ふんわり穴子天: 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-4 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758440608

作品紹介・あらすじ

寛政三年弥生。預かった鴬を美声に育てて生計を立てる、小禄旗本の次男坊・林只次郎は、その鴬たちの師匠役となる鴬・ルリオの後継のことで頭を悩ませていた。そんなある日、只次郎は、満開の桜の下で得意客である大店の主人たちと、一方的に憧れている居酒屋「ぜんや」の別嬪女将・お妙が作った花見弁当を囲み、至福のときを堪能する。しかし、あちこちからお妙に忍びよる男の影が心配で…。桜色の鯛茶漬け、鴨と葱の椀物、精進料理と、彩り豊かな料理が数々登場する傑作人情小説第二巻。

感想・レビュー・書評

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  • ふんわり穴子天 ― 居酒屋ぜんやシリーズ2作目 
    2017.01発行。字の大きさは….字が小さくて読めない大きさ。
    花の宴、鮎売り、立葵、翡翠蛸、送り火の5話。

    やさしい気遣いの女将が営む居酒屋ぜんやで繰り広げられる美食人情物語です。

    工夫を凝らした料理と、真っ白な水芙蓉のように凛として、引き込まれるような美貌の女将に、引きつけられるように居酒屋ぜんやに、今日も小十人番士の旗本の次男・林只次郎をはじめ常連客が集まって来ます。そこで出される料理に、繰り広げられる話に一喜一憂します。

    【花の宴】
    桜の花見で出された「桜色の鯛茶漬け」、鯛は半生、ほろりとはぐれ、胡麻ダレに溶け込んだ出汁と米粒がさらさらと喉を通り過ぎる(食べたいな!) 

    【鮎売り】
    健気な鮎売りの少女から買った、傷だらけの鮎で作った「鮎粥」、鮎の出汁が米に染みて、飲み込んだ後まで旨い(うつ、食べたい!) 

    【立葵】
    只次郎は、母の気鬱を治すために「夏鴨のもも焼」、滋養の塊みたいに旨いです。赤身から肉汁がどんどん溢れてきて(あ、あぁ~、食べたい!) 

    【翡翠蛸】
    升川屋のお内儀お志乃は、もう3日もなにも食べていない。お妙は、もしや妊娠だと…、口当たりのいい「夏の酢だこ」、美味しい、お酢がええ塩梅で、これやったらもうちょっと食べられそう(う、旨い!) 

    【送り火】
    精進落としとして、穴子を丸ごと一匹揚げた「穴子の天麩羅」、さくっとした衣と、淡白な白身のふんわりした食感がたまらない。じゅわっとにじみ出る胡麻油の風味。衣が軽く、大きめに頬張ったひと口が瞬く間に消えてしまった(うっ、まぁい! 私の口から、ほくりと湯気が上がる!) 

    【読後】
    毎回、毎回美味しい料理が出ます、たまりません。私は、居酒屋ぜんやの常連になりたい(笑)
    2021.02.23読了

    ※シリーズ作品レビュー
    ほかほか蕗ご飯 ― 居酒屋ぜんやシリーズ1作目
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/475844000X#comment

  • シリーズ2冊目。出てくる料理がどれも美味しそうで、こんな居酒屋が身近にあったらなと思う。
    美人の後家若女将に惹かれる人達が、この居酒屋に集まってくるが、中には違った感情を持つ人も。前作で襲ってきた隣の駄染屋や、それを唆した大家の婆さん、何やら怪しげな旗本、妻も妾もいる奉行所の与力とか。良い人達だけでは筋は面白く無いのかも知れないが、それにしても悪人らしき人の多いこと。

  • 預かった鶯に美声を教え込む仕事で家計を支える、旗本の次男坊・林只次郎。
    片思いの美人女将・お妙の居酒屋「ぜんや」に通うのが楽しみで……。

    シリーズ第2作。

    おいしそうな料理の描写がある小説は数多くあるが、この作品は抜きんでている。

    食材を生かすための、創意工夫。
    食べる人のことを考えた配慮。

    料亭のような豪華さではなく、日々の中にある料理だからこそ、身近で魅力的。
    読んでいると、こちらも何か食べたくなってしまう。

    基本的には「ぜんや」に関係する人たちのあたたかさで支えられるストーリー。
    が、時折不穏な影のよぎるのが気になるところ。

  • 「居酒屋ぜんや」シリーズ2作目。
    ヒロインの性格がはっきりしてきて面白かったです。

    美味しい料理に皆が集まってくる居酒屋を、今は一人で切り盛りしているお妙。
    はっと目を惹く美貌だが自分ではあまり意識していないのは、2年ほど前に亡くした夫の善助を今も思っているのと、元々さっぱりした気性のよう。
    夫の姉が給仕の手伝いに来ており、大して働かないが客に睨みを利かせる役どころ。
    夫は二回り年上で、そもそも善助とその姉は妙の養い親だったのだ…

    林只次郎は小禄の旗本の次男で、鶯の鳴きつけで家計を支えている。
    食いしん坊で、妙の料理と優しい笑顔に魅了されているが、ほとんど異性とは意識されていない(笑)

    今回は、まずは「花の宴」
    花見に常連が集まった時のお料理。
    只次郎がやや苦手とする柳井殿が登場。兄嫁の父であり、北町奉行所の与力、中年だがモテ男で粋。
    「鮎売り」では、売れない鮎を抱えて困っている少女をお妙が助ける。
    その気っぷの良さに、魚河岸の男たちが店までやってくる。

