サファイア

著者 : 湊かなえ
  • 角川春樹事務所 (2012年4月15日発売)
3.46
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  • レビュー :400
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411936

作品紹介・あらすじ

市議会議員の選挙アルバイトを始めたことがきっかけで、議員の妻となった私は、幸せな日々を送っていた。激務にもかかわらず夫は優しく、子宝にも恵まれ、誰もが羨む結婚生活だった。だが、人生の落とし穴は突然やってきた。所属する党から県議会議員への立候補を余儀なくされた夫は、僅差で落選し、失職。そこから何かが狂いはじめた。あれだけ優しかった夫が豹変し、暴力を振るうようになってしまった。思いあまった私は……。絶望の淵にいた私の前に現れた一人の女性――有名な弁護士だという。彼女は忘れるはずもない、私のかけがえのない同級生だった……。(「ムーンストーン」より)
7つの宝石が織りなす物語。湊かなえ新境地がここに。

サファイアの感想・レビュー・書評

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  • 湊かなえさん、こんなテイストの作品も書けるんだ?!と、うれしくて。
    今まで読んだ湊さん作品の中で、いちばん好きです。

    7つの短編の中には、背筋がすうっと冷たくなったり、心に重石をされるような
    いつもの湊かなえ節が炸裂する作品ももちろんあるのだけれど
    『ルビー』と『ムーンストーン』の2作だけなら、☆5つつけたいくらい素敵。

    『ルビー』では、過去に罪を犯した人ばかり集めた老人ホームの
    屋上で手を振る老人に屈託なく手を振りかえし、丹精込めて作った野菜を届ける
    日本一、心に垣根のない家族に心洗われます。

    『ムーンストーン』は、本人も気づいていない美点に気付いて
    眠ったままではもったいないと、なんとか引き出そうとする少女の潔癖さと
    救われた少女が抱き続ける深い感謝が、驚くべき仕掛けで描かれて。
    こんな心温まるどんでん返しなら、何度でも味わいたい♪

    ヒロインのただ一度のおねだりが切なすぎる表題作『サファイア』が
    最終話『ガーネット』で温かく結実するのにも救われる思いがしますが、
    『ガーネット』の冒頭、デビュー作『告白』に対する巷の酷評を
    逆手に取ったような描写を見せてくれるのも湊さんらしく、見逃せません。
    怜悧な文章は凄いと思うけれど、あのドロドロは苦手、と遠巻きにしてきた方も、ぜひ。

  • 宝石をテーマにした短編集。
    嫌ミスっぽさもありますが、新境地も示していて、面白い味わいでした。
    「ムーンストーン」が特にいいですね。

    「真珠」
    ムーンラビットイチゴ味の歯磨き粉に執着している主婦50歳。
    真珠のような歯と甘い香りがする口元を褒められてきたという。
    意外な告白とは‥?

    「ルビー」
    瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、家族は素朴に暮らしている。
    裏に大きな老人福祉施設が出来、そこに住む老人が高い窓から、畑に出ている母親に声をかけてくるようになった。
    その老人の正体は‥
    人のいい一家の暮らす風景に和みます。

    「ダイヤモンド」
    恋人の美和にダイヤモンドの指輪をプレゼントした俺。
    雀の命を助けたところ、恩返ししたいという娘が現れるが‥?!

    「猫目石」
    マンションの隣人と親しくなった一家。
    ところが親切心からか隣人が告げてくるのは、家族それぞれの秘密‥?

    「ムーンストーン」
    期待される議員の華やかな生活が一転、失職してから暴力をふるうようになった夫。
    子供をかばって夫を殺してしまった妻の前に現れた弁護士は。
    少女時代の出会いが面白く、いじめや無視を乗り越えていった友情がすがすがしい読後感。

    「サファイア」
    厳しい躾を受けて育ち、人から物をもらわないようにしてきた女性。
    恋人にねだったのはたった一つの指輪。
    そのために無理をした彼は‥?

