの封筒に手をつける。ーーー後で返しておけばいいわーーーと、軽く考えていたのではないか。それが、始まりだった。梨花の家は生活に困ってなどいない。その生活に、足りないものがあったとしたら何だったのか。

    ある日、梨花は自分よりひと廻り程、年下の光太に出逢う。ここから先がいけなかった。ーーー少しずつーーー小さな音を立てながらーーー崩れていくーーー銀行のお金を使い始めたーー手を付け始めたというべき
    だろうか。光太に逢う為には、偽物の
    預金証書も作成した。
    すぐにばれる様なものでもーーー
    自分は横領をしている、ということに
    梨花は、いつ頃気付いたのだろうか。
    使い込んだお金が、億という金額を
    超えた頃、銀行に監査が入る。


    梨花は高飛びした。格安のホテルに
    泊まり、なるべく外出を避け、ひっそり暮らした。・・・・偶然、日本の週間誌を
    見つけてしまった。自分の記事が大きく
    「銀行横領、犯人行方不明」とあった。

    梨花は、観念した。
    言葉の通じない国で、自首する覚悟を
    決めた梨花の心情は、どのようなもの
    だったか。その国に、梨花の手配書は廻っていたのだろうか。
    国境の検問所へと歩く梨花は、何を思いながら歩いたのか。
    ーーー何で、やってしまったのかーーー
    ーーーこんなはずでは、なかったのにーーー
    もう遅い。
    ほんの出来心とは、怖いものだ。

    • あかぴさん
      こんにちわ!
      色々参考にさせていただいてます。
      宜しくお願いします。
      こんにちわ!
      色々参考にさせていただいてます。
      宜しくお願いします。
      2021/04/18
  • お金の価値観は、育ってきた環境で決まるものなのかな、それとも、もともとその人の中にある、資質のようなものなのかな。ううん、きっと、それぞれが絶妙に重なり合うんだろうな。
    経済的な困難を抱えて育ってきた人が、梨花や亜紀のようにお金を使う可能性もあるし、お金の大切さを知っているからこそ、上手に、たいせつに使う可能性だってある。ごくごく自然に、裕福な環境で育ってきた人にだって、同様の可能性がある。
    お金は、人々に充足感や優越感を与えてくれる。きっと、一度味わってしまうと、抜け出せない、あまいあまい、蜜の味がするんだろうな。
    圧倒的な梨花の存在感!一気読みでした◎

  •    梅澤梨花(主人公)
     人がひとり、世界から姿を消すことなんかかんたんなのではないか
     タイのチェンマイに着いて数日後、漠然と考えるようになった。
     姿を消す、といっても死ぬのではない、完璧に行方をくらます、ということだ。

     「わかば銀行」で営業を担当し、多額の定期預金を集め、支店トップセールスを誇り上司からの信頼も厚かった。ある日魔が差したのか顧客から預かったお金で、高級な化粧品を買ってしまった。後でATMから五万円を引出し返した。自分が今、何をしたのか理解した。それでも罪悪感は不思議となかった。しかし、どうして罪悪感を覚える必要があるのかと自分に問いかけ、働いて稼いだお金だし…。と言い訳をした。

     梨花が通っていた学校は、ボランティア活動に学校全体が取組んでいる。
     外国の学校に通えない子供たちに、直接寄付をするシステムが導入され、生徒側は自分が、どの国の、何という名の何歳の子供に寄付しているのかわかるのである。お礼の手紙にカラフルな絵や写真までも同封されていたのである。生徒たちは熱狂し喜んだ。

     しかし梨花は少しも喜べない。

     裕福な家庭で育ち、普通の子供ならとても賄えない金額を支援できる。一通だけ届いた手紙の言葉に『私はあなたがしてくださったことを、一生忘れません』と書いてあったのだ。勿論、誰かに教えてもらった決まり文句である。「たった6歳か7歳の子が、一生忘れてはならないような重荷を背負わせてしまった」。感謝という重荷。と考えていた。彼女の論理が歪んでいることはわかる。
    学校はシステムを廃止した。

