紙の月 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 4197
レビュー : 586
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438452

感想・レビュー・書評

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  • お金によって狂わされていく人間の描写が生々しく、
    小説ってこんなにすごいのか、と物語が進むにつれて圧倒されました。

    面白いと思ったのは、使うお金が高額になればなるほど、
    使う人間の思考も短絡的で幼児退行化する傾向がある様に感じられることでした。(買い物し過ぎて紙袋が多い→「車があったらいいね」→車買っちゃう、みたいな)

    有り余るお金を手に入れ湯水の様に使うほど、知性や常識的判断、あるいは人との関係まで、自覚がなくても代償として失う羽目になり、必ずツケは回ってくる怖さを感じました。


  • 梨花は一体、何を手にしたのか、何を手放すことができたのだろうか。

    銀行の契約社員であり主婦の、梅澤梨花、41歳が、一億円を横領した。
    子供の頃から、ずっと真面目に日々を過ごしてきた。
    そんな彼女が、どのようにして、犯罪に手を染めたのか。
    それは、誰にでも起こりうる、ほんの些細な出来事だった。

    1「人のお金で遊んでるような罪悪感がある。」

    近年、専業主婦ではなく、働く女性が増えている理由の一つであると思う。
    でも、その考え方は至極真っ当で、扶養してしまう時点で、平等な関係は成り立たない。

    2「かつては非日常だったものがすっかり日常になってしまうと、今度はかつて手にしていた日常が非日常に思われる。」

    結局、人間の欲望が最大限に満たされる事は無いのだ。
    莫大なお金を手にして、自分の欲望のままに行動してみても、まだまだ満たされない。
    完全なる自由は、どこにも無いのだと思う。

    3「お金というものは涸れることのない湧き水のようなものに思えた。必要な人が必要なだけ汲んでいっていいもの。」

    化粧品を買うために一時的にお金を借りた、あの時から、梨花の感覚が狂ってしまった。
    梨花には、お客さんを騙してやるという思いもなければ、罪悪感もない。
    梨花にあるのは、欲望だけ。
    遊びたかったから、遊んだ。それにはお金が必要だった。ただそれだけだった。

    どこにでもいる女性が、持っている欲望を全て叶えていってしまう。
    これは、善でも悪でもない物語だと思う。

  • 「中條亜紀」の、最後の章に書いてある言葉が全てだと思う。
    梨花が少しずつ狂っていくうちに、こちらもどんどんのめり込んでいった。
    お金の話だったのか、自分探しの話だったのか。
    何かとても大事なことを教わったような気がする。

  • 銀行でパートをする主婦が横領に手を染める過程が生々しい。

  • ゾクゾクしました!
    自業自得なはずなのに、梨花も亜紀も少し可哀想に思ってしまう。
    光太をひどいと思う。でも光太も悪いわけではなく、梨花が勝手にお金を遣っていただけ…。
    難しい。
    信じてお金託したのに遣われてしまった年配たちも、何だか全員可哀想。
    悲しいお話でした。

  • お金はきっと どれだけあっても満足できないものなのかもしれないですね

    あれば あれだけつかってしまう それが自分のお金じゃないとなると余計なのかも

    お金によって 特別になれるってのは 勘違いで それに 気づけないのは悲しいね

  • はまっていく姿に驚き。とても面白く久しぶりの一気読み。

  • 映画も観たい!りえさん!!

  • ざわざわざわざわざわ。すぐに形を変える紙の月に私らは翻弄されてるのかもしれない。せり上がってくる恐ろしさにハマりこんだ。

    おろしたての石鹸、その無傷のつるりとした儚い美しさが頭の中にずっと残ってる。

  • 映画も面白かった

  • 主人公に共感しそうになり我に帰る

  • 手が止まらないほどおもしろかった。全能感も焦燥感も窮屈な感じも息苦しさも、全部全部うっすらとわかる気がした。働きだしたら/結婚したら、もっとわかるようになるんだろうなと思った。
    むちゃくちゃおもしろかったけどむちゃくちゃ落ち込みもした。梨花も、木綿子も、亜紀も、みんな自分になりうると思った。わたしはブランドものとかデパートに売っているものを買うことに関して関心がないけれど、年齢を重ねてそうなっていくかもしれない。あるいは働くようになることによって。
    わたしもアルバイトの数万円の変動でだって(先月は8万円だったのに、今月は6万円、、、)と、以前は6万円でも十分に暮らせていたはずが、収入が増えたことにかまけて余分に美容や買い物にお金を掛けたせいで、なんだか物足りなくなることがある。貯金もパーっと使ってしまいたくなることがある
    お水で働いてたくさんの稼いでいる友だちは、辞めた後きちんと暮らしていけるんだろうか、、、みたいなことを少し考えてしまった。一度の贅沢はその後の窮屈さを生み出してしまうんだろう、牧子のつらさもなんとなくだけどわかる。木綿子の子どもは締め付けたことでもっとお金に貪欲になるし、亜紀の娘もきっともっと貪欲になるだろう。「お金」というただの紙(生活に必要なのでされど紙でもあるけど)に踊らされず、収入水準に見合った生活を過ごしていかなきゃいけないな、と思う、その点わたしはデパートのコスメを買っているわけでもないのにどうしてこうなっているのか不思議だけど、、、

