紙の月 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 4162
レビュー : 584
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438452

感想・レビュー・書評

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  • 変わりばえのない毎日で、自分が自分の一部であるような感覚を抱いていた梨花。
    自分自身の人生の設計図を立てられず、何も実現もできない。
    夫婦の間にある違和感もそのままにして慣れてしまう。
    単調な日々の中での、満たされない気持ちや認められたい気持ち。
    それらを埋め、万能感を感じられるのが、デパートでの買い物や光太との不倫だったんだろう。
    その流れの中で、いとも簡単に、横領を繰り返していくー。
    あまりにも簡単だから、身近に感じて、些細なことでもきっかけがあれば、明日は我が身みたいな恐ろしさがあった。

    単調な日々を送る中での閉塞感って、私にも身に覚えがある。
    だけどそれに甘んじて過ごしてきたのは自分自身。
    いいこともわるいことも全て自分でやってきたことであって、簡単にリセットできるものではないんだよね。

    梨花に関しても、結局は自分の中の問題で、坦々と鬱々としてた気持ちのやり場が、たまたま光太に向けられただけに感じる。
    光太から求めたわけではないけどいつのまにかそれが当たり前になった。
    だけどそれは健全な関係ではないのは明白で。(お金で囲うってこういうことかと。囲うって表現が的を射ているよねと感心)
    アムステルダムのお土産がマスタードとチーズだったっていう描写がなんともいえない梨花と光太の浅はかさを表してていいね。

    さて、表題の「紙の月」、気になって調べてみたら「まやかし」や「紙で作ったものだけど本当に信じればそれが本物になる」という意味があるらしい。
    この物語においては後者の意味が強いのかな。


    読後感は、うわぁ、なんか…スッキリしない…。です。
    私の理解力の問題が大いにあると思う。
    映画の方も見てみたい。

  • 衝撃的に面白かった。本当に日常のちょっとしたきっかけ ちょっとした高揚の連続でこうなってしまった梨花の様子に、人ごとではないと血の気が引きそうだった

  • うわぁ~…

    読了後におもわず出てしまった第一声。
    はたして梨花の行いは、善なのか悪なのか?わからないです…
    法的やごく一般的、客観的に見ればあきらかな悪なのかもしれないけど、個人的には梨花の気持ちに寄り添いたくなります。共に人生を送ろうと誓った人からあんなにも心無い言葉や気持ちを受け続けたらやっぱり辛いよね、
    心が痛いよねって思っちゃいます(T_T)

    梨花がたどり着いた答え「私は私の中の一部なのではなく…」その事に気付くのってとても大事なことだと思う反面、全てを含めて自分だと気付いてしまう恐怖も感じました。

    モヤモヤする。

  • なんでしょうね、この恐怖さ。いけない事だとわかってるし、こんな事絶対にやらないけど、なんとなくわかるそれぞれの主人公の気持ち。お金では決して買えない人の心や自分の思いがお金を使って上手く行ってしまったら、それはきっとやめられないよね。
    人生、ちょっと道を外してしまいそうなことは幾らでもあるけど、みんな、理性や誰かしらが軌道修正してくれる機会を得て生きてるんだと思う。そんな環境下に居られることに感謝したいと思った。

  • 「中條亜紀」の、最後の章に書いてある言葉が全てだと思う。
    梨花が少しずつ狂っていくうちに、こちらもどんどんのめり込んでいった。
    お金の話だったのか、自分探しの話だったのか。
    何かとても大事なことを教わったような気がする。

  • 誰かに何かをしてあげたいだけで、見返りは求めていない(と言い切ってしまうと、ほんのちょっとは嘘になるけれど)。それがエスカレートするたびに少しずつネジが外れていって、どんどん見栄を張りたくなる。
    いつしか、自分の与える特別が相手にとっての日常に変わっていたことを思い知らされて、夢が覚めてしまう。

    必要とされたいだけ。本気だっただけ。それをどうして馬鹿にできるだろう。今普通に生きている人だって、いつこういった道に転げ落ちるかわからないのに。

  • 銀行でパートをする主婦が横領に手を染める過程が生々しい。

  • 自分を知ってもらうために、または自分自身を知るために必要以上なお金をつぎ込んでいった結果、逆に自分を見失ってしまった…

    男性のために横領事件を起こした女性が海外へ逃亡…というストーリー的には聞いたことがある内容だったけど

    その時々の登場人物の心理描写に読み応えがあった

    偶然手に取った本なのに今住んでいる地名がいくつか出てきたのには驚かされた!

  • 「頭の中でいつも蠅が飛び回っているような音がしている」
    このような文章表現がうまいなーと感じさせてくれる。
    女性の横領事件の影に男あり。しかしこの作品に登場する男の子は一度もお金をねだってはいない。ばれそうでばれないようなスリリングな描写は映画にはでてこないので、
    小説を読む価値はあると思う。

  • 映画を観てから読んだ、映画とは印象が少し違うかな(特に光太あたり)、当たり前かもだけど心理描写が丁寧、女性ならではで感じる葛藤やもどかしさが見事に表現されていた、この作品は男性と女性とで受け取り方が違うんだろな、と思う。
    そして今また映画を観たら見方変わるんだろうな、観てみよ。

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著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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