存在しない時間の中で

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.59
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本棚登録 : 311
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413909

作品紹介・あらすじ

『嫌われ松子の一生』『百年法』の著者が、生きることの根源的な意味を問う〝いま読むべき物語〟の誕生。
「この世界は何ものかが創ったものだ」と証明されてしまったら、あなたはどうしますか?


「とんでもない作品に出会ってしまって震えている」「なんて怖い小説だ」「驚愕。なにこの設定……」など、発売前から話題沸騰!!


「<神>からの問いに、人類はどう答えるか?
『三体』に正面から挑む、究極の宇宙論ミステリー」
――大森望(書評家)

■あらすじ
世界各国から百名以上の研究者や大学院生が集まり、宇宙の始まりや仕組みなどの疑問に答えるべく日夜研究に取り組んでいる天文数物研究機関。
ある日、若手研究者たちが主宰するセミナーに謎の青年が現れ、ホワイトボード23枚に及ぶ数式を書き残して姿を消した。
誰も見たこともないその数式には、人類の宇宙観を一変させかねない秘密が隠されていた。
つまりその数式は、この宇宙、そして世界の設計図を描いた<何ものか>が存在する可能性を示唆していたのだ。
悪戯のように思えるこの不可思議な出来事は、日本だけなく世界中23もの研究機関で発生していた。
にわかに<神の存在>に沸き立つ世界。ほどなく人類は、<神の存在>にアクセスしようと試みる。
そして、その日から現実は大きく変わることになる――。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の絵に惹かれて手に取ったのだけど
    これは、面白かった!
    期待をして読み始めたわけではないので
    サプライズ満足。

    人知を超えた高次元の世界から
    四次元の私たちの世界にメッセージが届く。
    それは、この宇宙の設計図を描いた
    “何か” が存在することを示すもの。

    異変について語られる舞台は二つ。
    ひとつは、大学の天文・数学・物理研究グループ。
    もうひとつは、黒猫を買った女性、莉央の周辺。

    小難しい数学や物理の話はすっ飛ばして
    変わっていく世界を追う。
    研究グループのまわりと、莉央の周辺に起こる物語。
    舞台や時間が次々入れ替わり、
    テンポの良い展開に飽きることがない。

    こんなに話を広げてしまってどうするの?!?
    と思ったところで、
    第四部で なるほど という回収劇。

    最後の一文が なんとも心憎い!

    章が進むごとに前進する黒猫の絵も可愛い。
    そして、読後に眺める表紙はさらに素敵!

  • この四次元宇宙を設計した〈何者か〉=神から、人類へメッセージが発せられた。

    始まりは、謎の青年(通称ガロアくん)の出現だった。ガロアくんは、突然若き物理学者達(アキラ、神谷、健吾ら)の前に現れ、ホワイトボード23枚分にもわたる数式を書き残して忽然と消えた。残された数式は、「この宇宙の本質は二次元平面上にあって、我々のいる三次元空間は、そこから立ち現れた幻のようなものである」ことを示したものだという。

    この事象、実は世界の複数の機関で同時に発生していた。宇宙を設計した〈何者か〉が人類との交信を望んでいて、人類からの合図を待っているのではないか、と看破した著名物理学者(クラウス博士)は、この仮説を検証するため、「全世界の人々が同時に、空を向いて両手を左右いっぱいに広げ、その姿勢を三十秒間保つ」という至ってシンプルな実験を提唱した。その実施日は7月1日の午後4時。

    クラウス実験の実施直後、突如数秒間にわたって空が真っ白になることによって、〈何者か〉=神の実在が証明された。また、クラウス実験に参加しながら神に願掛けしたある女性(莉央)の下に、願いが叶って行方不明の飼い猫が戻ってきた。莉央は、どうやら〈何者か〉=神に選ばれたらしい。

    そしてそのちょうど一年後(翌年の7月1日)。今度は莉央をはじめとする何人かが光に包まれ、「あと十年でこの宇宙が閉じられる」との啓示を受ける。この宇宙は、十次元時空に存在する〈何者か〉が時空シミュレーションを行うために創造したものだった。時空シミュレーションを終えた〈何者か〉は、四次元宇宙モデルを閉鎖することにしたのだった。「人類が数千年もの歳月をかけ、その叡智を振り絞ってなお全容の解明からほど遠いこの宇宙が、実際は、予備研究のための簡易モデルでしかなかった」ことに、若き物理学者たちはショックを受ける。

    そして10年後…。

    ラストは少し尻切れトンボになってしまっているものの、とてもスケールの大きな作品だった。こういうタイプのSF、結構好きだな。

  • 一流フランス料理が作るジビエ料理みたいな一冊。とっつきにくい食材を見事な技法で親しみやすく仕立ててきやがる。いい仕事してまんなぁー

    壮大なSFかと思われた内容が次第に迫真さを増して我々のリアルに近づいてくる様はまさに驚異。「神が人類が滅ぼす」という小学校低学年が自由帳に書いたとしてもクラスメートに失笑されそうな突拍子もないテーマに対し、数理学のフィルターを通してアプローチしていく過程は見応えがあったし、登場人物を本当にそこらへんにいそうな設定にすることで、テーマがより際立つように描写されていると感じた。

