紙の月 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 4198
レビュー : 586
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438452

感想・レビュー・書評

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  • 軽く読んでしまったが、なかなか深い。

    どこにでもいる普通の主婦・梨花が、次第に金銭感覚を狂わせ、男に貢ぐためについには自分の勤める銀行のお金を横領する、という話。

    横領額は1億円。
    なぜ、そんな大金が必要だったのか?

    梨花の友人だった中條亜紀が、自分の娘との関係性の中で端的になぜ高価なものが必要なのかを表している。
    ー 人と人との関係に、何か形になるものが必要だと思った
    ー 自分が自分以上の誰かになるのに、目に見えるものが必要だと思った

    こうしたものを得るため多額のお金が必要だった。つまり、金額の大きさは心の空漠の大きさなのだ。


    お金はニュートラルだけど、人々の欲望のど真ん中にいる。
    そして、人を自由にすると同時に縛りもする。


    貢がれていた光太の方も縛られる。最後、肩を震わせながら梨花に「ここから出して」と懇願する…

    …なんとなく、リカ・シリーズを彷彿させるシーンだが(笑)、お金にはそれくらいの怖さもある。



    蛇足だけど、昔、物の本に「夫婦間で性とお金の話題は絶やすな」という格言(?)が書いてあったことを思い出した。
    確かに、梨花は夫と性の話もお金の話もできなかった。
    そのことが底なしの不倫ととめどない浪費に繋がり、横領へと至った。なるほど、その格言の意味がよくわかった。

  • 凄い好き・・・この、気だるい感じ。

    堕ちていく女達。

    上手く言葉に出来ないけど
    奈落の底に堕ちていくのは分かってるんだけど
    堕ちて行きたい。

    ずっとずっと底まで堕ちて行きたい。

    そんな女が好き。

    蒸し暑く気だるい感じが好き。

    映像で知ってたから、そんなに興味なく読んだけど
    小説の方が良かった♪

  • 結婚生活でモヤモヤと不満に思っているが口に出せない夫への気持ち。養ってやってるんだ、誰の方が上だ?とジワジワ表現され続けている事への苦痛。良かれと思ってした諸々を夫に落とされ、高揚した気持ちが一気に冷える感覚。
    高い買い物した時の高揚感と罪悪感。

    何が足りないのか、なぜ満たされないのか疑問の芽を持ちながら、答えを出さずにいる主人公へ、若い男からの分かりやすい好意が寄せられる。「必要とされている」と強烈なインパクトが高い買い物の後の高揚感と重なる。それを得続ける為、無自覚に犯罪に手を染め続ける。

    特殊な誰かの話ではない所が主人公と自分自身を重ならせ、物語に引き込んでいく。ラストのモヤモヤ感がなんとも良い。

  • 何不自由ない、けれど時に違和感がよぎる夫との生活。
    もし、あの日、あの人に付いて行かなければ、
    もし、あの時、あんな風に手をつけなければ、
    もし、、、
    たくさんの「もし」を越えて、ついに果てしなく遠いところへ流された梨花は…――。

    一度転がり始めたものを止めるのが難しいように、物語はぐんぐん進む。あっという間に読みきったけれど、とても、怖かったです。
    読みながら梨花の万能感を共有してみたり、手に入れたい服や化粧品を次から次に買う光悦感を味わったりもしましたが、最後は体の芯から冷たくなるくらいに怖くなりました。
    もしかすると、大きな事件を起こした梨花と自分を隔てているのはほんの些細な何かで、自分も容易くそちら側にいってしまうかもしれない、なんて思う程、梨花の誤ちは日常と地続きで、たわいもなく染まっていってしまったから。
    梨花だって、きっとこんな事件を起こすと思っていなかった。むしろ、事件の渦中においてすら、そんな風に思っていなかったのだから。

    私たちが社会で生きるにおいて「お金」の力は大きい。お金が湧水のようにあれば、なんだって買える。一方で、お金があったところで何も手に入らない、あるいは残らないということがある。
    それなのに、私たちは簡単にお金に支配されてしまう。
    そのことが、なんだか悔しいような、苦い気持ちになるのです。

