カード・ウォッチャー

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 303
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412131

作品紹介・あらすじ

ある日、遅くまでサービス残業をしていた研究員・下村が起こした小さな事故が呼び水となり、塚原ゴムに臨検が入ることになった。突然決まった立入検査に、研究総務・小野は大慌て。早急に対応準備を進めるが、その際倉庫で研究所職員の死体を発見してしまい…。現役サラリーマンが描く、新感覚ロジカルミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか結末が予想できずに面白かったです。
    悪人ぽい悪人が出てこないところも、機転の利く働きをする奴がいつも出てくるとこも好きです。

  • 退社時刻はみんな揃って17:55、入社以来そういうものだと考えていた塚原ゴムの研究室の面々。
    ある日、遅くまでサービス残業していた研究員・下村の座席の背もたれが破損してひっくり返り、手首に軽い怪我をしてしまう。
    妻が知人にそのことを話したところ「労災では?」と言われ、それがきっかけで労働基準監督官による臨検が入ることに。
    大慌てで対応をすることになる研究総務の小野だったが、そんな最中、倉庫に研究所職員の遺体を見つけてしまって……

    労働基準監督署の切れ者監督官・北川がホームズ役のミステリ。
    労災隠しから、臨検に入りサービス残業の実態解明に入るのがメインですが、その最中で起こった不審死が元で、対応する総務担当の下村とその上司米田が奮闘します。
    臨検中に死体が見つかってしまうと過労死が疑われるかもしれないと思い、必死に隠すのですが……

    石持さんの作品にしては毒が少ないかなという感じですが、基本的に「悪人らしい悪人はおらず、善人らしい善人もいない」というらしさの出た作品。
    労基署の監督官が探偵役ということもあって、続編が見てみたい気もしますが、なかなか難しいかなぁ。

    カバーに穴が空いていて、カバーの裏側に書かれたタイムカードがちらちらと見える装丁がなかなか素敵です。

  • 初・石持 浅海
    「特殊な状況下や斬新な設定での論理的推理に定評がある。」らしい。

    (株)塚原ゴムの研究所で、残業中の社員が伸びをしたら椅子の背もたれが突然ぶっこわれて、怪我をする。
    といっても割合に軽症で済んだのだが、労災だと労基署に訴えがあったことから、職場に臨検が入り、まさにそのタイミングで、一人の社員が社内の倉庫で死体で見つかる。

    過度のサービス残業がベースにあるのは、昨今のブラック企業問題を反映しているのでしょう。そこのところは共感を得やすいし、真相究明への過程はしっかりした構造物を思わせる明解さを感じます。
    が、キャラが弱いかなぁ......
    洞察力にすぐれた労基署署員を際立たせたかったようにも思うのですが、台詞が優等生なのでしょうか。
    ダンダリンと重なったのもアンラッキーかな。

  • 労働基準監督署の役人・北川が探偵役という風変りな設定の倒叙ミステリーです。
    北川が来るということで慌てて準備をする総務が、偶然職員の死体を発見します。サービス残業の発覚を恐れ死体を隠蔽する総務と、労働基準監督官との行き詰る攻防が繰り広げられます。「労災」という発想がないのはどうかと思いましたが十分楽しめました。
    ややあっさりしていますが、サービス残業や労災など身近に感じるテーマをミステリーの題材に使うアイデアは評価に値すると思います。

  • タイトルのカードはタイムカードのことで、労働基準法?を破ってしまったとある企業が監督官?の査察を受けることになるんですが、来る直前に社員の死体が発見され……
    なるほど、そういうことか、そういえば伏線はられてたなあ。という結末でした。おもしろかったです。

  • 労災を確認しに来るはずの労働基準監督署の職員にサービス残業の実態を知ってほしいと考えた一所員のささやかな仕掛けが・・・
    次々と思考を巡らせ畳みかけるように整理されてゆく事実、仮定、推測。
    公務員としての義務も果たし、尚且つ人間味あふれる署員もいい人ですし、研究所所員として上を立て、部下の女性をを守りながら論理を構築してゆく彼も素敵です。解決してゆく過程が爽快です。

    この本は石持さんの持ち味が余すところなく表現されてます。

    誰も悪くないのに、死体が一つ。当て馬とされた死体には申し訳ないのですが、面白い小説です。

  • とても珍しい労働基準監督官が探偵役となった労災ミステリー。
    北川と介良のコンビがいい感じ。シリーズ化するのかな?

