八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 7982
感想 : 1173
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758434034

作品紹介・あらすじ

2020年秋、映画化!角川春樹さん最後の監督作!?

神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・・。
料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 雲外蒼天

    いやーそっち行ったかーというね
    ひまわりめろんそっち行ったかーというね

    今村作品との衝撃的な出会いを皮切りにみんみん先生に手を引かれながら時代小説ヲタクへの道をひた走る私ですが
    満を持して高田郁さんの『みをつくし料理帖シリーズ』に手を出しましたよ!
    誰への報告かわかりませんけど、手を出しましたよ!

    シリーズものけっこう抱えてるんですが、行っちゃいました、テヘ

    実はこの『みをつくし料理帖シリーズ』相当前から気になってました
    それこそ今村翔吾さん初読み前からチェックしてたんですよ
    そして、ひまわりめろんの時代小説の扉は澪坊が開けてたかもしれない!と思わせる面白さ

    もうなー澪と澪の周りのひとたちがみんないい人なんよ
    もう呆れるほどいい人ばっかり
    そんないい人たちに助けてもらいながら、不断の努力で突き進む澪
    好き!

    「雲外蒼天」というのは澪が子供の頃出会った易者がみた澪の相なんですが、昨年将棋の藤井聡太さんが九段に昇段を果たし史上最年少でタイトル防衛した際に揮毫として選んだ言葉でもありますよね
    文字通りの意味は、〈雲を突き抜けたその先には、青空が広がっている〉ということ。転じて、〈努力して苦しみを乗り越えれば、すばらしい世界が待っている〉といった意味なんですが

    まんま雲外蒼天な物語がこれからも続いて行くんでしょうね
    すごい楽しみ!

    • ひまわりめろんさん
      そうなのよ

      完結してるってのは大きいのよ

      黒木華!画像見たけど完全に転生してるやん!いや澪実在の人物違うけども
      彼女以外ありえないくらい...
      そうなのよ

      完結してるってのは大きいのよ

      黒木華!画像見たけど完全に転生してるやん!いや澪実在の人物違うけども
      彼女以外ありえないくらいぴったりだね
      2022/10/31
    • みんみんさん
      わたしは
      あきない世傳が途中だからとりあえずそっち完結したから読む(u_u)
      それから、みをつくしだよ〜!
      わたしは
      あきない世傳が途中だからとりあえずそっち完結したから読む(u_u)
      それから、みをつくしだよ〜!
      2022/10/31
    • ひまわりめろんさん
      みんみん
      みをつくし未読だったんや

      わしもみをつくし終わったら、あきない読むつもりでいるから来年いっぱいくらいは楽しめるな
      長生きしなきゃ...
      みんみん
      みをつくし未読だったんや

      わしもみをつくし終わったら、あきない読むつもりでいるから来年いっぱいくらいは楽しめるな
      長生きしなきゃw
      2022/10/31
  • みをつくし。ブクログの皆さんの本棚でもよく見たし、そういえばうちの母が昔テレビで面白いわ〜と言っていたあの沢口靖子さんの話かと思ったら...全然違う話だよ?!...うん、でもいいや気を取り直して読んでみよう。あら、あっという間に読了。

    ...これは予想以上に面白いよ?
    お店の出てくるお話って、お客さんが絡んで進む話が多々あるけど、これは店主となった澪自身とその周りの家族同然の人達とのお話。きっと辛い過去を持っていても、その中での幸せな記憶がちゃんとあるから、自身の明るい未来を強い気持ちで作っていくことが出来るんですね。

    いや〜年末年始に向けて、素敵なシリーズ本に出会えました。これからブックオフで買い占めて読み尽くすわよー!(いや本屋で定価で買わんのかい)