     当時の同級生は、『「思い込みが激しい」でも「のめりこみやすい」でもなく、「正義の人」だった』と評価している。

     結婚して専業主婦になった。賢くやりくりし平凡な暮らしを希望したが、夫は仕事で忙しく家庭のことには無関心。夫との淡々とした日常生活や違和感が、家庭より外に出て働くきっかけとなる。
     以上が、犯罪に手を染め不倫と横領を犯すまでの「あらすじ」です。

     その後物語は、犯罪の手口や動機、自己満足の展開は息継ぎが出来ないくらい早く苦しい。どこまで墜落していくのか、興味はあるがスリリング過ぎてドキドキし眠れない。そして彼女は生き場所を失った。そんな彼女にも生き場所があると思う。それはしばらく安住できる高い塀の向こうかな!

     実におもしろい。

  • 重たい話だった。
    お金はおっかねーとギャグを飛ばして自ら寒さに震えてしまう(笑)
    超!庶民なので、こんな風にお金を使う気持ちがいまひとつわからないが、人ってホントに弱いし、誰もが犯罪者と紙一重ってことをひしひしと感じる。

  • なぜこんなことになってしまったのか?
    あの時こうしていなければ、あの人に出会わなければ、今は全く違っていたかもしれない。
    梅澤梨花さんはそう自問しながらも、その考えを虚しく感じている。
    それでもやはり私はここにたどり着いたのではないかと。

    この本を読んで感じたことはうまく言葉に出来ないことばかりだ。
    怖いとも思ったし、分かる気もしたし、そのすぐ後に理解出来ないとも思った。
    何人かの顔が浮かび、その人の記憶が蘇り、その日の感情が再現された。
    心地いいものも、そうでないものもあった。
    何かに気付けそうな、言葉に出来そうな気がして読み続けた。

    そして読み終わった時にふと寂しいなと思った。
    でもそれは読んでいる時に感じていたこととは全く違う。
    掴めそうだったものはいつの間にか消えてしまった。

    ただ寂しいなと思うだけ。
    この小説に出てくる人達は私と変わらないんだろう。私の周りの人とも。
    そのことが寂しい。

  • 数人の登場人物が切り替わって出て来るが混じり合う事はない。過去に関わっただけ。
    しかし、同じような状況に遭遇し、金に振り回される。
    ギャンブルに落ちた人も怖いが買い物依存に落ちた人も怖い。
    ネットショッピングの昨今、カートに品物を入れずにはいられない、1日数回商品を眺めずにはいられない、タイムセールを利用せずにはいられない、そして多額の請求に追われる日々を過ごす現代人は多い。
    古い小説ではあるが、中身は今と変わらない。そして、女は怖い

  • 面白かった!一気読み。私の中で角田作品ベスト3に入る作品。
    角田さんて本当に女の心の闇を書くのが上手い。
    お金を散在する恍惚感、分かるー!って思ってしまった。大抵の人なら途中でブレーキがかかるんだろうけど、物語ではどんどん歯止めが効かなくなっていく。買い物することでストレスを発散するって女特有なのか。
    不可思議だったのは光太の態度。スイートルームに連泊したりマンションや車を買い与える女が銀行でパートしてることに疑問を持たないのか。それとも確信犯か・・・。

  • 怖い。
    というのは他人事ではなく、なにかのきっかけで自分もこうなってしまうのかもしれない、と感じるリアルさがあったから。
    梨花や亜紀、そして木綿子にもなりたくない。出てくる女性すべてがお金に振り回されていてほんとに怖い話。

  • 1月にNHKでドラマ化された【紙の月】

    夫との二人暮らしの中で何となく違和感を覚えることが多くなっていた梅澤梨花(原田知世)は若葉銀行でパートとして働き始める。
    超が付くほどまじめで貞淑な妻だった梨花が横領事件に手を染める。
    彼女を横領事件へとかきたたせたものとは…

    このドラマかなり好きでした。
    主演の原田知代さんは相変わらずキュートだったし。
    相手役の満島真之介くんは可愛かったし…(笑)。

    これは是非とも原作を読んでみなくちゃ~と、軽い気持ちで読んでみたら面白かった!!

