あの日のあなた (ハルキ文庫 と 7-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 130
感想 : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758440929

感想・レビュー・書評

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  • 遠田さんの作品は、「月桃夜」、「アンチェルの蝶」と読んできての、この作品ですが、何となく共通点というか、伝えたい事が見えてきた気がしました。

    人生には、楽しいことだけではなく、辛いこと、苦しいこと、やるせないこと等も存在すること。そして、それに向き合わなければならない。遠田さんの作品は、とても辛いことの方が多いのだけど、その中でも数少ないが、強く在り続けるひかりのようなものが、生き続けていれば見えてくること。そこに、辛い現実を生きてきた甲斐があったなと、思えるような素晴らしさ。この作品では、あたらしい世界ということになるのでしょうが、家族の在り方について、色々考えさせられました。

    家族という特別な関係は、思いが深い故に、時に悲しみや怒りとともに、誤った方向へ、人をいざなってしまうこともあるのだろうか。この作品では、家族という関係の素晴らしさと悲しさを、共に示された気がします。ただ、素晴らしさの方には、やるせない部分もあるので、それがまた、作品だから美しいと思えるのかもしれませんが、当事者たちにとっては、本当に大変だっただろうと思いました。

    また、登場人物の「片瀬和彦」の、本当に細かくて繊細な心理描写には、脱帽させられました。遠田さんの人物に対する真剣なまでの創造力を感じました。

    ただ、物語がほとんど片瀬和彦の息子「在(ある)」の、父親の真実探しに終始するため、そこは、ややもどかしく単調な展開と思われるかもしれません。

    以下、ネタバレ含みますので、ご注意を。









    私が最も印象に残ったのは、上記した家族の素晴らしさである、片瀬和彦と森下翠のお互いの愛情です。

    唯一、翠の吃音を気にしないでいてくれた和彦と、家族から愛情を注がれなかった故に、寂しさを覚えて、ぶっきらぼうに見られた和彦に対して、自然に接した翠のふたりは、正に、お互いがお互いを必要としており、ふたりには、それがしっくりいっていることが無意識に実感出来ていた。それが、これまで体験したことのなかったことで、あたらしい世界と呼んだわけです。

    ただ、そう思っていたのは当事者たちだけで、周りとの悲しいくらいの温度差と誤った解釈による悲劇は、本当にやるせないものがありました。

    そして、終盤の和彦の手紙を読むと、和彦が本当にどれだけ辛い人生を送っていたのかを痛感させられました。それでも、亡くなった時に、笑うことが出来たって。人はここまで強くなれるのだろうか? 

    一瞬、疑ってしまう自分自身が恥ずかしいが、物語の力というのは、こういうところにあると、私は思っています。

    また、エンディングの、在と、翠の姪の「水樹」の、ささやかだけど、前向きな終わり方も良かったです。物語が終わった後も前途は暗いかもしれない。特に、水樹はまだまだ辛いことがあるだろうけど、そこは成長した在が、正に、和彦のように格好良く支えてくれるだろうといった希望を感じました。
    水樹には、本当に幸せになってほしい。

  • 遠田潤子『あの日のあなた』ハルキ文庫 。

    2015年に刊行された『お葬式』の改題、文庫化。確かに『お葬式』という標題では余りにあからさまというか、えげつない感じがする。そういう点で改題は正解だと思う。

    遠田潤子の『アンチェルの蝶』『雪の鉄樹』と何とも深く、重い、素晴らしい傑作を堪能したが、本作もまた余韻を残す素晴らしい作品だった。不満を言えば、主人公の片瀬在が極めてファザコンの清純で中性的に描かれている点であろうか。出来れば主人公の在には汚れて欲しかった。

    二年前に母親を亡くし、父親の和彦と二人きりで暮らす主人公の片瀬在にとって父親は憧れであり、尊敬する存在だった。ある日、百合の花を買いに出掛けた父親が交通事故死する。父親が残した奇妙な遺言、かつて父親が付き合っていた女性、主人公の名前の書かれた母子手帳…余りにも多くの謎に満ちた伏線に、結末が非常に気になり、物語にのめり込んだ。

    まだ遠田潤子の作品は3作しか読んでいないが、信用できる女性作家の一人となった。

  • 初読みの作家さんです。暗く、苦しい作品なのですが先が気になって止められなくて一気に読んでしまいました。別の作品も読んでみようと思います。

  • 遠田作品は凄く好きで、ほとんどの本を読んでいるのだけれど、
    この話は珍しく私には刺さらなかった。

    長く生きていれば(長くなくとも)人に言えない事、
    墓場まで持っていきたい秘密の1つくらいあるでしょう。

    では何故、秘していたいのか。
    それは自分も、それを知った人も幸せにはならないから。
    その事が分かっているのなら、やはり墓場まで持っていくべきなのだ。

    しみったれた秘密を身近な人に暴露するなんて、
    そんなのただのエゴにしか私は思えない。

  • 交通事故で突然亡くなった父親の遺品整理で発見された母子手帳。自分と同じ名前が記載された、もう一人の自分はいったい誰なのか。生前の父親の真実を追う息子の姿を描く長編小説。
    人間ドラマとミステリーが融合と言えば聞こえはいいが、どちらも中途半端に終わってしまった感あり。弁護士がいつも思わせぶりなのもズルく感じた。昨今、終活流行だが、遺された家族に迷惑かけないように、身辺整理はきちんとしたい。

  • この著者はファンタジーより現代ものがいい!
    読み進むたびに謎、疑問が提示され
    またそれが解決されていく
    ストーリーも楽しめました

  • 相変わらずの遠田節炸裂。思い出したように読みたくなる。本作もそういう意味では軽く及第点。その一方で、同じ系統にちょっと飽きてきたかもしれないのと、多少の粗が気になるのとで、絶賛高評価!って訳にはいかんかった、個人的に。諸事情はさておき、やっぱり主人公たる私と、その母親に対する仕打ちはあんまりぢゃなかろうか。完璧だった父親にも暗い過去やらはあった訳で、その成長過程とかが示される中で、納得していくべきことなんだろうけど…って感じ。とはいえ、他作品においても、偏屈なまでの自己理論で過去を背負う者たちが語られている訳で、本作が特別成り立っていないのではない。結局、個人的にもう、この世界観に慣れてきてしまっているのが一番の原因かも。でもまだ読むけど。

  • 遠田作品は相変わらず暗く重い。
    ずーっと惰性で読んでたけど真相が明らかになる辺りからは一気読み。
    スッキリしない愛の物語という感じ。

  • 秘密を持っていた父が死に、家族が誰もいなくなった在。父の過去にある女性がいたことを知り、それを調べていくと……。いついつダークな方向にっと思ってひやひやした。希望溢れはしないが、まあくっつくかは好きにしなはれ。

  • 新刊だと楽しみにしていたら、『お葬式』の改題だったのか…。

    というわけで、感想は『お葬式』のところに。
    大幅改稿があったら困るなぁ。

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著者プロフィール

遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補、16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年に『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞受賞。同17年『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。2018年、『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補、’20年『銀花の蔵』が直木賞の候補作に。人間の抱える理不尽に迫る、濃密な世界を描く。

「2022年 『人でなしの櫻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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