紙の月 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 4155
レビュー : 582
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438452

作品紹介・あらすじ

ただ好きで、ただ会いたいだけだった―――わかば銀行の支店から一億円が横領された。容疑者は、梅澤梨花四十一歳。二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった・・・・・・。あまりにもスリリングで、狂おしいまでに切実な、傑作長篇小説。各紙誌でも大絶賛された、第二十五回柴田錬三郎賞受賞作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 自己肯定感の喪失を埋めるための過剰な消費と、それが生み出す罪への無関心。
    この心理は共感しにくいけど、分析が緻密で引き込まれます。
    特に、問題を先延ばしにしているうちに当事者意識を失っていく過程は
    リアリティがあり、恐ろしい。

    いや、しかし旦那さ、マジであいつ、なんなの。

    こういうの角田光代さん上手に書くよなー。
    はー、むかつく。旦那。

  • 凄い好き・・・この、気だるい感じ。

    堕ちていく女達。

    上手く言葉に出来ないけど
    奈落の底に堕ちていくのは分かってるんだけど
    堕ちて行きたい。

    ずっとずっと底まで堕ちて行きたい。

    そんな女が好き。

    蒸し暑く気だるい感じが好き。

    映像で知ってたから、そんなに興味なく読んだけど
    小説の方が良かった♪

  • 結婚生活でモヤモヤと不満に思っているが口に出せない夫への気持ち。養ってやってるんだ、誰の方が上だ?とジワジワ表現され続けている事への苦痛。良かれと思ってした諸々を夫に落とされ、高揚した気持ちが一気に冷える感覚。
    高い買い物した時の高揚感と罪悪感。

    何が足りないのか、なぜ満たされないのか疑問の芽を持ちながら、答えを出さずにいる主人公へ、若い男からの分かりやすい好意が寄せられる。「必要とされている」と強烈なインパクトが高い買い物の後の高揚感と重なる。それを得続ける為、無自覚に犯罪に手を染め続ける。

    特殊な誰かの話ではない所が主人公と自分自身を重ならせ、物語に引き込んでいく。ラストのモヤモヤ感がなんとも良い。

  • 何不自由ない、けれど時に違和感がよぎる夫との生活。
    もし、あの日、あの人に付いて行かなければ、
    もし、あの時、あんな風に手をつけなければ、
    もし、、、
    たくさんの「もし」を越えて、ついに果てしなく遠いところへ流された梨花は…――。

    一度転がり始めたものを止めるのが難しいように、物語はぐんぐん進む。あっという間に読みきったけれど、とても、怖かったです。
    読みながら梨花の万能感を共有してみたり、手に入れたい服や化粧品を次から次に買う光悦感を味わったりもしましたが、最後は体の芯から冷たくなるくらいに怖くなりました。
    もしかすると、大きな事件を起こした梨花と自分を隔てているのはほんの些細な何かで、自分も容易くそちら側にいってしまうかもしれない、なんて思う程、梨花の誤ちは日常と地続きで、たわいもなく染まっていってしまったから。
    梨花だって、きっとこんな事件を起こすと思っていなかった。むしろ、事件の渦中においてすら、そんな風に思っていなかったのだから。

    私たちが社会で生きるにおいて「お金」の力は大きい。お金が湧水のようにあれば、なんだって買える。一方で、お金があったところで何も手に入らない、あるいは残らないということがある。
    それなのに、私たちは簡単にお金に支配されてしまう。
    そのことが、なんだか悔しいような、苦い気持ちになるのです。

    そんな呪縛から逃れるためには、月並みかもしれないけれど、地に足をつけて生きること、が必要なのかもしれないですね。
    装丁も本書の雰囲気にぴったり。さすが角田さんだなと何度か泣きたくなるような気持ちになりながら読み終えました。

  • H30.7.17 読了。

    ・一人の女性が勤務先の銀行で1億円を横領し、失踪した。宮沢りえ主演の同名の映画を先に見てから、小説を手にした。掛け違えたボタン、麻痺する善悪の考え方など一人の女性の落ちぶれていく人生を描いた作品。お金は、おっかねえ。

    ・「ようやく、自分の身に起きたすべてのことがらが、進学や結婚は言うに及ばず、その日何色の服を着たとか、何時の電車に乗ったとか、そうしたささいなできごとのひとつひとつまでもが、自分を作り上げたのだと理解する。私は私のなかの一部なのではなく、何も知らない子どものころから、信じられない不正を平然とくりかえしていたときまで、善も悪も矛盾も理不尽もすべてひっくるめて私という全体なのだと理解する。」