    そんな呪縛から逃れるためには、月並みかもしれないけれど、地に足をつけて生きること、が必要なのかもしれないですね。
    装丁も本書の雰囲気にぴったり。さすが角田さんだなと何度か泣きたくなるような気持ちになりながら読み終えました。

  • 角田さんの小説は、言いようのないもどかしさを感じさせる作品が多い。
    今作も言葉で説明できない不快感や寂しさを感じるシーンが多くて辛かった。
    無欲で自分に自信のない梨花が仕事をしていく中で、少しづつ自信を取り戻すまでは良かった。いったいどこで狂ったんだろう…。きっかけはほんの少しのことで、誰にでも堕ちる可能性はあって、それをすごく身近に感じさせる新しいジャンルのホラー作品のように感じた。
    私は小さな事で喜べる人生を送りたいT_T

  • うわぁ~…

    読了後におもわず出てしまった第一声。
    はたして梨花の行いは、善なのか悪なのか?わからないです…
    法的やごく一般的、客観的に見ればあきらかな悪なのかもしれないけど、個人的には梨花の気持ちに寄り添いたくなります。共に人生を送ろうと誓った人からあんなにも心無い言葉や気持ちを受け続けたらやっぱり辛いよね、
    心が痛いよねって思っちゃいます(T_T)

    梨花がたどり着いた答え「私は私の中の一部なのではなく…」その事に気付くのってとても大事なことだと思う反面、全てを含めて自分だと気付いてしまう恐怖も感じました。

    モヤモヤする。

  • なんでしょうね、この恐怖さ。いけない事だとわかってるし、こんな事絶対にやらないけど、なんとなくわかるそれぞれの主人公の気持ち。お金では決して買えない人の心や自分の思いがお金を使って上手く行ってしまったら、それはきっとやめられないよね。
    人生、ちょっと道を外してしまいそうなことは幾らでもあるけど、みんな、理性や誰かしらが軌道修正してくれる機会を得て生きてるんだと思う。そんな環境下に居られることに感謝したいと思った。

  • 映画を観てから読んだ、映画とは印象が少し違うかな(特に光太あたり)、当たり前かもだけど心理描写が丁寧、女性ならではで感じる葛藤やもどかしさが見事に表現されていた、この作品は男性と女性とで受け取り方が違うんだろな、と思う。
    そして今また映画を観たら見方変わるんだろうな、観てみよ。

  • 2018/11/17読了。

    銀行のお金を横領した女性の話。

    梨花の他に学生時代のクラスメイトのパートがあるが、それぞれが梨花の抱えていた問題と同じような問題を抱えており、梨花の顛末というのは案外誰でも可能性を秘めているということなのかな、と感じた。

    それは学生時代のチャリティ活動の下りから取れる「ハマったら一直線」という性格や、育ち、配偶者や勤め先の状況がどうにか偶然が重なり無尽蔵にお金が出てくると勘違いするに至った。

    最初は質素な暮らしに喜びを見出そうとしていた梨花だが、贅沢三昧を味わい、その果てに「むしろ質素な状況を求める」という皮肉も読み取れた。
    光太と花火越しに見た月、正文と見た月、いずれも質素を求めた時に現れており、それが叶わぬというところを紙ペラの月と銘打ったのかなと思った。

