桜桃 (280円文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 726
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435475

感想・レビュー・書評

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  • ヴィヨンの妻・秋風記・皮膚と心・桜桃の4編。解説は又吉直樹。
    登場する女たちがタフというか、芯が強くて逞しい。思わずうらやましい…と思ってしまった。

    文豪さんの作品は200~300ページを超えると、最後まで気力が持たず心が折れて、途中で挫折してしまう。さらに読みたいと思っている作品に、興味のない作品も一緒に収録されているので、読まないと損な気分にもなりつい我慢しながら読んで苦手意識が加速してしまうことがある。280円文庫はちょうどいい分量で楽な気持ちで買えたし読むことが出来た。

    花びらをむしってもみくちゃにして、ぐしゃぐしゃに噛んで吐き出して、踏みにじって、それから自分で自分をもてあます…とか、とても身近な気がして読んでていて気持ち良かった。

    2018年積読本消化23冊目。

  •  夫婦げんかの末に家から逃げ出してしまう小説家の主人公。家族から逃げる父親の姿は情けなくも映りますが、人間の弱い心をこんなにも赤裸々に描き出せることに感動して、愛おしくなってくるから不思議なものです。

     最後、酒場で独りさくらんぼを食べる主人公。ダメな父親ですが、人間としてはとても愛おしく思えました。まずいまずいと種を吐くのですが、それは精一杯の虚勢で、本当はおいしくてたまらなかったのではなかろうか、などと思いました。ダメな人間を書かせたら右に出る人はいないです。

  • 『桜桃』の、「子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親の方が弱いのだ。」

    ここの一言に全てがつまってるような気がしました。

    「と思いたい。」と、自分を納得させるような、正当化するような…本当はわかっている。「子供の方が親より大事」であるべきだということを。

    彼の、「親」としての責任と、「自己」としての主張が見事に集約されてるなと思いました。

  • 文章の美しいクズ、太宰治。好きです。

  • 皮膚と心が個人的には好きだな。陰鬱とした雰囲気のなかにも、最後にはパッと一筋の光が射すような物語

  • 一人称の文章が癖を持っていて、読みづらいと感じたが、読んでいくうちに引き込まれる感じだった。

    エッセイと詩と小説が交じり合った感じがして、面白いと感じた。

  • とても面白かった。
    どうして太宰さんはこんなに
    人が心の奥底に大事にしまって隠していることを
    こうもさらりと書いてしまうのか。
    個人的に皮膚と心がわりときました。
    この人男性なのにね、すごいよほんと。
    太宰が今尚これだけの支持を得てるのも解る。
    みんな自分が嫌いで、それでも優しくありたい。

    又吉のエッセイもすごく良かった。
    「底抜けに優しい」にじんときた。
    「誰かを無意識に傷付けてきた人」とかね。
    大事な一冊になりました。

  • 四作ともたいへん面白かった。素晴らしい!

  • 「ヴィヨンの妻」、「秋風記」、「皮膚と心」、「桜桃」の四編を収録。おもしろく、切なく読んだ。「人間失格」を読んだときのとてつもない共感はいまでもよく覚えている。共感することでじぶんを更に嫌いになる、という悪循環に陥らせないのが太宰のすごいところ。「ヴィヨンの妻」と「皮膚と心」の終わり方が好き。巻末に収録された又吉さんのエッセイにある「きっと自分が気付いていないところで無自覚に人を傷付けて来た人だとも思う。」の一文に少しどきっとして、一瞬だけ呆然としてしまった。「君よ、知るや、あきらめの民の愛情の深さを」。

  • 2017.8.1
    すごくよくわかる。最初は冗談で、互いが笑いあえる話ができるのだ。というかそれをするための探りあいがある。そして、あ、これで笑うな、と思ったら、その笑わせ方をする自分に自分を固定させる。そうして仲良しになる。しかしそれは上辺だけ、そういう上っ面な話に次第に、探りあいに、笑いによって忘れることができていた相手の仮面の向こう側が、気になってくる。そうして、少し真面目な話をしだす。もしくはその他人行儀さ、仮面の奥に怯えながら、そのまま関係を続ける、居心地悪く続ける場合もあるかもしれない。仮に、仮面を剥がし合うことに成功したとしよう。しかしそうすると今度は、対立がやってくる。私は後悔する。こんな批判を受けるなら、こんな怯えた心地になるのなら、聞かなければよかったと。しかしそれでももう、仮面の向こうへの不安は消えない。相手の心の不可知さへの不安と、聞いたら相手に否定されるんじゃないかという恐怖の間で板挟みになる。ここから出てくるのはルサンチマンで、相手の心の不可知を、不安と恐怖から脚色して、こき下ろし、クソ野郎だと断定して恨みつらみを持ってしまうか、その怒りを自分に向けて、俺は弱虫、臆病者、卑怯者と罵り、死にたくなる。やけ酒、まさにその通りである。
    孤独が、不安を呼ぶ。知りたいと思う。しかしその不安からの好奇心が、対立と恐怖を生む。その恐怖によって私は相手かもしくは自分を、恨む。これが私のこれまでの人生であった。なんとか、のり超えたいと考えている。太宰のいうように、圧倒的な自己肯定からものを言える人間を私はすごいと思いながらも、お前らは知らんだろう、と軽蔑しているところがあるので、そういう話し方はしたくない。しかしならば黙っているほかはないのだろうか。いや、違う。問うことである。相手への敏感な恐怖と不安はそのままに、訪ねること。判断しないこと。故に否定にもならない。故に対立にもならない。そして聞かれたら、答える。お互いの自己主張から始まる対話ではなく、お互いの問いから始まる対話。これが今の私の、当面の解決策。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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