硝子の殺人者: 東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫 こ 3-18)
- 角川春樹事務所 (2006年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758432528
感想・レビュー・書評
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シリーズ三作目、うっかり二作目よりも先に読んでしまいました…(が、特に支障なく読み進めることができました)。
で、本作ではTV業界に渦巻く麻薬犯罪がその対象。そこに警視庁から捜査本部に着任した安積の警察学校時代の同期である鳥飼の娘がコカインをやっている、ということも明らかになり…(このあたりの展開は隠蔽捜査で竜崎の息子の件と似ています)。
さらには捜査本部における相楽警部補との確執も相変わらず、というかんじで、事件を中心にいくつかのテーマが絡まり合って物語が進みます。
このシリーズを読むのは2冊目となり、その特徴がわかってきました。安積の目を通して、捜査に取り組む臨海署の面々の姿が克明に描かれる点こそがそれであり、またシリーズの魅力でもあるのだな、と思うようになりました。何の変哲もない刑事の捜査活動にスポットを当てた、といってしまえばそれまでですが、安積をはじめとした一人ひとりの地道な捜査が少しづつかたちなって、事件の概要が明らかになるのを、読み手もあたかも捜査に参加しているかのような臨場感をもって楽しめるシリーズだといえるでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短いページ数にもかかわらずここまで仕上げるのはさすが。当初の展開からは予想しにくい結果だった。
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「安積班シリーズ」の3作目
相変わらず、典型的な刑事ドラマを構成するような登場人物たちです
しかし、今回はいままでと違う展開をみせます
前2作より最近の作風によってきて、出来が上がった感じがします -
安積班シリーズ3作目。落ち目の脚本家の変死から物語が始まる。前半で犯人があっさり逮捕。しかし、ここから人間関係のドラマが始まる。前作まで対立していた相楽との関係、警察官と家族の関係も描写される。安積の原理原則に基づく判断と行動、主人公の仲間の描写は今野敏作品に共通する匂いだ。
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『二重標的』『虚構の殺人者』でも、挑んでくるような相楽警部補との対立構造などの困難がなかったわけではないが、安積警部補が決断に苦しむようなピンチに見舞われることはなかった。しかし、この『硝子の殺人者』で、安積は、初めて苦しい決断を迫られる。そんな時、安積は、まるで『隠蔽捜査』の竜崎のように、警察官であるという原理原則に基づいた決断をする。
事件が解決した時、安積は、迎えに行くと約束していた妻と娘の帰国に間に合わなくなってしまった。速水小隊長は、助手席に安積を乗せたスープラのパトカーを猛然と発進させ「職務特権という言葉を知っているか」と言う。安積は「職権濫用という言葉なら知っている」と言うのだが、このようなキャラクターの立った登場人物達の何気ない会話が楽しい。
今までは、ありふれた刑事ドラマのような筋書きだった物語りが、回を重ねることによって、今野敏さん独自の世界に姿を変貌させてゆく兆しが見える。 -
<続>
本書は,先日最新刊『ロータスコンフィデンシャル』を読んだ ”倉島警部補シリーズ” ののっけの一冊です。僕はこうやって今野敏太郎先生の膨大な作品のシリーズモノを読み始める場合は,その時点での最新刊をまず読んで,それからこうやって初めの第一巻に戻って読み始める事にしています。万一最新刊が面白くなかったりすると,シリーズ全体読破がづっと後回しに成ったりするかも,ですが敏太郎先生の場合はまだそういう愚作は無いです。
しかし本作はどうやら倉島警部補を主役にしたシリーズ化を前提として書いた作品ではなさそうです。まあ,よほどの売れっ子作家でもない限り最初から何冊ものシリーズ化を前提にした作品を書く,と云う事はまず無いのでしょうけど。本書は単行本2001年が初出なのでまあそういうことでしょう。
巻末の ”解説” には「本書には主人公が3人居て・・・」という主旨の内容が書かれた居いる。そしてあろうことか公安警察官である倉島の事をハッキリと疑いなく ”刑事” と書いている。ここのところ何作かの今野敏太郎先生作品を読んで来た僕的知見から言うと公安系警察は絶対に刑事ではない! 解説者さん訂正した方がよろしかないかい?少し笑う。 -
今野敏さんの安積班シリーズ第3弾。
ベイエリア分署(第一期)の最終巻で、
次作より神南署へ異動になります。
捜査中の安積の心理描写が好きです。
部下が自分をどう見ているかのくだりとか…
安積の同期警察官の家族の不祥事などは、
隠蔽捜査の第一作を思い出しました。 -
安積警部補シリーズ。
今回は脚本家と暴力団が薬物で繋がり、さらに警察官の娘が、キーパーソンというドラマのような話。
相変わらず、みんなのキャラがたってて、人間模様が面白い。