蘇我の娘の古事記

  • 角川春樹事務所 (2017年2月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (420ページ) / ISBN・EAN: 9784758413015

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

歴史とフィクションが巧みに交錯する物語が展開され、飛鳥時代の背景を深く感じることができる作品です。語り部の視点から語られる古事記のエピソードと、主人公の娘の壮大な物語が違和感なく融合し、まるで歴史の裏...

感想・レビュー・書評

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  • 飛鳥時代の朝廷を取り巻く物語。
    蘇我蝦夷に蘇我入鹿、斉明天皇、中大兄皇子、中臣鎌足…。この時代の、日本史の教科書に登場する人物名や事柄などはなんとなく覚えてはいるけれど、それぞれの関係性はあまり知らなかった、という程度の知識で読んだ。
    素直に、面白い。
    みなさん、裏で密かにこんな血みどろの駆け引きを繰り広げていたなんて。
    名声を得るためなら、血を分けた兄弟、親子、親戚なんて関係ない。裏で…なんてのは序の口で陰謀がだだ漏れしようとお構いなし。騙し騙され呪い呪われ…、と映画を観ているような展開でワクワクした。

    各章に挟まれる神話も、物語と巧くリンクされていて面白いし分かりやすい。
    兄妹の許されぬ恋なんて、なんとも雅で素敵。現代ならあり得ない設定もこの時代だからこそ。優雅な気分を存分に楽しめた。
    周防さんの作品はこれからも追いかけたい。

  • 飛鳥、蘇我、古事記と好きなもの三連コンボのご本。大元の古事記を借りようと思い検索をかけた時、引っかかったので一緒借りてみたのですが、大変面白かったです。語り部の語る古事記の話と主人公の娘の物語が交互に、しかし違和感なく紡がれています。娘の物語は歴史の裏をつく壮大なフィクションなのですが、もしかしたらこんなこともあったかもと思う物語でした。この辺りの歴史物語が好きな方にはオススメです。

  • 『高天原ーー厩戸皇子の神話』の後に読んだのでその続編として読め、「古事記」が完成されて良かったなと思えた。まぁ1300年も昔の話なので、のちに「序文」が書き加えられた経緯も”然もありなん”で面白かったし、そもそも古典文学全般にそういったことがあったのだろうに現在まで脈々と受け継がれてきたのは本当に素晴らしいことだと思う。にしても当時、渡来人の存在感て今思う以上に大きかったのだろうなぁ…私が大和和紀の名作『天の果て地の限り』を読んでいた頃より学術的研究も進んだのだろうし。おかげで近頃じゃ、中大兄皇子や大海人皇子のイメージ像が随分変わりましたよ(^^; ヤマドリとコダマの物語は美しくも哀しかったけど、古代の人々が生き生きと感じられて良かったです。また奈良に行きたくなった~。

  • やはりこの時代からが好き。

    不比等さんの話を書いてほしいです。

  • 古代を題材とする歴史物。
    大化の改新ではなく、乙巳の変なんだ。
    当時の風俗、地理に疎い身に、丁寧な描写はありがたい。

  • この時代、何と言っても額田王。子供の頃に読んだ、大和和紀「天の果て地の限り」と里中満智子「天上の虹」で刷り込まれちゃってますw。それらに比べると、登場人物がいずれも印象薄い。それなりの物語なのになあ〜。地味な話だった。

  • 歴史物は好きでよく読むが、乙巳の変(大化の改新)から壬申の乱のあたりの話は読んだことがなかったので新鮮だった。古事記のなりたちを絡めた斬新な話ではあったが、登場人物を含めなんとなくほんのりと柔らかく、面白かった。

  • 教科書でしか知らなかった登場人物が
    いきいきとその時代を生きる。

    ヤマドリとコダマの切ない恋物語。

    1300年以上前の時代に
    壮大なロマンを思う。

  • 乙巳の変から壬申の乱と政情穏やかならざる時代を、百済人の家族の視点から描いています。仕えていた蘇我入鹿から生まれたばかりの女児を託されたことで、時代の激動に飲み込まれます。コダマが愛らしいキャラなので感情移入してしまい、物語の展開に一喜一憂します。虚実を自在に織りまぜていて、だれずに一気読みできます。古代史入門としても高校生くらいから広く手に取られるのもいいですね。

