- Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758433723
作品紹介・あらすじ
火星治安管理局の水島は、バディの神月璃奈とともに、凶悪犯ジョエル・タニを列車で護送中、奇妙な現象に巻き込まれ、意識を失った。その間にジョエルは逃亡、璃奈は射殺されていた。捜査当局にバディ殺害の疑いをかけられた水島は、個人捜査を開始するが、その矢先、アデリーンという名の少女と出会う。未来に生きる人間の愛と苦悩と切なさを描き切った、サスペンスフルな傑作長篇。第四回小松左京賞受賞作、大幅改稿して、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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S.キング原作の『キャリー』という映画を思い出した。
くらべることは双方に失礼かもしれないけど、特殊能力を持った少女の「怒り」による爆発的暴力は、本当は一番本人が悲しいことなんだ。
「普通であること」に縛られ、守られている者にとって、「普通ではない」者を恐れ、避け、忌み嫌うことで「普通」概念の共通意識を高め、安心する。
この物語では、人類を火星からさらに過酷な宇宙環境に適応できるよう「進化」させる試みが、密かになされることから始まる。
科学者たちは遺伝子操作を行うことで、「普通ではない」能力を身につけた子供たちを作り出してしまった。
この子供たちを「希望」と考えるのは、つくりだした人たちのみ。
そしてある日、ひとりの少女のその能力が思いがけない「事件」を引き起こす。
冒頭にあった『キャリー』とは、「意図せず持った特殊能力と、少女の怒り」が共通するくらいで、あとは根本的に違う。
舞台は「火星」で「遺伝子操作」が引き起こす物語ではあるも、本質は「警察小説」であり「ハードボイルド」であり、しかも展開が早いので、SF特有の技術用語の「咀嚼」が気になって留まるようなことはない。
作中に「生物は進化するのではなく、ただ順応しているだけ」とある。
「進化」とするとより良いイメージだが「順応」と考えると前後に優劣はない。
いったい人類は太古の時代からどれだけ「進化」しているのか……今、謙虚になるときが来たかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どこかのレビューに「女性版AKIRA」とあったが、確かに似ている部分もある。入植が進んだ火星を舞台に、「能力」を人為的に付加され開発された女の子と、相棒を殺された警察官が協力して巨大な陰謀に挑む・・・みたいな。
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単行本とはかなり違った(基本的には大差ないが)エンディングで、同じ本を二度楽しめたという気分。
単行本に比べてペシミスティックになったしこちらの方が作者の思いに近いのであろうと思う。しかし、書き込みのくどさが目立つ。言わずもがなを文字にされるのもある意味苦痛。詳細に書き込まずとも読者はその展開を暗示から読みとれるものである。初期の甘酸っぱい若々しさにも捨てがたいものがある。 -
上田さんの本には勧善懲悪ではない対立があります。
『華竜の宮』と『深紅の碑文』でもそうでしたが、
互いの立場も理解できる中で、政治的駆け引きやそれぞれの思惑とともに、話が進んでいくところが好きです。 -
結構バイオレンスな描写が多いので、疲れているときに読むのは(個人的には)しんどかったかも。それでも、続きが気になってどんどん読んでしまいました。
上田早夕里先生のデビュー作(正確には結末が違う文庫になる前の方の作品でしょうが…)なのだそうですが、遺伝子改変の話はとても面白かったです。いつか私達も、自在に遺伝子を操作して、あらゆる過酷な状況に、自らを適応させていくのでしょうか。このあたりのお話が面白かった方は、是非、獣舟・魚舟もお読みくださいー!あのキャラクターの過去のストーリーも読めますよ。 -
上田氏初読み。パラテラフォーミングにより地球化された火星が舞台のSFハードボイルド。地球生まれの捜査官水島と遺伝子操作で生まれたプログレッシヴの少女アデリーンの物語。凶悪犯の護送中に起きた列車事故がきっかけで出会う二人。過去の過ちによって心に傷を抱えたまま職務を続ける水島に自分の特殊能力(他人の感情と共振して凄まじい力の暴発を起こす)に悩むアデリーンはいつしか惹かれていくが・・・。流麗な文章の中にも女性特有の甘やかさがある。結末の違う単行本の方も読んでみたい。
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インパクトは薄かった、かな。SF版レオンをやりたかったのかしらん…?
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デビュー作で良くこんな面白くて深い内容書けるな!
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相棒殺しの疑惑をかけられた火星の刑事烈と遺伝子操作によって生まれた不思議な力を持つアデリーン。火星を舞台にしたSF。
烈とアデリーンの接近が早すぎてちょっとおいていかれたが、スピード感のあるストーリーに、巨大な陰謀、相棒の恋人との交流→男の友情?など、展開が熱い。シャーミアンはいい子すぎる。
著者プロフィール
上田早夕里の作品