    特に登場人物について言うと、ほんと他愛もない会話が多く出てくるところに著者の意図があるのかなぁと考える。「うわ」「あのねえ」「はい」「あるいは」「でも」「そうですね…」などごく短い会話をちょくちょく挟むことで、神から示されたテーマの難解さに苦しむ人間の凡庸さをあぶり出して対照的に見せている。これがもし会話少なく、各々の思考を客観的に表記していたら、それだけで内容が難しく感じるだけでなくSFチックなテーマがぼやけるのだと思うんすよ。これはうまくできてる。

    前にもどこかで書いたけど、そもそも人間は自分より賢いものに惹かれる習性があって、特に数理学なんかは学問としてその極致にあるワケ。中身はチンプンカンプンだけど、不思議と物理的考察の箇所も拾いながらだけど読めてしまうもんね。著者は神谷さんではなく春日井君に思い入れがあるんじゃないかなぁ。知性を喚起する役割という意味では彼が明らかにキーマン。農学研究科を出た身であるからこそ「知性」に関するリスペクトを著者は忘れてないなぁとも感じましたよ

    「このことは、つくづく肝に銘じておいてください。いまのあなたは、嘘で人を救うことができる」(232頁)

    「幻なんかじゃないさ。俺も、おまえも、この宇宙も」(302頁)

    この本は図書館で借りて読んだので発売時の帯の装丁を存じませんが、俺が帯作っていいなら上の2つのセリフを載せるかな。読んだ人には頷いてもらえると信じています。

  • 2023.1 三体に挑む、とのコピーですが確かにわかりやすくそして壮大な小説でした。

  • 宇宙、科学、数学、物理学・・・
    アインシュタインの相対性理論や、
    苦手分野の羅列が続いて、何の話と思ったら、
    とんでもないミステリー!

    人類は何者かによって作られた。
    そして10年後に消滅する!
    十次元の世界って何?!

    「夢だったんだ」とのおちかと思ったら、
    とんでもない。

    一人の命が助かったのは、ほっとした。

  • 話が想像以上に壮大すぎて、自分の現実の悩みを一瞬忘れます

    物理や数学の話は正直私には難しかったので、解説箇所は無理に理解しようとはせずに読みましたが、ストーリーは問題なく楽しめました

    全てが予想外の方向に話が進んで、後半は一気に読みました

    しばらく宇宙のことが頭から離れません

  • 大学の研究室に突如現れた謎の青年。その時、研究室内では研究者同士で、全世界の論文を集めて、その発表会をしていた。次々とホワイトボードに書いていく数式。23枚に及び、その後すぐに姿を消した。残された数式は、度肝を抜くものばかりで、不備はあるものの、世界を揺るがすほどにまで発展していった。それは日本だけでなく、同時期に世界でも同じことが発生していた。やがて、「神」に会おうと、全世界が同時刻にあることをやろうと試みる。


    読んでいて、ふと頭をよぎったのが、ノストラダムの大予言でした。その時も、あらゆるところで騒がれて、いざ当日を迎えると、特に何もないまま終了。
    あの騒動は何だったんだろうと思うくらいでしたが、今になって思うと、別の次元では発生していたかもしれません。

    そう考えると、あらゆる可能性や宇宙の無限など色んな想像を膨らませることができ、面白みがあるなと思いました。

    謎の青年、謎の数式といった色んな謎があったのですが、特にその辺は深掘りすることなく、その時起きた現象を人はどう解釈していくのかが描かれています。

    数式やブラックアウト、謎の発光といった不可思議な出来事にこれらは「神」からのメッセージとして崇められます。

    研究者同士の会話なので、数学的や科学的など難しい言葉が飛び交いますが、何となくこういうことなんだという表面的な解釈で読んでみると、読みやすかったです。

    「世界が変わる」と考えると、恐怖感があったのですが、どこかSFのような、どこかパラレルワールドのような感覚がありました。それはおそらく人々の暴走といったネガティブな描写はなく、不可思議な出来事に好奇心や一種の諦めといった印象が前面に出ている感覚がありました。

    研究者の視点だけでなく、もう一つある主婦の視点が登場します。その2つがどう一つに結びついていくのか。
    何かに縋りつきたい人、何かに惹かれていく人など限定的ですが、様々な人が一つの出来事をきっかけに変化していく姿が垣間見られました。

    最後は、小説ならではの展開で面白かったです。もしかしたら人々の中に事実を知っていた人がいるかもしれません。
    夢かもしれないし、現実だったかもしれません。

    それらを嘘として処理するのは、面白くないので、色んな考えがあってもいいかと思います。

    無限に広がったような感覚があり、楽しめました。

  • ★3.5
    世界観が壮大。

  • 山田宗樹先生の作品を読むのは『百年法』に続き二作目だけれど、フィクションに説得力を持たせるのが本当に上手だと思う。
    本作は理論物理学によって神の存在を肯定する、という荒唐無稽な設定なのだが、作者の知識と文章力によって完全に説得されてしまう。
    ストーリーを楽しみながら学問の面白さ、可能性も感じられる。素晴らしいSFだと思う。

  • 読み進めてもよく分からない。それでも先がどうなるのか気がかりでやめられない。この難しい話をどう展開し、そしてどう終わるのか?
    今年の読了一冊目は自分の固い頭をよく揉んでくれたが、ほぐれてはいない。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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