    原作を読んでみて思ったこと。
    ドラマ化や映画化されると「原作と違うやん!」とがっかりすることも多い中、ドラマ【神の月】はかなり原作に忠実でありつつ、ドラマとして秀逸だったということ。
    (あくまで個人的感想ですが…)

    ドラマでは梨花が逃亡した国を明確にしていませんが、映像から「タイだろうなぁ~」と思っていました。
    原作を読んでみるとやっぱりバンコク、チェンマイでした。
    ちょっとうれしく思ってしまう不思議(笑)。

    もう一度、ドラマを見たくなっています。

  • パート先の銀行から1億円もの大金を着服し、逃亡。
    読む前に知り得ていたざっくりしたあらすじから、てっきり「八日目の蝉」的な犯罪・逃亡ものかと思っていたが、予想とはちょっと違った。
    罪を犯してからの逃亡場面から始まるけれど、どうしてヒロイン梅澤梨花がそのようなことをするに至ったかが物語のメインで、梨花、彼女の同級生の木綿子、かつての彼の和貴、友人の亜紀と、それぞれの視点から語られていく。1986年に結婚し、ささやかでも幸せな暮らしをしていきたかったであろう梨花が、夫との結婚生活に小さなすれ違いを感じ始め、銀行のパートに就いてから、彼女の人生の歯車はゆっくり狂っていく。年下の学生・光太と出会い、些細なきっかけから「横領」を罪とも思わなくなってきた梨花の壊れていく金銭感覚。
    転落していく梨花の時代設定も上手いと思った。結婚したのはバブルの頃。働く妻を何となく見下す夫も、この時代の男性だからかと思えなくもない。ヒロインの抱える「空虚」さや、ヒロインが恋する若い男に漂うルーズさ、逃亡先のアジアの描写が90年代の角田作品を彷彿とさせ、事件性を絡めながらハラハラさせられるサスペンス的な展開は、近年の作風を感じさせ。
    そして、梨花のみならず木綿子も和貴も亜紀も、人生を「お金」に振り回されていることが徐々にわかっていく。買い物依存症の亜紀が感じていた「何かを手に入れ損ねているのではないか」という得体のしれない不安は何となく理解できる。自分自身、心の隙間を埋めるようについつい散財しては自己嫌悪に陥り、主婦の木綿子のように、スーパーの底値を調べてちまちまと節約をしてみたり、その繰り返し。誰もが大なり小なり「お金」に振り回された経験を持つのではないか。
    だからこそ、梨花の行いも責めきれないものがある。転落するかしないかなんて紙一重なのではないかと。逃亡した梨花の年齢が丁度今の自分と同じということもあり、自分と重ねては色々とやるせなかった。どの登場人物に対しても、100%共感はできないけど、嫌いになり切れないのである。良心の呵責に苛まれ、それぞれの心の弱さから悲哀が滲み、それが痛々しく、切ない。
    苦々しい思いには捉われたけど、自分の足元を見つめ直すきっかけにはなった。角田さんがドラマ化記者会見で「たくさんお金を使うことに慣れていないので、“ザル”ですけど破たんはしない」と述べていたが、私も同感だ。結局のところ小心者なので、大胆な散財はできないだろうけど、お金にまつわる懊悩は続くだろう。生きていれば。

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著者プロフィール

1967年生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。著書に『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)など。『源氏物語』の現代語訳で読売文学賞受賞。

「2022年 『にごりえ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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