半夏生: 東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫 こ 3-25)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.62
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本棚登録 : 793
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758433921

感想・レビュー・書評

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  • これまでのこのシリーズは短編が多いが、本作は長編。
    お台場でアラブ系と思われる外国人が突然死。バイオテロが疑われ、公安部が動き出し、地域一帯が封鎖され、強行班の安積たちも駆り出される。
    事態は悪化の一途をたどるかと思いきや・・・
    このシリーズは事件よりも、安積班の各メンバーのキャラが主題ともいえ、今回もそれぞれの班員たちの性格行動が詳述され、さらに安積班長の帰宅後の”儀式”も書かれており、楽しませてくれる。

  • バイオテロか、はたまたただのインフルエンザか !?

    家族を残して家出同然の中年男が偶然介抱したアラブ系外国人が死に至り、この現場に駆け付けた臨海署の白バイ隊員と黒木も発症。中年男はお台場をさまよううち、若者グループと傷害沙汰を起こし逃走するも、自らも感染しているためかその足取りは重く、ついには身柄を取り押さえられる結果に。

    アラブ系外国人が身元不明であったため、バイオテロ疑惑が浮上し公安が臨海署に乗り込み、さらに政府ではテロ対策本部が設置される事態に、と、本作は刑事事件が起きたわけではなく、国際テロの疑いがある事案を軸とした、これまでのシリーズとは異色の展開です。

    個人的には逃走を続ける原田(家出した中年男)目線の心境の変化に感情移入してしまいました。みるみるうちに悪い状況に陥り、おまけに訳のわからないウイルスに感染しているかも、という人生でそうそうないほどの絶望の淵に追いやられます。でも人も殺していない、感染もしていない(結果、ただのインフルエンザ)、さらには見捨てられたと思っていた家族が自分の捜索願いを出していたということがわかり、まるでジェットコースター並み、まさに地獄から天国といった状況。長い長いトンネルから抜け出て、本人としても一気に目の前が明るくなったことでしょう。

    安積班はというと、テロのための対策に振り回されながらも、須田の活躍もあってだんだんとコトの真相に気づき始めます。対策本部を設置した手前、引くに引けない「国」と現実を見据える臨海署の面々の目線の違いも読みどころといえるでしょう。物語の終盤、これはただのインフルエンザであるとわかりはじめた後の国の姿勢はある意味滑稽にも見えます。

    ただ、一方では昨今のコロナ対策では、もっと早く対策していれば、などなど今にして思えば、という点がないわけではありません。そう考えると、多少滑稽に映ろうがなんだろうが正常性バイアスに囚われず、最大リスクを見積もって行動することの重要性も理解はできます。が、本作において見積もられた最大リスクは、物語向けだからでしょう、ちょっと大げさだったかもしれません(現実にはもう少しシビアな見極めがなされることを政府には期待します、いやコロナの対応を見ているとちょっと難しいかな…)。

  • 2004年8月角川春樹事務所刊。2009年2月ハルキ文庫化。東京湾臨海署安積班シリーズ4作目。長編。バイオテロをテーマに興味深いお話で、楽しめました。

  • 良くも悪くも「シリーズもの」な一冊。

    時代の移り変わりは敏感に取り入れられるが人間関係の進展には時の流れを感じさせない本シリーズ(笑)……、

    村雨刑事が主人公をどう見ているかが描かれたのは、初めてか??
    なかなか新鮮だった(笑)。

    ★3つ、7ポイント。
    2014.04.24.了。

  • なんと!タイムリーな話でした。
    読んでいて、バイオテロとか、BSLとか、減圧室とか今まさにテレビのワイドショーでやってる話とかぶってしまいました。
    怖いですね。(((^^;)

  • 安積班シリーズ。
    あいかわらず、キレものというより小心者の安積刑事チームの活躍を描いた話。
    今回はお台場でバイオテロと思われる外人の死からはじまる。
    それを介抱したホームレスや現場に駆けつけた警察官などが体調を崩して隔離される。
    こんなことが本当に日本で起きたらこわいと思いながら読んだ。
    相変わらず、面白いシリーズでした。

  • バイオテロに翻弄される世の中と警察の物語。あまりの大騒動に、読んでるこちらが少しひいてしまうくらい。それほど当事者になると見えなくなる、という事だと思うけれど。シリーズ読めば読むほど須田さんのファンになる。そして、肝心の安積さんが魅力的にうつらなくなる。村雨さんに相変わらず「そこまで」の溝を感じてるようで…読者としてはなぜか不思議。こんな大騒動になってようやく改善される家族の絆もあるようで…。ちょっと物足りない読後でした。

  • お台場でバイオテロか?お台場って30年位行ってないなぁ。最近のお台場なんて橋から眺める位で、縁がないな。…などと思い、安積班のいつも通りの活躍を楽しめた。

  • 実に今の日本を捉えた作品だと思う。
    それにしても、キャリア官僚とノンキャリア官僚の差について、正直どうかと思う。

  • 安定のおもしろさ。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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