    「ガーネット」
    「墓標」という長編小説でデビューした女性作家。
    恋人を殺された復讐劇の容赦のなさに対して、賛否両論が巻き起こる。
    映画化されることになったが‥?
    このあたり、作者自身のデビュー作を思わせますね。
    悪徳商法で、その人のためだけの幸運の指輪という触れ込みで高く売りつけるというのがあったのだが‥

    意外な関連が興味深く、がらりと視点が変わるのが面白かったですね。
    技を増やしてきたな、という実感がありました。

  • 宝石にちなんだ7編の短編集。
    読みやすいのだけど、最後がよくわからない…というパターンがいくつかあり、
    ちょっと消化不良なところも。

    「真珠」
    ムーンラビットイチゴ味で人生が変わった女性。
    発売中止となったムーンラビットイチゴ味の素晴らしさを伝えるために仕出かしたことは。

    「ルビー」
    実家の隣にできた特殊な老人ホーム。
    両親と妹は、入居者のおじいさんと交流し、母はルビーのブローチをもらったという。
    最初読んだときはいい結末なのかなと思い、暫くしてから穿った見方もできるなぁと思い、
    もう一度読み直してやっぱりこれはそんなひねくれた終わり方じゃないと思い直し。

    「ダイヤモンド」
    この短編集の中でもやや異色な、ファンタジーなつくり。
    初っ端から、こりゃ詐欺だろう!と思って読んだのだけど、そのままだった。
    結局、車の細工は誰がしていたってことなんだろう?雀さんは無理そうだし。

    「猫目石」
    猫を助けたことで知り合った隣に住む女。
    それから女は何かと付きまとい家族の秘密を暴露するようになる。

    これも最後がわからなかった…、オチで落ちないともやもや。

    「ムーンストーン」
    DVの夫を殺してしまい逮捕されたところに、弁護士として現れた元同級生。
    引っ込み思案であがり症だった高校時代、彼女のおかげで人生が変わった。

    唯一わかりやすくいいお話で終わっていた。
    ムーンストーンがいいスパイスとなって。

    「サファイア」「ガーネット」
    ここは連作になっていた。
    初めて彼氏におねだりをした指輪。
    その指輪を買うために、彼がしたアルバイトとは。そして彼の死の真相は。

    彼が死んでから書いたデビュー作「墓標」。
    酷評される中で映画化されることとなり、指輪を買った人からの声を聞く。

    彼女は彼から解き放たれたのだろうか。

  • 宝石の名前にちなんだ話が7話収録された短編集。
    宝石の名前にちなんだと言ってもその宝石自体が出てこない話もあるし、どの話もその宝石のイメージに沿ったものじゃない。
    そういった、ありきたりな話に落とし込んでないのがいかにも湊かなえさん、という気がした。

    例えば最初の「真珠」という話。
    真珠は清楚なイメージで、母娘のイイ話系の話にするのが普通の所だと思うけど、この話は全くそんな話じゃない。
    関係性の分からない男女の会話が延々と続いていく。
    女性はタヌキのような風貌の中年女性。
    男性は実年齢より老けて見える男性。
    この二人は何者か。
    どういった関係なのか。
    ずっと続く会話の果てにそれが見えた時、このストーリーの全貌が分かる。
    この話では真珠というのは言葉として登場する程度。
    真珠という言葉でこのイメージが浮かび、それをストーリーとして膨らませるのがすごい。

    同じように次の話「ルビー」も、姉妹の会話からストーリーの全貌が見えてくる。
    姉妹の一家は老人介護施設の隣に住んでいる。
    その介護施設の入居者で「おいちゃん」と家族が呼び親しくする老人と、姉の話す「情熱の薔薇事件」と呼ばれる時価一億の宝石の話。
    その二つが最後に結びつく。

    「ダイヤモンド」
    恋人にダイヤモンドの婚約指輪をプレゼントした帰り道、一羽の雀を救った男性。
    その後、彼の家を訪ねてきた女性が。
    彼女は自分は助けてもらった雀だと言い、そのお礼に彼の願いを叶えると言う。
    彼は婚約者の女性が今一番欲しがっているものを調べてきてくれ、と雀に依頼する。
    婚約者の欲しいと思っているものとは-。

