お葬式

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.16
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本棚登録 : 145
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412544

作品紹介・あらすじ

尊敬する父親が、百合の花を買いに出かけて事故死した。二年前に母親を亡くして以来、父と二人きりで仲良く暮らしてきた大学生の息子・在は、几帳面な字で書かれた父親の驚くべき遺言を手にする。徐々に明らかになっていく父親の過去は、在の想像を超えた残酷なものであったが…。慈愛の心に満ちた者たちを瑞々しい筆致で描ききった、著者渾身の長篇!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルが怖いので、図書館から借りて、しばらく置きっぱなしにしていた本です。

    大学で建築を学ぶ片瀬在(ある)のたった一人の肉親である、父の和彦が交通事故で亡くなります。
    母の由香里は在が18歳の時にガンで亡くなっています。

    父が亡くなる前に在は父が一番好きな花である百合の花を持った、昔の南川高校の制服を着た少女に出会っています。

    そして在は、父が、家の中で秘密基地と呼んでいた場所が昔、南川高校に通っていた、父が同棲したことのある少女森下翠との思い出の場所であり、翠は、父の子供を流産したあと交通事故で亡くなっていることを知り愕然とします。

    そして、父が亡くなる前に出会った謎の少女は翠の姪の森下水樹という少女であり、逢ったことのない伯母を慕い、父と会っていたことが判明します。
    そして、父の死の真相と、水樹と父の仲を疑い出します。

    在は父が翠が産むはずだった子供にも在という自分と同じ名前を付けようとしていたことを知り苦悩します。
    そして、和彦のことを何も知らなかったことに気づきます。

    翠は高校生のときの日記を遺しており、和彦も在に遺言を残していました。
    在は、父が亡くなってから本当の父を知り、父の愛情は二つとも真実であったと納得するまでの物語です。

    肉親を四人亡くしていた和彦にとっての翠と由香里のそれぞれの存在がどれ程大切だったか、家族のいない者の悲しみが伝わってきました。

  • 容姿端麗、物腰柔らかく誰からも好かれる憧れの父親
    そんな父親が交通事故で突然亡くなった。
    父親が秘密を抱えていた…
    自分の知らない父親の過去とは…



    憧れどころか、もうファザコンですね笑
    ちょっと遠田さんらしくないストーリーに驚いたんですが、そうは言っても引き込まれてしまうんです笑

    今作も色々な不幸な境遇の人や酷い人が出てきます。
    もう遠田さんを何冊も読んでいると、さほどの不幸には驚かずにいる自分( ̄▽ ̄)

    悲しい父親の過去が死の時に少しでも救われていたと思いたい。

    もしこれが遠田作品じゃなかったなら
    ☆4つかもしれないな笑






  • 実父の一周忌を目前に控え手に取った作品。
    ファザコンと言われながらも、完璧な父を尊敬していたのに次々に暴かれていく過去の秘密。
    自分が在なら耐えられないかも。墓場まで持って行けよと思ってしまった。

    三姉妹の真ん中の実母が、祖父の忘れられない恋の相手の名前をつけられて、それを知った姉妹達によく苛められたという話を思い出した。

  • 父親の謎の行動。突然、亡くなってしまったらさらに気になる。
    家の前で少女に出会わなければさほど気にならなっただろうに、出会ってしまったら調べてしまうわなぁ。

  • 8月-4。3.0点。
    ダンディな父が、交通事故で死亡。父には昔愛して、交通事故に遭った女性がいた。
    その女性の名と知り合う主人公、父の真意を探るためにいろんな人に話を聞く。

    あっという間に読めるが、あまり共感できなかったな。

  • 大学生の在は、2年前に母親を亡くして以来、
    父・和彦と二人で助けあって暮らして来た。
    父親は、在にとって憧れで尊敬する完璧な存在だった。
    そんな父が、百合の花を買いに出掛けて事故死した。
    几帳面な字で書かれた驚くべき遺言を手にした。
    『葬儀不要、戒名不要、弔いごと一切不要…。
    ある程の、百合を投げ入れよ 棺の中』
    在は茫然とした。わけがわからない…。


    事故の夜、一本の百合を持った少女が家の前に居た。
    彼女は姿を消したものの、父の遺品のアルバムの中で
    少女とそっくりな女性を見付けた在。
    遺品を整理していた在は、何も書かれていない母子手帳を見付ける。
    子供の名前は確かに自分だが、母親の名前は見知らぬ「森下翠」
    父親には恋人や産まれなかった赤ん坊が居たのか…。
    自分は、その赤ん坊の偽物なのか…。
    亡くなった母は本当に愛されていたのだろうか…。

    父の過去を調べていくうちに、自分の知ってるいる父と
    全く違う父の姿が浮かび上がってくる。
    少しずつ明らかになってゆく謎と秘密。
    在と一緒にドキドキしながら読み進めていった。
    二十年も前に死んでしまった伯母に支配されてる森下家。
    縛られてる、囚われてる、魅せられてる水樹。
    愛の無い家庭から逃げ出すしかなかっ高丘。
    哀し過ぎる…。
    とっても丁寧に描かれていて、情景や匂いまで漂って来そうだった。
    何とも言えないネットリした重苦しい雰囲気や空気感。
    息苦しい程だった。

