ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.43
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本棚登録 : 3112
レビュー : 308
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758431026

作品紹介・あらすじ

「私の恋人は完璧なかたちをしている。そして、彼の体は、私を信じられないほど幸福にすることができる。すべてのあと、私たちの体はくたりと馴染んでくっついてしまう」-三十八歳の私は、画家。恋愛にどっぷり浸かっている。一人暮らしの私を訪ねてくるのは、やさしい恋人(妻と息子と娘がいる)とのら猫、そして記憶と絶望。完璧な恋のゆく果ては…。とても美しく切なく狂おしい恋愛長篇、遂に文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • ホテルの静かな部屋で1人読むものではないな、と反省した。
    あまりに途方もない絶望の物語だから、明るいところで読まなくちゃ。
    冬より夏、夜より昼。カラッとした天気の日に読むべきもの。

    読んでいるうちはいい。読み終わったとき。物語の魔法が解けて、現実が帰ってきたとき。自分に忍び寄る絶望にゾッとして、でもそれは間違いなく自分が呼びつけた者なのに。

    孤独という名の絶望なしには生きられない。それは不幸なのかもしれないけど、でもホッとする。ああ帰ってきた、といつも思う。結局ここが自分の居場所なのだ。

    たっぷりたっぷり愛情を注がれて育ってきて、今だってそうなのに。どうして私は孤独ぶりたがる?何を格好つけているんだろう。
    遅くかかった麻疹は重い。いい加減に現実を見て、地に足つけて生きていく人生を受け入れたいのに。

    • 大野弘紀さん
      感想なのに、ウエハースの椅子の解説を、読んでいるみたい。ずっと、読んでいたい。
      感想なのに、ウエハースの椅子の解説を、読んでいるみたい。ずっと、読んでいたい。
      2020/07/05
  • 読んでいると砂糖漬けにされていくような感覚を味わう小説

  • 子どもの頃の甘い記憶と、紅茶に添えられた角砂糖にたとえられた、38歳の中年女の甘やかされた生活。
    まるで詩のように、交互に、ぽつぽつと語られている。

    ときどき江國さんの言葉たちに閉じ込められたくなる。

    「すみれの花の砂糖づけ」にどこか似ている。

  • とりとめのない、女性によく見られる心のわずかな動きを、素敵な言葉で、一見柔らかく、実は残酷に、激しく表してるなと思いました。

  • “信じきっていなければ、愛に意味などないことを知っていた。”
    僕はこの文を何回も読み返してしまう。
    信じきっていなくても形だけの愛はこの世にいくらでも存在する。だけど、信じきって初めて愛に真の意味が生まれるんだと思った。言葉には表せないほど大切な意味が生まれるんだと思う。そして愛は自分の心を支配してしまう。
    どれだけ深く愛していても、完全には人の心を満たしきる事はできないというストーリーにもすごく心を打たれた。自分でもどうする事も出来ないくらい人を愛した人の物語。
    自分もこんな恋愛をしてみたい。そう思わせるような作品でした。

  • ゆるゆると綴られる、「過不足はない」けれど、「絶望」と隣り合わせの日常。

    「恋人と別れるべきかもしれない。
    私は恋人以外の男性には興味がないが、恋人と生きようとすれば、閉じ込められてしまう」

    この部分がすごく理解できた。

    以前、あるTV番組で冨永愛が結婚生活を振り返ってこう言ったのを聞いたときも
    同じように感じたのを覚えている。

    「立っている場所がすごくぬかるんでて、いつ落ちてもしょうがないような感じだった」

    一緒にいるときは満ち足りているのに、離れた途端に襲ってくる不安。
    その不安が恐くて、いつの間にか好きな相手と一緒にいるのも恐くなっていく。
    だけど手放すのも、恐い。

    恋をするから孤独なのか。
    孤独だから恋をするのか。

    どちらも違うんだろうな。

    ところどころに登場する、“柘榴の甘い匂いのボディシャンプー”が気になった。

  • なんか完璧に閉じられた世界というか、
    完成してしまってる。世界が。登場人物の世界が。
    どこにも行かない。行けない。
    日記を読んでる感じがした、終わってしまった日記。
    増えることのない日記。
    うん、妹が好きやな、と思った。
    主人公は憎めない。
    恋人は嫌いです、なんだかずるい。

  • 江國さんの本は、何度も何度も、ゆっくりと噛みほぐすように読み返していって、やっと作品と一体になれるというか・・・そういうものが多い、と思います。この本もその中のひとつ。解説で翻訳家の金原瑞人さんがおっしゃっているように、この「ウエハースの椅子」にはストーリーが・・・ない。絶えず動くアクション小説・推理小説なんてのからは一番離れたところにある。でも、それがいいんです。例えば自己紹介などするときに、「あなたの好きな食べ物は何?」と聞かれて咄嗟に頭に浮かぶもののように、何度も食べたい=読みたいと思わせる本。ストーリーよりむしろ、本当にちょっとした感情の揺れをひどく繊細に細かく描いていく。そんな江國さんの持ち味が遺憾なく発揮!されています。通学途中などに、これからももっともっと読み返したいなあ。とろりとして病み付きになるチョコレートのような小説でした。

  • 江國香織で初めて読んだ作品。ストーリーがどうとかではなく、ずっと雨がしとしと降ってるみたいな文章、雰囲気。生活の中の描写があまりにも美しい。恋することの孤独と絶望、まさにそう

  • ウエハースの椅子は…目の前にあるのに決して腰を下ろせない。
    仲の良い両親に大切に育てられているのに、何故か幼少期より絶望に囚われて生きている私の恋物語り。
    画家を生業とし、ときおり訪ねてくる7年越しの妻子ある恋人との時間のためだけに生きている37歳の私。
    6つ下の妹は、長続きしない恋ばかり。
    今は年下の大学院生と恋愛中。
    絵を描くこと…好きなことが仕事として安定し、姉妹中も良い。
    恋人はお風呂のカビとりをしてくれるし、旅行にだって連れて行ってくれる。
    過不足なことなどひとつもない。
    優しい恋人。甘い時間。狂おしい熱情。
    だけど、幸せであればあるほど、それは絶望でしかない。
    語りたいことは多くあるけれど、これを語るとネタバレにもなるし、自分の心の内をさらすことになる。
    今年の15冊目
    2018.8.13

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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