家霊 (280円文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.96
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本棚登録 : 143
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435437

感想・レビュー・書評

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  • 全てすこぶる良い。一番好きなのは「鮨」。

    「娘」は、婚期を逃し気味のボート選手の娘の話。
    最後のシーン、男がボートで追ってくるのがどうしてそんなに胸キュンな求愛の営みになるのか、普通なら意味わからないんだが、岡本かの子の素晴らしい筆力で、有無を言わせず納得させられる。素敵。いいなあ。こういう恋の胸の高ぶり、私も久しぶりに味わいたい。

  • 日本語が上手い、とはこういうことなのかと思った。
    情緒溢れるのに簡潔で読みやすい。

    「鮨」が特にお勧めです。

  • 人の命や運命などを見つめた短編集。所々綺麗な表現があって素敵。作者が元歌人だからかな。
    死ぬ数年前に書かれたものなのだけど、ものすごい生きることのきらめきに満ちている。物凄いぶっ飛んだ生き方をしたから、ここまで命を見つめられるんだろうなぁ…
    個人的には、「家霊」の料理するシーンが好き。

  • 『老妓抄』、『鮨』、『家霊』、『娘』 の4作品収録。

    『家霊』がいちばん好き。
    悲しい、とも切ない、とも少し違う。ぽろっと涙がこぼれた。

  • 3.96/127
    『夜な夜などじょう汁をせがみにやってくる不遇の老彫金師と、どじょう屋の先代女将の秘められた情念を描いた表題作「家霊」、自らの力で財を築き、齢を重ねてなお生命力に溢れる老妓が、出入りの電気器具屋の青年に目をかけ、好きな発明を続けさせようとする「老妓抄」、鮨を食べることで母との思い出に浸る鮨屋の常連・湊の一時の交流を通して人の世の姿を描き出す「鮨」など、人間の生命力と業があぶり出される名短篇四篇を収録。(エッセイ・東直子)』(「角川春樹事務所」サイトより)

    老妓抄
    (冒頭)
    『平出園子というのが老妓の本名だが、これは歌舞伎俳優の戸籍名のように当人の感じになずまないところがある。そうかといって職業上の名の小そのとだけでは、だんだん素人の素朴な気持ちに還ろうとしている今日の彼女の気品にそぐわない。』

    出版社 ‏ : ‎ 角川春樹事務所
    文庫 ‏ : ‎ 128ページ

  • 生きることや命の力強さ、きらめきが眩しかったです。
    日々の、やや哀しさすら含む暮らしの中で繰り広げられる人と人との繋がりが瑞々しく色鮮やかに目に浮かびました。
    『鮨』の母の優しさが特に印象に残りました。

  • 岡本太郎の母親、岡本かの子の作品集。
    人情や粋を向島の風景から届けてくれる短編集。
    江戸の風味が効いた暖かな作品。

  • 短編集は編纂が違うとまた違う味わいがある。
    偏食の子供に目の前で鮨を握ってあげて食のおもしろさを伝えようとする「鮨」。

    偏食の内容もすごいけど、母の鮨を握る手さばきの描写と子供の「すし」という催促が妙に不気味で良い。

  • たしかなかんじ。鮨、大学時代に読んだ記憶が鮮やかによみがえった。印象的な筆致。

  • 老妓抄、鮨、家霊、娘

    老妓抄
    表現が上手。展開・描写が確信をついている。
    柚木は念願だった自分の研究に専念できる環境を得る。しかしそれを得てみると逆にこの生活への熱意を失った。想像していた塩梅では進まない研究、ひとりきりで研究する頼りなさ、手ごたえの無さ、生活に追われることのない張り合いのなさ、そして自分の欲望はもうこれ以上生まれてくる見込みがないことへの寒々とした思い。
    パッション。
    結局老妓の夢を託された青年は駄目になってしまう。
    柚木がオーバーラップする。

    鮨も上手い。

    家霊。この題に惹かれて読んだのだ。凄い直感。そっちの感覚が冴えている。

    三年の間、蝶々のように華やかな職場の上を閃いて飛んだり、男の友達と蟻の挨拶のように触覚を触れ合わせたりした、ただそれだけだった。それは夢のようでもあり、いつまで経っても同じ繰り返しばかりで飽き飽きしても感じられた。
    くめ子は多少諦めのようなものが出来て、今度はあまり嫌がならないで帳場を勤め出した。

    じっと辛抱してお帳場に齧りついていると、どうにか暖簾もかけ続けて行けるし、それとまた妙なもので、誰か、いのちを籠めて慰めてくれるものが出来るんだね。

    宿命に忍従しようとする不安で逞しい勇気と、救いを信ずる寂しく敬虔な気持ちとがその後のくめ子の胸の中を朝夕に縺れ合う。

    なぜこんな話が創れるだろう、岡本かの子。
    たった一人の理解者、それがいれば耐えていける。そう感じるときもある。
    そうは思えないときもある。得がたいひとり。

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著者プロフィール

おかもと・かのこ
1889年に生まれ、
1953年に没した、日本の小説家。
代表作に
『母子叙情』
『老妓抄』
『生々流転』など多数。



「2019年 『美少年 岡本かの子 アムール幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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