    ラストは、綺麗に纏められてて良かったって思ったけど、
    何だか、スッキリしなかった。
    でも、愛されて育つ大切さがヒシヒシと伝わって来る作品でした。

  • 父母の隠してきた過去の忘れがたい恋愛というのは、家族にとって裏切りなのでしょうか?という問い掛けがあるとして、僕の考える答えは家族が気づかなければ無罪。感じさせたら有罪だと思います。
    そもそもどんな辛い恋愛だってそれを忘れようとすればいつか過去になるし、思い出すようなものに囲まれて生きるなんて往生際悪いというかなんというか。主人公の父親は完璧なイケメンおやじなのですが内情は超絶カッコ悪いのであります。
    いや、本の中では追憶に生きるダンディーなイケおやじなんですよ、遠田潤子さんがどういう意図で書いているか分からない部分もあるのですが、やっている事とこだわる方向がなんともカッコ悪い。遠田さんの今までの登場人物のこだわりは、否応なしに巻き込まれて、心が血をだらだら流す状況でひたすら前に進むかっこよさだと思ったのですが、この本ではみんながそれぞれ意味の分からないこだわりにがんじがらめでイラっとするんですね。
    それでも読ませる力が有るのは筆者の力でしょう。退屈ではなかったですが、他の本を先に読んで欲しいです。間違ってもこの本を初体験にはして欲しくないです。

  • 初、遠田潤子作品。
    モデルのようにカッコ良くて、非の打ち所のない素晴らしく完璧な父親。あまりにクドイ表現に違和感を感じつつも、私も女性なので…(笑)物凄く興味を魅かれてどんどん読んでしまった。お終いまで読んでみると、お父さんが素敵であればあるほど、悲しく切なくなった。
    もし、自分がこの人の妻だったら、子どもだったら…この人の生き方を理解できただろうか…。
    こんな素敵な人だったら、嫉妬を飲み込んで愛してしまうかな…。

    • ひとしさん
      ちえさんこんばんは!
      なんとなくちえさんのレビューを読んでいたら読みたくなりました(笑)
      ちえさんこんばんは!
      なんとなくちえさんのレビューを読んでいたら読みたくなりました(笑)
      2017/11/15
    • ひとしさん
      ちえさん、そうなんですね。
      私の兄は私が高校生の時に事故で亡くなり、その後すぐに祖父が亡くなり、大震災の後に父が亡くなり、その後祖母が後を...
      ちえさん、そうなんですね。
      私の兄は私が高校生の時に事故で亡くなり、その後すぐに祖父が亡くなり、大震災の後に父が亡くなり、その後祖母が後を追うように亡くなり・・・。今は妻の父も具合も悪いのですが、なんとか元気を出していくしかありませんね!
      周りにいる人が辛い顔をしていないように、元気をあげられるようにできればいいですね!
      ちえさん大変でしょうが、頑張ってください!
      2017/11/15
    • ひとしさん
      いえいえ、ちえさんが恵まれていたのかはわかりません。でも、頑張りましょう!
      いえいえ、ちえさんが恵まれていたのかはわかりません。でも、頑張りましょう!
      2017/11/16
  • 片瀬在は、建築を学ぶ大学生。2年前に母・由香里を亡くしてからは、父の和彦と二人暮らしをしている。
    雨の夜、父が自動車事故で亡くなった。
    遺言に従い父の書斎に入った在は、古い母子手帳を見つける。子の名前は「片瀬在」、母の名は「片瀬翠」。在の知らない、母とは違う女性の名前だった。
    在にとって、常に完璧な男性だった父の秘密。
    自分は生まれなかった子のスペアなのか、母はずっと騙されていたのか…


    いつも、そこまで?というほど過酷な昏いドロドロを容赦なく描く、遠田潤子作品。
    それでも読み始めるとどうしても止められない、強烈な力があるので、気力がある時に読むことにしている。気力のない時に読むと、自分の目の前も真っ暗になりそうで。

    はぁぁぁぁ〜〜、こんなに読後が清々しく、希望が見える作品は、これまでで初めてじゃないか?
    在のまっすぐな好青年ぶりと、翠、水樹、在の友人・高丘、そして和彦の、傷だらけの心を抱えながら愛情を求めて苦しむ純粋さ。彼らを傷つけた肉親たちの愛憎の歪み。
    しずかに美しい描写は、緻密な絵画のようだ。
    百合の白が際立つ脇に、微妙な色彩がちりばめられている。

    今のところ、誰かに遠田潤子を勧めるなら、まずはこれにしようと思う一冊。

  • あ〜〜ずるいよ〜〜
    タイトルと表紙と・・・
    中身の清々しさ!!
    もっと早くに出会いたかった
    なんてお話
    も〜〜

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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