    また、正文や光太が、与えられることに慣れる描写があったが、やはりこれも物質主義へのアンチテーゼなのかな。

  • 主人公梨花が落ちていく様を一気に読ませる。昔の友人を絡ませることで梨花を際立たせる。女性ならではの感性作品。

  • 読む人の立場によって違う感想を持つ話なんだろうと思う。この本の感想を見ていくと、主人公に嫌悪する人もいれば、主人公の旦那に嫌気がさす人もいるようで。

    私としては、主人公には共感出来ないかなぁ、、、と思いつつも、確かに一歩踏み外した時って、、、怖いなあと思ったり。真面目に横領している金額をメモっている感じとか、一見おかしな話なんだけど、だからこそのここまでバレず事が進んでいったんだろうな、というのがリアルで。奢っているのにいつのまにかそれが当たり前になる事とかは、誰でも体験ありそうだなぁと思った。見栄って怖い。久しぶりの人に会う時は、私でも何着ていこうと考えるもんな。
    試着したらなんとなく買わないといけない気がするとか、値段気にして買うの決めてると思われたくないとか、なんでこんなにちっぽけなことで人は見栄をはるんだろうね。冷静になれば、別に二度と会う事もないであろう店員さんに良く見られる必要なんて無いはずなのに、、不思議だね。

  • 『見つけて。だれか私のしていることを暴いて。心の中でそう叫んでいた日々が、今まで遠く消えかけていた日々が、足下から這い上がってきて梨花を包む。

    進むこともできない。戻ることもできない。しゃがみこんだ自分の体より遥かに狭い場所で、梨花は荒い呼吸を繰り返す。

    そうしてある日、それは唐突にやってくる。』

    救いの無い話。分かっていても、辞められない、というのは本当に不幸しか生まない。
    平凡な人が平凡な日常からふっとしたきっかけで陥ってしまう罠が、実は現実にはたくさんあるんだよなぁ〜。

  • 面白かった
    単純に映画がされた有名な本という感じで手に取ってみたけど、想像とは全然違う、しっかりとした考えさせられるものだった。
    内容を上手く言い表せないけど、、、
    最後のアキのくだりがあることによって、少し救われた感じがした(好きな部分だな)

  • 出来事を関係者複数の視点から描いて、厚みのある物語に仕上がっていると思います。構成力がある作家さんだなあと感じました。

    角田さんの小説を読むと、孤独がじわじわと浮き彫りにされて、ちょっとさみしくなってきます。

  • 理性が働いて一線を越えないようにしているだけで、誰にでも起こりうる事なのかなと思いました。それが現実的すぎて怖い作品でもありました。誰かを繋ぎ止めたいお金だと尚更切るのは難しかったのかなと思いました。最後は主人公と同じく私も誰か早く不正に気づいてあげて!と思いました。映画化もされたこの作品を読むのは初めてですが、スリル満点で楽しめました!!

  • 心臓に悪すぎるストーリーだった。思わず自分が銀行で手続きした商品の資料を確認してしまった。事件を遠くで知ることになる昔の友人や恋人の語りは出て来ても、一番近くにいた夫と若い恋人のモノローグが一切無いので、二人の本音が全く分からず、敢えて読み手に想像を委ねる作りが面白かった。

  • お金のことについて考えさせられる

  • ただ前の日をなぞるような生活に途方も無い虚しさを感じる梨花の気持ちは誰しも共感するような気持ちだと思う。登場人物が持つ、お金で人を動かせる、物事を思い通りに出来る、という無意識な感覚を自分自身も潜在的に持っていることに気づき、ハッとさせられた。

  • あるきっかけで1億円の横領犯となった主婦の物語で、余白なく書き込まれた登場人物達の息苦しい心情描写に圧倒されながらもジェットコースターに乗った時の様な恐怖心と好奇心で一気に読んでしまった。女性陣に全く共感はできなかったが、梨花や亜紀がお金でしか繋がれない自分に気付く終盤には息を呑んだ。表面的な部分で繋がろうとすればするほど自分の首も相手の首も絞め、やり直せたとしても再度同じ自分に辿り着いてしまう人の愚かさに胸が痛む。木綿子の唐突な結末や山田夫妻の蛇足感が気にはなったが、読了時に思わず溜息を吐いてしまった。

  • 横領とか悪いことをしてしまうような話を読んでると、もうやめてーって自分の中でモヤモヤ、ハラハラするようになったのは感じ方が変わったのか、それとも筆者の書き方が、見事なのかな。

著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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