    「猫目石」
    同じマンションの住人が飼い猫を探しているのに出くわし、一緒に猫を探してあげた家族。
    彼らは猫を探しあててくれたお礼にと、その住人から他の家族の秘密を聞く事となる。

    「ムーンストーン」
    議員である夫を殺した女性。
    彼女の弁護を担当するのは中学時代に主人公を救い、かばってくれた友人だった。

     この話が一番、宝石が印象的に使われていると感じました。
     さりげないけど、こういうシチュエーションをよく考えつくな~と感心しました。

    「サファイア」
    人にねだる事が苦手な女性。
    ねだるイコール心を開くという式が成り立つとしたら、彼女が人生で心を開いたのはただ一人・・・恋人の男性。
    しかし、彼は皮肉にも彼女の唯一のおねだりをきく事により死ぬ事に-。

     さすが、タイトル作だけあり、これが一番面白いと思いました。
     とても皮肉で、切ない話です。

    そして、最後の「ガーネット」はその「サファイア」の後日談的ストーリーとなってます。

    結末としてはあっけなく「これで終わり?」という物足りなさを感じる話が多いけど、やはり発想だとかちょっとしたシチュエーションだとかは、さすが~と思うもので文章も読みやすい。
    宝石のゴージャスでキラキラしたイメージとはちょっと違う、湊かなえ流短編だと感じました。

  • 第一話 真珠
    ムーンスター製『ムーンラビットイチゴ味』の思い出に関わる事件の話。
    犯人の笑顔から見られる歯が真珠のような歯だったというので真珠というタイトル。
    次は何に例えるのだろう?と次の話に興味が湧く。

    第二話 ルビー
    瀬戸内海に浮かぶ島の思い出はたばこの花。たばこになる前の植物の思い出。そこに老人ホーム『かがやき』が出来る。唯一の民家がそのホームの隣の一軒家。やがてホームの6階のおいちゃんと隣家の一家の交流の話。
    このホームというのがクセモノ。最後の最後にわかるんだ。話の持って行き方がうまいな~。
    ルビーは、おいちゃんがお母さんに送ったルビーのブローチだった。(が、本物かどうかは謎)

    第三話 ダイヤモンド
    雀の恩返し@現代版
    結婚詐欺師にあっている男の人が雀を助けて、雀が人間に変わり男の願いを叶えようとする。
    この話の男、純真といえば聞こえはいいけど、あまりにも自分を知らなすぎる。だから詐欺にあうのか。雀が可哀想だった。
    結婚詐欺の彼女に送った婚約指輪がダイアモンドだった。

    第四話 猫目石
    マンションの隣人が探していた猫を一家が一緒に探し、そこから仲良くなってゆくのだが、その一家の秘密を隣人が暴いていく。
    猫が出てくるだけで、猫目石は出てこなかった。

    第五話 ムーンストーン
    DVを受けている主婦が、子供に手を上げられて逆に夫を殺してしまう。それまでの友達がいないという人生が描き出されていたが、その人生は弁護士になった友人の話だった!というどんでんがえしがあった。友情っていう絆は強いなぁ~と感動した話。
    ムーンストーンはハワイ土産に友達が買ってきてくれたのだが、その話の中の主人公には当然のことのように買ってきてくれていない。そこで、ピアスを友達二人で分けた。そのムーンストーンのピアスをしていたのが弁護士だったというお話。

    第六話 サファイア
    人生の中で、たった一度だけおねだりしたのが彼で、サファイアの指輪だった。ある日彼はホームから転落した。それは事故なのか殺人なのか。実は彼は悪徳商法のバイトをしていた。それの恨みで突き落とされたのか?なぞは謎のままで終わる。
    サファイアは彼女の指輪だった。

    第七話 ガーネット
    第六話の続きの話。取り残された彼女は就職し、職場でのいじめに負けずに小説家になる(これは夢の中で彼が暗示していたこと)。その小説が映画化に決定し、その主演女優とインタビューをする。そこで女優の指輪があの時の悪徳商法で買った事が判明したり、インタビュー時に持っていたバックから、ファンレターが届く。そのファンレターには亡くなった彼氏から指輪を買ったらしい女の人からのいきさつが書かれていた。
    世間ってせまいって言っちゃったらそれまでだけれど、
    うまくつなげたなぁ~と思った。


