知性の構造 (ハルキ文庫 に 1-4)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 143
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758430142

作品紹介・あらすじ

今まで日本に、これほど本格的かつ正統的な思索の書があっただろうか-。知識人が、ジャーナリズムによる「雰囲気の支配」の下にすすんで屈服している現在、自らの精神の有り様と思考の"構造"を八五点の図を示しつつ初めて全的に開示し、真の"知性"は如何にして獲得できるかを真摯に考察した画期的な知性論。

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすい。

  • 人間の知性のありかたを、数多くの図を用いて考察している本ですが、著者自身が専門とする社会科学系の学問における理論の形成過程を、著者自身の理解する解釈学的な方法によって解き明かす学問論としての意味をもっているといえるように思います。

    著者は、現代の社会科学系の学問が消費文化に堕してしまっていることを批判しており、なぜそうした現象が生じたのかということを説明しようと試みています。そのため、著者は現在の学問のありかたを現象として把握し、その解釈学的な解明をおこなうというしかたで議論が進められていくことになります。

    しかし、著者の理解する解釈学は、非常に平板なものになってしまっているといわざるをえないように思います。著者は、われわれの知性が言語的な構造化を遂げていると考えており、それを構成している四つの契機として「命題」「事実」「前提」「真理」をあげて「TEAMの構造」と呼んでおり、それぞれの配分におうじて「日常言語」「科学言語」「説明」「解釈」という言語の四つの機能をとりだしています。しかしこのような分析は無手勝流というほかなく、それぞれの契機がたがいにどのような関連にあるのか明確になっていません。著者の議論は一種の学問論とみなすことができるのですが、著者自身の「学問という現象」についての理解をもとに、場当たり的に言語にかんする考察をつづっているという印象がつきまといます。

    もっとも、こうした感想は既成のエピステモロジーに寄りかかったものにすぎず、本書のナイーヴに思える議論のなかに豊饒な可能性が秘められているという可能性は否定しません。ただ、そうした可能性を引き出すのは、たとえば吉本隆明の『言語にとって美とはなにか』から有益な洞察を引き出すのと同様に、相当な力量が求められるといわなければならないように思います。

  • いろいろと思索、検証などをしていて混沌としているところに羅針盤のような感じで感覚や思索の位置関係を整理できる。本の内容に当てはめる葛藤や思索があるといい。逆に、いきなりこれを読んでもおそらくはて? かもしれない。どうアクティブに機能(試行錯誤)するか。平衡を基調にした建設的あり方。横軸に事実主義と想像主義縦軸に理想と手段を置き課題や葛藤をどう捉えるか、どうもっていくべきかが見えてくる本。根無し草ではない、地に足の着いた思索ガイド。

  • 小難しいエッセイで、書かれている内容自体も目新しさはない。
    そして随所出てくる図がクセモノで、どうしてこう表現したの?とビジュアルの必然性を問いただしたくなるものばかり。
    よくもこんなものを自身の「知性の構造」だと称して公開する気になったなと感心した。

  • 読了メモ。西部邁『知性の構造』。真の知性はいかにして獲得できるのか?。言語、解釈、平衡、伝統、歴史感覚をキーワードに、先人達の言葉を紡ぎあげることで、統一的概念の形成を試みる。概念の構造や動きを図式化しているのも特徴。型を守り破って自らを批評。そこで知性は更新=離れていくのだ。

  • 思想家っていうのは自分の中に一本芯があるから大体の著書で導かれる結論は同じ土台の上で成り立ってるのね。その土台となるのはなんなのかご本人自ら反省している。だから結論も大体一緒。それが悪いというわけじゃなくてその過程が大事なんだろう。言葉は大事。

  • 図形的な解説が面白い。
    「マスの世論はすでに社会の第一権力になっている」(p.230)その通りです。マスコミ世論に対しては「実際の現実」を対置せよ、という主張がある。

     つくづく思うに。この四半世紀、そういう役割を担ってくれたのが「んなわけねえだろ」というたけしであり、「んなわきゃあない」というタモリであったわけですね。ところがその後がいない。暗澹としますよ。ほんと。

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著者プロフィール

西部邁(にしべ・すすむ)
評論家。横浜国立大学助教授、東京大学教授、放送大学客員教授、鈴鹿国際大学客員教授、秀明大学学頭を歴任。雑誌「表現者」顧問。1983年『経済倫理学序説』で吉野作造賞、84年『気まぐれな戯れ』でサントリー学芸賞、92年評論活動により正論大賞、2010年『サンチョ・キホーテの旅』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。『ソシオ・エコノミクス』『大衆への反逆』『知性の構造』『友情』『ケインズ』など著書多数。

「2012年 『西部邁の経済思想入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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