  • 労基ミステリーとでもいうのだろうか。
    サービス残業が当たり前になっている研究所で起こった小さな労災。総務が労基の臨検に備えて準備をしていたところ、不自然な状況で死んでいる社員が発見される。過労死が会社に与える影響を考慮し、労基をやり過ごそうとするが…。
    後半のどんでん返し展開はこの作者ならではだと思った。

  • ある日、遅くまでサービス残業をしていた研究員・下村が起こした小さな事故が呼び水となり、塚原ゴムに臨検が入ることになった。
    突然決まった立入検査に、研究総務・小野は大慌て。
    早急に対応準備を進めるが、その際倉庫で研究所職員の死体を発見してしまい…。
    (アマゾンより引用)

    こんだけブラックな会社なのに、社員が不平も言わず働いてることにビックリする。

  • あれ、結構前の本なんだな。図書館で偶然見つけて借りたもの。表紙にパンチ穴が開いてて、下に何か書かれてるけど、図書館の本でカバーがされてるから中が見えないのが残念。石持浅海らしい、論理攻めの暴き。でも過労死じゃなくて事故か殺人か、ってのはびっくりした。しかし、切ない話だった。相手を思って良かれと思ってやったことでその人が死んでしまうなんて。ほんと生きていかれないほどのショックだ。今はこんな会社がないことを願う。

  • 軽いテンポで、人が死んでいて、救急車も呼ばずに、あり得ない展開が進む。そしてこれが普通みたいに描かれている。労災隠しだとか、労基の立入とか、研究所とか、工場が秩父とか、自分と関わりあることばかりで、面白く読めた。

  • サービス残業が当たり前の製造業の研究室に、ちょっとしたことから労基が監査に来た。
    対応に追われた総務課は、なんと間の悪いことに自社の倉庫で死体を発見してしまう。


    それぞれが最善と思う行動をとっているが、その論理がブラック企業にありがちなもので気持ち悪いなーと思いつつ内容が面白いのであっという間に読んでしまった。

  • 外から見たらおかしな職場の常識ってあるね。

  • 不正の是正はともかく、行政指導は面倒でやっかい。
    なかなか楽しめた。
    労基に特化してミステリーっぽさを抜いた方が好きかな。

  • 10/13/2016 読了。

    図書館から。

    ひとつの会社にずっといるって、
    ある意味すごく怖いことなのかもなって。

    まあ世の中大半の人は、生涯同じとこだけど。

    労働監督官も気になって調べたことがあったので、
    面白かったです。

  • 労災で監査中に死体を見つけられてあわてる話。
    きれいにまとまってる。

  • 追い詰められていく過程&相手のまさかの対応がなんとも快感!落ちはあっさり平凡...ではあるけど。

  • 着眼点は面白いが、もう少し重い仕上がりにした方がストーリーが生きた気がする。探偵役の北川さんはなかなか魅力的です。

  • 石持の作品でしばしばイラつくのは、1つの仮定が提示されると、他の可能性を検証することもなく、それに飛びつくところ。しばしばワトソン的(=あまり頭良くない位置づけ)の視点人物がそうするだけでならその人がおバカだからというだけだが、結局その仮定が真相でした、ということになることが多いので、お話自体が非論理的で頭悪っぽい。なのになぜか論理的であると装っている気配がするのが一番イラつくのかな。
    この作品は、視点人物だけでなく犯人も愚かで、プロバビリティの犯罪なのに、遂行されなかったことに戸惑ってやんの。偶然任せにすることのリスクも全く考えていなかったようだ。その愚かさが引き起こした悲惨な事態。
    ふつう気づくだろ、という点に敢えて目をつぶる不自然さも目に付く。八尾氏の不在を基礎研の人らがどう思っているかに思いを致すの遅すぎる。椅子から転落して負傷したのが発端なのに、椅子で寝ていて(ソファとかではなく、壊れたオフィス用チェアを4つ並べてそのうえで寝るという、私だったら試してみようとも思わない怖い寝方で! それだったら新聞紙でも敷いて床で寝るわ、というか、椅子でも座ったまま寝るわ)死因が頭蓋骨骨折とわかった後も、寝てて転落して打ち所が悪かったという可能性に(意地でも)気づかない不自然さ。労基署が臨検に来るのに、個別具体的に言わなければ勤務状況の調査はしないと思い込む(だろうと思う)という組織人にあるまじき硬直した思考(これは研究バカだからかも?)。
    まあ一番異常なのは、職場で同僚が倒れていて、目立った外傷もなく死後間もない状態なのに、素人のくせに死んだと決めつけて救急車を呼ぼうとしないところだけど(素人のくせに心音と瞳孔反射見て決めつけるんだわさ)。古典的ミステリなら、実はそのときはまだ生きていて、死んだと決めつけた人がとどめを刺した真犯人、という展開になりそうではないかw。
    叙述上のナゾとしては、主に職場の話で男性は苗字で記述されるのに、女性は下の名前で記されること。青木は視点人物が個人的好意を持っているからで、主婦の1人は夫と区別するためで、もう1人はそれとバランスとってかと一応理由が考えられるが、谷口は不明。そんな中、1人だけ苗字で呼ばれる女性がいて、それがすごくディスられてる。彼女の判断がコトを悉くまずい方向に導いたような書き方になっている。一番異常な非人間的な所業も彼女のものだし。名の記述の仕方と関係あるのかな? まあ主婦らの描き方と合わせると、女をバカにしてるのかな? という気がしないでもない。勘繰りすぎか?