  • 本当に近年、古代史が熱い!
     これも思わぬ掘り出しものだった。特に奈良県出身の自分には舞台の飛鳥の里などが手に取るように分かり、自分の知る故郷の風景の中に1000年以上も前の人たちが生き生きと蘇る様が目に浮かぶようだ。

     作者の、まだ3冊目?の作品らしい。ソフトなタッチの筆致はいかにも女性らしい。『恋歌』『阿蘭陀西鶴』をものした朝井まかてか、『小さなお家』の中島京子を思い出す。

     「古事記」の謎は昔から良く聞かされていた。 国史といわれる「日本書紀」が時の天皇の勅で編まれたと伝えられるに対し、作者不詳だったり、後世の創作とされたりと諸説フンプンだった。
     中学か高校の頃に「古事記」の編者と言われる太安万侶の墓が茶畑の中から見つかったと話題にもなったものだ。あの頃は、なんでそんなに大騒ぎしてるのか、まったく理解できてなかった(後で記憶をたどると、太安万侶の実在が証明されたとかの話だった)。

     そんな多くの謎の残る「古事記」の成立譚を、本書は皇極四年(六四五)の乙巳の変(我々は大化の改新として覚えた、中大兄皇子、中臣鎌足のクーデーター)から、壬申の乱の後までの時代を通し描く。
     実在したという百済からの渡来人船恵尺とその一族、そして息子ヤマドリ、娘のコダマの生涯が、時の政変、時代の要請に翻弄されながらも朝廷の記録を司る「史」(ふひと)という立場で謎の裏国史とも言える「古事記」に深く関わっていくという筋書きだ。
     「古事記」の作者とされる稗田阿礼、太安万侶の存在すらうっちゃって自由奔放に走る筆が、実に活き活きとあの時代を描き出す。
     まさに恵尺が最初に国史に取りかかった折に語るこの言葉のように。

    「自分が求めていたのは、遠い昔からこの国に連綿としていきつづけてきた人間たちの、なまなましい喜怒哀楽の物語だ。絵空事ではない、生身の人間としての物語。」

     遠いあの時代の様子が、生々しく蘇る。

     また、章ごとに語り部が子ども時代のヤマドリ、コダマに語って聞かせる神代の物語が挿入される構成も楽しい。あぁ、まさにこうして語り継がれて、やがて「古事記」に結実していったというのが分かる仕掛けになっている。

     最終的に、稗田阿礼でもない太安万侶でもない者が「古事記(ふることぶみ)」を編むことになるのだが、その者が語る言葉が実に素敵だ;

    「私は、歴史というのは、滅びた人たちの歴史のことだと思うのよ」(中略)「そこからこぼれ落ちた人たちの歴史を、私はすくい取っていきたいの。そうでなければ、彼らの魂が消えてしまうもの」

     古代史という謎多き時代に見事に編み出された歴史フィクションだ。
     著者の前作『逢坂の六人』も是非読んでみよう。

  • 書き下ろし

     百済系渡来人「舟」氏が直面した大化の改新から壬申の乱までの激動の物語で、豪族連合のヤマト政権から天皇中心の中央集権国家に変化していく過程で否定され滅ぼされた蘇我氏の赤ん坊を、舟氏の長が極秘に救い自分の娘として育てるのだが、その盲目の娘コダマの波乱の半生記でもあり、古事記のなりたちの物語でもある。

     税吏の舟氏は、文書吏としても「大王記国記臣連伴造国造百八十部并公民等本記」(すめらみことのき・くにのき・おみむらじ・とものみやつこ・くにのみやつこ・ももあまりやそべならびにおおみたかららのもとつふみ:本文中では音読みになっているが、なつかしい!)を編纂した(と描かれる)が、盲目の娘はこれをそらんじ、聞いた神々の説話を結びつけて生き生きとした物語として語るようになる。

     史学概論の最初の講義で「歴史」を意味するドイツ語には”Geschichte”(記録されたできごと)と”Historie”(物語られた歴史)があると教わったが、さしずめ後者としての古事記の成立を、物語を担った人々の人生に想いを寄せて描いてみせた著者の視点に、なるほどとうなずかされる。

  • いや~、面白かったです。
    蘇我の娘ってあったから、てっきり刀自古のことかと思ったら違ってたけど。

    厩戸‐蘇我氏が国史を編纂していたけれども、乙巳の変で失われたというのは聞いたことがある。
    物語は乙巳の変で蘇我入鹿が殺され、蝦夷がその屋敷を焼き払ったただ中で、国史の編纂を手伝っていた船恵尺(ふねのえさか)が、持ちうる限りの巻物を持ち出して国史編纂室から逃げ出したところから始まる。

