心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435840

感想・レビュー・書評

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  • シリーズのなかでも、様々な大事な決断を迫られる第6巻は読むのがつらくなるほど怒涛の展開です。さらに、澪は我々凡人が幸せだと考えてしまう選択をあえてしないという意外な方向へ・・この辺を読者に納得させられるのか作者の力量が問われます。
    さて、毎回おししい料理を提供するつる屋ですが、今回は他店の失火で午前しか火が使えなくなった苦肉の策から持ち帰り弁当というアイディアが生まれます。白木づくりの弁当箱を返却してくれたら、四文おまけの十六文でお弁当を売ってくれるというSDGSの先駆けのようなことをしています。ところで、当時の1文っていくらなのか気になりますよね。作者は1文30円くらいだと考えているようですので、食事や弁当は600円となります。
    今回は、物語の面白さ以外にも2つ勉強になりました。
    「その日、書き入れ時を過ぎた・・(P26)」の「かきいれ」は、「掻き入れ」だとばかり思っていましたが、本文が正解なのですね。
    「(野菜は)土の上になるものはお湯から、土の下に出来るものはお水からゆでる(P187)」も覚えておくと便利ですね。

  • 選択の巻、はたしてコマツバーラはどうなる?

  • 澪にとって大きな転機が訪れすぎる一冊。
    縁談の件はあまりにトントン拍子に進みすぎちょっと鼻白むところもあったけど、ようやく想いが通じ合えてよかった。しかし武家の嫁とは真のハッピーエンドではないので、澪は料理をとるしかないよなぁ。小松原が士分捨てるくらいの心意気あればよかったのだけど。

  • シリーズ六作目。後半戦のスタートは正に疾風怒濤。全編通して【選択】がキーワードで、澪にとっては試練に等しい決断を迫られる展開が続き、ほのぼの路線はどこへやらの緊迫感に溢れている。「青葉闇」で揺さぶられ「天つ瑞風」で決断し「時ならぬ花」で再度揺さぶられ「心星ひとつ」で再度決断する。結果だけ見れば遠回りして元の鞘に戻っただけだが、人生には遠回りしないと得られない答えがあるのだ。苦渋の決断ながら【自分の人生を諦めない】道を選んだ澪に頭が下がる思いだ。思わず自分の【心星】は一体何だっただろうか?と考えさせられる。

  • 衝撃が走るとはこのこと。

    澪が愛する小松原。
    いつもそっと導いてくれた人。
    その人が自分の伴侶となるかも知れない。
    愛し、愛される喜び、これ以上幸せなことがあるだろうか?
    少女漫画ならこのまま突っ走って大団円のはず!
    しかし.......。
    物語はそんな予定調和を良しとしなかった。
    身分違いの恋とはいえ、各史料にあるように、町人から武家になる方法など幾らでもあった。
    無論それは簡単なことではないけれど、全く越えられない壁ではなかった。
    それなのに、なぜ!

    答えは、澪が料理の道を断たれることを心の奥では望んでいなかったから。
    揺れに揺れる心。
    けれども「私は何がしたいのか」という答えははじめから出ていたのだ。

    「あちこち欠けて傷ついて、それでもひとは生きていかなならん」
    「良いことも悪いことも、長くは続かない。色々あっても、せめても丸い幸せを、願い続けて生きるしか無ぇのかも知んねぇな」(102頁)
    自分にとっての幸せ、大事にしているもの......。
    周りはもったいないというかも知れないが、誰にも止められるものではないのだ。

  • まさかまさかの展開…
    私は正直、奉公の話がでるとは思わなかったよ

    種市さんの愛情が痛いくらい深かったなぁ
    澪ちゃんの選択は間違ってないと思う


    でも!!!
    私は源斉先生派です
    ますます、源斉先生派です

  • 澪ちゃん、そういう答えを出しちゃうの…? 大切なものたったひとつを手にするために、同じくらい大切なものをいくつも手放さなければならないなんて切なすぎます。
    ★★★なのは物語がつまらないからではなくて、この巻はちょぴり哀しい気持ちになったから。

  •  澪の話の続編です。

     今回は本当にさまざまなことが起こりすぎて、ちょっと目を白黒させてしまいました。

     まず。
     一旦は断ったはずの吉原の中に「天満一兆庵」を再建しないか、という話を再度、今度は種市と芳にも知られる形で持ってこられる。
     一方で、登龍楼からも、神田須田町の登龍楼を格安で居抜きで買わないか、という話を持ってくる。

     どちらも話としては願ってもないものなのだかが、どうしても澪はそれに「うん」とうなずくことができない。

     それぞれがそれぞれの想いで揺れる中、最後の決断は、澪に委ねられる。
     料理人として、岐路に立たされた澪の選択は――?

     という感じで、まず最初の話がぶち上げられるんですが。
     ようやくそれが落ち着いたと思ったら、今度は別の話が持ち上がる。

     なんと、澪の恋が思わぬ形で前進してしまったのである。
     思いもがけない事態に、澪が戸惑っている間に、周りはどんどん話を進めていってしまう。
     決して叶わぬ恋だと諦めていた澪にとって願ってもない話なのだが、澪の心は晴れなくて――

     そんな感じで。
     澪の心はあっちに揺れ、こっちに揺れ、と一大事。
     もう少し心穏やかに料理させてあげればいいのに……とちょっと恨めしく思ったりもしますが、こればっかりは仕方がないですね。だって小説ですもの。

     でも多分、澪の出す答えは決まっていて。
     それでこそ澪なんだろうな、と思います。

     まだ答え出てないんですけどね。
     自分の恋と、自分の仕事と、どっちを取るかって言われたら、それはやっぱり難しいけれど。
     澪は澪の恋を取ってしまうと、失うものが多すぎるんだよね。難しい――

  • この巻、すごく切ない!!
    話が思わぬ方向に動いた!・・・と思ったら、なんか次巻が哀しい展開しか想像できません(>_<)

    今巻は澪が様々な決断を迫られる巻でしたね。
    天満一兆庵の再建、野江の身請け、そして小松原との恋が今まで澪の胸を占める願いでしたが、これまでは漠然とした夢に過ぎなかったこれらの望みが、この巻では具体的な話として突如現実味を帯び始めます。そして、当然これらの望みは全部叶えることは不可能で・・・そのあたりの澪の苦悩が切ないです。
    決断を下すのは次巻となりそうですが、澪が何を選ぶのか、そしてこの物語の最終的なゴールはどこなのか、見守っていきたいです。

  • 澪さんの色々な工夫がすごいと思う。
    料理の知識欲が多い。

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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