父子ゆえ 摺師安次郎人情暦

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 117
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413176

作品紹介・あらすじ

親としての「覚悟」、職人としての「矜持」。神田明神下でひとり暮らす安次郎は、女房のお初に先立たれて五年。子の信太をお初の実家に預け、一流の職人として様々な浮世絵を摺ってきた。寡黙ながら、実直で練達な彼のもとには、摺りの依頼が次々と届く。ある日、義兄が安次郎の住む長屋に駆け込んできて、信太に一大事というが…。かけがえのない「家族」と、大切な「仕事」を守る浮世絵摺師を描く、あたたかな人情物語。

感想・レビュー・書評

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  • 安次郎の心の声が染みる。

  • 人を描くのが上手い作家だと思う。家族を亡くし身内に見捨てられたがゆえに、冷たさや厳しさを奥にひそめつつも深い情のある主人公の安次郎、お調子者で憎めないキャラの直助、べらんめぇ口調で一見、強そうだが面倒見の良い長五郎親方、女癖が悪いという評判だが仕事の腕はいい新吉、他にも魅力的な人物達がいっぱい。
    五郎蔵店に私も住みたいぞ!と、妄想する。
    安次郎には幼馴染みの友恵がいるから、いいヒトになれなくてもせめて、冗談を言い合うくらいのご近所さんの1人になりたい、、、なんて。
    嫌な野郎も登場するけれど、悪人というほどでもないので、最後まで穏やかに読めた。


  • この聞きわけの良さが却って安次郎には辛かった。常に我慢を強いているような気がした。

  • 第2弾。

    人情ものというか、トラブル解決みたいになっているけど(笑)
    それも粋な感じで、読後感もいい。

  • 男親なためか子供の信太に関して猫っ可愛がりはしないんだけど、ちゃんと思っているのは伝わる。信太が凄くしっかりしているので、良い距離感の似たもの親子なんだなと思います。

  • 連作短編5編
    浮世絵の中でも摺師にピントを合わせているのが面白い.絵師が脚光を浴びがちだが,摺りも本当に大事だというのがよくわかる.死んだ妻の里であずかってもらっていた子供と一緒に過ごすことになる安次郎の心の変化が嬉しい.長屋の人情やちょっとした謎解きもアクセントになっている.最後の腕比べでは,ドキドキした.

  • 摺師を主人公にした連作集。
    錦絵絡みの様々な事件が起こり、摺師ならではの視点や摺りの技で解決していくのがなかなか新鮮。
    錦絵に絵師の名前は出ても、摺師の名は表には出ない。
    (厳密には彫師の名は出るそうだ)それでも職人らしく、決して手は抜かないし、絵師や版元の希望に応えるべく、最大限の工夫と技術を見せる。
    馬連一つ持っての渡りの摺師がいることや、様々な摺りの技術など、興味深いことも色々分かってその点では面白かった。

    また主人公の安次郎が早くに妻を亡くし、長らく義父母に預けていた息子を引き取るきっかけも彼らしいなと感じた。

    ただ毎度『てぇへんだ!』と事件を持ち込む弟弟子や、タイミングよく現れる幼馴染の女性など、よくあるパターンだったりもする。
    また安次郎を追い出し家を継いだ叔父との関係ももう少し深掘りして欲しかったし、長屋の店子たちや職場の仲間たちにも色々スポットを当てればもっと読み応えのある作品になったかもと思うと、惜しい気がする。
    このシンプルさが梶さんらしいと言えばそうかも知れないが。

  • 摺師安次郎は寡黙でシブい男前。平素は頼りなく、それでいて芯のある下級武士を書かせりゃ一流の著者が、こんな気骨あふれる町人も描いてくれた。もっとも、表舞台を好まず、黒子に生きんとする性格ながら、男女を問わず周りが慕い放っておかないのは同じだ。親兄弟に嫁までを失い、子の信太がかけがえのない家族で心の支え。もどかしい恋慕の結末もパターンだけれど、これまた結構ハマるのだ。

  • 人情噺。読みやすい。
    不器用だけれども真っ直ぐな安次郎。息子、信太とも向き合って良かった。息子がいじらしくい。
    友恵との仲も少し進んだか。素直になった。
    最後、信太に邪魔されたのはご愛敬。

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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