ヒーローインタビュー

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412247

作品紹介・あらすじ

仁藤全。高校では42本塁打を放ち、2000年に阪神タイガースの8位指名を受け入団。強打の外野手として期待されたものの伸び悩み、2010年までの10年間で171試合に出場、通算打率2割6分7厘で8本の本塁打に終わる。もとより、ヒーローインタビューのお立ち台に上ったことはない。しかし、彼について語るところのある者にとって、仁藤はまぎれもなく英雄だった-。彼の担当スカウト、好意を寄せる女性、タイガースで後輩にあたるドラ1投手、因縁浅からぬドラゴンズのベテラン左腕、高校時代に野球部でバッテリーを組んでいた男、それぞれが語る、ひたむきなプロ野球選手が輝いた一瞬。

感想・レビュー・書評

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  • 絶品な小説である。二軍の帝王との揶揄された阪神タイガース仁藤全の活躍を周りの人々にインタビューする形式で物語は進んでいく。他者からの目線の中で仁藤の良さがきっちりと形成されるのがいい。読んでいて目頭が熱くなるのは仁藤自身が恵まれた生活を歩んでいるわけではないからだろう。それでも腐らずに野球に取り組む姿は他者から見れば立派なヒーローなのだろう。それがラストで結実するシーンは見応え十分で野球小説の真髄をいっていると思う。努力すればいいことが、とはいかないのが人生だが、頑張ってみようと背中を押してくれる小説だ。

  • 才能もあり努力もできる人でも、運に見放されると開花できないもどかしさとを感じながら読んだ。子どもの頃から恵まれた環境でプレーできず、仲のよかったチームメイトの不祥事で出場機会をなくし、それでも不貞腐れないゼンは気持ちのいい青年だと思った。みんなに愛される選手の活躍をもっと描いてほしかったが、現実は厳しいものだと突きつけられた。
    阪神の懐かしい選手たちや、テレビで何度も見たプレーも出てきて楽しく読めた。

  • 最初は「なんやパッとせん話やなぁ(--;)」と思っていたけれど「おぉこれはあの人か?(^^)」とか「あぁこんな事あったなぁ(*´ー`*)」と読んでいるうちにズルズルと…(^^;)そして「その瞬間」では即席トラ吉になった(*゚Д゚*)♪「チャーシューメン」って、私はテニスで言われたけれど、野球でも通用するのね(゚∀゚;)

  • 仁藤全という冴えない野球選手の話を知り合いへのインタビュー形式で進む。
    後半までは今まで読んできた中でも有数の面白さ。
    ただ、甲子園球場での最終戦で史上初の場外ホームランを打ち2割8分の打率を残した28歳の選手が解雇されるなど後半現実味がなくなってしまったのが残念。
    最終章の仁藤さんを取材している「私」と呼ばれる人物と仁藤さんとの絡みも弱く、果たしてどうしても場外ホームランにする必要あったのだろうか?
    これが場外ホームランでなければ解雇されたという話も一応の筋は通るのだが。
    最後以外はとても面白かっただけに残念。

  • 終盤に向けて、コツコツと積み上げたエピソードを、締めで使い切れてなく残念。

  • 阪神タイガースに所属していたという架空の設定、プロ野球選手として天性の才能を持ち合わせるもチャンスに恵まれない選手生活。人として、選手として周囲の人々に愛された仁藤全の物語。阪神という身近な球団を舞台にして登場する人物も聞いたことのある名前が多数。試合の場面では、甲子園に一度でもいったことがあれば、仁藤がネクストバッターズサークルに進み、素振りをする姿、スタンドに巻き起こる大歓声、舞い上がるジェット風船、自分がライトスタンドからまるで試合を観ているかのような感覚に。クライマックスは前代未聞、実際の試合で起こったら阪神間は驚天動地!?

  • それぞれの目線での出来事、思い出
    野球を通して、ジンさんを通して感じたこと、起こったこと

    人とゆうのは忘れっぽい
    まさに
    忘れないと生きていけないから?自分事ではないから?
    大切なことは見失わず、忘れず生きていきたい

    今生きられてることが幸せであると感じて


    登場人物が多く、誰だっけ?ってなってしまった
    忘れっぽい私である

  • 地元尼崎の高校から阪神にドラフト8位で入団した仁藤全。在籍10年間で1軍と2軍を行ったり来たり。10年目の中日の超ベテラン投手から甲子園球場で場外ホームラン。「チャーシューメン」の一振。いやいや、狭い神宮や東京ドームならあるだろうけど甲子園では。記憶に残る男を象徴した設定。全を見いだした阪神のスカウト、高校の同級生、阪神のドラ1位の後輩投手、中日のベテラン投手、そして全に思いを寄せる理容師の庄司仁恵などが泥臭い関西弁で語る。プロ野球を題材にした話だが華やかさはなく、全は戦力外通告を受け静かに球界を去る。

  • 2000年代阪神タイガーズに在籍したヒーローに成りきれなかった選手の回想録。フィクションで書下ろし

    一 庄司仁恵
    二 宮澤秋人
    三 佐竹一輝
    四 庄司仁恵
    五 山村昌司
    六 宮澤秋人
    七 佐竹一輝
    八 庄司仁恵
    九 鶴田平
    十 その瞬間
    十一 宮澤秋人
    十二 私

    1軍と2軍を行ったり来たりの仁藤全(あきら)

    ゼンと愛称で呼ばれながら、かかわった人たちのエピソードがゼンの良さをしみじみと伝えている。

    不器用だけど、まっすぐ野球に打ち込んできた選手。

    何処にでもいそうな選手で現実の世界にも同じようないい話がいっぱい隠れているかもしれないと感じさせてくれる。

  • ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」が流れる。背番号55の仁藤全がバッターボックスへ向かう。中日のピッチャーはベテラン山村。仁藤が一瞬ニヤリとする。甲子園が揺れる。ホントに面白い一冊だった。暖かくて、かっこ良くて。最高だった。

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂井希久子の作品

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