パンとスープとネコ日和 (ハルキ文庫 む 2-4)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 1879
レビュー : 204
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758437622

作品紹介・あらすじ

唯一の身内である母を突然亡くしたアキコは、永年勤めていた出版社を辞め、母親がやっていた食堂を改装し再オープンさせた。しまちゃんという、体育会系で気配りのできる女性が手伝っている。メニューは日替わりの(サンドイッチとスープ、サラダ、フルーツ)のみ。安心できる食材で手間ひまをかける。それがアキコのこだわりだ。そんな彼女の元に、ネコのたろがやって来た-。泣いたり笑ったり…アキコの愛おしい日々を描く傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 母一人に育てられ、自分の出生の疑問を持つとともに、母親の性格と生き方に反発していたアキコ。母親の死後は全てをリセットするかのように、古い食堂をシンプルでナチュラルなパンとスープだけのお店に変えてしまった。母親を否定しながらも、常連客に気遣いながら自分の新しい生活を築いていく。

    母親の営んできた庶民的な食堂も、アキコが手掛けるシンプルなお店も、食べる人に喜んでもらいたいという気持ちは同じか。食べる人の喜ぶ顔を思いながら作る料理はどんな形であれ、人を幸せにするし、それ以上に自分自身を豊かにしてくれると最近とても思います。

    家猫のたろちゃんの雰囲気もかわいらしく、若い時分にあそんで、あそんでと絡んでくる仕草は昔の同居人を思い出します(猫の出てくるお話には弱い)。

    気が張っているアキコも少し疲れたのか、自分の出生に迫るお寺を訪問し、縁戚かもしれない方との静かで穏やかな会話に魅かれてしまう。やがて仕事が忙しい中での、たろとの突然の別れ。アキコの目からは孤独の涙がとめどもなく流れてくる。


    これ、TVドラマでも放映されていたんですね。準主役のたろがスリムなキジトラ猫になっていて、ちょっぴりイメージが違うかも。主役のアキコは小林聡美ですが、つい猫の所作に目がいってしまって・・・

  • 自分の立っている場所、目指している場所、進む方向が間違っていないと確信している人なんてこの世にいるんだろうか?
    私はおどおど、キョロキョロする毎日。
    自分がどっちを向いているのかさえ分かっていない。

    それがこの物語の主人公、アキコさんとの唯一の共通点ではないかと思った。
    生い立ちも年齢も仕事も違う女性。
    でも自分の向いている方向に疑問を感じながらも手探りで進んでいる姿にはとても共感出来た。
    これで本当にいいのか?
    私は傲慢なのか?
    私が傷つけた?
    次々と浮かぶ疑問には正解がない。
    怖いし不安だ。

    でも大切なのはその声に蓋をしないこと。
    「体から出たがっているものは、出さないとよくないもの」という言葉に深く頷く。
    きれいで正しくて心地良いものだけがあればいいのに。
    でも汚くて醜くて、ずるくて、臆病な自分を隅に追いやってつぶしてしまったら、私は健やかでいられないんだ。きっと。

  • 群ようこさんの本を読んだのはものすごく久しぶり。
    15~6年ぶりぐらいかなぁ…
    久しぶりに読んだ本はこのタイトルに惹かれてのこと。
    53歳・独身のアキコは唯一の肉親であった母が残してくれた食堂を改装して小さな店をオープンさせる。
    読み始めたころは「かもめ食堂」を連想させるものでしたが…
    アキコの出自が明らかになるころから、読むのがちょっとしんどくなる。
    もう少し、気持ちがおだやか~になり、ふんわりした気分で読める本だと思い込んでいただけに…
    続編が既刊なので、そちらに期待。

  • 唯一の身内である母を突然亡くしたアキコは、永年勤めていた出版社を辞め、母親がやっていた食堂を改装し、再オープンさせた。
    メニューは日替わりのサンドウィッチとスープ、サラダ、フルーツのみ。
    母の時代の常連客に文句を言われながらも、猫のタロを愛で、アルバイトのしまちゃんと働く日々。
    謎の縁で知らされる母親の過去、自分の出生。

    タロちゃんが急に亡くなってしまったときはとても悲しかったです。
    アキコの食堂はとても雰囲気がよく、行ってみたいなぁと思いました。
    ときどきアキコが自分の仕事やり方は傲慢なのではないか?と立ち止まることがあり、
    長くお店を続けるというのは難しいなぁと改めて感じました。
    自分本位にならず、それでいて信念は曲げないというアキコの仕事の仕方に尊敬です。

    アキコの朝食風景を丁寧に描いている場面があり、とてもおいしそうでした…!