  • 角田さんの小説は、言いようのないもどかしさを感じさせる作品が多い。
    今作も言葉で説明できない不快感や寂しさを感じるシーンが多くて辛かった。
    無欲で自分に自信のない梨花が仕事をしていく中で、少しづつ自信を取り戻すまでは良かった。いったいどこで狂ったんだろう…。きっかけはほんの少しのことで、誰にでも堕ちる可能性はあって、それをすごく身近に感じさせる新しいジャンルのホラー作品のように感じた。
    私は小さな事で喜べる人生を送りたいT_T

  • 巨額の横領など自分には無縁のものだと誰もが思うだろう。本書の主人公・梅澤梨花も恐らくそうだったのだと思う。
    少しだけ、今足りないから借りるだけだ、いつかは返すのだと信じながらも気づけば返せないほどに膨らんでしまったお金。しかもそれが若い愛人のためのお金だったとなれば、このような結末になるのは致し方なかったのかもしれない。
    周辺が語る彼女は聡明で美しく、正義感が強いどこにでもいる女性で、だからこそ読んでいるうちにだんだん自分もタイミングさえ悪ければこのようなことをしでかしてしまうのかもしれないと思わされる。

    お金の力や価値というのはわかりやすくて強いから、特に自己評価が低い人ほどお金で魅力を付けようとする人が多いように感じる。
    しかしそれはやはり本人の魅力ではなく仮初のものなのだ。無理をしている、歪んだ力はだんだん周りとのひずみを生んでいく。
    光太が「ここから出して」と懇願するシーンがとても印象的だった。


  • 梨花は一体、何を手にしたのか、何を手放すことができたのだろうか。

    銀行の契約社員であり主婦の、梅澤梨花、41歳が、一億円を横領した。
    子供の頃から、ずっと真面目に日々を過ごしてきた。
    そんな彼女が、どのようにして、犯罪に手を染めたのか。
    それは、誰にでも起こりうる、ほんの些細な出来事だった。

    1「人のお金で遊んでるような罪悪感がある。」

    近年、専業主婦ではなく、働く女性が増えている理由の一つであると思う。
    でも、その考え方は至極真っ当で、扶養してしまう時点で、平等な関係は成り立たない。

    2「かつては非日常だったものがすっかり日常になってしまうと、今度はかつて手にしていた日常が非日常に思われる。」

    結局、人間の欲望が最大限に満たされる事は無いのだ。
    莫大なお金を手にして、自分の欲望のままに行動してみても、まだまだ満たされない。
    完全なる自由は、どこにも無いのだと思う。

    3「お金というものは涸れることのない湧き水のようなものに思えた。必要な人が必要なだけ汲んでいっていいもの。」

    化粧品を買うために一時的にお金を借りた、あの時から、梨花の感覚が狂ってしまった。
    梨花には、お客さんを騙してやるという思いもなければ、罪悪感もない。
    梨花にあるのは、欲望だけ。
    遊びたかったから、遊んだ。それにはお金が必要だった。ただそれだけだった。

    どこにでもいる女性が、持っている欲望を全て叶えていってしまう。
    これは、善でも悪でもない物語だと思う。

  • 変わりばえのない毎日で、自分が自分の一部であるような感覚を抱いていた梨花。
    自分自身の人生の設計図を立てられず、何も実現もできない。
    夫婦の間にある違和感もそのままにして慣れてしまう。
    単調な日々の中での、満たされない気持ちや認められたい気持ち。
    それらを埋め、万能感を感じられるのが、デパートでの買い物や光太との不倫だったんだろう。
    その流れの中で、いとも簡単に、横領を繰り返していくー。
    あまりにも簡単だから、身近に感じて、些細なことでもきっかけがあれば、明日は我が身みたいな恐ろしさがあった。

    単調な日々を送る中での閉塞感って、私にも身に覚えがある。
    だけどそれに甘んじて過ごしてきたのは自分自身。
    いいこともわるいことも全て自分でやってきたことであって、簡単にリセットできるものではないんだよね。

    梨花に関しても、結局は自分の中の問題で、坦々と鬱々としてた気持ちのやり場が、たまたま光太に向けられただけに感じる。
    光太から求めたわけではないけどいつのまにかそれが当たり前になった。
    だけどそれは健全な関係ではないのは明白で。(お金で囲うってこういうことかと。囲うって表現が的を射ているよねと感心)
    アムステルダムのお土産がマスタードとチーズだったっていう描写がなんともいえない梨花と光太の浅はかさを表してていいね。

    さて、表題の「紙の月」、気になって調べてみたら「まやかし」や「紙で作ったものだけど本当に信じればそれが本物になる」という意味があるらしい。
    この物語においては後者の意味が強いのかな。


