バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)

制作 : 金原瑞人  野沢佳織 
  • 角川春樹事務所 (2014年9月13日発売)
3.68
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  • 本棚登録 :138
  • レビュー :14
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438483

バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)の感想・レビュー・書評

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  • 以前ちょっとだけ関わったイベントがあり、「そういえば、ブラッドベリってちゃんと読んだことがないかも…」と、会場で購入したのにしばらくそのままになっていた短編集。

    もともと1997年出版の作品集ということもあるのか、おおかたの短編で登場人物を大人だけの都会・サバ―ビア劇に設定している(例外は数本)。全盛期のブラッドベリのようなきらきらした、こっぱずかしいほどロマンチックな表現とは違った、落ち着いたエレガントな筆さばきという印象。

    個人的には、表題作「バビロン行きの夜行列車」(これは原著では表題作ではないんだけど)「MGMが殺られたら、だれがライオンを手に入れる?」「似合いのカップル」がベスト3。「バビロン」という地名自体が歴史の浅いアメリカ文学では非常に魅力的に響くし、列車内で繰り広げられる疑惑と、その種明かしも鮮やか。「MGM」の史実をちょっとまじえたどたばた劇は、戦時ネタコメディとしては秀逸だし、「似合いの」で描かれるパリがすごく洒落ていて苦くて美しい。フランス人の描くパリより、アメリカ人の描くパリのほうが断然美しいよ、いつも思うけど。

    あと1編、面白かったのが「処女復活」。男女のもつれとアメリカのキリスト教各宗派を絡ませた皮肉なコメディなので、門外漢にはちょっとわかりにくいけど、「とにかくキリスト教も一枚岩ではないのでめんどくさい」感じと、最後は宗教を盾にできるという皮肉はよくわかった。

    どの短編も、台詞が往年の名画のように美しくて、読むたびに「ほおお」っとため息が出てしまった。フレッド・アステアのMGMミュージカルを見ているような、とでもいいましょうか。それに、不穏さをにおわせる素材でも、人間のダークサイドオブフォースに手をつけないクリーンさが潔い…と思ったら、金原瑞人さんの単行本訳者あとがきに、トム・ウィッカムの書評として同じような内容が引かれていて、「まあ、私が考えることくらい、炯眼のかたにはとっくにお見通しなんだなあ…」とちょっと思いました。それに、ブラッドベリさんのWindowsネタもおちゃめです。

  • ある映画で、バス事故で亡くなる女性の手元にこの文庫本があった。ブラッドベリを読んだのは二作目で、夢とうつつの間のような心地よい世界を気に入っていたのだけど、この本を知ったのがそういう経緯だったのでこの心地よさは生と死の間みたいなことなのかなと勝手に考えた。

  • よくできている正調エンターテイメント短編。オチというより結びといった趣。良くも悪くも正調の範囲という感じ。枠のなかでハイレベルな短編になっていると思う。脈絡の刺激とかそういうのを少し置いてふと読んでふと心なごむそういう感じの短編集。

  • 20年ぶりくらいのブラッドベリ。

    原題Driving Blind
    邦題表題作の他は、

    ・MGMが殺られたら、だれがライオンを手に入れる?
    ・やあ、こんにちは、もういかないと ★
    ・分かれたる家
    ・窃盗犯 ★
    ・覚えてるかい?おれのこと
    ・くん、くん、くん、くん、
    ・目かくし運転
    ・いとしのサリー
    ・なにも変わらず
    ・土埃のなかに寝そべっていた老犬
    ・だれかが雨のなかで ★
    ・似合いのカップル
    ・鏡
    ・夏の終わりに ★
    ・夜明けの雷鳴
    ・木のてっぺんの枝
    ・女はつかのまの悦楽
    ・処女復活
    ・ミスター・ペイル ★
    ・時計のなかから出てくる小鳥 ★

    ★は、気に入った話。

  • いかにもSFの大家らしい作品はもちろん、ホラータッチあり、不安定な読後感を突きつける不条理な一編もありで様々な趣向を味わえる短編集。

  • 約20編の短編小説を収録。
    星新一さんのショートショートに雰囲気は近いのかも?
    http://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-11938531224.html