    最初は第一話で『う~ん。こんな話があと6話も続くのかなぁ~』とちょっとがっかりしたのだけれど、2話目のルビーが面白く、次に読み進める事ができた。

  • 宝石は女を輝かせるモノなのか否か。
    7つの石とそれに纏わる女達の短編集。

    湊かなえ作品を読むたびに感じる、この寂寥感はなんだろう?
    それが例えハッピーエンドであっても
    読了後の心に冷たい風が吹いている感じがする。
    この作品も然り。
    今夜も激しい風が吹く寒い晩なのだけれど
    それ以上に今、寒い。

  • 様々な形での恩返しの物語。
    救われるものもあれば、幸せでない恩返しもある。

    好きだったのはサファイアとガーネット。
    『告白』を思わせる小説への言及に湊かなえの小説家としての凄みを感じた。
    紺野へ送られてきた手紙が、小説とは何であるかを述べていると思う。

    巡り巡って紺野が救われていくのがよかった。
    決して救われて良かった、というわけではないけれど
    希望を感じられた。

    タナカの不器用な優しさが好きだった。

  • 綺麗な宝石に秘められた
    深い謎と人々の切なる想い。
    人間の内なる闇と祈りを描き切る、珠玉の物語。


    あなたの「恩」は、一度も忘れたことがなかったーー
    「二十歳の誕生日プレゼントには、指輪が欲しいな」わたしは恋人に
    人生初のおねだりをした……。
    林田万砂子(五十歳・主婦)は子ども用歯磨き粉の「ムーンラビットイチゴ味」が
    いかに素晴らしいかを、わたしに得々と話し始めたが……。
    人間の摩訶不思議で切ない出逢いと別れを、己の罪悪と愛と夢を描いた傑作短篇集。
    (装画・清川あさみ 解説・児玉憲宗)

  • 宝石の名を各章に持つ短編集。

    どれも最後に予想を覆されるのだが、中でも『ムーンストーン』は完全に著者の誘導に乗ってしまった。
    目立たなかった少女。
    からかわれたことで、あがり症になってしまったのだ。
    教師もそれをネタにからかう。
    いや、教師はそんな自覚はなく、ただ、ウケよう、笑いを取ろうと思っていただけなのだが。
    その窮地を救ってくれたのが小百合という同じクラスの少女だった。
    それがきっかけで彼女の人生は変わっていった。

    はじめはおごり、高慢な気持ちがあったのかもしれない。
    だが、たとえきっかけが何であれ、誰かのために手を差し出すのは難しいことだ。
    正義感が強ければなおさらだ。
    現実の自分と理想の自分との相違に悩むことも少なくはない。

    友よ、と私も思う。
    君のために私は戦うことができるだろうか?

    『サファイア』『ガーネット』は連作だ。
    特に『ガーネット』の方は、本質的に内向的で陰気な私にとってはなかなか興味深く共感できるものだった。
    暗く、憎しみに満ちた世界は苦しい。
    己の醜さを拡大鏡で映し出されているような気がするからだ。
    その一方で美しく明るい世界に憧れを抱く。
    そしてそれがどこかにあると信じたくてたまらない。
    子供のような純粋な心、という例えでは表しきれない、真っ白な部分。
    それを守りたくて私は生きている。
    そして、求めればそれは与えられる。
    自分の中から。

  • 宝石がタイトルになっている短編集。
    溱さんの短編を読むのはたぶん初めてじゃないかな〜。もともと好きな作家さんというのもあるし、うん、悪くはなかった。というかやっぱ好きだな。少ないページ数でもちゃんと溱かなえ色は出てるし。

    ただ、小説は短編よりも長編好みなので少し物足りなさはあった。

    最後の2作品は連作になっていて1番好きだった。モヤモヤするけど感動するっていう訳分からない感覚だけど、グッと心を掴まれた。読後感は良し。

    真珠/ルビー/ダイヤモンド/猫目石/ムーンストーン/サファイア/ガーネット

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