  • 良かったわ。この本。
     江戸と上方との食文化の違い。面白かった。
     大阪で八歳の時、水害で両親を亡くした澪。大阪で名の通った料理屋“天満一兆庵”の女将さんに助けられ、やがて天満一兆庵で料理の修行をすることに。だが、その天満屋一兆庵が火事に会い、主の嘉平と女将さんの芳と澪は江戸店を出した若旦那の佐兵衛を頼って江戸に来た。が、店は無く、佐兵衛は行方不明。ショックを受けた嘉平は命を失ってしまい、芳と澪は長屋に身を寄せ合って生きていた。
     生活のために、“つる屋”という蕎麦屋で働いていた澪。ちょっと料理を作ってみろ、と主人の種市に言われ、張り切って作るが客の評判がすこぶる悪い。澪の覚えてきた上方の料理が江戸っ子の口に合わないのだ。
     江戸と上方の食文化の違い。例えば。
    ・江戸は鰹出汁だが、上方は昆布出汁。何故なら、“水”が違うから合う出汁が違う。
    ・上方では料理の素材の色を殺さない薄い色の料理のほうが美味しそうに見えるが、江戸では濃い色のほうが美味しく見える。何故なら、江戸には職人が多いから、塩分の多い味付けのほうが好まれる。
    ・江戸では初鰹は歓迎されるが、戻り鰹には見向きもされない。しかし、大阪では寧ろ、脂の載った戻り鰹のほうが人気がある。
    ・江戸では酒粕は“酢”を作る材料にしかならないが、大阪では“粕汁”にして美味しく頂く。
    ・大阪では客は美味しいものを安く頂けるコスパの良い店が人気があるが、江戸っ子は見栄張りなので、高級料理店へ行ってみたいという客が多い。

     今のように江戸と大阪の間を簡単に行き来出来ず、情報も無い頃のこと。澪は江戸と上方の食文化の違いにいちいち驚きながら、なんとか江戸の人に喜んでもらえる料理を考案し、その一つ一つが人気を上げていく。澪の考案した料理。例えば
    ・昆布出汁と鰹出汁の両方の良いところ(澪は「昆布出汁は口にまろやかに広がるが、鰹出汁は集まる感じ」と言っていた)取りした、“合わせ出汁”を考案した。しかも、そこにもう一度鰹節を入れた、二番出汁も考案した。そして合わせ出汁を使って“茶碗蒸し”(卵液に具材を入れて蒸した“茶碗蒸し”は当時江戸にはなかったらしい)を売出したところ、大評判に。持ち帰りように、竹筒に入れた物まで考案した。
    ・心太は江戸では寒天から作るもの、大阪では天草からつくるものだったが、大阪風の磯の香りのする心太を出したところ、これも大評判に。
    ・江戸にはなかった“粕汁”を江戸風の味付けで江戸で正月に使う鮭を入れて(大阪ではブリ)作ったところ、これも大評判に。

     子供ころ占い師に“雲外蒼天”の相と言われたように、次次と艱難辛苦が降り注ぐ澪だが、それを乗り越えた先には必ず真っ青な空が見られる運命であるらしい。店の人気が出たと思ったら妬んだライバル店から火を付けられたりと波乱万丈だが、優しい大人達と思わぬところにいた仲間の友情に支えられ、成長していく澪の物語としても勿論楽しめます。


  • かつて大坂の天満一兆庵で働いていた澪。大坂の店が火事に遭い、東京店の佐兵衛を頼って東京に来たが、佐兵衛は行方不明で店は潰れていた。澪は蕎麦屋のつる屋で働いて、天満一兆庵を再建することを目標とするが、大坂と東京の味の違いに戸惑い…

    ぴりから鰹田麩、ひんやり心太、とろとろ茶碗蒸し、ほっこり酒粕汁。全部美味しそう、いや、美味しいに決まってるでしょう。

    佐兵衛はどこにいるの?
    小松原さまは、何者?
    幼馴染の野江ちゃん、生きてるような気がする…
    そう思いながら読んでいくと、ちゃんと第1巻として感動の終わり方をしつつ、
    「ああぁぁ!ずるい、次の巻を読みたくなるヤツやん!」
    という絶妙な物語になっています。

    下がり眉の澪の眉が更に下がることによって、嬉しさ、悲しさ、すべての感情がダイレクトに伝わってきます。『雲外蒼天』な澪の姿が気持ちがよかった。そして優しくてかっこいいご寮さん、野江ちゃん、周りの人たち、みんなステキだった。
    最後の1行に涙です。

  • 新年あけましておめでとうございますm(__)m
    そして今年の初読書はこれです♪

    お盆と年末年始が嫌いなわたし…
    追い立てられるような感じがイヤ笑
    変わらぬ日常が好きです!
    まぁ怠け者なだけですが( ̄▽ ̄)

    今年ものんびりたくさん本を読みたい!