  • どれもこれも短く、物語の筋を追うのではなく、
    その雰囲気、空気感を文字から、文章から感じる
    ような物語。
    旅先で顔見知り程度の人と会い、
    テンションが上がって食事の約束をしたら・・・
    なんて日常に起こりうる話から、
    旅行の宇宙船で急病人発生、乗り合わせた医師が
    出会った患者は・・・なんて日常ではありえない話も。
    わたしは「窃盗犯」と「いとしのサリー」の対比に
    やられた感じ。

  • 21の短篇集。人の不思議、時の不思議、処の不思議。読み終える時の感想は本当に色々。正直に言うと良くわからないお話しもありました。

  • なんとなくノスタルジーを感じる。訳者の方のあとがきにもあるように初夏の風を感じる公園で読みたいかも。

  • ・レイ・ブラッドベリ「バビロン行きの夜行列車」(ハルキ文庫)を 読んだ。翻訳が単行本で出た時から知つてゐたのだが、ずつと読まずにゐた。買はなくても図書館で借りるなりすれば読めたのに、それをすることもなく現在に 至つた。理由はない……かもしれないと思ふ。しかし、よく考へてみれば、やはりある。たぶん、ある。ブラッドベリの短編集は日本でいくつも出てをり、初期のに続いてその後に出た新しい諸作を読んだ感じからすると、これも当たり外れの差が大きいのではと私には思へたから、たぶんかういふことだと思ふ。刊行の 前後関係はよく分からないが、私にはブラッドベリをおもしろく読めないことがしばらく続いてゐた。それでこの単行本を読むのも躊躇したのだと思ふ、たぶん。ところがである。これがおもしろかつたのである。巻末の共訳者金原瑞人氏による「単行本 訳者あとがき」にかうある。「一読して、ああ、やっぱりブラッドベリだなあと感動。そうそう、これこれ、これなんだよな、ブラッドベリは。」(362頁)正にこの通り、ここには紛れもないブラッドベリの世界があ る。どの作品にもかういふのがあつたに違ひない。私がそれに気づかなかつたのか、それが目立たなくなつてゐたのか。いづれにせよ、これを読むと往年のブ ラッドベリは健在だと知れる。躊躇する必要などなかつたのである。「今までの作品に登場した人物や、今までの作品に似たプロットがときどき顔を出す。」 (同前、362~363頁)かういふことも含めて、全21編、本書は見事なブラッドベリであつた。
    ・最終作「時計のなかから出てくる小鳥」、三組の夫婦の夫が妻から離れる物語、悲劇でも何でもない。ブラッドベリである。近所に引つ越してきたキット・ランダムといふ女性が鍵である。彼女が夫婦の絆、いや錠を解いてしまふ。このキットは「夏の終わりに」のハティにつながる。彼女は35歳の教師、普段は化粧もしないのであらう(256頁)。その彼女が深夜、人々の寝静まつた中、美しく化粧をしてネグリジェで、裸足で出かける。晩夏の深夜を駈けるためである。最後に27歳の「毎朝ハムサンドを詰めたランチボックスを持って、鉄道の操車場へ働きにでかける。」(253頁)青年の家に着く。ハティは青年を見つめ、青年は……日常性と恋の物語を晩夏に閉ぢ込めた短篇である。今風に言へば、アラサーかアラフォーか、そんな女性が実に生き生きと描かれてゐる。共訳の野沢佳織氏の「文庫化にあたって」にかうある。「とくに、End of Summer(邦題は「夏の終わりに」)を読んで胸がふるえた。夜風を感じ、夜の芝のにおいを吸いこみ、夜の音を聞きながら主人公とともに走った。」 (372頁)さう、女性なら訳者のやうに、ハティと一体になることができさうである。ここに12歳のダグラスが重なる。あのみずみずしい感性と感動がそのままある。「土埃のなかで寝そべっていた老犬」はサーカスが舞台、やはり晩夏である。物語は、言はば主人公の青年のサーカス見物の記である。「メキシカ ン・サーカスの小さなテント」(189頁)での公演である。もの悲しい哀愁漂ふ舞台である。かういふ素材自体がブラッドベリである。ブラッドベリはサーカ スやカーニバル好きである。それが楽しい。その雰囲気が良い。その雰囲気で読む。田舎のサーカスの雰囲気、晩夏の雰囲気、ハティやキットの雰囲気、これらが渾然として作品を作る。本書にはその上質なものがある。私にはそれが終はりに近づくにつれて強くなると思はれる。それがまた楽しいのである。紛れもなきブラッドベリの世界を久しぶりに堪能できた短編集であつた。

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