残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
4.20
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本棚登録 : 2843
レビュー : 458
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758437455

作品紹介・あらすじ

吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人・又次の死。辛く悲しかった時は過ぎ、澪と「つる家」の面々は新たな日々を迎えていた。そんなある日、吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる家」を訪れた。あさひ太夫と澪の関係、そして又次が今際の際に遺した言葉の真意を知りたいという。澪の幼馴染み、あさひ太夫こと野江のその後とは-(第一話「残月」)。その他、若旦那・佐兵衛との再会は叶うのか?料理屋「登龍楼」に呼び出された澪の新たなる試練とは…。雲外蒼天を胸に、料理に生きる澪と「つる家」の新たなる決意。希望溢れるシリーズ第八弾。

感想・レビュー・書評

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  • 4月ごろから、そろそろかなぁ・・と思っていた。
    5月になって、前作からそろそろ1年だというのに、どうしたんだろうと急に心配になっていた。
    先週、読書仲間さんから「6月15日に発売だそうですけど、ご存知ですか?」と知らせが!
    もちろん、同じく心待ちにしていたお仲間さんにもすぐに伝えました!

    発売日に届いた、みをつくし料理帖第8弾。

    小学生の時、教室に遅くまでいると
    担任の先生が秘密の引き出しから出してくれたきれいな色のキャンディー。
    外国製だったのからしら?
    大事に持って帰って、机の引き出しにしまって、何度も眺めたあの時の気持ちにも似ていて・・・。
    読み始めてしまえば、あっという間に終わってしまうことがわかっているから、
    惜しむ気持ちで最初の数ページは行きつ戻りつしながら、ぐずぐずしていても、
    エンジンがかかったら、もう止めることはできません。

    第7弾までのじりじりする展開とはずいぶん異なり、
    それぞれの進むべき道がはっきりと見えてくる。
    確かに、人生でも急に物事が動きだし、気づけば結論が出てしまうようなこともあるよね。
    どうやらこのシリーズも終盤に差し掛かっているようで・・・。

    髙田さんの書く市井の人々は凛としている。
    つる家の人々にとってかけがえのない人をまた失い、辛いことも次々に起こるけれど、
    ささやかな喜びや人の情に光をあてて、哀しみを抱えながらも歩き出せば、
    何か良い変化がもたらされると信じられる。


    もう会うことのない人。
    亡くなってしまった人。
    喪失感で自分を見失いそうになっても、
    頬を濡らす涙が乾く日は2度と来ないと思っても、
    人はいつか気づく。
    会えない今を嘆くより、出会えたことを感謝したいと。
    会って話すことはできなくても、その人が存在したことは
    決して消すことはできないのだと。
    心の中に留まり、所作や考え方の影響を受けていたことに、はっとさせられる。
    ああ、確かにあの人はいたのだと。


    誰かの気持ちが少しでもほぐれていくようにと手をかけて拵えた料理。
    それを口にしたときと自然と幸せそうな笑みがこぼれる。
    滋味あふれる料理の数々。
    味わい深い人々。
    豊かな気持ちを養ういくつもの言葉に、
    ささくれ立っていた自分が穏やかになっていくのがわかる。


    「この歳になってわかることだが、残された者が逝っちまったの者のために出来ることは、そう多くは無ぇのさ。中でも大事なのは、心配をかけないことだ」(P74)

    「そのひとを大事に胸に留めて、毎日を丁寧に生きようじゃねぇか。身の回りの小さな幸せを積み上げて、なるたけ笑って暮らそうぜ。そういう姿を見て初めて、亡くなったひとは心から安堵できるんじゃねえのか。」(P75)

    「ひとの幸せってのは、銭のあるなし、身分のあるなしは関係ないんです。生きていて良かった、と自分で思えることが、何より大事なんですよ。」(P244)

    この拙いレビューを読んだどなたかが、いつか手に取ってくださったら、本当に嬉しい。
    1人でも多くの方におすすめしたい、わたしにとって大切なシリーズなのです。

  • 面影膳、干瓢海苔巻き、艶やかな卵黄の味噌漬け…

    無骨でとっつきは悪いが豊かな滋味に溢れている乾物。そんな、又次を思わせるような乾物を取り入れ、三日精進の膳を考える澪。大切な人を亡くした人々の心に染みる高野豆腐の揚げ物…

    息子佐兵衛との再会、また坂村堂の父で名店「一柳」店主 柳吾との交流…など、ようやくご寮さんにも幸せが。
    澪にもあさひ太夫との再会やふきの成長など、いよいよ「つる家」卒業の可能性を感じる展開。

    前の巻が辛いことばかりだった分、幸せの兆しが嬉しい。

    卵黄の味噌漬けや醤油漬けは今ネットでも密かなブームのようだけど、こちらはこぼれ梅(味醂かす)を使うからより味に丸みが出て美味しそう。

  • みをつくしシリーズ8作目。
    一途な女料理人・澪に転機が‥?!