    「立葵」
    只次郎の姪のお栄は賢い子で、学問をしたいのだが、それは当時の常識ではない。
    只次郎はこっそり教えることにするが…
    「翡翠蛸」
    升川屋の新妻・お志乃が食欲をなくしているという。上方の味を提供するお妙の工夫は‥
    そして、夫に対してお志乃は?
    「送り火」
    穴子天が出てくるのは最終話です。

    物語は基本、ほんわりした雰囲気で展開しますが。
    背景には事件が隠れているよう。
    人情噺だけど、年号もはっきりしているし、出来事は世相にも関係するのかな…
    じっくり読ませていただきましょう☆

  • 居酒屋ぜんや シリーズ2

    小禄旗本の次男坊・林只次郎は、鶯が美声を放つよう飼育する事で、生計を立てている。
    目下の所、鶯たちの師匠役となる・ルリオの後継のことで、頭を悩ませている。

    その只次郎が密かに想いを寄せている居酒屋「ぜんや」の美人女将・お妙が作る、料理は、季節感が溢れて、実に美味しそう。

    只次郎の父の上司で、無理難題を持ちかける・佐々木
    お妙を襲った駄染め屋
    5ヶ月間も姿を見せない糞買いの又三
    この三人の関係は?

    只次郎の姪のお栄が、とても可愛い。

  • とにかく食べ物が美味しそう!
    美味しそうだなー、と妄想して堪能しているうちに、思わずはっとするような、気づきがあったりします。
    当たり前のことを、当たり前でなく疑問を呈していくような感じというか。
    ああ、そうだよなー、としみじみさせてくれます。
    ハラハラドキドキがあまりないので物足りないと思う人も居るかもしれないけれど、ゆったりした気分で読めるので、通勤時に読むにはとても良いと私は思っています。
    何とも、好きなシリーズになってきました。
    また次が楽しみです。

  • 亡き夫・善助と営んでいた居酒屋「ぜんや」を一人で切り盛りする美人女将・お妙。
    その妙にひそかに思いを寄せる、武家の次男坊・林只次郎。
    林家の飯のタネ、鶯のルリオ。

    そしてもちろん、美味しいごはん。
    居酒屋なのは分かっているが、どうも、「つまみ」というより、「おいしいごはん」と言いたくなるような、家庭的な雰囲気なのである。
    妙は後家さんだが、湿ったところや隠微なイメージはどこにもない。
    清潔で、ふんわり温かい…洗いたての白い手のひらのようなのである。

    しかし、そこに不審な事件の影もちらつく。
    読み終わってすぐに続きが読みたくなった。
    すいません、次、いつ出ますか?

    『花の宴』
    花見に集まる男たち。
    只次郎の兄嫁と、その父の、ちょっと温まるエピソード。
    鯛茶漬け、桜餅。

    『鮎売り』
    騒動に巻き込まれ、転んで売り物のアユを落として傷めてしまった少女。
    定価で売り切って帰らないと、兄嫁から叱られるというが、無論魚河岸の者たちは相手にしない。
    鮎粥、花梨糖。

    『立葵』
    只次郎の長兄の娘…つまり姪のお栄はたいそう賢い。
    学問をしたくてたまらないようでもある。
    女に知恵が付くのを嫌う父や長兄には内緒で、只次郎は栄に勉強を教える決心をする。
    武士の世の中も変わりつつあるのだ。
    鴨丸ごと一羽使い切り料理。
    捌くお妙さんがたくましい!

    『翡翠蛸』
    升川屋の妻・志乃の騒動再び。
    しかし、まことに気持ちのいい(女性にとって)幕切れ。
    上方では、土用は鰻ではなく蛸で決まり。
    善助の姉・お勝から優しい言葉。

    『送り火』
    精進落としの穴子天。
    只次郎の兄嫁・お葉の父、柳井。
    まことにいい男であり、北町奉行所の吟味方与力としても有能だ。
    この先も頼りにしたいものである。
    …というのも不穏な影が…

  • 居酒屋ぜんやシリーズ第二弾。今回も居酒屋女将ねお妙さんと武士の只次郎、それぞれの目線で語られる連作短編集。

    軽いタッチの読みやすい文章に、優しいキャラクター、美味しそうなお料理と気楽に読めるシリーズながら、少し暗雲が立ち込め気味な感じもしたり。それもまた良し。シリーズ全体のキモになるのかな?

    二話目は以前「まんぷく」で読んだ話(コレでこのシリーズを読み始めた)なんだけど、最初から読むと色々キャラクターの背景が見えて面白かった。

    柳井殿、好きだなー(笑)女好きするタイプだよね(笑)

  • シリーズの第2段。
    相変わらず、お料理は美味しそう。
    店主のお妙さんの評判は上がるばかりで、林様も気が気では無いことでしょう。
    不審な人物もチラホラして、心配ごともあるけれど、美味しいものを食べる時は現実を忘れそう。

  • シリーズ第二弾。

    今回から、只次郎の兄嫁の父・与力の柳井殿が登場。
    只次郎は苦手にしているようですが、結構ずけずけと悪態をつけているあたり、割と相性は悪くないのでは?と思います(味方になってくれれば心強いかも)。
    佐々木様が剣吞な感じで、動向が気になるところ・・。
    どうする、どうなる只次郎?

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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