    人情物が読みたい!なので…
    高田郁さんです!好きなんですよ!
    あきない世傳を先に読み始めたので…みをつくしは後回しになってました_φ(・_・

    あきない…も主人公の周りがもう素晴らしいのですが
    こちらもいいよぅ‼︎種一いいよぅ‼︎

    嫌がらせに負けずに頑張る姿!
    そして周りの素敵な仲間たちと支え合って苦難を乗り越える!お約束通りの展開はわかっているけどそこがいいよぅ(//∇//)

    もう黒木華が眉を下げてる姿しか浮かばない(´ー`)
    そして読むと腹が減るよぅ笑


    • みんみんさん
      おびさん♪あけおめでございます!
      もうね…
      年賀状書きましたか?
      おせちは作らなくていいの?
      大掃除は?
      なんて世間様から圧が出てる気がする...
      おびさん♪あけおめでございます!
      もうね…
      年賀状書きましたか?
      おせちは作らなくていいの?
      大掃除は?
      なんて世間様から圧が出てる気がする( ̄▽ ̄)

      2023/01/02
    • おびのりさん
      私の母親は、全て私にやらせる鬼母でしたので、年末実家があるまでは、帰省必須で、大掃除から餅つき、買い物。兄弟姉妹は居ないので、嫁、娘、妻、親...
      私の母親は、全て私にやらせる鬼母でしたので、年末実家があるまでは、帰省必須で、大掃除から餅つき、買い物。兄弟姉妹は居ないので、嫁、娘、妻、親を全てワンオペでやり続けるという、地獄の一週間。バッファリンが主食ですね。
      2023/01/02
    • みんみんさん
      うわ〜それは凄まじい
      「おびのり日記」で本が出せますね(°_°)
      ぜひ読んでみたい笑

      うわ〜それは凄まじい
      「おびのり日記」で本が出せますね(°_°)
      ぜひ読んでみたい笑

      2023/01/02
  • 「雲外蒼天」
    どんな試練でも、努力して乗り越えれば快い青空が望める

    江戸・神田にある蕎麦処「つる家」にて料理人として働く澪が、上記のとおり様々な苦難に襲われながらも、料理と真摯に向き合い続け、懸命に前に進んでいく物語です。

    澪の夢は、かつて大坂にあった料理店・天満一兆庵を江戸にて再興させること。

    故郷の大坂で、水害により両親を失い、幼馴染も行方知らずとなるという辛い過去を持つ澪ですが、後ろ向きになることなくひたむきに努力をする姿には胸を打たれます。

    澪が試行錯誤して作り上げる料理はどれも美味しそうですし、澪の心の暖かさが滲み出ているような優しい料理ばかりです。
    読むだけで私の心も暖かな気持ちで満たされました。
    シリーズものなので、ぜひ早く次のお話が読みたいです。
    幼馴染の野江との今後も気になります。


  • とても読みやすく、
    笑いあり涙あり、どきどきはらはらあり、
    正体不明の人物あり、友情や親子の愛情あり、、
    まるでマンガやドラマのように盛り沢山で、
    実際ドラマを観ている感覚で
    さくさく読めてしまう。
    設定や書かれていることに目新しさはないものの、 だからこそ安心してふふと笑い、
    むむっと思い、
    よよと泣けて、個人的にとても愉しく読めた。
    何よりも文章がとても優しくてあたたかく、
    読んでも苦にならないのが
    この作品の魅力だと思う。
    料理を題材にしているところも大きな魅力だし。
    江戸と大坂の味付けの違いなど勉強にもなるし。
    でも寝る前に読んでいると
    お腹がすいてしまうのが欠点かな。

  • いい!