    前作で吉原の大火があり、大事な人を失った悲しみを抱えている「つる家」の面々。
    料理人の又次に命を助けられた摂津屋が澪を訪ねてくる。最後の言葉の真意を知りたいと‥
    あさひ太夫こと幼馴染の野江のことが、これまで以上に気にかかる澪だが、おいそれと身動きは取れない。
    そんな澪のまわりで、運命が動き出す。

    幼い下足番だった少女ふきがすくすく成長しているのがいいですね。
    悲しみを乗り越え、澪の仕込みで料理の腕が上がっていくのが頼もしい。

    ご寮さんことお芳の一人息子・佐兵衛は長らく行方知れずだった。
    ようやく行方がわかったと思ったら‥ややこしい事情が?
    気を揉ませつつ、何とか良い方向へ。

    「つる家」常連の坂本堂の父・柳吾が病に倒れ、お芳は看病に。
    反目していた父と息子の関係にも変化が訪れていた。
    「一柳」の店の人たちも、お芳に一目おくようになっていき‥
    このことでの幸福感で心温まり、とても後味が良かったです。
    大きく心揺れる澪ですが、そろそろ幸せになってほしいもの。

    今回のお料理は~
    残月ーかのひとの面影膳
    彼岸までー慰め海苔巻
    みくじは吉ー麗し鼈甲玉
    寒中の麦ー心許す葛湯

    丁寧に生きる人々が描かれていく様子と、手間ひまかけたお料理の味が相通じる世界。
    章題と食べ物の名前を見ただけでも、ほっこりします。

  • あぁ、読み終わってしもた…(しゅーん)

    久々に読んで、やっぱりいいなぁと再確認したみをつくしシリーズ。
    1年以上待ってようやく出た待望の新刊、もったいなくて少しずつ読もうと思ったのにー。

    “ただ寒中の麦を思へ”
    じっと冬の間、雪の重みに耐えて生きぬき、春を迎える麦の様に、
    今までの辛い出来事を乗り越え、焦土からぷっくりと顔を出した希望の芽。
    吉原の大火での大切な人の死を胸に、澪はつる家で包丁を握る。 
    澪が創意工夫して生み出す料理の数々に、今回もつる家の客気分で味わいました。
    若旦那・佐兵衛との再会、登龍楼から押し付けられた試練、あさひ太夫との邂逅。

    “子の幸せと親の幸せを混同しないことです。いっぱしに成長したなら、子には自力で幸せになってもらいましょうよ。そして親自身も幸せになることです。”

    りうさんの言葉に励まされて、一歩を踏み出すよ芳さん。
    いつまでも幼い少女だと思っていたふきちゃんの成長もうれしくて。
    つる家もずっとこのままではない。
    澪が一人の料理人として独り立ちする日はそこまで来ているんだな。
    でも小松原様とはもう本当に終わってしまったんだなぁ…ということもわかって、
    寂しいなぁと湧き出てくる気持ちはどうしようもありませぬ。

  • 今まででいちばん気持ちよく泣けたなぁ。
    小松原との別れや又次の死や、このところ辛い話がつづいたけれど
    今回はそれらを乗り越えて、少しずつみんなが次の一歩を進み始めました。
    鮮やかな若草色の表紙もいちばん好き。

    「みをつくし」には、日本の美しさと日本人の情け深さがいっぱいつまっていて、こういうこと忘れちゃいけない大切にしていかないといけないってことを教えてくれる。
    旬の素材を丁寧に、食べる人のことを気遣ってつくられる澪の料理にも
    それを見守り支える周りの人たちにも、
    どんな逆境でも自分で道を選んでいく澪の生き方にも。
    私自身も励まされ癒されて、あたたかい気持ちをもらっています。
    シリーズももう8作目だけど、読むたびに、本当にいい話だなーとしみじみ思う。

    ご寮さんは佐兵衛とついに再会し、坂村堂も父と和解し、澪も野江と再会。
    そして最後のご寮さんの新しい縁。
    人と人との結びつきに、幸せの兆しが見えてきて、
    澪ちゃんも眉を下げるだけでなく、料理人としての強さが出てきて
    次作では大きな転機を迎えそうで、切ないけど楽しみです。


    (2014年8月25日 再読)

    • nobo0803さん
      tiaraさん

      こんにちは♫
      毎日暑くて、なかなか本を読む気にもなれず・・
      久しぶりにブクログを見てみなさんのレビューを読んで、本を読む気...
      tiaraさん

      こんにちは♫
      毎日暑くて、なかなか本を読む気にもなれず・・
      久しぶりにブクログを見てみなさんのレビューを読んで、本を読む気がおきてきました!(^^)!

