勇者たちへの伝言 いつの日か来た道 (ハルキ文庫 ま 14-1)
- 角川春樹事務所 (2015年11月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758439626
感想・レビュー・書評
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読んで良かったけど、読みたくなかった話。
中盤以降は何度も辛い気持ちになった。
阪急ブレーブスからそっちに話進むのかー。
こんな歴史があったことは知っておくべきだとは思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勇者(ブレーブス)、北朝鮮、プロ野球、魔法
勇気、阪急 -
阪急ブレーブスの話だと思っていたが、半分はあたっていた。なかなか趣向に富んだ複雑な構成で描かれている。おかげで、興味深く読めたもののテーマが分散していて、何が言いたかったのがははっきり判らない。
主人公とその父と父のかっての恋人、安子の物語が文字通り時空を超えて交錯していく中で、西宮球場や阪急ブレーブス、阪急ブレーブスに関わった人々の事が描かれる。いつの間にか在日の話が入ってきて、やがて北朝鮮の帰国事業が語られ始める。北朝鮮の帰った人々の悲惨な状況が描かれるがどこまでちゃんとした取材ができているかは少々疑問。プロトタイプ的に描かれる悲惨な北朝鮮の生活、という感じがしないでもない。
最後に主人公は「放っておけば歴史の中の闇に埋もれていく声を、何かの形に残していく。そういう仕事に就こうと思う」と語り、なんと無く本書に繋げていく。そして、自ら選んだその道で、懸命に生きたすべての人々が、人生の「勇者」であったことを、と物語を締めくくるのである。 -
『勇者たちの伝言 いつの日か来た道』(著:増山実)
いわた書店さんの「一万円選書」の1冊(7/11)
今年の3月、キャンセル待ちに当選して、届いたカルテに記入し、待ちに待った本が届きました
カルテに書いた私の希望は「小説が読みたい」
選ばれた11冊の本はどれも素晴らしく
しばらく小説を読んでいなかった私の胸のスポンジに
たくさんの感情の雨を降らしてくれました
また一万円選書をお願いしたいけど、大人気で再度は無理のよう・・・
いわた書店さんに選んで頂いた本から、自分で新たな世界を広げていきたいと思います
いわた書店さん、小説の素晴らしさをまた思い出させていただいて
ありがとうございました!
11冊の中には、テンポ良く読み進めてしまって付箋すらつけずにいたものもあります。
付箋が付いている本は付箋部分を紹介
付いていない本は備忘録としてタイトルのみご紹介します。
・人は人生のよくわからない部分を、適当に、何かそのときに都合のいい、意味のある言葉で埋め合わせ
なんとか脈絡をつけながら、毎日をつなぎあわせて生きているのだ(p17)
・勇気を持ちや。生きていくのには、勇気が必要や(p23)
・人生とはなんと不思議なものだろうか。たまたま飛んで来たボール一個が、この人の人生を変えた(p47)
・未来なんか誰にも予見できん。何が起こるかは誰にも分からん。そういう世界や。ただ、選手は、予見できん未来のために
準備することはできるんや(p175)
・自分らは最初のレンガを置いただけや。それでええんや(p258)
・比べて、あれがいやこれがいやと行動を起こさんより、今ある条件で最善の努力をすることや(p335) -
思っていたのとは別の方向へどんどん進んでいきびっくりです。最初は正秋と亡くなった父・忠秋との時空を超えた再会の話だろうと思っていたのだが、そこには父の過去、父の恋人の過酷な運命、そして奇跡が詰め込まれていてただの過去の話ではなく、感動の物語でした。
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6年ほど西宮に通っていたけれど、西宮ガーデンズの辺りが球場だったことを、実は今年の1月まで全く知らなかった。
上階のギャラリーも通りかかったことはあるけれど、「写真が飾ってある…なんかそういう企画展なのかな」くらいの印象で、気にも留めていなかった。
この本は、そんな西宮球場「跡地」を舞台に、球団・阪急ブレーブスや彼らのファンであった勇者たちの人生が交差する、SF(少し不思議)なお話である。
単純なノスタルジー小説だと思って読み始めたのに、思いもよらない壮絶さを目の当たりにしてしまって、とても一口では語れない…
大阪ほんま本大賞に選ばれたのも納得の、関西に住む(あるいは住んでいた)人の涙腺を緩める一冊だった… -
仕事に行き詰ったベテラン放送作家の工藤正秋。
電車の中でうたた寝をしていた時に、聞こえてきたアナウンスが
「次は・・・いつの日か来た道。いつの日か来た道。」
それは空耳で、実際は「西宮北口」と告げていたのでした。
そのアナウンスにつられるように、西宮北口で下車した正秋は、
思い出の地、かつての西宮球場跡地を訪れます。
そこで正秋は8歳のころの時代へとタイムスリップしてしまい・・・。
と、ここまで読んで、タイムスリップしちゃって、最後は感動が待っている親子の話かな?なんて、うがった見方で読み進めていると、
現在も大きな問題となっている北朝鮮での暗く悲しい歴史が関わってきたり、
大きな歴史の流れに翻弄された人々の話が織り込まれたりと、
読み応え抜群、どんどん話にひきこまれていきました。
うがった見方で読んでしまって、ごめんなさい。そう著者に謝りたくなりました。
今の自分が歩んでいる人生は、誰かが歩んできた、
「いつの日か来た道」の続きを歩いているんだな、と
何か大きな毛布にくるまれているような、あたたかい気持ちになりました。
図書館スタッフ(学園前):トゥーティッキ
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帝塚山大学図書館OPAC
https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/823254 -
書店でたまたま手に取り、読み始めた本作。
予想を超える面白さだった。
重松清の「赤ヘル1975」のような作品かと思っていたが、まったく別物。壮大なファンタジーだった。
今はなき西宮球場を軸に、非常に緻密にすべてのエピソードが結びついていく様は見事と言える。
タイトルも読み終えた後に「なるほどね」と納得。
次回ガーデンズに行く際には、阪急西宮ギャラリーに行ってみようと思う。