    登場人物の人柄がなにより良い。
    短編の構成になっており、一話ずつ要となる料理があり、食いしん坊の私にはとても楽しい作品です。

    時代小説なのですが、とても読みやすく、すっかり虜になってしまいました。

    続きが楽しみです♪

    オススメ!

  • まず第一巻の「八朔の雪」を読みました。
    江戸時代の暮らし。
    人間ドラマがありながら、美味しく食べるための工夫など とても面白く読めます。
    巻末にはレシピも付いているので自分でも作りたくなります。
    主人公のお澪さんがとても可愛らしく、でも芯はすごくしっかりしています。
    これからの展開もすごく楽しみです。
    シリーズを順番に読んでいきます。

  • 本作はまず映画で観た。舞台は江戸時代、上方(大坂)に住んでいた幼馴染の一家が、大雨による氾濫で家を失い、親を失い、ともに江戸で暮らすこととなる。といっても、幼馴染は揃って江戸にやって来るのではなく、互いにそれぞれの運命に流され、江戸に辿り着く。『みをつくし料理帖」シリーズの第一巻ともいえる『八朔の雪』では、主人公で幼馴染の片割れの澪が、もう一人の野江も江戸にいることを知る辺りで終わる。全部で十巻を数える本作は、おそらくこの幼馴染二人の運命のもつれを主軸として展開されるように思える。

    落語でもしばしば似たような噺を聞くことがあるが、当時のいわゆる江戸っ子気質は、とかく弱者に甘いようである。武家が幅を利かせている世にあって、身分による格差が社会的に認められていた時代、武士以外の身分のいわゆる町人たちは、互いにかばい合い、助け合うことで江戸の世を生き抜いたのだろう。となれば、言葉だけ聞けば上方の十八番でありそうな「浪花節」的な社会が、江戸の町に広がっていたとしても容易に首肯できる。当時、「女だてらに」料理屋の厨房で料理を作ることができたのも、澪が、過去の不幸を背負って江戸にやって来た娘だったからである。江戸っ子気質あふれる人たちが判官贔屓を自己満足的に発動することで、澪は当時の女性としては稀有な存在であっただろう女料理人になった。料理で身を立てて、大坂の料理屋時代に世話になった「ご寮さん」を懸命に支えている、という図もまた判官贔屓の江戸っ子にはぴたりとはまる。

    映画でも強調されていたが、多くの人たちに支えられ、数多の人情に包まれながらも、澪はそれに甘えることなく絶えず感謝して、おのが料理の技を研鑽する。こうして澪が生み出した料理は、主に上方(関西)の味を基礎としつつ、江戸の人々に受け入れられてゆく。そこに描かれている料理の数々は、読んでいてまことに美味しそうに思える。

    作者の高田郁は、料理はもちろん、一つひとつの所作を丁寧に描くと思ったが、元漫画原作者でもあると知って頷けた。描写は微に入り細に穿って、かつ美しい。そのまま絵にできそうな描写は、元漫画原作者の経歴を持つ作者の面目躍如である。

    タイトルを見れば、澪が料理人として身を立てる物語なのだろう。しかし、同時に、本作は長い人情噺でもある。澪が編み出す料理には、必ず甘酸っぱい人情がスパイスとして入っている。この長い人情噺の、本作はまだほんの入り口にすぎないのだが、江戸の人々の厚い人情とそれに奢ることなく、謙虚に女料理人としての道を究めるために人知れず努力を重ねる澪――まさに日本人の好む構図ではないか。ゆえに、本作は読んでいてとても心地よい。描写は丁寧だが、文章のリズムも悪くない。時折、まわりの人々の人情に読み手の目も潤ませられながら、アメリカン・ドリームさながらの成功を収め、澪はもちろん、彼女を取り巻く人たちもともに我がことのように諸手を挙げて喜ぶさまには、どうしたって心地よさしか残らない。

    全巻読みとおすには今少し時間が必要だ。だが、一巻あたりはリズムの良い文章に乗せられてすいっと読めてしまう。日本人の一人として、人情噺は嫌いではない。腰を据えて、泣き笑いしながら、長い人情噺を聴いてみよう。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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