  • 石持さん 初めて読みました。

  • 労災確認のはずが、気付くと殺人事件解決に。
    このいつの間にかの流れが面白かった。
    残業申請は真面目に。

  • サービス残業中の小さな事故をきっかけに、塚原ゴムに労働基準監督署の臨検が入ることになった。研究総務・小野は突然のことに大慌てで準備を進める中、研究員の死体を発見してしまう。とっさに過労死を疑った研究総務は臨検終了まで死体を隠そうと奮闘するが…。

    発端となった労災のみの調査だと思っている研究員たちの会話がややコミカルにえがかれている。今の状態が異常だという認識がない彼らになんともいえない気持ちになる。
    一方、調査の目的を知っている研究総務のふたりは、労働基準監督官の北川が次々とサービス残業の実態と過去の労災隠しを暴いていく中、ジリジリと追い詰められながらも応対を続ける。
    笑顔でバッサリと斬っていく北川に、研究員たちもようやく事の重大さを認識していく。
    このじわりじわりと北川が攻めてくるところが見もの。

    スケールは大きくはなく軽く読めるけれど、とても著者らしさの出た作品。
    労働基準監督署の面々はまたお目にかかりたい。

    装丁がユニーク。

  • 2014.3.26
    労災とサービス残業の話
    大企業っぽいのに脇が甘い会社

  • 娯楽小説としては完成度高いと思います。労働基準監督署の仕事の勉強にもなります。語り部がいろいろ他人の感情を推察しすぎかな? 何となくモヤモヤしたものが残らんでもないけど、面白いことは面白かったです。

  • 労災の内部告発を受けて臨検にやってきた労基の監督官が主人公のミステリ。著者にしては珍しく推理展開に説得力があって感心させられました。これは是非ともシリーズ化していただきたいです。

  • 石持先生って本当に悪人らしい悪人を書かないな〜。だけど、それだけに後味は悪い…(°_°)汗

    久しぶりの石持浅海作品です。
    穴が空いたカバーと、カバーの裏側に書かれたタイムカードの装丁がいい感じ〜( ^ω^ )

    今作は、勤務時間を大幅にオーバーして残業をしている社員からは会社に対する不満なども一切感じられない、「この手のサービス残業なんてザラなんだろうな〜」と読者に思わせる会社内で事件が発生します(長)。

    社員が残業中にちょっとした怪我をしちゃって、それがキッカケで労基局の監査が入っちゃって、しかもその直前に社員の変死体が発見されちゃって、監査に来たカードウォッチャーがメチャクチャやり手で…って、監査の対応に当たる使命を帯びた小野くん(と上司の米田さん)(米田さん、大事なところでほぼ役立たず笑)、お疲れさまです!!と多大な同情を禁じ得ません(笑)。

    変死体を必死で隠そうと2人が奔走する姿がコミカルに描かれますが(やってることは犯罪スレスレ…(°_°))、一番の読みどころは、やっぱり彼等の発言や振る舞いの矛盾点を笑顔で容赦無く指摘する、カードウォッチャー・北川さんです‼︎!
    相棒の介良くんと合わせてシリーズ化の匂いがプンプンしますが、ワトソン役は当事者側であるはずの小野くんだったのも面白い(笑)。

    事件は、中途半端に北川達を煙に巻こうとした小野くん&米田上司が、発言の矛盾点を突かれて、あれよあれよと変死体の存在がバレてしまうという、北川コロンボの光る手腕で発覚します。

    そこからは、被害者が現場にいた謎・椅子が動かされていた謎など、一つ一つの瑣末な謎を北川が指摘し、気付けば驚天動地の真相に至っていました〜ビックリ!で終わるのですが、よくよく考えたら、序盤の北川さんの推理はいくらなんでも穿ち過ぎじゃなかろうか(笑)。
    「所内にいるはずの人物がいない!あそことあそこは部屋の中まで確認した!ということは、彼はあそこにいて、しかものっぴきならない状態に違いない!」
    なんて、なかなか行き着かない結論じゃないかなあ(笑)。
    とにかく、今後のシリーズ化を期待したい作品ですが、労基局監督官がホームズっていうのも、なかなか書きづらそうだなあ…


    サービス残業中に手首に怪我を負った研究員・下村のアクシデントをキッカケに、塚原ゴムに臨検が入ることになった。大慌てで対応に当たる総務・小野だったが、その最中に何と、社員の死体を発見してしまう!過酷なスケジュールでの出張が続いていた人物の死に、咄嗟に過労死だと判断した小野たちは、何とか査察終了まで事態を発覚させまいと奮闘するが…。

  • ドラマ「ダンダリン」を観てからの本作だったので
    労基や臨検といった流れも捉えやすお話に入ってゆけました
    研究所で働いてる人たちが臨検を通して
    労働基準監督官の北川さんとのやりとりを通して
    変わっていく様子が見事です

  • 読んだことあるような・・・。死体を知らないふりするあたり。気のせいか。

  • 主人公が鮮やかな推理で僅かな矛盾を突き崩す石持浅海のパターン。
    今回は研究所と労働基準監督官のせめぎあい。職員の死が思いの外軽く書かれているのが少しもったいない。

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著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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