サファイア

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.49
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本棚登録 : 3665
感想 : 475
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411936

作品紹介・あらすじ

市議会議員の選挙アルバイトを始めたことがきっかけで、議員の妻となった私は、幸せな日々を送っていた。激務にもかかわらず夫は優しく、子宝にも恵まれ、誰もが羨む結婚生活だった。だが、人生の落とし穴は突然やってきた。所属する党から県議会議員への立候補を余儀なくされた夫は、僅差で落選し、失職。そこから何かが狂いはじめた。あれだけ優しかった夫が豹変し、暴力を振るうようになってしまった。思いあまった私は……。絶望の淵にいた私の前に現れた一人の女性――有名な弁護士だという。彼女は忘れるはずもない、私のかけがえのない同級生だった……。(「ムーンストーン」より)
7つの宝石が織りなす物語。湊かなえ新境地がここに。

感想・レビュー・書評

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  • 湊かなえさん、こんなテイストの作品も書けるんだ?!と、うれしくて。
    今まで読んだ湊さん作品の中で、いちばん好きです。

    7つの短編の中には、背筋がすうっと冷たくなったり、心に重石をされるような
    いつもの湊かなえ節が炸裂する作品ももちろんあるのだけれど
    『ルビー』と『ムーンストーン』の2作だけなら、☆5つつけたいくらい素敵。

    『ルビー』では、過去に罪を犯した人ばかり集めた老人ホームの
    屋上で手を振る老人に屈託なく手を振りかえし、丹精込めて作った野菜を届ける
    日本一、心に垣根のない家族に心洗われます。

    『ムーンストーン』は、本人も気づいていない美点に気付いて
    眠ったままではもったいないと、なんとか引き出そうとする少女の潔癖さと
    救われた少女が抱き続ける深い感謝が、驚くべき仕掛けで描かれて。
    こんな心温まるどんでん返しなら、何度でも味わいたい♪

    ヒロインのただ一度のおねだりが切なすぎる表題作『サファイア』が
    最終話『ガーネット』で温かく結実するのにも救われる思いがしますが、
    『ガーネット』の冒頭、デビュー作『告白』に対する巷の酷評を
    逆手に取ったような描写を見せてくれるのも湊さんらしく、見逃せません。
    怜悧な文章は凄いと思うけれど、あのドロドロは苦手、と遠巻きにしてきた方も、ぜひ。

  • 湊かなえさんの本はまだ読んでないものもある。

    宝石をモチーフにした短編。
    「猫目石」あたりからの後半が好き。
    1番好きなのは「ムーンストーン」
    あんな親友がいたら頼もしいし、途中まで逆に考えていて、湊さんにまんまとやられたパターン。

    やっぱり面白い、湊さんの本。

  • 宝石をテーマにした短編集。
    嫌ミスっぽさもありますが、新境地も示していて、面白い味わいでした。
    「ムーンストーン」が特にいいですね。

    「真珠」
    ムーンラビットイチゴ味の歯磨き粉に執着している主婦50歳。
    真珠のような歯と甘い香りがする口元を褒められてきたという。
    意外な告白とは‥?

    「ルビー」
    瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、家族は素朴に暮らしている。
    裏に大きな老人福祉施設が出来、そこに住む老人が高い窓から、畑に出ている母親に声をかけてくるようになった。
    その老人の正体は‥
    人のいい一家の暮らす風景に和みます。

    「ダイヤモンド」
    恋人の美和にダイヤモンドの指輪をプレゼントした俺。
    雀の命を助けたところ、恩返ししたいという娘が現れるが‥?!

    「猫目石」
    マンションの隣人と親しくなった一家。
    ところが親切心からか隣人が告げてくるのは、家族それぞれの秘密‥?

    「ムーンストーン」
    期待される議員の華やかな生活が一転、失職してから暴力をふるうようになった夫。
    子供をかばって夫を殺してしまった妻の前に現れた弁護士は。
    少女時代の出会いが面白く、いじめや無視を乗り越えていった友情がすがすがしい読後感。

    「サファイア」
    厳しい躾を受けて育ち、人から物をもらわないようにしてきた女性。
    恋人にねだったのはたった一つの指輪。
    そのために無理をした彼は‥?