    実はその時恵尺は、生まれたばかりの入鹿の娘を救出し、自分の子どもとして育てていた。
    それは裏切りを持ちかけた中大兄に知られてはならない、恵尺の旧主への恩返しだった。

    入鹿の娘・コダマの話ではあるのだけれど、ストーリーが進むと、蘇我の娘というにはちょっと遠いことがわかり、タイトルに偽りなしと言えるかは微妙。
    でも、常々疑問だった、皇極天皇の眼前で入鹿が惨殺されたのに、中大兄にお咎めなしであることの理由は納得できた。
    それでも、天皇の前に武器を持って現れることと、死と血の穢れを考えると、お咎めなしはやっぱり不自然なんだよね。

    反対するものは容赦なく切り捨て、中央集権国家をつくるために強権をふるう中大兄。
    国史の編纂などの悠長なことをしている暇などない。
    遷都をするたびに、戦をするたびに、人々は集められ土地は踏みにじられる。

    コダマは、何も知らされずに恵尺の娘としてのびのびと育てられる。
    ただ、目が不自由で、その代わり優れた耳と記憶力を持つ。
    コダマが喜ぶから、恵尺は土地の昔話や神話などを語るものを呼んでは、コダマや息子のヤマドリに聞かせ、それをコダマは片端から覚えていくのだった。

    誰にも知られてはならないコダマの秘密(入鹿の娘であること)のために、船の一族は時の政権に逆らうことができず、恵尺も後を継いだヤマドリも時代の流れに翻弄される。
    コダマを守ることが一族の安寧につながると信じて。

    一部、正史とは違う出来事に含みを持たせつつも、天武天皇の世に代わり、国史の編纂が行われる。
    作品はもっとコダマに沿った話なんだけど、あんまり書くとネタバレになってしまうのでもどかしい。

    章と章の間に、コダマが幼いころに聞いた神話や土地の昔話が差し挟まれていて、それを読むと古事記の中のエピソードがいくつかわかるようになっている。
    そして、その積み重ねが最後に生きてくるわけさ。

    思った以上に実在の人物が登場し、ものすごく史料を読み込んでいることがわかる。
    乙巳の変についても、事実とは違うだろうけど納得できる説ではあった。
    ただひとつ、そうすると入鹿がなぜ山背大兄王を殺したのかは、説得力に欠ける。

    山背大兄王が仏教に傾倒して反蘇我だったから、というのが作中の理由だけど、それはない。
    父である厩戸皇子の影響で仏教に傾倒していたかもしれないけれど、母である刀自古は蘇我馬子の娘なのだから、反蘇我はないだろう。
    母の実家から相当なバックアップは常日頃からあったと思うもの。
    山背大兄王の殺害理由も、古代の謎の一つよな。

  • 「こんなに面白い物語はそうそうあるものではない」という言葉に釣られて読んだが、最後までノルことができなかった。

  • 大好きな時代だし、古事記や日本書紀も好きなので、すごく期待して読んだ。
    壮大な物語をきれいに編んでいるのはよかった。ドラマチックな事件が多い時代なのに終始淡々としているのは、歴史を記録する、ということをテーマにしているからか。
    擬音語擬態語が多いのは、古事記を意識しているのかな? でも、バリバリバリッ ドーン! とかはもうちょっといい音欲しかった。あと、のちの持統天皇に対して、死んだら「ただ、灰になって」と言うのも、火葬が一般的でないとされる時代にどうかな、と(初の火葬された天皇というのを予知とも取れるけど)。

    ハードル爆上がりの中で読んでしまったのであれなのですが、ゆったりした時間の流れる古代物だったと思います。

  • 「高天原 厩戸皇子の神話」の続編。
    とはいえ、年代がぐっと下るので別物として読んでも問題なし。
    個人的には蘇我氏には興味があるところなので、そっちの方を中心にして読んだ。残念ながら蘇我氏が滅ぼされたところからのスタートだったので、作品中にはほとんど蘇我氏は触れられていなかったが、こういうファンタジー設定を織り交ぜても違和感を感じられないのが古代史の良いところ。
    想像の余地が十分にあるというのは作家さんにとっても書き甲斐のあるものかも知れない。