    読後感は、うわぁ、なんか…スッキリしない…。です。
    私の理解力の問題が大いにあると思う。
    映画の方も見てみたい。

  • 衝撃的に面白かった。本当に日常のちょっとしたきっかけ ちょっとした高揚の連続でこうなってしまった梨花の様子に、人ごとではないと血の気が引きそうだった

  • うわぁ~…

    読了後におもわず出てしまった第一声。
    はたして梨花の行いは、善なのか悪なのか?わからないです…
    法的やごく一般的、客観的に見ればあきらかな悪なのかもしれないけど、個人的には梨花の気持ちに寄り添いたくなります。共に人生を送ろうと誓った人からあんなにも心無い言葉や気持ちを受け続けたらやっぱり辛いよね、
    心が痛いよねって思っちゃいます(T_T)

    梨花がたどり着いた答え「私は私の中の一部なのではなく…」その事に気付くのってとても大事なことだと思う反面、全てを含めて自分だと気付いてしまう恐怖も感じました。

    モヤモヤする。

  • なんでしょうね、この恐怖さ。いけない事だとわかってるし、こんな事絶対にやらないけど、なんとなくわかるそれぞれの主人公の気持ち。お金では決して買えない人の心や自分の思いがお金を使って上手く行ってしまったら、それはきっとやめられないよね。
    人生、ちょっと道を外してしまいそうなことは幾らでもあるけど、みんな、理性や誰かしらが軌道修正してくれる機会を得て生きてるんだと思う。そんな環境下に居られることに感謝したいと思った。

  • 「中條亜紀」の、最後の章に書いてある言葉が全てだと思う。
    梨花が少しずつ狂っていくうちに、こちらもどんどんのめり込んでいった。
    お金の話だったのか、自分探しの話だったのか。
    何かとても大事なことを教わったような気がする。

  • 誰かに何かをしてあげたいだけで、見返りは求めていない(と言い切ってしまうと、ほんのちょっとは嘘になるけれど)。それがエスカレートするたびに少しずつネジが外れていって、どんどん見栄を張りたくなる。
    いつしか、自分の与える特別が相手にとっての日常に変わっていたことを思い知らされて、夢が覚めてしまう。

    必要とされたいだけ。本気だっただけ。それをどうして馬鹿にできるだろう。今普通に生きている人だって、いつこういった道に転げ落ちるかわからないのに。

  • 銀行でパートをする主婦が横領に手を染める過程が生々しい。

  • 自分を知ってもらうために、または自分自身を知るために必要以上なお金をつぎ込んでいった結果、逆に自分を見失ってしまった…

    男性のために横領事件を起こした女性が海外へ逃亡…というストーリー的には聞いたことがある内容だったけど

    その時々の登場人物の心理描写に読み応えがあった

    偶然手に取った本なのに今住んでいる地名がいくつか出てきたのには驚かされた!

  • 「頭の中でいつも蠅が飛び回っているような音がしている」
    このような文章表現がうまいなーと感じさせてくれる。
    女性の横領事件の影に男あり。しかしこの作品に登場する男の子は一度もお金をねだってはいない。ばれそうでばれないようなスリリングな描写は映画にはでてこないので、
    小説を読む価値はあると思う。

  • お金によって狂わされていく人間の描写が生々しく、
    小説ってこんなにすごいのか、と物語が進むにつれて圧倒されました。

    面白いと思ったのは、使うお金が高額になればなるほど、
    使う人間の思考も短絡的で幼児退行化する傾向がある様に感じられることでした。(買い物し過ぎて紙袋が多い→「車があったらいいね」→車買っちゃう、みたいな)

    有り余るお金を手に入れ湯水の様に使うほど、知性や常識的判断、あるいは人との関係まで、自覚がなくても代償として失う羽目になり、必ずツケは回ってくる怖さを感じました。

  • 映画を観てから読んだ、映画とは印象が少し違うかな(特に光太あたり)、当たり前かもだけど心理描写が丁寧、女性ならではで感じる葛藤やもどかしさが見事に表現されていた、この作品は男性と女性とで受け取り方が違うんだろな、と思う。
    そして今また映画を観たら見方変わるんだろうな、観てみよ。

  • お金の感覚なくなるの怖いと思った。
    けど、買い物とかお金を消費する優越感はものすごく理解できるし、ストレス発散になるのは大共感。
    欲に狂う前に自分を止められるものはなんだろうかと考えた。

    宮沢りえ主演の映画化された作品も見てみたいけど、小説で十分な作品でもあるかな。

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著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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