    ほのぼのとした雰囲気ではあるのですが、そこそこ現実的なことが描かれている作品です。
    アキコとタロとのやりとりはエッセイ『おかめな2人』を読んでいるようでした。

  • 脱サラしてカフェを始めた女性の山ナシ谷ナシのユルーイお話かと思ったら、わりとそうでもなかったです。「かもめ食堂」な雰囲気を求めてたんだけどちょっと違ったかな。
    作中でアキコが色んな人がいるって言ってたけど、あたしから見たらアキコもかなり個性的な人だと思います。正直50歳過ぎても独身でいるのがちょっと分かる感じ。歳のわりに幼く夢見がちな考え方がチラホラしてて、最初に年齢の明記がなかったら勝手にアラサー女性だと思って読み進めてたと思います。
    アキコは自分のやりたいことをやって納得した人生を送ってますしこれからも送ります、という感じにとれるのですが、本当はとても寂しがり屋で一人で生きていくのが辛いと感じる人なんじゃないかと思いました。
    常連客のオジサンたちが離れていったことに一番寂しく後ろめたい思いをしているのは彼らじゃなくてアキコかもしれません。
    何か新しいものを手に入れる時は古いものを失わなければならないのかもと思わされました。逆に失うものがあったら新たに得るものもあるのかもしれないですね。
    アキコに素敵な出会いがあると良いなと思いつつ、前向きな終わり方に救われた気分です。

  • 群ようこはすごく若い頃から大好きな作家さん。読みながら「そうそうそうそう!」とうなずき、笑い転げていました。
    今回もドラマは見ていませんが「かもめ食堂」みたいな感じのお店の扉を開く感じで読み始めました。
    やや出生に秘密(?)のあるアキコが亡くなった母の店を自分好みの店にして始める・・・。彼女の家族は猫のたろちゃん。
    アキコの心境が前の喫茶店のおばさん、母親時代のお店の常連客、そして現在のお店のお客さん、と、一緒に対応するしまちゃんを通して細かく描かれているなぁ…と、実はこれはメインではない。
    たろちゃんの死によってもたらされる、孤独、そして誰かに甘えたい、救われたいと望んだ時に現れる人達。
    一番救われたのは「動物は人間と違って生死を重要に考えて無いらしい」だから「泣かれると困ってしまう」。
    きっと人間だってそう。死んだ人にとって体が無くなってしまったことはそんなに重要なことではないのでは・・・。
    あー、きっとそう。そう思えました。

  • 登録したのは初めてだけど、『福も来た』を読むために再読。

    やっぱり、たろちゃんが急にいなくなってしまう場面は泣いてしまう。前に読んだ時より泣いたかも。

    人生は人それぞれ、色々あるけれど、心穏やかに、シンプルに生きたいという気持ちがあるので、群ようこさんの作品は共感できる作品が多い。

    一通り泣いた後は、おいしいスープ食べたい。読み終えて、そんな気分。

  • 日々の小さな事にも幸せがあると感じる気持ちや、たろの事で自分を責めたり後悔したりの思いが、自分の経験と重なりとても共感できました。四十にして惑わずというけれど、五十過ぎても迷っていいんだ。と教えてくれる。それだけで、す~っと気持ちが楽になります。初めは年齢相当には思えず、読み進むにつれ、だんだん落ち着きが増してくるんだけれど、たまに年齢不詳になります(笑)それって主人公に出生や母へのこだわりがあって気持ちを捕らわれてる現れかしら。最後はいろんな思いからも解き放たれ、爽やかな読了感で締めくくれます。

  • 動物を飼っている身として、後半から涙が止まらずでした。
    読みごたえがあった一冊

  • たろが亡くなってから、何となく、気配を感じる日々の描写を読んでいて、何年も前に、保護していた猫が亡くなった後、しばらく気配がしていた事を思い出して、とても悲しくなりました。

    後、まだ独身な自分が、50歳になった時、どういう生き方をしているのかも、何だか色々と考えてしまったり。

    ぶれずに生きて行くって、とても難しい事なんですよね。

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プロフィール

群 ようこ(むれ ようこ)
1954年、東京都生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。広告代理店に就職するが半年で退職。6回の転職を経て「本の雑誌社」に事務職で入社。やがて本名で『本の雑誌』に書評を執筆しはじめ、1984年『午前零時の玄米パン』でデビュー。同年退社し、作家専業となる。
代表作として映画のために書き下ろした『かもめ食堂』、ドラマ化された『パンとスープとネコ日和』など。

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