蓮花の契り 出世花 (ハルキ文庫 た 19-14 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758439107

作品紹介・あらすじ

下落合で弔いを専門とする墓寺、青泉寺。お縁は「三味聖」としてその湯潅場に立ち、死者の無念や心残りを取り除くように、優しい手で亡骸を洗い清める。そんな三昧聖の湯灌を望む者は多く、夢中で働くうちに、お縁は二十二歳になっていた。だが、文化三年から翌年にかけて、江戸の街は大きな不幸に見舞われ、それに伴い、お縁にまつわるひとびと、そしてお縁自身の運命の歯車が狂い始める。実母お香との真の和解はあるのか、そして正念との関係に新たな展開はあるのか。お縁にとっての真の幸せとは何か。生きることの意味を問う物語、堂々の完結。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった

    うん、なんていうか掘り方がうまくなってる
    人の感情の掘り方がすとんと腑に落ちる表現になってる気がするなぁ

    最後ちょっと強引にまとめてきたなって感じで散らかってるというか、色々やろうとしすぎた前作を引きずってるなあって思いました
    めちゃめちゃ散らかってたのに納得いく感じでまとあげた『澪つくしシリーズ』はやっぱ凄いなって改めて思ったり

    もっとシンプルに通り道を減らしたほうが良かったのでは

    江戸時代の検屍官という発想はかなり面白かったので、ここに特化したお話を読んでみたいなぁなんて

    そして当たり前かもしれんけど『澪つくしシリーズ』のねっこみたいなんがあったような気がするなぁ…

  • 『あきない世傳』の最新刊を読んでから、高田郁さんの作品を振り返っていて気付いた、感想を書きそびれ…

    かなり前に読了したのであいまいですが、そこにおさまるしかないのはわかるけれど、何かうら寂しいような気持ちになった記憶。
    人としての愛より、仏の慈愛を選んだお縁。
    どこまでも優しいその手が、少しかなしい。

    高田郁さんの作品は『みをつくし料理帖』シリーズから読み始めたけれど、こちらの方がデビュー作のシリーズ(2冊だけど)と思うと…
    若くして孤独な境遇にある主人公が、温かな人の情けにふれながらも、恋だの愛だのに動かされない境地を目指すという基本スタイルに、既に到達していると気づかされる。

    人を幸せにすることも、自分を幸せにすることも、どちらもバランス良く叶えることの難しさ、なんてことを考えてしまった。

  • みをつくし料理帖シリーズが有名な高田郁さん。
    「出世花」の続編で、こちらはこれで完結。

    お墓だけの寺・青泉寺に行き着いた娘・艶は、「縁」という名を授かります。
    尼ではなく「三昧(さんまい)聖(ひじり)」の正縁として湯灌場に立ち、心をこめて清める日々を送っていました。
    前作から数年後。

    和菓子屋の桜花堂の若い主・仙太郎が、縁を預かりたいと申し出ます。
    縁の実母・お香のいる桜花堂でしばらく暮らして欲しいと。
    住職らは、町での暮らしも経験してみるように勧めます。
    母の本心は、やや無理があると知りつつも、このまま跡を継いで欲しいというもの‥

    町娘として生きるのか、三昧聖を続けるのか、それとも尼になるのか?
    一方、兄弟子にも突然故郷からの連絡が入り‥
    そんなとき、永代橋で大事故が起こり、縁もこれに巻き込まれて、思わぬ余波が‥!?

    この清らかさは高田郁さんならでは。
    複雑に絡み合った事情を抱えて、生きる道を模索する正縁。
    真面目で善良なのにもほどがあるってぐらい、ちょっとストイック過ぎるほどですが‥
    信じる道を、信頼できる人とともに歩む。
    天災に遭遇した人々とその遺族への思いがこれほどになるのは‥
    お気持ちが胸にしみます。

  • 前作「出世花」から数年、二十二歳になったお縁。
    三眛聖として『心を込めて』新仏を送ることだけに生きると決めていたお縁だが、今作では俗世に目を向けることで様々なことを知り様々なことを思う。
    結局はお縁にとっての仏道は『心を込めて』新仏を送ることだが、生きている人にも目を向けることが出来たことは良かった。
    最後は力技の感がなきにしもあらずだが、高田さんらしい感動を味わえた。
    ただ、富澤藩松平家の行く末が気になるが。

  • 正縁と正念が還俗を望まず、仏に仕える道をこれからも共に進むという選択が清々しく素晴らしいと思うと同時に、もったいないとも感じてしまった私はこの先もこの二人のような崇高な魂を持ちえないんだろうなあと思った。

  • みをつくし完結から久しぶりの高田さん。みをつくしもこの本も男女の情愛について一歩も二歩も引いて書かれてある。この本は特に人の死 生を受けた意味その事に重きを置いて書かれたものだというのはわかるが何故そこまで徹底して 男女の情愛について避けられるのか。あえて情を結ばない愛の形もあるだろう。そう思っていらっしゃる作家さんなんだとは思うが だからこそ 熱く苦しみも哀しみもすべて味わい尽くすような男女の愛について この作家さんに書いて欲しい気がする。余韻のある物語を書かれる好きな作家さんだからこそ そう思う。

  • う~む。。。
    まあ、いい話かもしれないけど、正直、お縁や正念の選択にあまり共感できず、次元の違う人たちの話になっていて、ラストも”ふ~ん、よかったね・・・終了。” という感じであまり感動を実感できない。
    かといって、俗世を選択した話になっていても、それはそれで、”え~、今まではなんだったんだろう、、、”という感じもして、すっきりしないかもしれない。
    結局、そもそもの設定が次元が違いすぎて、感情移入できず、話が広がらないのかもしれないな。。。まあ、いい話なのだけどね。

  • 前作「出世花」の続編乍ら完結編とは残念。前作に続き墓寺の住職正真、副住職となった正念、毛坊主の市次、仁平、三太、らに囲まれ三昧聖として生きる正縁は、本作ではその誠実で心の籠もった仕事振りから人々の評判になり、定廻り同心の新藤からは高い検死能力を重宝がられる迄に成長。彼女の欲も無く軸のぶれない生き様や、互いを思い遣り倹しい江戸の市井の人々の暮らしが人情味豊かに描かれる世界に、束の間心洗われる。

  • 下落合にある墓寺・青泉寺で、亡くなった父が弔われる姿に感銘をうけたお艶は
    「縁」という新しい名前を授かり、「三昧(さんまい)聖(ひじり)」として湯灌場に立っていた。
    ある日、桜花堂の仙太郎から、暫くのあいだ縁を預かりたいとの申し出があった。
    実母お香の居る桜花堂で暮らし、町娘として生きるのか、三昧聖としての人生を全うするのか、
    岐路を迎えて縁は悩む。おりしも文化四年、八月。永代橋で大事故が起こり、縁もこれに巻き込まれる。
    果たして、縁はどんな人生を選ぶのか。複雑に絡まりあった母と子の運命は!?感動の物語が堂々の完結!!

  • 武家の生まれでありながら、不義を働いた母親を討つために放浪した父親に従い、行倒れになりかけて寺に拾われ、三昧聖と呼ばれる湯灌(死者の体を清める仕事)に携わるようになった少女、縁の物語、二作目だ。
    子供からすっかり大人の女性となった縁が、自身の生き方について戸惑い悩む姿が描かれている。
    この人の描く女性は本当に芯が強くて清廉だなと思う。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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