    これは「きみはいい子」を観たときと同じ感じのような気もするな、「わたしもいつか子どもを叩いてしまうかもしれない」、「節約に狂ってしまうかもしれない(今は持ち家へのこだわりはないが)」、「いつかブランド物の服やコスメやアクセサリーに狂ってしまうかもしれない(今はこだわりはないが)」、そして「いつか将来の夫が自分を対等な存在として認めてくれなくなる/抱いてくれなくもなる時が来るかもしれない」、すべて"そちら側"に陥る可能性が平等にあり恐ろしい、本自体にそういう意味で漂う不安感や窮屈さが充満していて、とてもおもしろくもあり感じの悪い本だった(いい意味で)

  • 普通の人が、犯罪に走る気持ちが手に取るようにわかった。 横領をした主人公は確実にいけないに決まっているのだが、そうなるまで、そうなった後がなんとなく共感できる。 そこがこの作者の「八日目の蝉」とも少し似ている気がする。 「八日目の蝉」は、前半はとても面白く、後半はあまり...となるので、自分は「紙の月」の方が好き。

  • 主人公の梨花を含め、すべての登場人物がお金に心を囚われてしまった物語。「お金で物を手に入れれば幸せになれるのではないか」と誰しも思うが、それを究極まで突き詰めていった主人公の末路は一際悲しいものであった。筆者得意の女性心理描写はさすがだった。
    宮沢りえが主役を演じた本書の映画も原田知世が主役を演じたドラマも見ていないが、脳内では主人公の梨花を仲間由紀恵、大学生の光太を竹内涼真でイメージして読んだ。

  • とにかく一番の感想は、しんどかったの一言につきる
    読書中、こんなに心がヒリつくのは珍しい。
    心がヒリついてザワついて、呼吸が苦しく我慢できなくなって本から目を離し、でも続きが気になって活字に目線を戻し、また心がヒリついて…の繰り返しでヘトヘトになる。

    実はこの小説、暴力描写もなく、凄いエロチックな場面もなく、死人どころかけが人すら出てこない小説なのに、怖いし痛いしサディスティックでマゾヒスティックでもある。角田光代はなんて小説を書くんやろ。

    (ネタバレあり)
    主人公梨花の経済感覚の麻痺の何が怖いて、日常誰にでもありそうな落とし穴にすっぽり嵌まってしまうところである。
    ドラッグやギャンブルに入れ込んだわけではなく、男に貢ぐ部分はあるが、ホストとかタチの悪いヒモとかではなく、ちょっと貧乏な映画好き大学生相手なんだから、普通安いもんだろうと思うんだが、そんな予想を覆す金遣いに圧倒される。

    買い物でストレス発散ってタイプの人に是非読んでもらいたい…いや、読まない方がいいか。俺は買い物恐怖症にかかってしまい、しばらくデパートに足を運びたくなくなってしもた。

    欲望があるから人生楽しいんだけど、暴走させると不幸にしかならない。知足って大事やなぁと。
    なんかの偶然に高級なワイン付きで極上のコース料理を食ったとしても、ストロングゼロにカップ麺が俺の帰る場所だと、しっかり心に持っておきたいなぁと。

  • 夫との不和から若い男との不倫、横領・・・転落していく日常の中で、巨額の金をつぎ込んでも心は癒されない渇望感が妙にリアルに感じられた。幸せと金はむしろ正反対の関係なのかも。

  • お金があればなんでも買える。お金を作る費用は数円だが信頼の証として、存在する物。この主人公の女性は決して貧しくなく、物欲が強い訳でもない、むしろ周りから見れば勝ち組の主婦。そんな主婦が何故、横領に手を染めたのか。主人公以外にも異なる弱さを持った人物達が『お金』を持つ事で、自信や尊厳を得ていくが、お金が無くなる事で存在意義を失う悲しい代償。出てくる人物達の悩みが、とにかくリアルで主人公の旦那の男ならではのプライドは、あるある過ぎて少し笑ってしまった。誰もが抱える現実を見事に描いていて、決して他人事ではない作品。

  • 物やお金でも満たされない答えのない欲。
    誰しもがはまってしまうかもしれない世界を描いていると思います。
    結末は、読者の解釈で正反対の答えになるかもしれません。

  • 解り過ぎて怖かったーー。
    堕ちていく、ぐちゃぐちゃになって気付く、取り返しがつかない、逃げるしかない。
    罪悪感で苦しくなりつつ読み始めたら止まらなかった。ただ、愛されたかっただけなんだと思う。

  • 2019.4.7読了。

著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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