    数々の神話にどんな側面があるのか、どんな真実が隠されているのか、当時の人々、特に渡来人と呼ばれた人々を中心にいろいろと妄想を膨らませて改めて古事記を読むのも一興。

  • 蘇我入鹿の娘を主人公として、大化の改新から壬申の乱までを描き、その主人公が古事記を記したとした歴史小説。歴史の事実を詳細に調べつつ、面白い展開になっている。楽しく読めた。

  • 古事記を口伝したとされる稗田阿礼の原型となる少女の物語。蘇我滅亡から持統天皇の時代までに、百済から渡った船の一族がどのように生きてきたかを感じることができる。
    渡来人の立ち位置の難しさや、その時代の政変の意味とか、
    神話にみる人間の本質とか、色々な側面から物語を見られて興味深かった。
    物語そのものは一人の少女の成長を追っていく感じで、そこに対する感動までは正直感じられなかったのだけど、久々に読む歴史物の良さになんだかほっこりした。

  •  飛鳥時代、乙巳の変で滅亡した蘇我宗家の忘れ形見の少女を巡る、伝奇ファンタジー小説。
     大化の改新、白村江の戦い、そして壬甲の乱。
     政変に次ぐ動乱。
     海外情勢と併せて目まぐるしく変遷する古代日本を舞台に、逆臣の遺児である少女は、渡来人一家の庇護の許、やがて、己の使命を見出し、生涯を捧げてゆく。
     稗田阿礼の口伝を、太安万侶が編纂したと伝えられる『古事記』。
     その原型を、誰が、どのように遺したかを集約点に、想像力豊かな創作が綴られる。
     本編の挿話として語られる日本神話を背景に、投影される現世の人間模様、栄枯盛衰の巡回。
     歴史の大河に煌く、泡沫のような人々の営みが、切なくも温かい。
     尤も、歴史小説というよりは、ファンタジックな少女小説の色合いが濃く、人物造形がやや浅いのが難点か。
     勝者の正統性を保持するための正史に、異を唱える筆者の見地も、決して目新しいものではない。
     それ故に、主人公側にとって仇役となる権力者たちを、逐一、悪辣なだけの人物にして『片付ける』のは、人間洞察の脆弱さを露呈するのみならず、物語としての浅薄さにも繋がる。
     また、大和朝廷の政情の変遷など、政治史の興亡の本質を追究するよりも、ヒロインを中心とするラブストーリーが主軸として重きを置かれており、古代史を題材とする新たな切り口の成人向け小説を期待する向きには、少々肩透かしかもしれない。
     総じて鑑みれば、読者層としては、主にヤングアダルト世代が想定されているように見受けられる。
     美点を挙げるならば、古代の豪族の生活描写が丁寧で、市井の目から見た時代の一片を描くという面では、瑞々しい感性の光る作品と言えるだろう。

  • 乙巳の変から壬申の乱までを描いた奈良時代のお話。古事記がどうやって成立したのか、蘇我氏や大王のことを、渡来の一族の兄妹の視点から描かれている。昔語りとして古事記の内容にも多く触れている。自分もその時代に生きているかのように感じることができる。
    2018/1/27

  • 乙巳の変で暗殺された蘇我入鹿の娘を助け、我が子として育てた百済出身の渡来人一族の長・船恵尺。父の代から蘇我氏の命によりこの国初の国史編纂にたずさり、それをきっかけに入鹿と親しくなり、赤子だったその子を助けることになる。コダマと名付け我が子として育てるも、なんの因果か、コダマは目が見えない。だが、次男・ヤマドリが片時も離れず、コダマを守っている。月日がたち、コダマの出生の秘密を知る中臣鎌足により命の危機があったり、コダマ・ヤマドリが夫婦になり、幸せな時間が過ぎていく中、またも時代が不穏なものに…壬申の乱である。またも争いのために人生を狂わされるコダマ。いろんな語り部から聞く神話なども合わせて載っていてストーリーもどちらも読みごたえあり。

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著者プロフィール

1964年生まれ。作家。早稲田大学第一文学部卒業。編集者・ライターを経て、『八月の青い蝶』で第26回小説すばる新人賞、第5回広島本大賞を受賞。『身もこがれつつ』で第28回中山義秀文学賞を受賞。日本史を扱った他の小説に『高天原』『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』『うきよの恋花』などがある。

「2023年 『小説で読みとく古代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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