      みをつくしシリーズ、この巻はまだ読んでないのですが、澪と野江ちゃん再会できるんですか!?ご寮さんと佐兵衛も再会ですか!!
      前作まで悲しいお話が続いてて・・読むのが切なくなってたのですが、この巻は幸せな気持ちになれそうですね♫
      読める日が待ち遠しいです!(^^)!
      2013/08/25
    • tiaraさん
      nobo0803さん

      あぁなんだか、ちょっとネタバレしてしまって申し訳ないです。
      そうなんです、悲しい別れが続きましたが、今作では人と人と...
      nobo0803さん

      あぁなんだか、ちょっとネタバレしてしまって申し訳ないです。
      そうなんです、悲しい別れが続きましたが、今作では人と人とが結びついていきます。
      澪ちゃんも揺るがない強さを見せてくれます。

      みをつくしシリーズいいですよね。
      わたしもやっと読めた!って思いでしたよ。
      夏バテにもピッタリの内容だと思います☆
      2013/08/25
  • 待ち遠しくてたまらなかったみをつくし最新刊、残月。あっという間に読み終わってしまいました。はあ。切なさと温かさで胸がいっぱいです。

    今回は又次さんの死後から描かれており、営業を再開するものの、ふと面影を重ねては涙に耐える澪やふきちゃんの姿が痛々しく冒頭から号泣。
    そんな中、芳の息子佐兵衛の行方がわかり、念願の再会を果たしたり、
    翁屋楼主、伝右衛門と源斉先生の計らいで野江と澪が初めて顔を合わせることができたり、
    登龍楼との対決や芳の後添い話などなど、ゆっくりながらもぐんと話が進みました。

    帯に「悲しみの雨は上がり、希望の光が降り注ぐ」とありましたが、本当にそのとおりで、悲しみの涙で始まり、歓びの涙で終わりましたね。

    澪から又次の最期を聞かされた野江が「あほやなぁ」と涙を頬に伝わせる場面も印象的でした。

    ふきちゃんが料理人として腕を上げていく姿や、澪が采女に啖呵を切る場面で、みんなの中に又次さんが生きているんだなと感じられてまた泣けた。種市の懐の深さにも救われたなあ。

    坂村堂のきゅ~っと目を細める姿にもほっこり。

  • やっと出た新刊。

    前巻で一番好きなキャラクターが物語から消えてしまったショックが大きくて、未だに話を書き直して欲しいと思っているぐらいなのですが、

    つる家の皆が立ち直っていくのを読んで私の気持ちも癒されました。

    また次巻が出るまで1年ぐらい待つのでしょうか?せめて半年ぐらいにして欲しいです(>_<)

  •  「みをつくし料理帖」シリーズ第八巻。前巻の悲哀を色濃く残しながら、それでも皆が少しずつ希望を取り戻し、前へ進んでいきます。
     料理を通して真摯に人を思う澪の心意気はいつものことながら、「人のため」だけではなく、料理人としての自分の才を存分に発揮する一品を追い求める澪に、いままでと違うかっこよさを感じました。
     澪を取り巻くつる家の面々にも変化が訪れ、澪にもついに料理人として次の段階へ向かう道が示されます。

     今回特に印象に残ったのが、ふきの成長。かけがえのない人を失って特に悲しみようの深かったふきが、やがて又次の教えを守り、形見のたすきを締めて澪の傍らに立つ姿を頭に思い描くと涙が出ます。

     それにしても、人物の魅力もさることながら、情景描写が本当に素敵。
     秋の深まりを「初雁を眺め、赤蜻蛉と親しむ」、初雪を「まだ積もる力もない儚い雪」などなど・・・。
     情景が変わるごとに入る描写の一文に惚れ惚れしながら読みました。

  • シリーズ8弾目。
    一番初めの章は又さんのいない淋しさで胸がいっぱいになりました。
    残すところ後2冊です。
    つるの屋の皆それぞれが少しずつ変わり始めてきていますね。
    どう纏めてくるのか物凄く楽しみ。
    ご寮さん、おめでとう!

  • 「親なんてのは、詰まらないものですとも。
    子には子の幸せがある、と頭ではわかっていても、それが親の思い描いていた幸せの形と違えば、いろいろ考えてしまうんですよ。
    子が幸せなら自分はどうでも良い、と無理に思おうとすればするほど、逆に親子の絆に囚われすぎて苦しくなるものなんです」

    だったら、どうすれば......?

    「子の幸せと親自身の幸せを混同しないことです」。(244頁)

    本作では登場人物達がそれぞれの幸せを考えることになる。
    中でも、冒頭の言葉は、ついやりがちな、子供への過干渉を戒める言葉で、親である人にもそうでない人にも、子である人にも響く言葉だ。
    誰だって幸せになりたい。
    そして自分の人生にやり残しがあるのなら、失敗があったのなら、子供には自分の代わりに成し遂げて欲しかったり同じ轍を踏ませないようにしたりしたくなる。
    満ち足りていたとしても、自分はこうしたら幸せだったから、あなたにも、と言いたくなる。
    しかし、親と子供は違うのだ。
    幸せの感じ方も、掴み方も。

    ご寮さんも澪も幸せになって良いのだ。
    誰かのために生きる事は素晴らしい。
    けれど圧し殺した心はいつか自分を壊してしまう。

    幸せとは、親子とは、それを感じさせる巻であった。

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