    「ガーネット」
    「墓標」という長編小説でデビューした女性作家。
    恋人を殺された復讐劇の容赦のなさに対して、賛否両論が巻き起こる。
    映画化されることになったが‥?
    このあたり、作者自身のデビュー作を思わせますね。
    悪徳商法で、その人のためだけの幸運の指輪という触れ込みで高く売りつけるというのがあったのだが‥

    意外な関連が興味深く、がらりと視点が変わるのが面白かったですね。
    技を増やしてきたな、という実感がありました。

  • 宝石を巡る短編集。最後の2話は繋がった話でしたが、タイトルになってる話だけに読み応えがあり、涙が出てきました。何の涙なんだろ…悲しいとも嬉しいとも違うような、でも全部含まれてるような。たぶん物語を通して、作者から応援してもらってるような、そんな気持ちになった2話でした。

  • 真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、サファイア、ガーネットの7つのお話からなる短編集。
    あ!そういうこと?!という展開あり、ファンタジー要素あり、後味がドキドキする終わり方あり、希望が持てる結末もあり…どのお話も楽しめました。私の一押しは、ルビーです。
    作中に山の話がちょこっと出てくるのも、『山女日記』が好きな私にとって嬉しいポイントです。

  • 七篇いづれもおもしろく、、ムーンストーン、なんと言っても、ムーンストーンです。

    過剰防衛で窮地に陥った「わたし」を助けに来てくれた敏腕弁護士。中学時代の回想から現在に戻るときの宙返り感といったら。(『弁護側の証人』と似たような、「やられた感」。)

    最後の『ガーネット』は、デビュー作『告白』を巡る膨大な賛否両論を逆手に取ったような作品で、湊かなえさんの、作家としての自負心と苦悩が垣間見えました。

  • 読みやすく面白い短編集。
    後半になるにつれ盛り上がっていった。

    イヤミス感も少なく読みやすいけど、誰かに内容を教えようとしてもあんまり思い出せないかもしれない。でもどれも面白かったのは間違いない。短編故かな。

  • 湊さんはデビュー作の「告白」が最高傑作と思うので、あとの作品を書くのが大変じゃないかと思ってしまう。私としては長編より短編連作の方が好きな作品が多いです。この作品は宝石をイメージしての短編で、表題作のサファイアと連作のガーネットがいいですね。湊さんの作品はハッピーエンドが少ない、この作品もそうでした。なぜかここまで全ての作品を読んでいるのですが、やはり気になる作家、湊かなえこれからも良き作品を期待しつつですね。

  • 私はドロドロしたイヤミスが好きで、
    今回はちょっとアッサリした感じがしたけど、
    でも、おもしろく読めたー!!
    好きだったよー!!

    真珠
    ムーンラビットイチゴ味の歯みがき粉がないとダメなの。
    ルビー
    老人福祉施設「かがやき」にいる、おいちゃんは何者?
    ダイヤモンド
    雀女の恩返し。
    猫目石
    キルマカット・エリザベス三世という名の猫。
    ムーンストーン
    正義感溢れる彼女にやっと恩返しができる弁護士。
    サファイア
    ねだることのない彼女が初めておねだりしたのが指輪。
    ガーネット
    悪徳商法で買った指輪が人生を変えていく。

    ムーンストーンが読んでて、スッキリした。
    すごい良い友情を見せてもらった感じ!!

    あとサファイアからのガーネットは、良い感じに
    やられたーって感じ!!
    短編だから、ひとつひとつの話は軽い感じだけ
    おもしろく読めたよー!!
    満足ーー(*´艸`*)

  • 宝石にちなんだ短編集。
    イヤミスっぽいものもあったけど、特に後半は心温まるものが多かった。
    特にムーンストーンとガーネットが好みだった。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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