君のいた日々 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.64
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本棚登録 : 42
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758439015

作品紹介・あらすじ

「どこかではぐれないように。はぐれてもまた会えるように」と、ふたりで約束した-春生は去年、妻の久里子を病気で亡くした。いまだにメソメソしていて息子の亜土夢にあきれられている。久里子は去年、夫の春生を突然亡くした。倒れた朝、彼にちょっとだけ意地悪をしたことをいまも悔いている…のそれぞれの世界から優しく紡ぐ、人生の愛しさに満ちあふれた感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • すごく不思議な小説だった。
    春生と久里子という、50代目前の一組の夫婦の物語なのだけど、夫婦が揃ったところは一切出てこない。
    なぜなら春生は久里子を病気で失い、久里子もまた春生を突然死という形で失っているから。
    妻をなくした男と、夫をなくした女。そして高校生になる息子の亜土夢。それぞれの生活が交互に綴られた短編集で、どちらの世界が本物なのか、どちらも本物なのか、それともどちらも偽物なのか、不思議な感覚に包まれたままラストへ向かう。
    ミステリではないので謎解きがあるわけではなく、両方の世界が同じ時間に並行して存在している、そういう小説。

    幸せだったから悲しい。
    春生も久里子も、パートナーをなくした後でそれぞれそのことを実感する。
    時間とともに忘れていくのは悪いことではない。でもまだもう少し、引きずっていたい。忘れたくない。悲しんでいたい。
    日々の生活のあらゆるところに亡くした人の影を見いだしてしまうのは、誰か大切な人を亡くした経験がある人ならば、よく理解できると思う。

    この人と人生をともに行くんだ。そう思えるパートナーとすでに巡り会えている人ならば、尚更この物語は胸に響くと思うし、自分に起こったことだと想像して悲しくなるかもしれない。
    でも不幸な感じはしない。むしろ幸福。
    幸せだったから悲しい。なくした後そんな風に思える誰かと出逢えるって、切ないけれどこの上ない幸福だ。
    温かい読後感の小説でした。

  • 初藤野さん。ふうわりとあたたかい物語。ふたりをかこむ登場人物もいい感じ。読んでいると、美味しいものを食べたくなります。

  • ここになくなってしまったもののすべては、
    確かにここに残っている。
    そのことを
    かみしめる。

  • 著者作品で、若くない世代が主役の物語は初めて読む。
    長年連れ添った夫婦の、それぞれがそれぞれを喪った、という話をパラレルに展開する。
    各エピソードもよいが、登場人物たちの人間味が至高。
    いい人・わるい人、という分類が不適切な人物で二人の主人公を囲むこの構成は、絶妙な言葉選びや描写と相成って、起伏のなだらかなストーリーを極めて印象深くしていると思う。
    話もキャラクターも温か過ぎるのかもしれないが、違和感なく、味わい深かった。
    4+

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著者プロフィール

1962年、福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒業。95年、「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。98年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年、「夏の約束」で第122回芥川賞受賞。その他の著書に『ルート225』『ベジタブルハイツ物語』『主婦と恋愛』『中等部超能力戦争』『さやかの季節』『願い』『ネバーランド』『君がいた日々』などがある。

「2015年 『時穴みみか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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